2025年6月23日 (月)

日本経済研究センター(JCER)の長期経済予測「2075年 次世代AIが変える日本経済」

やや旧聞に属するトピックながら、日本経済研究センター(JCER)から長期経済予想「2075年 次世代AIが変える日本経済」の最終報告が明らかにされています。私自身は現時点ですでに60歳を大きく超えており、50年後の2075年に命長らえているとはとても思えませんが、大学で教えている20歳前後の大学生諸君はまだまだ元気にしていることと想像しますし、何といっても、エコノミストとしての関心からごく簡単に取り上げておきたいと思います。まず、JCERのサイトから主な予測結果を3点引用すると下の通りです。

主な予測結果
  • 人間と同等の能力を備えたAGIが社会に浸透し、幅広いタスク(作業)を担うと見込まれる【図表1】。このために、生成AI・AGIによる生産性上昇効果は、かつての電力や自動車の普及期に相当する規模まで拡大する【図表2】。
  • AGIとロボティクスが結び付く結果、ロボット技術に優位性を持つ中国のGDPが大幅に増加するが、人口減少が続くことから米中逆転には至らない【図表3】。日本はAGIを生かす人的資本拡大と産業変革を行えばGDP世界4位を維持可能【図表4】。一人当たりGDPは現在29位から25位まで上昇。また、名目GDPは2040年には1,000兆円を超えるとともに、一人当たり名目賃金は2024年比で約6割増となる
  • 産業別の生産額はAI・デジタル関連が大幅に増え、日本経済の大きな柱に。ヘルスケアは第2の柱。老化抑制など予防医療が伸びる。自動運転車などモビリティー関連も拡大【図表5】。

報告書は会員向けだけらしく、私の方ではまだ入手できていませんので、図表4: 実質GDPのランキング だけ下に引用しておきます。2075年における日本のGDP規模は、AGI=汎用人工知能を生かす人的資本拡大と産業変革を行えばGDP世界4位を維持可能、という見立てです。ただ、そういったことが出来てきてこなかったので、現在の日本の経済的ポジションの低下を招いてしまったので、11位まで低下する標準シナリオの方が実現可能性が高そうな気がしないでもありません。

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2025年6月22日 (日)

ソフトバンクに敗れて交流戦終了

  RHE
ソフトB000200100 351
阪  神000100000 152

【ソ】松本晴、津森、大山、松本裕、杉山 - 海野
【神】伊原、桐敷、富田、木下 - 坂本

ソフトバンクに完敗して、交流戦終了でした。
先発のドラ1ルーキー伊原投手はよく投げたのですが、4回の2失策がそのまま得点につながってしまいました。自責点ゼロでの敗戦投手です。ラッキーセブンのチャンスを逃した後、8回にはとどめを刺されて、完敗でした。相変わらず、森下選手がサッパリ打てません。今日は1-2番もノーヒットでした。頭部死球の中野二塁手が心配です。

リーグ再開後のヤクルト戦は、
がんばれタイガース!

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気候変動に関するOxFamのツイート

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上は、気候変動に関するOxFamのツイートのマンガです。以下のコメントが添えられています。

The far right is gutting climate laws, silencing activists, and spreading lies—backed by fossil fuel money. We must resist this sabotage.

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2025年6月21日 (土)

今週の読書は経済書のほかいろいろ読んで計6冊

今週の読書感想文は以下の通り、経済書のほかいろいろ読んで計6冊です。
まず、小田切宏之『競争政策論[第3版]』(日本評論社)は、大学の教科書としての活用を念頭に置きつつ、競争政策の経済学的な理論面だけではなく、公正取引委員会の審判や裁判の判例などを加えて、実例も豊富に収録されていて、一般のビジネスパーソンなどにも理解がはかどる内容となっています。森永卓郎・神山典士『さらば! グローバル資本主義』(東洋経済)では、共著の形ながら著者の1人であるアナリスト森永卓郎さんの絶筆ともいえ、一極集中で限界に達しつつある東京を離れたトカイナカの生活を語り、また、1985年JAL123便墜落をターニングポイントに、日本はことごとく米国の要求に従わざるを得なくなった、と主張しています。ジョディ・ローゼン『自転車』(左右社)では、200年前に発明された自転車についての自転車誌として世界各地の自転車に関する歴史と情報を、自転車を愛するジャーナリストが取りまとめています。馴染み深いアジアの情報もたくさん盛り込まれています。古藤日子『ぼっちのアリは死ぬ』(ちくま新書)では、実験で群れから引き離されて、孤立させられたアリはすみっこにいるようになり、果ては死んでしまう、という実験結果につき、その原因、というか、経緯を分子生物学で明らかにしようと試みています。ただ、アリは社会性あるとはいえ、人間に応用するにはムリがあるように感じました。石田祥『猫を処方いたします。 4』(PHP文芸文庫)は、京都市中京区麩屋町通上ル六角通西入ル富小路通下ル蛸薬師通東入ルにあり、なかなかたどり着かない「中京こころのびょういん」のニケ先生と看護師の千歳さんが、訪れる患者に薬ではなく猫を処方するシリーズ第4弾です。貴戸湊太『その塾講師、正体不明』(角川春樹事務所)では、中高生への個別指導を提供する学習塾の一番星学院桜台校に勤めている正体不明のアルバイト講師の不破が、中学生塾生の一番星(バンボシ)探偵団とともに、塾周辺で起きている連続通り魔事件の犯人解明に挑みます。
今年の新刊書読書は1~5月に137冊を読んでレビューし、6月に入って先週と先々週で15冊、そして、今週の6冊を加えて計158冊となります。半年足らずで150冊超ですので、今年も年間で300冊に達する可能性があると受け止めています。なお、最近のコメ問題の勉強、というか、授業準備として、小川真如『日本のコメ問題』(中公新書)も読んでいます。2022年6月と3年ほど前の出版であり、新刊書ではないと思いますので、本日のレビューには含めていません。『日本のコメ問題』も含めて、これらの読書感想文については、Facebookやmixi、mixi2などでシェアしたいと考えています。

