2017年11月18日 (土)

今週の読書は経済関連の本も多く計9冊!

今週の読書は経済や経営関係も多く、また、正面切っては健康問題を取り上げながらも、実は経済社会的な不平等とか貧困が健康の背景に存在する、といった指摘の鋭い本を含めて計9冊です。私の読書のベースは少し離れた図書館に、スポーツサイクリングの趣旨も含めて、週末に自転車で乗り付けて本を借りる、というスタイルですので、先週末のように3連休がいいお天気だったりすると、こんなに数を読むハメになったりします。逆に、今日のように土曜日が雨がちだと、来週の読書はショボいものになりかねません。

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まず、白井さゆり『東京五輪後の日本経済』(小学館) です。著者はエコノミストであり、1年半ほど前まで日銀政策委員を務めていたんですが、白川総裁のころの政策委員でしたので黒田総裁になってから金融緩和策に賛成票を投じないケースもあったりして、再任はされませんでした。もともとは国際通貨基金(IMF)のエコノミストなどをしていて、私の専門分野である開発経済学や政府開発援助の分野にも詳しく、私も何度かお話した記憶があるんですが、今はすっかり金融専門家のような立場で日銀政策議員経験者としての価値をフルに活かそうという姿勢をお持ちのようで、それはそれでいいことではないかと思います。ということで、ほぼ1年前にこのブログでも取り上げた前著の『超金融緩和からの脱却』が、その読書感想文でもお示ししましたが、日銀事務局から提示された日銀公式文書をきれいにエディットすれば、前著のような仕上がりになる、という意味で、黒田総裁の指揮下にある現在の日銀金融政策についての適確な解説書になっていた一方で、本書については、よくも悪くもエコノミストとしてのご自分の見方が示されているような気がします。例えば、本書の冒頭、黒田総裁の下での日銀の異次元緩和で景気がよくなった点については、不動産はアパート建設などでバブルっぽい雰囲気を感じつつも、株価についてはピーク時に遠く及ばないのでバブルではない、と直感的な判断を下しています。そうかな、という気もします。そして、これも根拠をお示しになることなく、東京オリンピック・パラリンピックの開催前に金融正常化が始まる、と予言しています。これもそうかもしれません。少なくとも、テイパリングは始まるような気もします。他の論点もいくつか拾おうと試みましたが、どうも雑駁な内容に終止している気がして、前著との差を感じずにはいられませんでした。まあ、その昔の日曜早朝のテレビ番組の「時事放談」くらいの内容であると、期待値を高くせずに読み始めるにはいいかもしれません。

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次に、八代尚宏『働き方改革の経済学』(日本評論社) です。著者は、私の先輩筋に当たる官庁出身の経済学者なんですが、何と申しましょうかで、今ごろこんなネオリベラリズム=新自由主義的な労働市場観を露わにした経済書はお目にかかれないような気がします。私はマルクス主義に見切りをつけて長いんですが、それにしても、ここまでむき出しで企業の論理に従った労働観もあり得ないような気がします。基本的に、労働市場改革は雇用の流動性をさらに増進させるものであるというのは判っていますが、本書ではもっぱらそれは資本の論理で企業の利益を高めるためのもののようです。例えば、女性雇用の促進や女性の管理職への登用にしても、女性の能力を活かし女性の生産性を高め幸福感の増進を図るのではなく、本書の著者の考えでは、企業の意思決定に偏りの内容にするためらしく、まあ、男性経営陣に彩りを添えるための方策のような位置づけなのかもしれません。何よりも、景気変動に対する雇用の調整という企業の論理が丸出しにされており、景気変動の際に雇用を守って労働者のスキルの低下を防止するという観点は本書にはまるでありません。特に私が懸念するのは、単なる景気循環における景気後退の期間だけでなく、何らかのショックの際に雇用をどうするかです。本書の著者のように企業の論理を振り回せば、雇用者を簡単に解雇できる制度がよくて、再雇用の際は政府の失業対策や職業訓練でもう一度スキルアップを図ってから企業に雇用されることを想定しているんではないかとすら思えてしまいます。いわゆる長期雇用の下でOJTによる企業スペシフィックなスキルの向上はもう多くを望めないにしても、企業は労働者のスキルアップにはコストをかけずに即戦力の労働者を雇用し、そして、景気が悪化すると、これまた、できるだけコスト小さく解雇できる、という点が本書の力点だろうと思います。そういった企業の論理むき出しの雇用観に対して、労働者のスキルを守り企業とともに労働者が共存共栄できる雇用制度改革の必要が求められているんだと私は思います。それにしても、繰り返しになりますが、企業の論理丸出しのレベルの低い経済学の本を読んでしまった後味の悪さだけが残りました。その昔に、消費者金融の有用性を論じたエコノミストもいましたが、決して消費者金融会社の利益を全面に押し出した論理ではなく、借りる方の流動性制約の緩和などの観点も含まれていて、一見するとそれらしく見えたものですが、本書については労働サイドの利益については、まったく省みることもなく、すべての労働市場改革を企業の利益に向けようとする意図があまりに明らかで、私にはうす気味悪くすら見えます。

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次に、テオ・コレイア『気まぐれ消費者』(日経BP社) です。著者はコンサルタント会社であるアクセンチュアの消費財・サービス業部門の取締役であり、30年超のキャリアがあるそうです。英語のタイトルは The Fluid Consumer であり、邦訳タイトルはかなり意訳しつつもよく意味を捉えているような気もします。なお、タイトルでは "Fluid" を「気まぐれ」と訳し、本文中では「液状」の語を当てています。2017年にドイツで出版されています。ということで、デジタル時代の消費者へのマーケティングについて論じていて、その特徴として、ブランドに対する忠誠が低い点を強調し、何かあれば、すぐにブランドを乗り換える、と主張しています。その原因を精査せずに論を進めていて、それはそれで怖い気もするんですが、インターネットが発達したデジタル時代に、ブランド・ロイヤルティの低い消費者となった大きな原因は情報の過多であろうと私は考えています。すなわち、消費の選択肢が多くなり過ぎているわけです。でも、この消費の選択肢の多さについては個別の企業ではどうすることも出来ませんから、まあ、何か政府の産業政策で強引にブランドの集約が出来ないわけでもないんでしょうが、取りあえず、企業に対する経営コンサルタントとして、ブランドン・ロイヤルティの低い消費者への対策を考えているんだろうという気がします。ただ、デジタル時代の消費者については、リアルな店舗での買い物からネット通販へのシフトを考えると、選択肢の大幅な増加に加えて、ロジスティックへの過度の依存も観察されると私は考えています。すなわち、消費者の選択肢が広がり、今までになかった消費生活が楽しめる一方で、運輸会社の負担が高まり、運輸会社はそれを運転手個人個人に転嫁している気がします。それが、アマゾンが大儲けをして、ヤマト運輸が価格改定に熱心で、運転手への未払い給与がかさんでいる原因のひとつではないでしょうか。そして、もうひとつの問題は、消費のための所得が不十分な水準に低下して行く可能性です。リアルな店舗で在庫を維持するコストよりも、大規模な倉庫で在庫を集中管理してロジスティック会社に輸送を請け負わせる方がコストが安いゆえにネット通販が繁盛しているわけですが、逆から見て、コストが低いということは賃金支払いが小さく消費者の所得が低くなってしまう可能性があるわけで、コストを切り詰めて消費の原資を小さくするという形で、現在の日本で見られるような合成の誤謬がネット時代には大きくなる恐れがあります。

