2026年6月15日 (月)

帝国データバンク「カレーライス物価指数」やいかに?

やや旧聞に属するトピックながら、先週6月10日に帝国データバンクから4月の「カレーライス物価指数 」が明らかにされています。カレーライスの構成食材が2026年基準に改定されているようです。pdfファイルのリポートもアップロードされています。まず、帝国データバンクのサイトからSUMMARYを3点引用すると次の通りです。

SUMMARY
  • 2026年4月のカレーライス物価平均は1食364円(前年343円)となった。
  • 前年に比べると値上げ幅は過去1年間で最小。ただ、前月(2026年3月: 362円)からは2円上昇し、3カ月ぶりに前月を上回った。
  • 2026年5月のカレーライス物価は1食あたり平均366円前後で推移する見通し。野菜や畜肉価格の上昇を背景に高止まりでの推移が予想される。

続いて、帝国データバンクのサイトからカレーライス物価推移のグラフを引用すると次の通りです。

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この帝国データバンクのカレーライス物価指数は、ビーフカレー、ポークカレー、チキンカレー、シーフードカレー、そして、野菜カレーの5メニューの平均値で算出しているのですが、前年同月からの推移では、全5メニューで前年を上回っています。ただ、メニューによって値上げ幅は異なっていて、もっとも値上げ幅が大きいメニューはシーフードカレーとなっており、前年から+30円の値上がりとなっています。ただ、昨年2025年12月には+20%超の上昇率を記録していましたし、上のグラフを見ても理解できる通り、ひところに比べると落ち着きつつあることは確かなようです。また、全5メニューのうちもっとも値上げ幅が小さいのは野菜カレーとなっていて、前年から+12円の上昇にとどまっています。
このように、カレーライス物価指数は、一見すると、落ち着きつつあるように見えます。今年2026年4月の統計で見て、総務省統計局による消費者物価指数のうち、生鮮食品の前年同月比上昇率は+0.3%、生鮮食品を除く食料は+4.1%であり、帝国データバンクの算出するカレーライス物価指数の値上がりは+6.1%です。この先、消費者物価指数並みの上昇率に収束しているのかもしれません。

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2026年6月14日 (日)

京セラドームで現地観戦もオリックスにサヨナラ負け

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  RHE
阪  神0010100000 290
オリックス0001001001x 3120

【神】 西勇、工藤、木下、岩崎、ドリス - 坂本
【オ】 九里、入山、寺西、椋木、マチャド、吉田 - 若月

京セラドームで現地観戦も、オリックスにサヨナラ負けでした。
コロナ以降で久々の現地での野球観戦でした。しかし、打棒振るわず、最後はドリス投手がオリックス打線につかまりました。

残り交流戦2戦は、
がんばれタイガース!

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2026年6月13日 (土)

初めての環状交差点=ラウンドアバウト

我が家の近くで、初めて環状交差点=ラウンドアバウトを見ました。海外ではロータリーと呼んでいて、我が国のような左側通行であれば時計回り、大陸欧州のような右側通行であれば反時計回りとなります。10年余り前の道路交通法の改正から出来たと聞き及んでいます。それまで、我が国では「止まれ」の一本やりだったのですが、「ゆずれ」ができたわけです。下の写真の通りです。

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知っている人は知っていると思いますが、日本ではほぼほぼ「止まれ」一本なのですが、英国では「止まれ」=STOPに加えて、「ゆずれ」=GIVE WAYというのがあります。要するに、いったん停止する必要はないが、別ルートの方が優先である、という趣旨です。写真の環状交差点=ラウンドアバウトも同じです。
京都府警の資料によれば、環状交差点=ラウンドアバウトは京都府内には南丹市と福知山市の2箇所にしかないようなのですが、滋賀県警の資料によれば何と県内に13箇所もあるそうです。写真の環状交差点=ラウンドアバウトは栗東市市岡にあるものだと思います。

私は海外経験がそれなりにありますから、日本にはない少し奇妙な交通ルールはいくつか知っています。EU本部のあるブリュッセルを首都とするベルギーでは、常に左側から来る車が優先です。「止まれ」や「ゆずれ」の標識はほとんどありません。何も標識がなくても、たとえどんなに細くて小さな道でも左側が優先です。これには、各国のEU代表部大使館の外交官が戸惑っている、と聞き及んだことがあります。