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まず、小田切宏之『競争政策論[第3版]』(日本評論社)を読みました。著者は、一橋大学名誉教授であり、ご専門は産業組織論などとなっています。本書の初版は2008年、第2版は2017年に、それぞれ出版されており、昨年2024年に第3版が出ています。出版社からして学術書と考えるべきですが、出版社のサイトでは初級のテキストと位置づけられているようで、15回の大学の半期の授業を考慮して13章構成となっていますし、それほど難易度が高いわけではありません。一般のビジネスパーソンでも無理なく読みこなせることと思います。加えて、経済学的な理論面だけではなく、公正取引委員会の審判や裁判の判例などを加えてあり、実例も豊富に収録されていて、さらにいっそうビジネスパーソンの理解を進めてくれることと想像しています。私の専門はマクロ経済学であり、本書のようなマイクロな経済学はそれほど詳しくありませんが、読んでみて十分理解できると感じました。競争政策に関しては、まず、いわゆる厚生経済学の基本定理として、市場が競争的であればパレート最適な資源配分が達成される、というのがあります。要するに、競争市場は効率的なわけであり、逆に、競争制限的、典型的には独占やカルテルの存在は経済的な厚生を損なう、というわけです。他方で、資本主義的な経済では契約や営業の自由があります。厚生経済学の効率性というのは、そういった自由を制限するための公共の利益や公共の福祉があるわけです。その理論的な基礎と実例を本書では扱っています。特に、本書が版を重ねているのは、グローバル化の進展により競争政策の地平が広がり、さらに、最近のデジタル化によって、GAFAやプラットフォーム企業などの新たなビジネスモデルが現れたからといえます。総論としてはそういうことになり、詳細は読んでいただくしかありません。ということで、マイクロな経済学にそれほど専門性ない私の目から見て、独占市場に対する参入障壁が低い場合にコンテスタブル市場となって競争条件が整備される、また、プラットフォーム企業の競争をマルチサイド、というか、主として2サイドで見る、なんて点については知っていましたが、今回の読書でいくつか深まった点は以下の通りです。第1に、カルテルや談合における課徴金減免制度=リニエンシー制度、すなわち、内部告発のような形で、カルテルや談合の参加企業が自ら公正取引委員会に情報提供すると課徴金減免を受けられる制度なのですが、これは、いわゆる情報の非対称性を理論的根拠とすると教えられているようです。シロートながら、なるほどと感じた次第です。第2に、異なる財の間で代替性を測る需要の交差弾力性により競争関係は理解できるというのも新たな発見だったかもしれません。これも、シロート丸出しです。第3に、企業の合併や原価割れ販売にさまざまなケース、場合によっては十分に経済合理的で厚生を高める可能性あるケースがあることも勉強になりました。また、ネット接続などにおける不可欠設備の概念もよく整理されていました。最後に、研究開発やイノベーションについては、それなりの規模で市場支配力を有する企業の方が活発である、というシュンペーター仮説は、やっぱり、正しいと私は思います。