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次に、ダニエル・コーエン『経済成長という呪い』(東洋経済) です。著者はフランスのパリ高等師範学校経済学部長であり、『ル・モンド』論説委員も務めていますが、エコノミストとしての基本はマルクス主義経済学者であり、私は何冊か読んでブログの読書感想文にもアップした記憶があります。フランス語の原題は Le Monde Est Clos et le Désir Infini であり、2015年の出版です。直訳すれば「世界は閉じており、欲望は無限」ということになります。邦訳タイトルは私にはややムリがあるような気もします。今まで私が読んだこの著者の本は作品社から出ているケースが多かった気がしますが、この本は東洋経済という経済のシーンではかなりメジャーな出版社からの発行です。ということで、マルキストにしてはかなり観念的な叙述が多い気もしますが、第1部と第2部と第3部に分かれており、第1部で大雑把な経済史をおさらいした後、第2部では理論的な側面も含めて経済学的な概括を行いつつ、最後に結論に至らず悲観的な結末が提示される、という構成になっているように私には見受けられました。テーマはポスト工業社会の進歩の方向であり、ケインズが予言したような1日3時間労働の社会がやって来そうもない中で、先進国では成長が大きく鈍化し、これから先の生活がどこに向かうのか、という点が関心の中心になります。私も同意しますが、本書ではいわゆるデジタル革命がポスト工業社会の画期的な生産性向上や高成長をもたらさなかったのは、どうやら事実ですし、先進国の多くのエコノミストが長期停滞 secular stagnation を話題にしているのも確かです。私にはよく判らないんですが、成長を諦めて何らかの別の価値観を基にした生活に「大転換」すべき、ということなんでしょうか。本書の著者は、定住と農業の開始といわゆる産業革命を2つのカギカッコ付きの「大転換」と考えているようですし、次の3番目の「大転換」はマルクス主義的な社会主義革命だったりするんでしょうか。それとも、デジタル革命ですらなしえなかった「大転換」が、とうとう、AIやロボットによるシンギュラリティで実現されるんでしょうか。そこまで本書の著者は踏み込んでいませんが、本書のような観念的で結論を明示することなく、悲観的っぽい方向性だけを示す本は日本人が大好きな気もします。

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次に、マイケル・マーモット『健康格差』(日本評論社) です。今週の読書ナンバーワンです。著者は英国生まれの研究者であり、世界医師会長を務めたり、女王から叙爵されたりしているエスタブリッシュメントの医師です。英語の原題は The Health Gap であり、邦訳タイトルはほぼほぼ直訳です。2015年の出版です。一応、医学博士が書いた健康格差に関する論考ながら、ほとんど経済書と考えてもよさそうな気がします。すなわち、本書でも強調されているように、決して病原菌やウィルスへの対処も健康維持に必要であり、銃刀などの規制を強化すれば死者やけが人が減る、といった事実を否定するつもりは毛頭ありませんが、健康に関しては経済社会的なバックグラウンドが重要である点をもっと我々は知るべきだと強く強く実感しました。開発経済学を専門分野とするエコノミストとして、大いに共感する部分がある本でした。喫煙はもちろん、過度の飲酒や運動不足などは健康を損ねるという認識は、かなり一般に広まっていることと思いますが、じつは、禁煙し飲酒を適度な範囲でおさめ、栄養バランスのよい食生活とストレスの少ない職業生活・家庭生活を送り、適度な運動を定期的に行うためには、それが途上国の国民ではなく、先進国においてであっても、それなりの所得の裏付けもしくは何らかの補助がなければ不可能だという事実から目を背けるべきではありません。その意味で、健康格差のバックグラウンドには所得の格差が存在し、あるいは、不健康の裏側には貧困が潜んでいると考えるべきです。もちろん、本書の著者は所得の格差を許容しないとは主張しませんが、所得が不平等であっても健康状態に関しては格差のない政策を探るべきであると強調しています。そして、本書の表紙見開きにあるように、世界中を巡り回っていろいろな健康に関する実例を収集し、判りやすく本書でひも解いています。エコノミストとしては、健康と富の因果関係について、p.111 で展開されている議論、すなわち、健康は富への投資である方が、その逆よりも方程式でモデル化しやすい、というあまり高尚ではないイデオロギーを少し恥ずかしく思わないでもないんですが、グレート・ギャッツビー曲線による貧困の世代間の継承、失業の健康への悪影響などなど、経済学を本書では後半に応用している点も忘れるべきではないと考えています。最後に、気になる点をひとつ。著者のグループは英国ロンドンのホワイトホール研究で、数多くの公務員を対象にした健康調査を実施しており、やはり裁量が大きい上級公務員は健康になりやすいバイアスがあると確認していますが、逆に、私のように出世できなかった公務員は裁量が小さい分、もっと出世した上級公務員よりも寿命が少し短かったりするんでしょうか?

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次に、スヴェン・スタインモ『政治経済の生態学』(岩波書店) です。著者は米国の政治学者なんですが、かなり経済学の分野でも有名で、その際は、公共経済学ということになるのかもしれません。実は、私が2008-10年に地方国立大学の経済学部教授として出向していた折に同僚だった財政学の先生との共著がこの著者には何本かあります。何と申しましょうかで、その同僚財政学の先生が准教授から教授に昇格なさる際の資格審査委員を、誠に僭越ながら、私が末席を占めていたものですから、その先生から提出された、か、あるいは、私か誰かが独自にネットで調べたか、の業績リストにあったような気がします。官界から学界に出向の形で経済学部の教授ポストに就いて、准教授の先生の教授昇格の資格審査をするなんて、今から考えると、誠に僭越極まりなく恥ずかしい限りです。本題に戻って、本書の英語の原題は The Evolution of Modern State であり、2010年の出版です。ということで、大きく脱線してしまいましたが、本書は英語の原タイトル通り、進化生物学をスウェーデン、日本、米国の3国に応用し、制度歴史学派の立場から政府や公共経済などを解き明かそうとの試みです。どちらかといえば、私はその試みは成功しているとも思えないんですが、少なくとも、学術初夏ならとても平易で判りやすい内容です。大雑把に、スウェーデンは北欧の高福祉国であり、その財源の必要性から高負担でもあると考えられています。そして、米国はその逆で、政府が社会保障により格差是正や最低限の国民生活を保証するのではなく、自己責任で生活するように求めるワイルドな国であり、日本はその中間という考えは必ずしも成立しませんが、税金を社会福祉ではなく土木と建設で国民に還元する土建国家、と本書ではみなされています。日本の高度成長期から続く二重経済とその解消に関する見方は秀逸であり、バブル経済崩壊後の1990年台の「失われた10年」についても的確に分析されており、まさに、進化生物学的な解明が判りやすくなされています。ただし、私の核心なんですが、本書でも、米国はもちろん、日本もスウェーデンにはなれない、という点は忘れるべきではありません。進化論的に日本とスウェーデンはもう分岐してしまったんですから、日本は独自に経済危機からの脱却や政府債務の解消などの問題解決の道を探らねばなりません。スウェーデンがどこまで参考になるかについては、大いにポジティブに考えるエコノミストもいますし、私も何人か知っていますが、私自身は疑問であると受け止めています。最後に、学術書なんですから、出版社のwebサイトに索引とともにpdfで置いてあるとはいえ、本文や注にある参考文献のリストは欲しかった気がします。

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次に、ウェンディ・ブラウン『いかにして民主主義は失われていくのか』(みすず書房) です。著者は米国カリフォルニア大学の旗艦校であるバークレイ校の研究者であり、政治学者です。英語の原題は Undoing the Demos であり、2015年の出版です。なお、訳者あとがきで Demos とは「『市民』『人民』あるいは『民衆』」とされているんですが、私の不確かな知識によれば、むしろ、家族よりは大きくて部族くらいの自治単位ではなかったかと記憶しています。違っているかもしれません。ということで、経済のひとつの考え方だと思われてきた新自由主義=ネオリベラリズムが民主主義を破壊するか、という論考です。その中心論点は、要するに、すべてを経済に還元する、というのが著者の結論のように見受けましたが、基本となるのがフーコーの考え方ですので、まあ、何と申しましょうかで、フランス的なポスト構造主義の影響なども残っており、非常に難解な部分がいくつか見受けられ、政治学という私の専門外の領域でもあり、必ずしも正しく解釈したかの自信はありません。マルクス主義の考えも色濃く反映されています。私のような開発経済学をひとつの専門とするエコノミストには、新自由主義といえば、ワシントン・コンセンサスが思い浮かびますし、一般的な経済学にとっても、規制緩和などで政府の市場介入を縮減するという意味で、あるいは、まったく逆に見えるものの、知的財産権の強烈な保護という別の経済政策も含めて、リバタリアンに近いような経済政策を、というか、経済政策の欠落を主張する考え方です。本書の例をいくつか引けば、教育投資で教養教育=リベラル・アーツから職業的な実務教育を重視してリターンを考えたり、人的資本として人間を稼ぎの元と考えたりするわけです。私はかなりの程度に本書の考えを理解するんですが、ひとつだけ大きな疑問があり、本書では新自由主義がいかに民主主義を破壊するかという点はいいとして、どのようなルートで破壊するかについて、ガバナンスと法の秩序と人的資本及び教育の3点を柱と考えているようなんですが、私は新自由主義的な経済政策の帰結としての格差の拡大が民主主義を破壊する点も考慮に入れるべきだと考えています。この点がスッポリと抜け落ちているのが不思議でなりません。