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今週の読書は小説なしで計6冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、小峰隆夫ほか『スマートシュリンクへの道』(中央経済社)では、現在の日本の人口減少に対して、抑制したり反転させて人口増加を目指すのではなく、人口減少を受け入れて適応した上で、どのようなシュリンク=縮み方が望ましいのかを議論しています。ただ、処方箋は今後の課題かもしれません。東田啓作[編著]『グリーンウォッシュの経済分析』(中央経済社)では、「環境パフォーマンスが低いにもかかわらず、それについて肯定的なコミュニケーションを行う」グリーンウォッシュについて、第1に環境への意識高い消費者の選択を歪め、第2に高コスト負担を強いるデメリットが議論されています。イアン・ゴールディン『移民は悪か?』(プレジデント社)では、序に続く第1部で英語の原題タイトル通りに移民や移住の歴史をポジティブな面から概観した後、第2部で移民や移住の経済効果ほかを分析しています。移民や移住に関しては賛否ありますが、多様化だけをとっても悪くないとの結論です。方丈貴恵『矛と盾』(角川書店)では、罪を犯した者を必ず捕らえて有罪にし、絶対に逃さない探偵と助手、逆に、事件を隠蔽・捏造して犯人を確実に逃がす仕事人の3人が、密室トリックやアリバイトリックによる殺人事件をめぐって対決します。小塩真司『「数値化」中毒』(PHP新書)では、単一の指標にはバイアスがつきものであり、多様な見方による評価を重視するとともに、グッドハートの法則やそれを補完するようなキャンベルの法則について議論し、バイアスが避けられない指標による判断に代替する方法を提案しています。榎本博明『すぐに「できません」と言う人たち』(PHP新書)では、興味がないと言って仕事を断る、自分には「できない」と言う権利があると思っている、管理職になるのを避けようとする、好き嫌いを仕事にもち込む、といった職場での対応に関して心理学的な観点から分析を加えています。
今年2026年の新刊書読書は、1~5月に合わせて126冊、6月に入ってから先週の6冊と今週の6冊を加えて合計138冊となります。たぶん、今年2026年も250冊から300冊くらいレビューするのではないかと思います。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のtwitter)、あるいは、mixi、mixi2などのSNSでシェアしたいと予定しています。なお、カツセマサヒコほか『もふもふ』(新潮文庫nex)については、すでにSNSでシェアしていますが、本日のレビューには含めていません。