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次に、森永卓郎・神山典士『さらば! グローバル資本主義』(東洋経済)を読みました。著者は、今年2025年1月に亡くなった経済アナリストとノンフィクション作家です。森永本については、もう打止めと思っていたのですが、東洋経済から本書が共著の形ながら出版されましたので読んでみました。もちろん、基本的な主張は従来と変わりありません。トカイナカでつましく暮らし、一極集中で限界に達した東京からの脱出を語っています。私自身は2020年に東京を脱出しましたが、その後の5年余りで東京に限らず、日本に限らずのインフレが起こり、東京での生計費そのたは暴力的な上昇を続けています。特に本書の前半2章では、この一極集中とトカイナカへの脱出に焦点を当てています。東京では、教育と住宅がとてつもなく負担感を強め、さらに、国有地の払下げでメディアを東京に集中させ、情報まで一極集中してしまった現状を分析しています。ただ、私も子どもを東京に残して東京を脱出して故郷の関西に戻りましたが、脱出できる人とできない人がいる点は忘れるべきではありません。加えて、本書でもトカイナカはユートピアではないと明確に記している点も忘れるべきではありません。私のような半分引退した人間だけができるぜいたくかもしれません。とはいえ、私が大きく目からウロコを落としたのは第3章の1985年に起きたJAL123便墜落の見方です。従来から、1985年の日航機事故はボーイング社の整備の不手際によるものではなく、自衛隊機のミサイル誤射が原因という主張は見かけましたが、その発展形については私の理解が及んでいませんでした。この自衛隊による墜落の事実を米国に握られ、それをターニングポイントに日本はことごとく米国の要求に従わざるを得なくなった、という発展形を初めて理解しました。たとえば、1985年のプラザ合意による猛烈な円高の進行、そして、製造業の衰退、さらに、21世紀に入ってからの構造改革や新自由主義的な経済政策による格差拡大があり、それらの米国からの要求に加えて、財務省による緊縮財政が日本経済の現在の苦境をもたらした、という見方です。私自身は日航機事故の真実に関して何ら情報を持ち合わせませんので、本書が指摘するように、米国との関係について日航機事故が大きなターニングポイントになったかどうかについては不明です。ただ、戦後一貫して日本は米国に従属を強めており、目下の同盟者として米国の意に沿った政策運営を続けていますので、今さら、日航機事故がどうであれ関係ないような気もします。最後に、本書では政策レベルで対応すべき点に対して、個人レベルの対応で済ませよう、済ませるべき、としている点がいくつかあり、私は少し疑問を持っています。財務省の緊縮財政に対する反対はそれはそれでその通りなのですが、東京一極集中に関してはトカイナカなどを持ち出して、個人レベルでの対応を推奨してるかのごとき印象を受けます。これには私は同意できません。東京一極集中に対する政策対応を考えるべきです。この点は、現在のコメ問題にも通ずるものを感じます。コメ不足に対して家計レベルでの対応は限界があります。その昔の「欲しがりません、勝つまでは」を思い起こさせるような個人レベルでの対応の必要を論じるケースには、大いに眉につばして対応すべきであると私は考えています。

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次に、ジョディ・ローゼン『自転車』(左右社)を読みました。著者は、米国のジャーナリストであり、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』などに音楽批評を寄港しているそうです。本書は、索引や注を含めると500ページ超の大作です。自転車を愛するジャーナリストによる自転車誌、自転車史となっています。まず、現在から約200年前に発明された自転車の歴史を簡単に概観しています。馬車のじゃまになるという観点から自転車を禁止した歴史から、200年後のコロナ禍での自転車によるデモ行進まで、とても興味深く、私なんぞの知らなかった歴史がひも解かれています。中国が1980年代の自転車大国から一転して自動車大国に至る転機に、天安門事件における自転車の果たした役割が重要であった点は刮目させられるものがありました。しかも、歴史の上での自転車に関するホラ話にも言及しています。レオナルド・ダ・ヴィンチが自転車の原型をなすスケッチをしたためていた、などです。また、自転車を実用性の面からだけではなく、見栄えの面からも評価しています。ただ、性的対象というのはやや行き過ぎの感を否めませんでした。第5章では、19世紀終わりの自転車狂の時代を象徴するメディア記事を大量に収録しています。その上で、というか、それらに交えて、世界各地の自転車について語っています。バングラデシュの過酷なリクシャの生活実態と仕事の実態、ブターン国王の自転車好き、などなど、我々日本人の身近なアジアのエピソードも豊富に収録しています。凍てつく零下30度の地での自転車については、とてもびっくりしました。タイタニック号にエクササイズ向けの自転車マシンがあったというのも初めて知りました。米国の200年紀=バイセンテニアルに因んで、バイクセンテニアルという行事があったのは、どこかで聞いた気がしましたが、詳細に語られていて印象的でした。そして、本書では決して自転車のいい面だけに着目しているわけではありません。最後の方では、自転車の墓場として廃棄が取り上げられます。パリのサンマルタン運河で水を抜いた際だけに知ることができる自転車の投棄の実態などなどです。さらに、植民地における自転車の負の役割についてもスポットが当てられています。単に自転車を賛美するだけでなく、こういった疑問も忘れずに取り上げています。ということで、日本でも自転車に乗る人はいっぱいいます。本書では、自転車は天気に勝てないと指摘していますが、私の知る限り、東京では短距離なら原則移動は自転車、雨が降ったらカッパを着てでも自転車、という人が決して少なくありませんでした。私の印象としては主婦の割合が高かったように記憶しています。私は雨の日はダメですが、自転車には乗ります。クロスバイクとロードバイクの2台を持っています。今週は梅雨の中休みでいいお天気が続きましたので、大学への出勤は自転車が多かったです。というか、月曜日以外は自転車で出勤していました。ただ、自転車、特にスポーツバイクに関しては1点だけ疑問があり、タイヤが細くて集合住宅などの自転車置き場のレールにうまく収まらないので、自宅内に持って入る人を見かけます。理解しなくもありませんが、やや過剰な取扱いと感じなくもなく、「王より飛車を可愛がり」という将棋の格言を思い出してしまいます。