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次に、川端基夫『消費大陸アジア』(ちくま新書) です。著者は関西学院大学の研究者であり、アジア市場論などの専門家です。経済学というよりは経営学なのかもしれません。アジアでの工場立地などの生産活動ではなく、日本企業をはじめとするアジア市場での消費財やサービスの提供をテーマとしています。マクドナルドのようなマニュアルに基づいた世界中すべての国や地域での同一の消費財やサービスを提供する標準化戦略=グローバル戦略とともに、世界各国の実情に適合させた適応化戦略ローカル戦略を提唱しています。ですから、インドネシアでは日本市場におけるスポーツ時の喉の渇きを癒やす飲料としてのポカリスエットの販売戦略ではなく、デング熱に罹患した際などに準医療的な目的での渇きを緩和する飲料としての販売戦略での成功などの実例が本書には集められています。私も倅どもが小さいころに一家そろってインドネシアはジャカルタに3年間住まいし、ジャカルタに限らず、シンガポールやタイやマレーシアやと、東南アジア一帯を見て回った記憶がありますので、とても共感しつつ読み進むことが出来ました。マクドナルドの例を敷衍すると、年齢がバレてしまうものの、マクドナルドが京都に出来た、というか、京都で流行り出したのは、私が大学生になってからくらいだと記憶しており、同志社大学の斜向かいの今出川通り沿いのマクドナルドによくいったことを覚えていて、今では日本はマクドナルドは中高生が気軽に入れて食欲を満たすことのできる場でしかありませんが、たしかに、所得水準の違うインドネシアではマクドナルドに行くというのは、記念日とまではいわないにしても、ちょっと気取った出来事だと受け止められていた気がします。また、本書にもありますが、サンティアゴで外交官をしていた折にランチで行った日本食のお店で、ラーメンは明らかにスープの一種と現地人に認識されていたのも記憶しています。ですから、日本とは明らかに異なる意味付けを持って、日本と同じ消費財やサービスが受け入れられている、という実感があります。また、発展途上国から新興国に進化したアジア諸国で、中間層の拡大が広範に観察され、それに伴う消費活動の変化も実感できるのも事実です。私は経営には疎くて、どうすれば現地で受け入れられて売れるのかは判りかねますが、本書で指摘するように、確かに、日本とはビミョーに異なる意味づけでローカライズすれば、それにより受け入れられる余地は大いに広がるのだろうという点は理解できます。

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最後に、秋吉理香子ほか『共犯関係』(角川春樹事務所) です。5編の短編、もちろん、「共犯」をキーワードにした短編が収録されています。すなわち、秋吉理香子「Partners in Crime」、友井羊「Forever Friends」、似鳥鶏「美しき余命」、乾くるみ「カフカ的」、芦沢央「代償」です。なかなかの人気作家の競作です。中でも、3番目の似鳥鶏「美しき余命」が出色です。両親と妹を交通事故で亡くし、自身もその交通事故で余命のハッキリした障害、というか、病気に罹患した中学生の少年を主人公に、その中学生を引き取った親戚一家を舞台にしています。余命がハッキリしていた時には、とても親切で優しかった親戚一家なんですが、少年が奇跡にあって病気から回復したら、徐々に熱狂が覚めた、というか、最後は手のひらを返したようになってしまい、ラストはよほど鈍感でない限り読者にも想像できるものの、なかなか衝撃の締めくくりです。ほかの作品も、粗削りだったり、ミステリというよりはホラーだったりしますが、なかなか楽しめます。すなわち、W不倫が思いがけないラストで終る「Partners in Crime」、夏祭りの重要な役目をほっぽり出して少女が少年とともに街を出てしまう「Forever Friends」、高校時代の友人と再会した挙句に交換殺人を持ちかけられるホラー仕立ての「カフカ的」、自信作を書き上げたミステリ作家が妻に読んでもらうと意外な事実が判明する「代償」、といったラインナップです。

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2017年11月17日 (金)

勝手にランキングの年賀状に関する調査結果やいかに?

例年通り、2週間ほど前の11月1日から年賀状が発売され始めています。私は減少傾向が大きいとはいえ、毎年年賀状は出していますが、11月14日付けで勝手にランキングから年賀状に関する調査結果が明らかにされています。週末前の軽い話題として簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフは、年賀状を出す頻度について問うた結果について、勝手にランキングのサイトから引用しています。常識的に、毎年出しているが75.8%に上っています。私も毎年出しています。ただ、今はネット社会ですので、フラッシュを添付してメールで出したりするサービスが無料で提供されていたりして、一定数は年賀状を出さない人がいるのは理解します。

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上のグラフは、年賀状を出す枚数について問うた結果について、勝手にランキングのサイトから引用しています。せいぜい、20-30枚から50枚くらいが限度という気もします。私自身は30枚くらいではなかろうかと思います。その昔は、小さいころの子供達の写真を入れた年賀状を印刷する最低ロットが100枚だったりしたような気もしますが、今では、お手軽に自宅のプリンタで小ロットの印刷が可能になっていたりします。そろそろ、私も12月に入ったら年賀状を買い求めて、正月向けのめでたい画像を探そうと考えています。

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2017年11月16日 (木)

米国の雇用に関するピュー・リサーチ・センターの世論調査結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、私がよく参照している米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから11月7日付けで Views of Job Situation Improve Sharply, but Many Still Say They're Falling Behind Financially と題して米国の雇用に関する世論調査結果が明らかにされています。米国のトランプ政権に対する厳しい見方も示されており、こういった海外のリポートに着目するのはこのブログの特徴のひとつですし、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Public's views of local job availability are more positive than at any point since 2001 と題するグラフを引用しています。要するに、職探しの難易度を時系列で追っています。タイトル通り、最近時点ではとうとう「職は豊富にある」が50%と、2009年半ばから一貫して上昇を見せ、「職が探しにくい」の42%を上回りました。2001年初頭以来ということのようです。従って、量的に職はかなり見つけやすくなっているようです。

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続いて、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Nearly half say their incomes are 'falling behind' the cost of living と題するグラフを引用しています。量的に職が見つけやすいのであれば、次の観点は質的にお給料がどうか、ということになりますが、まだまだ最近時点でも、生計費に比べてお給料が「立ち遅れている」が半分近くあります。でも、まだまだ低い比率ながら、徐々に生計費よりお給料の方が「伸びが高い」の割合も増えつつあります。

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続いて、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから About half of the public says Trump's economic policies have had no effect と題するグラフを引用しています。タイトル通りに、ほぼ半数の回答者がトランプ政権の経済政策の影響力を否定しているわけですが、経済政策により「改善」したか、「悪化」したかについて回答者の属性別に見ると、人種別では、白人は「改善」の方が多い一方で、黒人やヒスパニックは「悪化」の方が割合高く、また、所得階級別では、高所得ほど「改善」が多く、低所得ほど「悪化」割合が高くなっていて、要するに、格差拡大の感覚が強まっていると私は受け止めています。

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最後に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Public perception of economic conditions returns to mid-2000s levels を引用しています。米国経済の状態について、excellent と good を示しています。クリントン政権の8年間はグングンこの比率が上昇を示しましたが、ブッシュ政権の2期8年は波あるものの、最後はリーマン・ショックやその後の金融危機のためにボロボロになった印象です。オバマ政権の8年間は徐々に盛り返したものの、クリントン政権期の上昇気流には乗れませんでした。そして、トランプ政権は現時点では軽く右肩下がりの印象でしょうか。今後は期待出来るのか、出来ないのか。日本経済にとっても大きな関心事項かもしれません。

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2017年11月15日 (水)

7-9月期GDP速報1次QEは7四半期連続のプラス成長を記録!

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.3%、年率では+1.4%を記録しました。外需主導ながら、+1%をやや下回るといわれている潜在成長率を超えた高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月期GDP、年率1.4%増 外需がけん引、個人消費は減少
内閣府が15日発表した2017年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.3%増、年率換算では1.4%増だった。プラスは7四半期連続。輸出が増え、輸入が減り外需が伸びた。設備投資も堅調だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.4%増で年率では1.5%増だった。
生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.6%増、年率では2.5%増だった。名目は2四半期連続でプラスだった。
実質GDPの内訳は、内需が0.2%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.5%分のプラスだった。
項目別にみると、個人消費が0.5%減と、7四半期ぶりにマイナスだった。天候不順で衣料品などへの支出が低迷した。
輸出は1.5%増、輸入は1.6%減だった。米国向け自動車やアジアへの半導体などが伸びた。国内需要の低迷で輸入量が減少した。
設備投資は0.2%増と、4四半期連続でプラスだった。企業収益や景況感の改善を背景に企業の設備投資需要が高まった。住宅投資は0.9%減。公共投資は2.5%減。民間在庫の寄与度は0.2%のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.1%だった。プラスは5四半期ぶり。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.5%のプラスだった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/7-92016/10-122017/1-32017/4-62017/7-9
国内総生産GDP+0.2+0.4+0.3+0.6+0.3
民間消費+0.4+0.1+0.4+0.7▲0.5
民間住宅+2.9+0.3+0.9+1.1▲0.9
民間設備▲0.1+1.9+0.5+0.5+0.2
民間在庫 *(▲0.5)(▲0.2)(▲0.2)(+0.0)(+0.2)
公的需要+0.2▲0.5+0.0+1.6▲0.6
内需寄与度 *(▲0.1)(+0.1)(+0.1)(+0.9)(▲0.2)
外需寄与度 *(+0.4)(+0.3)(+0.1)(▲0.2)(+0.5)
輸出+2.1+3.0+1.9▲0.2+1.5
輸入+0.1+1.2+1.4+1.4▲1.6
国内総所得 (GDI)+0.0+0.1▲0.1+0.7+0.4
国民総所得 (GNI)▲0.1+0.1+0.2+0.7+0.6
名目GDP+0.0+0.5▲0.0+0.6+0.6
雇用者報酬 (実質)+0.7▲0.2+0.3+1.0+0.5
GDPデフレータ▲0.1▲0.0▲0.8▲0.4+0.1
内需デフレータ▲0.8▲0.3+0.0+0.3+0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7~9月期の最新データでは、前期比成長率が7四半期連続でプラスを示し、黒い外需(純輸出)が大きなプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前期比成長率が+0.4%、年率+1.5%でしたので、やや下回ったとはいえ、ほぼジャストミートに近い気がします。7四半期連続のプラス成長は、少なくとも上のグラフでは現れませんので、10年振りよりもっと前なんだろうと思います。というか、私の目で統計表を確認したところ、1999年4~6月期から2001年1~3月期の足かけ3年8四半期連続でのプラス成長、ただし、プラス・ゼロ成長を含む、というのが見つかりました。私のことですから、ひょっとしたら見落としがあるかもしれませんが、たぶん、この期間以来の7四半期連続でのプラス成長なんではないかと思います。消費がマイナスで、その影響もあって内需がマイナスとなっている一方で、外需でプラス成長を確保している姿が示されています。従って、私の想像では、メディアの論調では、特に現在のアベノミクスを批判しようという意図があれば、4~6月期の内需主導成長が7~9月期には続かずに外需主導になった、と批判すればいいわけですし、逆に、アベノミクスを擁護しようとすれば、4~6月期と7~9月期をならして見れば、ということになるんではないかという気がします。ですから、何とでも評価できそうですし、例えば、証券会社の債券販売の営業マンであれば、前者のポジション・トークをして、金利は上がらず債券価格は上昇する、という営業活動も出来ますし、逆に、株式の営業マンなら、後者のならして見て日本経済は好調、という営業トークも出来そうです。ただ、7四半期連続でのプラス成長は日本経済の堅調な動きを反映していることは間違いなさそうです。消費はマイナスでしたが、引用した記事にもある通り、基本は、長雨や台風などの天候要因と私も考えています。というのも、消費の財別をもう少し詳細に見ると、減少しているのはサービスと耐久消費財であり、衣料品をはじめとする半耐久財と食料などの非耐久財は増加を示しています。急に消費が全体として冷え込んだわけではありませんし、ボーナスも増えそうですし、さらに、後で見るように、マクロでの所得のサポートはあると考えるべきです。ですから、ボーナス要因も含めた可能性として、10~12月期には消費が大きな増加を示す可能性があり、これまた「ならしてみれば」、ということになるかもしれません。

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上のグラフは、上のパネルでは実質の雇用者報酬の推移を、下は非居住者家計の購入、すなわち、いわゆるインバウンド消費の推移について、それぞれプロットしています。毎月勤労統計などを見る限り、マイクロな1人当たりの賃金についてはなかなか上昇の気配が見られないんですが、1人当たり賃金に雇用者数を乗じたマクロの雇用者報酬は着実に増加を示しています。上のグラフに見られる通りです。1人当たり賃金がそれほど増加していないわけですから、雇用者数の方が増加していることになります。私の見方としては、もちろん、人数ベースで雇用者数が増加している一方で、雇用の質として非正規雇用ではなく正規雇用の増加がマクロの雇用者報酬の増加に寄与しているように受け止めています。他方、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったインバウンド消費は最近時点でかなり伸び悩みを見せているのが読み取れます。

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最後のグラフは上の通り、2000年以降の経常収支と経常収支の対GDP比の推移です。2011年の震災とそれに伴う原発停止に加え、国際商品市況における石油価格の上昇などから、一時、経常収支は赤字を計上していたんですが、最近時点の7~9月期には4%台半ばを記録しており、サブプライム・バブルの崩壊前の2007年くらいの水準に近づいています。1990年代半ばの米国クリントン政権期に日米包括協議に引っ張り出された私としては、やや懸念が募ります。

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2017年11月14日 (火)

この冬のボーナスは増えるのか?

先週のうちに、例年のシンクタンク4社から冬季ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因が作用しますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。ついでながら、支給総額に関する見通しも可能な範囲で併せて収録しています。特に、第一生命経済研のリポートは、来年度の賃金見通しまで幅広く言及してありましたので、超長めに取っています。なお、その他の機関についても、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。

機関名民間企業
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研37.3万円
(+0.8%)
73.1万円
(+3.7%)
今冬の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+0.8%と年末賞与としては3年ぶりのプラスとなる見込み。
(略)
賞与支給総額は、同+2.9%増加する見込み。一人当たり支給額の増加は小幅ながら、支給労働者数が引き続き堅調に増加することが主因。
第一生命経済研37.3万円
(+0.8%)
n.a.増加が予想されるとはいえ、伸び率自体はそれほど高いわけではない。物価上昇率を考慮した実質賃金でみるとゼロ近傍の推移が続くものと思われる。17年度後半の景気も引き続き好調に推移する可能性が高いが、それはあくまで輸出の増加を背景とした企業部門主導の回復になるだろう。
賃金の回復が実現するのは18年度と予想している。17年の春闘は、物価が下落し企業業績も伸び悩んだ16年の結果を反映したことで物足りない結果に終わったが、18年の春闘では、物価が上昇し、企業収益も好調な17年の経済状況をベースに交渉が行われる。18年の春闘賃上げ率は17年対比で上昇する可能性が高いだろう。また、17年度の好調な企業業績を反映して18年のボーナスは夏・冬とも増加が予想される。18年については、物価上昇を上回る賃金増加が実現するとみられ、実質賃金も改善するだろう。遅ればせながら家計部門への景気回復の波及が進むことが期待できる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング37.2万円
(+0.6%)
72.2万円
(+2.4%)
2017年冬の民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)のボーナスは、前年比+0.6%と小幅ながら3年ぶりに増加すると予想する。内外需要の回復を背景に企業業績の拡大が続いていることが押し上げ要因となる。
雇用者数の増加が続いており、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数も増加が見込まれる。冬のボーナスの支給労働者数は4,288万人(前年比+2.4%)に増加し、支給労働者割合も84.9%(前年差+0.1%ポイント)に上昇しよう。また、ボーナスの支給総額は16.0兆円(前年比+3.0%)に増加する見通しである。夏に続いて冬も支給総額が増加することは、個人消費にとって追い風となるだろう。
みずほ総研37.4万円
(+1.1%)
78.9万円
(+3.5%)
2017年冬の民間企業の一人当たりボーナス支給額を前年比+1.1%増と予想している。冬季ボーナスとしては3年ぶりに増加する見込みだ。
(略)
支給対象者についても、人材確保のための正社員化や非正社員の待遇改善の動きを受けて、増加が続くとみられる。実際、2017年入り後はパートタイム比率が低下傾向にあり、正社員化の動きが進んでいるようだ。その結果、支給総額(民間企業)は、前年比+3.6%と比較的高い伸びを見込んだ。
(略)
民間企業・公務員を合わせた冬季ボーナスの支給総額は、前年比+3.6%と前年(同+2.1%)から大きく伸びが高まるだろう。冬としては2014年以来の伸びとなり、当面の個人消費を下支えするとみている。