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次に、古藤日子『ぼっちのアリは死ぬ』(ちくま新書)を読みました。著者は、東京大学大学院の薬学研究科を卒業した後、現在は国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員としてアリの社会性研究を行っています。はい、これまた、私の専門分野である経済学からは遠く離れているような気がしますが、ハチと同じように社会性を持つ昆虫ですし、大学の図書館で誰か先生が推薦していたので借りて読んでみました。はい。結論はすごくシンプルであり、本書のタイトル通りです。実験で群れから引き離されて、ひとりぼっちにされたアリは死んでしまう、ということです。しかも、その孤立させられたアリはすみっこにいるようになり、果てに死んでしまう、ということで、その原因、というか、経緯を分子生物学で明らかにしようと試みています。学術的な中身については私は十分に理解した自信はありません。ただ、いくつかの点で自然科学だけでなく社会科学の観点から疑問に思うところがあります。まず第1に、、少なくとも、社会性、それも、真社会性があるとはいえ、アリの研究をそのまま人間社会に当てはめるのはムリだということです。当たり前です。人間は、ロビンソン・クルーソー的な状態に置かれてもそうそう早くすぐに死ぬことはありません。まあ、ロビンソン・クルーソーもフライデーという仲間が後にできるわけですが、1人になってもたくましく生き延びようと努力します。フィクションの小説とはいえ、生き延びようとする努力は真実に近いといえます。第2に、ぼっちのアリが死ぬクリティカルマスについては言及ないのが不思議です。1匹なら死ぬというのは実験で確かめられたとはいえ、2匹ならどうなのか、3匹ならどうなのか、といった形で、アリが死なないクリティカルマスについても知りたい、というのが私の疑問です。第3に、死因について私は理解がはかどりませんでした。活性酸素と酸化ストレスなのだそうですが、それを人間になぞらえることができるかどうか、私はキチンと読み取れた自信がありません。また、すみっこに行くという事実と死因が何らかの関係あるのか、ないのか、この点についても私が読み逃しているのかもしれませんが、特段の言及なかった気がします。いずれにせよ、本書冒頭で主張されているように、社会的な孤立が健康に悪影響を及ぼす、というのがたとえ事実であるとしても、本書の論証ははなはだ不足しているといわざるを得ません。加えて、アリにはないであろう心因性の死因が、直接の原因ではないとしても、人間にはありそうな気がします。この点も考慮する必要があるように思います。

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次に、石田祥『猫を処方いたします。 4』(PHP文芸文庫)を読みました。著者は、京都ご出身の小説家です。本書もすでにシリーズ第4巻となりました。京都市中京区麩屋町通上ル六角通西入ル富小路通下ル蛸薬師通東入ルにあり、なかなかたどり着かない「中京こころのびょういん」のニケ先生と看護師の千歳さん、さらに、京都市内の外れにある『保護猫センター都の家』の副センター長の梶原友弥などがレギュラーの登場人物であり、この第4巻は4話の短編を収録しています。第1話は、スマホ中毒、スマホ依存症のような11歳の小学生、稲田海斗が患者として、母親に連れられてやってきます。「先生に診てもらって治ったそうです」と母親が紹介者について話すと、「あはは。そんなアホな」とニケ先生が応じたりして軽妙な会話が交わされます。あんずという名のメス12歳、アメリカンショートヘアの老猫が処方されます。第2話では、自分のことを可愛くないと考えるルッキズムに陥った女子大生の荒川凪沙がやってきて、ナゴムという名の6歳のオス、エキゾチックショートヘアを処方されます。第3話では、建築現場で働く夫の陣内宗隆を持つ陣内サツキが主人公です。陣内サツキは50代後半でもう孫もいる年齢なのですが、数年前に死んだ愛猫のチャトが忘れられず、『保護猫センター都の家』に来ても、保護猫を引き取れません。夫の陣内宗隆が「中京こころのびょういん」に行って、ニニイという名の推定2歳の雑種メスを陣内サツキ向けに処方されます。第4話では、鳥井緑26歳と青21歳の姉弟が主人公です。青井緑が名称未定ながら、処方された後にシロと呼ぶようになった3か月のカオマニーの子猫を処方されますが、5日の処方期間だけでは返却されません。この最終話ではブリーダーがネコの大量死を招いた中京ニーニーズの事件について、情報が開示されます。最後の最後で、「中京こころのびょういん」が入居しているビルの取壊しの話が出てきます。さて、第5巻ではどうなりますことやら。