ということで、今冬のボーナスの支給額は、3年振りに1人当たり支給額が増加するとともに、支給対象者も増加し、従って、支給総額はかなりの増加を見せると見込まれています。ただし、上のテーブルのヘッドラインにはうまく取り込めなかったんですが、大手企業については伸び悩みないし悪化すら予想されている一方で、中堅企業や中小企業では堅調と見込まれています。どうしてかといえば、大企業ではに海外経済等の不透明感や円高の影響で伸び悩んだ昨年2016年の企業業績の結果が反映された一方で、中堅・中小企業では引き続き好調な企業業績と人手不足感の強まりとを背景に冬のボーナスも明確な増加を示すものと期待されています。従来、大企業ほどボーナスがいいとの見方もあったんですが、少なくとも、今冬のボーナスの前年からの変化については、大企業で伸び悩む一方で、中堅・中小企業では好調、という結果が出るように予想されています。そして、このボーナス支給の増加は少なくとも当面の消費をサポートするものと期待されています。もちろん、いわゆる恒常所得仮説からすれば、ボーナスは恒常所得の外数であって、消費に対しては大きな影響を及ぼすものではない、と考えられていますが、さはさりながら、なかなか賃金が上がらない中でボーナスが増えれば財布の紐が緩むのは当然だという気がします。
下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。最近時点では、ボーナスだけでなく毎月のお給料も同じ傾向ではないかという気がしますが、1人当たりの支給額はそれほど大きく増加しないんですが、正社員化の進展や非正社員の待遇改善などにより支給対象者が増加する寄与が大きくなっており、マイクロな雇用者あたりの賃上げやボーナスの増加はやや伸び率が低いものの、マクロの支給総額はかなりの増加を示すようになっています。

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2017年11月13日 (月)

企業物価(PPI)は国内物価の前年同月比上昇率が3%を超えて拡大!

本日、日銀から10月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計からやや上昇幅を拡大して+3.0%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業物価指数、前年比3.4%上昇、9年ぶり伸び率
日銀が13日に発表した10月の企業物価指数(2010年=100)は99.4で前年同月比で3.4%上昇した。上昇は10カ月連続。上昇率は市場予想の中央値(3.1%)を上回り、消費増税の影響を除くと08年10月(4.5%)以来9年ぶりの大きさとなった。世界経済の回復や産油国による減産を背景にした国際原油相場の持ち直しで、石油・石炭製品価格が上昇した。
前月比では0.3%上昇した。石油・石炭製品のほか、ナフサの相場上昇を背景にエチレンやプロピレンといった化学製品も値上がりした。堅調な世界景気や中国での環境規制による供給抑制を背景に銅やアルミニウムの国際相場が上昇し、銅地金やアルミニウム合金といった非鉄金属の価格も上昇した。農林水産物も値上がりした。飼料米への転作により食用米の供給減少で玄米や精米の価格が上がったほか、不漁で塩サケやイクラも値上がりした。
円ベースでの輸出物価指は前年比で9.7%上昇し、13年12月(12.7%)以来の高い伸び率となった。前月比では1.7%の上昇だった。化学製品や金属・同製品が値上がりした。輸入物価は前年比15.3%上昇し、伸び率は13年12月(17.8%)以来の大きさだった。前月比では2.6%上昇した。石油・石炭・天然ガスの価格上昇が大きく寄与した。
企業物価指数は企業間で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年同月比で上昇したのは378品目、下落は263品目となった。下落品目と上昇品目の差は115品目で、9月の確報値(110品目)から5品目増えた。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率で見て、今年2017年1月に入ってプラスに転じ、+0.5%の上昇を示した後、いきなり2月には+1.1%の上昇と+1%に達し、さらに、4月には+2.1%の上昇と+2%に届き、前月の9月統計には+3.1%の上昇と+3%に乗せ、直近の10月統計では+3.4%にまで上昇幅が拡大しています。大きな上昇を示しているのがエネルギーと非鉄金属などの商品系ですので、国際商品市況における価格上昇の影響が大きいんですが、円安による国内価格押上げ圧力も見逃せません。例えば、国内物価のうちの石油・石炭製品は10月には前年同月比で+15.8%、また、非鉄金属は+22.4%の上昇をそれぞれ示しましたが、輸入物価のうちの石油・石炭・天然ガスの前年同月比は円ベースで+35.4%の上昇を示した一方で、契約通貨ベースでは+24.9%にとどまっていますし、同じく輸入物価の金属・同製品は円ベースで+30.3%の上昇ながら、契約通貨ベースでは+21.5%の上昇です。従って、石油をはじめとするエネルギーにせよ、非鉄などの金属にせよ、この円ベースと契約通貨ベースの上昇率の差の約+10%くらいは、主として円安による影響ということが考えられます。加えて、引用した記事にもある通り、農林水産物も上昇しており、+0.3%あった国内物価の前月比寄与度では玄米、精米、鶏卵などの農林水産物の寄与度は+0.08%に上っており、また、石油価格上昇の影響でエチレン、プロピレン、触媒などの化学製品も+0.07%の寄与を示しています。

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2017年11月12日 (日)

サンテFXネオのワンピースとのコラボ第2弾ゾロモデルを購入する!

6月28日付けのブログでも書きましたが、私の愛用しているサンテFXネオのワンピースとのコラボモデルのうち、6月に発売されたルフィーモデルに続いて、先週からゾロモデルも販売されています。私はルフィーモデルもそれなりに買い込んだんですが、どうせ必要になるからと考え、ゾロモデルもそれなりに買い込みました。
下の画像はサンテFXネオのサイトから引用しています。

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2017年11月11日 (土)

今週の読書も経済書は少ないながらも教養書や小説をがんばって計8冊!

今週は少し仕事の方に余裕があり、夜はせっせと読書に励んでしまいました。経済書らしい経済書は読まなかった気がしますが、地政学をはじめとして教養書・専門書の方はそれなりに読みましたし、小説と新書も2冊ずつ借りて読みました。計8冊、以下の通りです。

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まず、山田謙次『社会保障クライシス』(東洋経済) です。著者は野村総研で社会保障や医療・介護関係のコンサルタントを務めています。まあ、社会保障については、もっとも大口で所得に直接に影響を及ぼす年金ばかりが注目を集めていますが、本書では医療や介護に目を配り、2025年にはいわゆる団塊の世代がすべて75歳超になって後期高齢者になることから、現在の歳入構造のままでは政府財政が破たんするリスクがある、と警告を発しています。本書の冒頭で、そもそも、として、現在の政府の歳入と歳出の総額を上げていて、要するに、歳入、というか、国民の側から見た税負担はかなり低く抑えられている一方で、歳出は社会保障を中心に北欧などの高福祉国並みの規模になっている点を明らかにしています。一時、政府財政について「ワニの口」と称されていましたが、現在でも歳入と歳出のギャップは縮小しておらず、さらに、2025年には団塊の世代がすべて75歳超となり、医療と介護を中心に大きな公的負担の増加が見込まれる、と結論しています。200ページ余りの短い論考ですから、要約していえばそれだけです。本書の特徴のひとつとして、かなり判りやすく数字をキチンと上げている点があり、例えば、75歳超の後期高齢者になると、医療・介護費用がこれまでとは段違いに多くなる点については、医療費は全国民の平均は年間30万円程度である一方で、70歳で80万円、80歳になると90万円に上昇したり、加えて、介護が必要になる人の比率は、65歳では3%程度だが、75歳を過ぎると15%に上がり、80歳で30%、90歳で70%となる、などと解説を加えています。そして、恐ろしいのは、バブル崩壊後の就職氷河期・超氷河期に大学卒業がブチ当たり、正規の職を得られずに不本意非正規職員にとどまっている世代に、この大きな負担がシワ寄せされることです。そして、その上で、本書の著者はいくつかの解決策を提示しており、最大の解決策として国民負担率上昇の容認を上げています。明示的に、国民負担率をGDP比で60%まで許容すべきであると主張しているわけです。この負担サイドの解決策に加えて、給付サイドでは、現在のように自由に医療機関を選んで受診することを止めて、かかりつけ医の指示で受診する医療機関を指定するなど、医療提供体制の縮小を受忍する必要がある、としています。私の従来からの指摘として、マイクロな意思決定の歪みがマクロの不均衡につながっている点があり、それを付け加えておきたいと思います。本書とは直接の関係ありませんが、例えば、日本人は勤勉でよく働いて、統計には表れない生産性の高さを持っている一方で、企業サイドの資本の論理から非正規雇用を拡大して、個人及びマクロの労働力のデスキリングが進んでいるのは明白なんですが、少子高齢化についても、かなり近い減少を感じ取ることができます。すなわち、少子化の一員として、子どもや家族に対してはとても政府は厳しくて、社会保障の分け前もほとんど及ばないという事実がある一方で、高齢者にはとても手厚い社会保障が給付され、高齢者にオトクな経済社会体系ができ上がっています。子どもを出産して子育てするのに不利な社会経済である一方で、高齢者には優しい社会経済であるわけですから、少子高齢化がゆっくりと進むのは当然です。統計などでエビデンスを求めるのはムリなんですが、若者が東京に集まるのと同じ原理で、国民が子どもを産まなくなって高齢者に突き進む現象が観察されるわけですから、シルバー・デモクラシーに抗して社会保障のリソースを高齢者から子どもや家族に振り向ける政策が求められていると私は考えています。