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次に、貴戸湊太『その塾講師、正体不明』(角川春樹事務所)を読みました。著者は、ミステリ作家なんですが、学園ミステリ『ユリコは一人だけになった』で第18回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2020年に改稿作品『そして、ユリコは一人になった』にて小説家デビューしています。最新刊は『図書館に火をつけたら』であり、それについては最近読んでレビューしたので、その前作の本書を読んでみました。舞台となるのは個別指導塾の一番星学院桜台校です。中高生を対象にしていて、室長の他に正社員講師が2名、そして、本書の主人公である不破勇吾はアルバイト講師28歳ですが、もちろん、不破勇吾の他にもアルバイト講師がいます。アルバイト講師は多くが大学生でタメ語で話して親しみやすいのですが、主人公の不破勇吾は前職不明の社会人で、しかも、タメ語では話さずに冷たく恐ろしい雰囲気を持っています。ただし、この不破勇吾の正体を明らかにすることが謎ではありません。不破勇吾の正体は第1話で早々に明らかにされます。ですから、謎解きの対象は一番星学院桜台校の周辺で起きている連続通り魔事件であり、最後は殺人事件まで起こってしまいます。本書はその謎解きに中学生の塾生たちの一番星(バンボシ)探偵団が挑み、最終的には塾生の探偵団と主人公の不破勇吾で謎を解き明かすことになります。3話から成る連作の短編集ないし中編集なのですが、単なる連続通り魔の犯人探しというミステリの要素だけでなく、学校ではないとはいえ学習塾を舞台にしていますので、大学受験や高校受験あるいは生徒の進路、親による教育虐待、学校と学習塾のいじめなどなど、学校と教育と生徒を取り巻くさまざまな社会的問題にも注意が払われています。ただ、一番星学院桜台校の関係者、すなわち、不破をはじめとする塾講師や室長、生徒とその親が主要な登場人物ですので、ミステリとしては限られた人間での犯人探しですから、犯人の動機の点などでやや底が浅い気はします。その分、でもないのでしょうが、教育問題をいっぱい盛り込んだ社会派の力作ミステリといえます。

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2025年6月20日 (金)

欧州でも暑いらしい

今週は夏本番の暑さでしたが、ウェザーニュースのコラム「ヨーロッパでも厳しい暑さ」によれば欧州でも暑いようです。
昨日6月19日(木)の最高気温はウェザーニュースのサイトから引用した下の画像の通りですが、スペインの首都マドリードでは37.3℃、スペイン国内では40℃を超えた地点もあったようです。英国のロンドンでも今年初めて30℃を超えています。
欧州の暑さの原因は、上空を流れる強い風である偏西風が大きく北に蛇行する「オメガブロック」だとウェザーニュースでは指摘しています。日欧でほぼほ同時に気温が急上昇しているわけですから、まあ、気候変動が大本の原因なんだろう、と私は考えています。

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コメ価格の上昇により5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は再び加速