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次に、高橋真理子『重力波発見!』(新潮選書) です。著者は東大理学部を卒業した朝日新聞の科学ジャーナリスト、なんですが、定年近い私よりもさらに年長そうなので、かなりのベテランなんだろうと思います。タイトル通りの内容で、約100年前にアインシュタインの一般相対性理論から予想された波である重力波についての解説です。そして、その前提として、ニュートンから始まる古典物理学や天文学、もちろん、アインシュタインの相対性理論から時間や暦の理論まで、一通りの基礎的な知識も前半部分で展開され、私のような専門外のシロートにも判りやすく工夫されている気がします。科学ジャーナリストとして、一般読者の受けがいいのは宇宙論と進化論であるとズバリといい切り、私もそうかという気がしてしまいます。重力波がどんなものかが分かれば、宇宙の成り立ちが理解できるといわれている点は理解した気になっていますが、誠に残念ながら、私には重力波の観測がどこまで重要な科学的事業であるかは判断できず、せいぜい、ノーベル賞に値する事業なんだと受け止めるくらいです。でも、重力波の基となる時空の歪み、そして、その時空とは何かについて、少しは理解が進んだ気がします。時間については、本書にもあるように、その昔は世界中で不定時だったわけで、日本の例なら、夜明けとともに日付が変わり、日暮れまでを等分していたわけです。もちろん、夜は夜で等分されていましたから、日の長い夏と逆の冬では時間の長さが違っていたわけですが、それは相対論的な違いではありません。それから、暦については、まさに権力の賜物であり、『天地明察』にある通りで、ユリウス暦とはローマ皇帝の権力の象徴でしょうし、グレゴリオ暦からは欧州中世における教会の知性と権力をうかがい知ることができます。なお、どうでもいいことながら、何かで読んだ不正確な記憶ながら、その昔は、というか、ローマ時代の前は月は1年に10か月だったところ、ひと月30日くらいにそろえるために、無理やりに1年12か月にしたらしいといわれています。2か月不足するので、7月にはジュリアス・シーザーの名が、8月にはアウグストス・オクタビアヌスが入れ込まれています。英語にも名残りがありますが、9月のSeptemberは明らかに「7」ですし、10月のOctoberも「8」です。タコをオクトパスと英語でいうのは足が8本だからです。さらにどうでもいいことながら、日本の数字の数え方は中国の影響で10進法ですが、英語は12進法で13からは10+3、というか、3+10のように表現しますが、ラテン語では15進法です。16から10+6で表現します。1年の月数を12としたのはひと月の日数が30日という区切りなんでしょうが、それをローマ時代に決めた後、その当時としては後進地域だった英語圏で数字の数え方が固まったような気がしないでもありません。たぶん、それまで英語圏では数字の数え方はとてもいい加減だったのではないかと勝手に想像しています。最後の最後に、私が知る限り、世界のかなり多くの言語圏で日本語でいう「新月」が誕生の意味、まさに「新しい」という意味で捉えられています。英語ではNew Moonといいますし、ラテン語でもご同様です。私はこの年になってもまだ知りませんが、満月を「新しい」と受け取る民族がどこかにいるような気もします。最後に、本書の書評に立ち戻って、なかなか私のようなシロートにも判りやすい良書だと思います。何かの折に触れた著名な物理学者、典型はニュートンとアインシュタインですが、も頻出して親しみを覚えるのは私だけではないような気がします。

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次に、ジェイムズ・スタヴリディス『海の地政学』(早川書房) です。著者は米国海軍の提督であり、NATO最高司令官も務めた海軍軍人出身です。もう一線を引退していますが、さすがに国際機関でも活躍しただけあって該博な地政学的センスは引けを取りません。どこまでホントか私は知りませんが、ヒラリー・クリントン上院議員が大統領候補となる際の副大統領候補最終6人にまで残り、また、トランプ新米国政権からは、国務長官ないしは国家情報長官のポストをと打診されたが断った、とのウワサもあったりするようです。ということで、本書は、まず、太平洋と大西洋から始まって、いくつかの地政学的に重要な海洋について歴史をたどっています。すなわち、地中海の覇権をめぐる古典古代におけるトルコとギリシア、あるいは、ギリシア諸国間、また、ローマとカルタゴなどの海戦、コロンブスやマゼランらに代表される大航海による新大陸などの発見、前世紀における太平洋を舞台にした日米の艦隊戦、台頭する中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の動向などなど、古今東西の海事史に照らして地政学の観点から現下の国際情勢を見定め、安全保障にとどまらず、通商、資源・エネルギー、環境面にも目を配りつつ、海洋がいかに人類史を動かし、今後も重要であり続けるかを説き明かそうと試みています。地政学的な観点からは、いわゆるシーパワーとランドパワーがあり、日本はほぼほぼ後者になろうかと思うんですが、私なんぞも知らないことに、本書の著者によれば、日本は陸上自衛隊の支出を減らし、海上自衛隊の支出を増やしているそうです。また、専門外の私には及びもつかなかった視点として北極海の地政学的な重要性、特に、単純にこのまま地球温暖化が進むとすれば、2040-50年ころのは北極海がオープンな海になる可能性も否定できず、その地政学的な位置づけも論じています。そして、最後はシーパワーの重要性を強調するわけですが、「海を制するものは世界を制する」という安全保障の観点一点張りな論調ではなく、海を「世界公共財 (グローバル・コモンズ)」と捉えて、世界全体のネットワーク協力を勧めて締めくくっていたりします。基本的に、老人の回顧録的なエッセイなんですが、語っている内容は豊富です。ただ、最後に、基本的に米国の相対的な国力が低下し、平和維持活動などの「世界公共財 (グローバル・コモンズ)」を提供することが難しくなった現状を踏まえているんでしょうが、米国が関与したベトナム戦争は「世界公共財 (グローバル・コモンズ)」の提供だったのかどうかの視点はありません。当然ですが。

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次に、日本安全保障戦略研究所[編著]『中国の海洋侵出を抑え込む』(国書刊行会) です。著者は何人かいますが、防衛相や自衛隊関係の人ではないかと思います。タイトル通りに、いかにして中国の海洋進出を抑えるか、がテーマなんですが、決して日本単独ではなく、安保条約を結んでいる同盟国の米国はもちろん、自由と民主主義や法による統治などの価値観を同じくするオーストラリアやインド、さらには、ASEAN諸国も含めて、東アジアないしアジア広域の問題として取り上げています。そして、結論を先取りすれば、要するに、米国や世界の国連軍などの介入を待てる短期間は持ちこたえられるように軍備を拡大するとともに、有利な地政学的状況を作り出しておく、ということで、当然といえば当然の肩すかし回答なんですが、それに至る事実関係がそれなりに参考になるような気もします。例えば、世界とアジア・太平洋・インド地域の軍事バランス、中国周辺主要国の対中関係の現状、米国の対中軍事戦略および 作戦構想、さらに、中国の東シナ海と南シナ海における軍事力と戦略などに関して、私のような専門外のエコノミストには初出の気がします。お恥ずかしい話ですが、米国のリバランスとピボットが同じ意味で、欧州からアジアに戦略的リソースをシフトすることだとは私は知りませんでした。ただ、単に中国のことを考えればいいというものでもなく、自由と民主主義のサイドにいないロシアと、何といっても北朝鮮がかく乱要因として存在しており、なかなか先を読み切れないのも困りものです。最後に、現象面としては、尖閣諸島の例なんかを目の当たりにして、中国の海洋進出はとても判りやすいんですが、さらに突っ込んだ分析として、予防のためもあって、どうして中国が海洋進出するのか、という謎にも取り組んで欲しい気がします。本書では、中華帝国の再興くらいの誠に心許ない観念論で乗り切ろうとしているんですが、唯物論的に何の必要があって中国が海洋進出を試みているのか、エネルギーをはじめとする資源なのか、あるいは、他に経済外要因も含めて何かあるのか、私は興味があります。それにしても、専門外の私にの能力・理解力不足から、とても難しげな本だった気がします。

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次に、長岡弘樹『血縁』(集英社) です。著者は警察を舞台にしたミステリが人気の売れっ子作家です。私はこの作者の代表作のひとつである『傍聞き』や『教場』などを読んだことがあります。ということで、この作品は血縁や家族に関する短編ミステリ7編、すなわち、「文字盤」、「苦いカクテル」、「32-2」、「オンブタイ」、表題作の「血縁」、「ラストストロー」、「黄色い風船」が収録された短編集です。3作目の「オンブタイ」は何かのアンソロジーに収録されているのを読んだ記憶がありますので、今回はパスしました。冒頭作のタイトルである「文字盤」とは、言語障害者が意思表示のために使うコミュニケーション支援道具だそうで、コンビニ強盗の解決に役立ったりもします。次の「苦いカクテル」と「32-2」は、どちらも法律問題を題材にしており、前者はかつて読んだことのある三沢陽一の『致死量未満の殺人』とおなじようなストーリーで、後者は相続に絡んで推定死亡時刻を定めた民法の条文です。「オンブタイ」を飛ばして、「血縁」はミステリというよりホラーに近く、交換殺人を取り上げています。でも、姉が妹を亡きものとしようとする動機が私にはイマイチ理解不能でした。最後の2作「ラストストロー」と「黄色い風船」はいずれも刑務官、ないし、刑務官退職者が主人公で、なかなか含蓄鋭いストーリーです。「32-2」、「オンブタイ」、「血縁」をはじめとして、どうもイヤ味な人物が続々と登場し、読後感はそれほどよくなかった気がしますし、いつものことながら、いわゆる本格ミステリではなく、状況証拠の積み上げで確率的に犯人を指し示すのがこの作者の作品の特徴のひとつですから、やや物足りない読後感も同時にあったりします。殺人事件については、現実社会で観察される殺人は、この作品にあるように、血縁、というか、家族内での事件がもっとも、かつ、飛び抜けて多いといいます。まあ、座間の事件のようなのはレアケースなわけですので、この作品はかなり現実に即した、とはいわないまでも、現実的なプロットなのかもしれませんが、家族で殺し合う作品がいくつか含まれている分、読後感は悪いのかもしれません。

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次に、相場英雄『トップリーグ』(角川春樹事務所) です。著者は売れっ子のエンタメ作家です。そして、この作品では、役所の名前以外はすべて仮名、というか、架空の名前なんですが、テレビのニュースや新聞の報道にそれなりに接していれば、読めば自然と理解できるようになっています。三田電気という仮名で東芝の経理操作事件を取り上げた『不発弾』と題された前作から続いて、総理大臣は芦田首相ということなので、まあ、何と申しましょうかで、同じシリーズといえなくもありませんが、この作品では、戦後最大の疑獄のひとつであるロッキード事件が題材に取られています。田中元総理が渦中の人となり、商社のルートや右翼のルートなどの3ルートがあり、米国発の汚職事件で我が国の内閣が吹っ飛んだ事件でした。そのロッキード事件を背景に、2人のジャーナリストを主人公に、そして、現在の安倍内閣の官房長官を政界の要の人物に据え、物語は進みます。軽く想像される通り、ロッキード事件で解明され切らなかった右翼のルートが現在の政府首脳まで連綿と連なっている、という設定です。そして、タイトルのトップリーグとは、決して、ラグビーのリーグ戦ではなく、政治家に食い込んでいくジャーナリストの中でも、特に便宜を図ってもらえるインナーサークルの構成者と考えておけばよさそうですが、ラストでそのトップリーグにも、政界らしくというか何というか、表と裏があることが理解されます。命の危険まで感じながら取材と裏付けを続けるジャーナリストとアメとムチで迫る政界トップ、さらに、癒着といわれつつも情報を取るために政治家に密着するジャーナリスト、どこまでホントでどこからフィクションなのか、私ごときにはまったく判りません。まあ、キャリアの国家公務員でありながら、いわゆる高級官僚まで出世も出来ず、霞が関や永田町の上っ面だけしか私は知りませんのでムリもありません。そして、この作品の最大の特徴のひとつは、作者がラストをリドル・ストーリーに仕上げていることです。ストックトンの「女か虎か?」で有名な終わり方なんですが、取材と裏付けを進めた主人公のジャーナリストがアメとムチで迫る政府首脳に対して、報道するのか、あるいは、握り潰すのか、ラストが明らかにされていません。まあ、報道する道が選ばれれば、現実性に対する疑問が生じますし、逆に、握り潰す道が選ばれれば、ジャーナリストとしての矜持の問題が浮上します。いずれにせよ、どちらの結末にしようとも、一定割合の読者から疑問が呈されることになる可能性があり、その意味で無難な終わり方なのかもしれませんが、小説の作者として、何らかの結末を提示する勇気も欲しかった気もします。評価の分かれる終わり方と見なされるかもしれません。

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次に、古谷経衡『「意識高い系」の研究』(文春新書) です。著者は論評活動をしているライターのようで、多数の著書があるらしいですが、私は初めて読みました。なかなか、簡潔かつ的確に要点を把握しており、それを、実例に即して展開していることから、私のような意識の低い読者にもよく理解できた気がします。ただ、私は「系」という感じ、というか、言葉は、英語でいうシステムであって、太陽に対する太陽系のように理解しており、本書のように何かの接尾辞として「もどき」を表現するのは慣れていなかったので、最初は少し戸惑った気がします。本書では「意識高い系」の生態や考え方を批判的に分析していますが、まず、その特徴として、いわゆるリア充との対比を試みていて、リア充がスクール・カースト上で支配階級に属し、それゆえに、土地を離れる必要もなく、地元密着の土着系(この「系」はシステムであって、もどきではない)であるのに対して、意識高い系はスクール・カーストでは中途階級であったのが最大の特徴で、それゆえに、リセットのために上京したり、あるいは、もともと東京であっても大学入学を機にリセットする下剋上的な姿勢がある、というもので、さらに加えて、意識高い系は具体的なものを忌避して抽象的なイメージに逃げ込み、泥臭く努力する姿勢を嫌う、という点を上げています。そして、当然のことながら、事故に対する主観的な評価が、周囲からの客観的な評価に比較してべらぼうに高い、という点は忘れるわけにはいきません。もともとは、2008年のリーマン・ショック後の2009年の就職戦線に出て来た一部大学生のグループらしいんですが、私の周囲の中年に達したビジネスマンにも同じような傾向を持つ人物は決していないわけではないような気もします。私自身は世代的にSNSで自分のキャリアを盛るようなことを、SNSがなかったという意味でそもそも出来なかったわけですし、一応、小さな進学校の弱小とはいえ運動部の主将を務め、成績は冴えませんでしたが、スクール・カーストの中途階級ではなかったように思います。かといって、生まれ育った京都の地から上京して就職して、そろそろ定年を迎えようというわけですから、リア充でもありません。ただ、泥臭く努力することはもう出来ない年齢に達した気もします。たぶん、我が家の本家筋で、私と同じ世代の従弟が京大医学部を出て医者をやっているんですが、彼なんぞが本書でいう土着リア充の典型ではないかという気もします。それにしても、ハイカルの文学やエッセイだけでなく、サブカルのマンガや映画、もちろん、SNSをはじめとするネット情報など、とてもたんねんに渉猟して情報を集めた上での、なかなか鋭い指摘をいくつか含む分析を展開した本だった気がします。私は新書は中途半端な気がして、あまり読まないんですが、こういった本はとても興味深く読めました。