本日、総務省統計局から5月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月の+3.5%からさらに加速して+3.7%を記録しています。まだまだ+3%台のインフレが続いています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は2022年4月から38か月、すなわち、3年余り続いています。ヘッドライン上昇率も+3.5%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+3.3%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月の消費者物価3.7%上昇 伸び拡大、コメは101.7%高
総務省が20日発表した5月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合が111.4となり、前年同月と比べて3.7%上昇した。4月の3.5%を上回り、3カ月連続で伸び率が拡大した。食料品の値上げなどが物価を押し上げた。コメ類の上昇幅は101.7%だった。
生鮮食品を除く総合の上昇幅は、直近でピークだった2023年1月以来、2年4カ月ぶりの大きさとなった。2%を上回るのは38カ月連続となる。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は3.6%の上昇だった。
コメ類は101.7%上昇し、比較可能な1971年1月以降で最大の上げ幅となった。8カ月連続で過去最大を更新した。外食や調理食品にも波及し、外食のすしは6.3%、おにぎりは19.2%それぞれ上がった。
消費者物価指数で調べるコメは単一原料米で、ブレンド米を含まない。総務省によると、毎月同等の商品を調べられるよう全国の消費者が最も多く買っている商品を選択している。今回の調査期間は5月14~16日。
生鮮食品を除く食料は7.7%プラスで前月(7.0%)を上回った。品目別の上昇率をみると、チョコレートは27.1%だった。原材料価格の高騰で価格改定があったことが影響した。飲料はコーヒー豆が28.2%となった。主要原産国のブラジルが天候不良で出荷量が減少し、需給が逼迫した。
生鮮食品を含む総合は111.8で、前年同月と比べて3.5%上昇した。4月の3.6%から小幅になった。生鮮食品は0.1%下落で、4月(3.9%プラス)から大幅に下がった。キャベツは39.2%マイナスだった。4~5月の気候が生育に適しており、出荷が増えた。そのほかブロッコリー、ネギの価格が足元で下落した。
エネルギー価格は8.1%上がり、4月(9.3%)よりも伸び率が縮んだ。内訳は電気代が11.3%上がり、4月(13.5%)から伸びが鈍化した。再生可能エネルギーの普及を目的とした「再生可能エネルギー賦課金」が昨年5月に引き上げられ大幅に上昇した反動が出た。都市ガス代は6.3%プラスと、4月(4.7%)より伸びが拡大した。政府の電気・ガス代補助の終了を受けた値上げが影響した。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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引用した記事には、2パラめにあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.6%ということでしたので、実績の+3.7%の上昇率はやや上振れた印象です。また、エネルギー関連の価格については、政府の「電気・ガス料金負担軽減支援事業」の終了に伴う値上げの影響が含まれています。続いて、品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、食料とエネルギー価格の上昇が引き続き大きくなっています。すなわち、先月4月統計では生鮮食品を除く食料の上昇率が前年同月比+7.0%、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度+1.68%であったのが、5月統計ではそれぞれ+7.7%、+1.84%と、一段と高い上昇率と寄与度を示しています。寄与度差は+0.16%ポイントあります。他方で、エネルギー価格も上昇しています。すなわち、エネルギー価格については4月統計で+9.3%の上昇率、寄与度+0.71%でしたが、本日公表の5月統計でも上昇率+8.1%、寄与度+0.63%と高止まりしています。したがって、生鮮食品を除く食料とエネルギーだけで5月のヘッドラインCPI上昇率3.5%のうちの+2.5%ポイントほどを占めることになります。特に、食料の中で上昇率が大きいのはコメであり、生鮮食品を除く食料の寄与度+1.84%のうち、コシヒカリを除くうるち米だけで寄与度は+0.38%に達しています。上昇率は前年同月比で+101.0%ですから、昨年から2倍に値上げされている、ということになります。としても、また、電気代も高騰を続けており、4月統計の+13.5%の上昇に続いて、5月はも+11.3%の上昇と、2ケタ上昇が続いています。
多くのエコノミストが注目している食料の細かい内訳について、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見ると、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+7.7%、寄与度+1.84%に上ります。その食料の中で、これも繰り返しになりますが、コシヒカリを除くうるち米が+101.0%の上昇と2倍超に値上がりしていて、寄与度も+0.38%あります。備蓄米が出回り始めたとはいえ、価格だけでなく量もまだ不足しているように見受けられ、そもそも、スーパーなどの店頭で見かけなくなった気すらします。うるち米を含む穀類全体の寄与度は+0.66%に上ります。コメ価格の推移は下のグラフの通りです。コメ値上がりの余波を受けたおにぎりなどの調理食品が上昇率+6.4%、寄与度+0.24%、同様にすしなどの外食も上昇率+4.4%、寄与度+0.21%を示しています。主食のコメに加えて、カカオショックとも呼ばれたチョコレートなどの菓子類も上昇率+7.4%、寄与度+0.20%に上っています。ほかの食料でも、豚肉などの肉類が上昇率+6.2%、寄与度+0.16%、コーヒー豆などの飲料も上昇率+7.1%、寄与度0.12%、などなどと書き出せばキリがないほどです。食料や電気は国民生活に欠かせない基礎的な財であり、国民生活安定緊急措置法の規定に基づいて政令を改正して「米穀の譲渡制限」、すなわち、転売を禁止しましたが、こういった価格の安定を目指す政策を推進するとともに、価格上昇を上回る賃上げを目指した春闘の成果を期待しています。
最後に、総務省統計局の小売物価統計を元にした農林水産省資料「小売物価(東京都区部)の推移(総務省小売物価統計)」から引用した コメの小売価格 のグラフは下の通りです。昨年2024年年央くらいまで長らく5キロで2000~2500円のレンジにあったのですが、最近時点では5000円に近づいており、コメの猛烈な価格上昇が見て取れると思います。

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2025年6月19日 (木)

米国ではどの種類の米国人かで死亡率が違う

昨年封切りの近未来SF映画「シビル・ウォー」でどの種類の米国人かで生死を分ける場面があったやに聞き及んでいます。それについて、全米経済調査会(NBER)のワーキングペーパー "Racial Disparities in Mortality by Sex, Age, and Cause of Death" がそういった事実があることを実証しています。まず、論文の引用情報については下の通りです。

続いて、NBERのサイトから論文のAbstractを引用すると下の通りです。

Abstract
Racial differences in mortality are large, persistent and likely caused, at least in part, by racism. While the causal pathways linking racism to mortality are conceptually well defined, empirical evidence to support causal claims related to its effect on health is incomplete. In this study, we provide a unique set of facts about racial disparities in mortality that all theories of racism and health need to confront to be convincing. We measure racial disparities in mortality between ages 40 and 80 for both males and females and for several causes of death and, measure how those disparities change with age. Estimates indicate that racial disparities in mortality grow with age but at a decreasing rate. Estimates also indicate that the source of racial disparities in mortality changes with age, sex and cause of death. For men in their fifties, racial disparities in mortality are primarily caused by disparities in deaths due to external causes. For both sexes, it is racial disparities in death from healthcare amenable causes that are the main cause of racial disparities in mortality between ages 55 and 75. Notably, racial disparities in cancer and other causes of death are relatively small even though these causes of death account for over half of all deaths. Adjusting for economic resources and health largely eliminate racial disparities in mortality at all ages and the mediating effect of these factors grows with age. The pattern of results suggests that, to the extent that racism influences health, it is primarily through racism's effect on investments to treat healthcare amenable diseases that cause racial disparities in mortality.