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最後に、旦部幸博『珈琲の世界史』(講談社現代新書) です。著者はバイオ系の研究者であり、この私のブログの昨年2016年5月14日付けの読書感想文で取り上げたブルーバックスの『コーヒーの科学』の著者でもあります。ということで、タイトル通りに、コーヒーの歴史をひも解いています。何となくのイメージながら、緑茶や紅茶などのお茶、あるいは、お酒という名称で一括りにしたアルコール飲料などに比べて、コーヒーはかなり歴史が浅い印象があります。本書でも起源はともかく、歴史としてはせいぜい数百年、アフリカのエチオピアを起源に、欧州からインドネシアや米州大陸をはじめとして世界各地に広まっています。Out of Africa というタイトルの映画がありましたが、ホモ・サピエンスの我々現生人類と同じでアフリカから世界に広まった飲み物です。タイトルは世界史なんですが、高校の社会かよろしく、1章を割いて日本史も語られています。著者によれば、日本におけるコーヒーはガラパゴスのように独自の進化を遂げているようです。そして、前世紀終わりから21世紀にかけてはスターバックスなどのスペシャルティ・コーヒーの時代に入ります。私はコーヒーはかなり好きで、京都出身ですのでウィンナ・コーヒーで有名なイノダがコーヒーショップとして馴染みがあるんですが、いわゆるチェーンの喫茶店としては、ドメなチェーンとして古くはUCC上島珈琲、今ではコメダ珈琲や星乃珈琲など、我が家の周囲にもいくつか喫茶店があります。もちろん、海外資本としてはスターバックスが有名で、青山在住のころには徒歩圏内に3-4軒もあったりしました。こういった喫茶店、カフェに入ってひたすら読書したりしています。また、子供達がジャカルタ育ちなもので、温かい飲み物を飲むのは我が家では女房だけで、よく見かけるタワー型の魔法瓶すらなく、子供達や私は冷たい飲み物限定だったりするんですが、少なくとも私はオフィスではホットのコーヒーを飲みます。1日2~3杯は飲むような気がします。本書の著者も冒頭に書いていますが、歴史だけでなく、好きなコーヒーのうんちく話を少し知っていれば、プラセボ効果よろしくコーヒーがさらにおいしくなるような気がします。

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今日は結婚記念日!

今日は結婚記念日です。
上の倅が来月で21歳の誕生日を迎えるわけですから、結婚生活も20年を大きく過ぎ、最近ではもうすっかり夫婦の会話も短くなったり、あるいは、ほとんどなくなったりしました。今週半ばの会話では、夕食の後片付けをしている女房を私がマジマジと見て「太ったな」というと、女房の方は「前から太ってるのよ」と回答してきました。すぐに会話は途切れました。
恒例のくす玉を置いておきますので、めでたいとお考えの向きはクリックして割って下されば幸いです。

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2017年11月10日 (金)

来週公表予定の1次QE予想は7四半期連続のプラス成長か?

先週火曜日の鉱工業生産指数(IIP)や雇用統計などで、ほぼ必要な統計が出そろい、来週の11月15日に7~9月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の7~9月期以降の景気動向を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクは、テーブルの上から4機関、すなわち、日本総研、大和総研、みずほ総研とニッセイ基礎研なんですが、続く2機関、第一生命経済研と伊藤忠経済研のリポートにも何らかの先行きに関する言及があり、ほとんど1次QE予想だけで終始していたのは三菱系2機関だけでした。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは一番左列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。なお、どうでもいいことながら、前回までリポートがオープンにされていた三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所については、「レポートを閲覧いただくには、当社の口座およびオンライントレードの契約が必要」ということになったらしく、私には利用可能でなくなってしまいました。悪しからず。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.4%
(+1.6%)
10~12月期を展望すると、国内需要については、高水準の企業収益を背景に、設備投資が底堅く推移するとみられるほか、個人消費も、雇用所得環境の改善や株価の上昇に伴う資産効果などを下支えに、再び緩やかな増加基調に復帰する見込み。輸出も、世界的な設備投資意欲の改善などを背景に、増加基調が続く見通し。新型スマートフォン関連の電子部品の需要動向や、自動車メーカーの不正検査問題が、サプライヤーを含めた企業の生産活動に与える影響などが懸念されるものの、底堅い内外需を背景に、プラス成長となる見込み。
大和総研+0.2%
(+1.0%)
先行きの日本経済は、基調として足下の緩やかな拡大が継続するとみている。個人消費を中心とした内需は一進一退ながら堅調な推移が続くと同時に、世界経済の回復を背景とした外需の拡大が日本経済の成長を支えるだろう。ただし、FedやECBの出口戦略に伴う外需の下振れリスクには警戒が必要である。
みずほ総研+0.2%
(+0.9%)
10~12月期以降を展望すると、海外経済の回復を背景に輸出の増勢が続くとともに、内需も再び増加基調に復することで、日本経済は緩やかな回復基調を維持するとみている。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.5%)
先行きについては、輸出が底堅さを維持する中、企業収益の改善を背景に設備投資の伸びが高まることが予想される。一方、名目賃金の伸び悩みや物価上昇に伴う実質所得の低迷から家計部門は厳しい状況が続きそうだ。2017年度中は企業部門(輸出+設備投資)が経済成長の中心となる可能性が高い。
第一生命経済研+0.4%
(+1.6%)
4~6月期の段階では、輸出の牽引力が落ちてきた一方で内需の回復力が増してきたとの声も聞かれたが、7~9月期と均してみれば、結局のところ輸出は海外経済の回復を背景に引き続き増加、個人消費は緩やかな持ち直しにとどまるといった形になる。企業部門主導での成長が続いているという評価になるだろう。先行きもこうした構図が続くとみられ、輸出と設備投資を中心にした企業部門主導の景気回復が続くとみられる。
伊藤忠経済研+0.5%
(+2.2%)
今後も輸出は拡大基調を維持し景気回復を後押しする一方、設備投資の拡大は循環的にピークアウトする可能性もあるため、日本経済が回復基調を維持するためには個人消費の復調が不可欠であり、その条件が賃金の十分な上昇である状況に変化はない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.4%
(+1.5%)
2017年7~9月期の実質GDP成長率は、前期比+0.4%(年率換算+1.5%)と7四半期連続でプラスとなったと見込まれる。景気が持ち直していることを確認する結果となろうが、内需の伸びは弱く、外需主導での成長となった模様である。
三菱総研+0.4%
(+1.6%)
2017年7-9月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.4%(年率+1.6%)と7四半期連続のプラス成長を予測する。前期の反動もあり内需は横ばいにとどまるものの、好調な輸出を背景に外需が増加したと予想する。

ということで、多くのシンクタンクでは7四半期連続のプラス成長と、順調な景気拡大を見込んでいるようです。ただし、成長の牽引役については、今年2017年4~6月期は外需寄与度がほぼほぼゼロの内需主導型の成長を達成した後に、7~9月期では、逆に、内需の寄与度がほぼほぼゼロで外需主導型の経済成長になっているのが特徴的であり、シンクタンクによっては温度差があるんですが、7~9月期の外需主導型成長について批判的なシンクタンクがある一方で、4~6月期と7~9月期をならしてみてOKとするシンクタンクがあるのも確かです。上のテーブルに取り上げたシンクタンクの中でいえば、前者の典型は三菱UFJリサーチ&コンサルティングであり、後者の典型は第一生命経済研です。どちらに重点を置くかについては、エコノミストの考え方次第なんですが、四半期ごとに経済成長の内容を吟味する考え方はそれなりに重要な気もしますが、少しやり過ぎのキライもあるのかもしれません。いずれにせよ、目先の先行きについても緩やかながら回復・拡大基調が継続するという見方が多いように私は受け止めています。ただし、家計の消費は停滞気味であり、企業部門主導の成長が見込まれています。
下のグラフは、いつもお世話になっているニッセイ基礎研のサイトから引用しています。

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