続いて、論文から Figure 1. All-cause Hazard Rate of Dying by Sex, Race and Age を引用すると下の通りです。

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要するに、Abstractの最後のセンテンスにある "to the extent that racism influences health, it is primarily through racism's effect on investments to treat healthcare amenable diseases that cause racial disparities in mortality." ということなのだろうと思います。ですから、レイシズム、というか、人種的な偏見や差別によって医療を受けられない可能性は決して否定できませんが、レイシズムや人種的な偏見・差別が所得格差を生み出し、その所得格差が医療投資の差をもたらしている可能性も否定できません。死亡率という量的指標とともに、死亡原因という質的な面でも人種的な差がある点がこの論文で差の差(DiD)分析により報告されています。フロントドアが何であれ、バックドアの原因が人種的な偏見や差別にあることは明らかであり、それが現在のトランプ政権により増幅されている可能性が憂慮されます。はい、大いに憂慮されます。

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2025年6月18日 (水)

米国向け自動車輸出が落ち込んだ5月の貿易統計と反動減を示した4月の機械受注

本日、財務省から5月の貿易統計が、また、内閣府から4月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比▲1.7%減の8兆1349億円に対して、輸入額は▲7.7%減の8兆7726億円、差引き貿易収支は▲6376億円の赤字を計上しています。また、機械受注のうち民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から▲9.1%減の9190億円と、3か月ぶりの前月比マイナスを記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

5月輸出額、8カ月ぶり減少 米国向け自動車落ち込む
財務省が18日発表した5月の貿易統計速報によると、輸出額は前年同月に比べ1.7%減の8兆1349億円だった。8カ月ぶりに減少した。主に米国向けの自動車の輸出が落ち込んだ。トランプ米政権が4月に発動した追加関税の影響が広がり始めた可能性がある。
地域別の輸出額は、米国向けが11.1%減の1兆5140億円だった。このうち自動車の輸出額が24.7%減と大きく落ち込んだ。台数ベースでみると3.9%減にとどまっており、輸出価格が下がった影響が大きい。
日本車メーカーが関税の影響を和らげるため、価格を下げたり、価格の低い車種を優先して輸出したりした可能性がある。
米国向けの自動車部品や半導体製造装置などの輸出も落ち込んだ。米国からの輸入額は13.5%減った。対米輸出から同輸入を差し引いた貿易収支は4517億円の黒字で、5カ月ぶりに減少した。
中国向けの輸出は8.8%減の1兆4417億円だった。半導体製造装置や銅、ハイブリッド車(HV)などの輸出額が減った。
世界全体からの輸入額は8兆7726億円と7.7%減った。2カ月連続で減少した。原粗油は輸入数量が3.5%増、輸入額が18.9%減だった。資源価格の下落や円高が輸入額を押し下げた。
米国からの医薬品、中国からのパソコンや石油製品の輸入も増えた。
輸出から輸入を差し引いた貿易収支は6376億円の赤字になった。赤字は2カ月連続となる。
4月の機械受注、9.1%減 3カ月ぶりマイナス
内閣府が18日発表した4月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる船舶・電力を除く民需(季節調整済み)は前月比で9.1%減の9190億円だった。3カ月ぶりにマイナスに転じた。製造業、非製造業ともに前月比でマイナスだった。
基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。QUICKが事前にまとめた船舶・電力を除く民需の市場予測の中央値は9.9%減だった。
内訳をみると、製造業が0.6%減の4566億円だった。17業種のうち、電気機械やはん用・生産用機械など7業種が前月比で減少した。
調査はトランプ米政権による関税措置が発動した4月の受注状況が対象となった。内閣府の担当者は「今月の数字上からは(政策の影響は)確認できない」と説明した。自動車・同付属品は20.3%減だったものの、鉄鋼業は39.9%増と伸びた。
非製造業(船舶・電力を除く)は11.8%減の4708億円だった。「その他非製造業」や金融業・保険業が落ち込んだ。
民需(船舶・電力除く)について毎月のぶれをならした3カ月移動平均は2.2%増でプラスを維持した。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも△8908億円と、△9000億円近い貿易赤字が見込まれていたところ、実績の▲6376億円の赤字はやや上振れした印象です。季節調整済みの系列でも、3-5月の貿易赤字は▲3000-3500億円ですし、5月は▲3055億円の赤字を記録しています。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。固定為替相場制度を取っていた高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいと考えています。それよりも、米国のトランプ新大統領の関税政策による世界貿易のかく乱によって資源配分の最適化が損なわれる可能性の方がよほど懸念されます。カナダで開催されていたG7会合における首脳会談では合意に至らなかったようですし、今後の進展が注目されます。
本日公表された5月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油が数量ベースで+3.5%増、金額ベースで▲18.9%減となっています。エネルギーよりも注目されている食料品は金額ベースで▲3.4%減ながら、輸入総額は▲7.7%減ですので、品目別に見てそれほど減っていないともいえます。特に、食料品のうちの穀物類は数量ベースで+0.5%増、金額ベースでは▲6.8%減となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は数量ベースで▲10.4%減、金額ベースで▲24.2%減を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が数量ベースで+3.8%増となったものの、金額ベースでは▲6.9%減となっています。自動車輸出における数量ベース増の金額ベース減は明らかに、日本のメーカーあるいは輸出商社の方で関税分を負担して自動車価格に上乗せしていないことを表していると考えるべきです。どこまでこういった関税負担がサステイナブルであるかは私には不明です。電気機器も同じく▲3.5%減となっている一方で、一般機械が金額ベースで+3.1%増と伸びを示しています。引用した記事にあるように、「追加関税の影響が広がり始めた可能性」は否定できません。国別輸出の前年同月比もついでに見ておくと、中国向け輸出が前年同月比で▲8.8%減となったにもかかわらず、中国も含めたアジア向けの地域全体では+0.4%増の堅調な動きとなっています。他方で、米国向けは▲11.1%減と大きく落ち込んでいます。ただ、西欧向けは+3.1%増となっています。繰り返しになりますが、今後の輸出については、米国トランプ政権の関税政策次第と考えるべきです。

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続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事では、「市場予測の中央値は9.9%減」とありますが、私が見ている範囲では、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも同じ前月比▲10.0%減でした。実績の▲9.1%減はやや上振れした印象ながら、大きなサプライズはありませんでした。いずれにせよ、3月統計で前月比+13.0%像を記録した後の4月統計の▲9.1%減ですから、先月の大幅増の反動と考えるべきです。ですので、記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いています。季節調整済みの前月比で見て、製造業が▲0.6%減であった一方、船舶・電力除く非製造業は▲11.8%減となっています。1~3月期のコア機械受注は前期比で+3.9%増の2兆7632億円でしたが、4~6月期見通しでは▲2.1%の減少に転ずると見込まれていますので、4月統計はそれに沿った動きと見ることも出来ますが、トランプ関税次第では下振れする可能性も否定できません。
日銀短観などで示されたソフトデータの投資計画が着実な増加の方向を示している一方で、機械受注やGDPなどのハードデータで設備投資が増加していないという不整合があり、現時点ではまだ解消されているわけではないと私は考えています。人手不足は近い将来にはまだ続くことが歩く予想されますし、DXあるいはGXに向けた投資が盛り上がらないというのは、低迷する日本経済を象徴しているとはいえ、大きな懸念材料のひとつです。かつて、途上国では機械化が進まないのは人件費が安いからであるという議論が広く見受けられましたが、日本もそうなってしまうのでしょうか。でも、設備投資の今後の伸びを期待したいところですが、先行きについては決して楽観はできません。特に、繰り返しになりますが、米国のトランプ政権の関税政策や中東の地政学的リスクなどにより先行き不透明さが増していることは設備投資にはマイナス要因です。加えて、国内要因として、日銀が金利の追加引上げにご熱心ですので、すでに実行されている利上げの影響がラグを伴って現れる可能性も含めて、金利に敏感な設備投資には悪影響を及ぼすことは明らかですどう考えても、先行きについては、リスクは下方に厚いと考えるべきです。

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2025年6月17日 (火)

産労総合研究所「2025年度 決定初任給調査」中間集計やいかに?

先週木曜日の6月12日に、産労総合研究所から「2025年度 決定初任給調査」中間集計の結果が明らかにされています。62.7%の企業が初任給を引き上げたと回答しています。まず、産労総合研究所のサイトから中間報告の結果を2点引用すると以下の通りです。

2025年度 決定初任給調査 中間集計
  • 62.7%の企業が初任給を「引き上げた」
  • 大学卒【一律】23万6,868円 4.11%UP/高校卒【一律】19万7,459円 4.79%UP

続いて、『賃金事情』2025年6月5日号から 2025年度の初任給の改定状況 を引用すると以下の通りです。

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見れば明らかですが、初任給を引き上げた62.7%の企業の理由のうち、「人材を確保するため」が71.9%、「在籍者のベースアップがあったため」が56.3%に上っています。逆に、「現在の水準でも十分採用できるため」33.3%などの理由で初任給を据え置いた企業は29.4%を占めます。メディアなどで広く報じられているように、初任給を30万円に引き上げた企業もあり、初任給の動向は注目されるところです。

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2025年6月16日 (月)

今週は暑そう

今日まで、惰性で長袖を着用していましたが、今週は暑そうです。明日からはもっと軽装にしたいと考えています。でも、先日、軽装の半袖半ズボンにしたところ、「ふざけている」とディスる同僚教員がいたりしたので、その方とは顔を合わせないように心がけたいところです。
下の画像はウェザーニュースのサイトから週刊天気予報を引用しています。

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«失業は常に健康を悪化させるわけではないのか?