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まず、小峰隆夫ほか『スマートシュリンクへの道』(中央経済社)を読みました。著者は何人かいるのですが、うち小峰教授は私の役所の先輩であり、研究所勤務の折には上司としてお仕えした経験もありますが、ほとんど接点はなかった気がします。本書は、中曽根康弘世界平和研究所における経済社会研究グループの成果が土台になっているようです。タイトルから容易に理解できるように、人口減少に対して抑制したり反転させて人口増加を目指すのではなく、人口減少を受け入れて適応した上で、どのようなシュリンク=縮み方が望ましいのかを本書では議論しています。まず、日本経済の実績として、人口が減少しているにもかかわらず、GDPで計測した経済規模は拡大しており、決して人口減少がそのまま経済規模の縮小につながるわけではないと強調しています。その上で、1人当たりGDPやウェルビーイングの観点から、スマートにシュリンクする方向を目指す重要性が強調されています。さらに、人手不足への対応、企業経営、社会保障の持続性の維持、地域のスマートシュリンク、気候変動などのチャプターごとに専門家が議論を展開しています。私自身は基本的に同じ考えであり、人口減少を抑制することはともかく、反転させて人口増加を目指すのは、むしろムダが多い可能性が否定できないと考えています。ただ、冒頭のp.8では人口減少や少子化を構造改革のきっかけにすることを考えていて、3点上げています。第1にメンバーシップ型からジョブ型へのの雇用の転換、第2と第3で男女の役割分担の見直しや女性参画の拡大などですが、これらについては本書では取り上げられていません。実は、同じ著者による小峰隆夫『地域と人口減少の経済学』(中公新書)という本があるのを知り、大学生協で注文したところなのですが、ソチラで扱われているのかもしれないと期待しています。取りあえずの評価としては、現状分析は十分なされており、政策の方向性も私は大いに同意できるものと受け止めています。ただ、本書は書籍としてはボリューム的に十分ではなく、政策の詳細を分析した処方箋がそれほど充実しておらず、今後の課題という面は否定できません。ですから、第3章のウェルビーイングと経済の課題を考えている部分でも、p.76からの生産性向上のために基礎的成長率の引上げ、なんていわれても、「何それ」あるいは「トートロジー」という受け止めは少なくないものと私は想像しています。もうひとつは、経済学的分析に基づいていますので、結局、超長期の対応の部分はできていない、と考えるべきです。超長期の対応、というのは、人口減少に適応的に対応するとしても、全国レベルで考えるとしても、何らかの地域レベルで考えるとしても、私はどこかに最小限維持すべき人口規模があると考えています。極端な見方かもしれませんが、おそらく100万人くらいまで人口が減少すると、国防や産業など、国家としての活動は維持できなくなると私は考えていて、根拠はありませんが、おそらく、2000-3000万人のあたりに critical value がありそうな気がしています。ですから、どこかで人口減少を食い止める必要があるわけで、「適応戦略」が未来永劫に有効なわけではありません。ただ、経済学のスキームでこういった超長期の分析をするのはムリがあります。別の学問分野の課題だという気がします。

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次に、東田啓作[編著]『グリーンウォッシュの経済分析』(中央経済社)を読みました。編著者は、関西学院大学経済学部教授であり、本書は、関西学院大学産研叢書として出版されています。タイトル通りにグリーンウォッシュについて経済学的に分析を加えています。本書でも何度か指摘されているように、グリーンウォッシュは、通常、Delmas and Burbano (2011) "The Drivers of Greenwashing" で定義されているように、"poor environmental performance and positive communication about environmental performance" 「環境パフォーマンスが低いにもかかわらず、それについて肯定的なコミュニケーションを行うこと」とされていて、要するに、環境負荷の低い企業活動をしている、あるいは、そういった製品やサービスを提供しているという誇張された広告宣伝などを行っている、という意味です。どうして困るのかというと、第1に環境への意識高い消費者の選択を歪め、第2に環境配慮という名の高コスト負担を強いる、ということです。もちろん、これら以外にも弊害はあります。逆に、環境配慮について過小にコミュニケーションを取る、あるいは、まったく公表すらしないというグリーンハッシュも、EUのグリーンクレーム指令 Green Claims Directive から生じるようになっていると、本書では指摘しています。また、本書は、割合と短めの10章ほどのチャプターから構成されていて、グリーンウォッシュについて、いくつかのチャプターで定量的な評価と数理モデルによる解析的な評価を試みています。第1章は序章的な位置づけで、いわゆるエディトリアルを提供しています。最初の方の2-4章では、グリーンウォッシュほかの環境情報の認知、さらに、環境意識について分析しています。特に、第4章で消費者が環境配慮行動を取ったことによるウォームグロー効果の分析が私には興味深かったです。ウォームグロー効果とは、何かいいことをしたという内面的な報酬を指します。このウォームグロー効果が存在する場合、価格上昇が生じて消費量と消費効用がともに減少し、これがウォームグロー効果を上回ることから逆に消費者の利得が低下する可能性がある、という結果を数理モデルで示唆しています。5-7章では、企業がどうしてグリーンウォッシュ行動をするのか、という核心部分の分析をしています。第7章では、EUのグリーンクレーム指令によって生じたグリーンハッシュについても数理モデルにより分析しています。8-10章では、グリーンウォッシュについて、かなり突っ込んだ発展モデルを考えています。規制に対するロビー活動、循環型社会におけるグリーンウォッシュの位置づけ、国際間の認証問題がグリーンウォッシュに及ぼす影響などです。私自身の環境経済学の理解度はまだまだだと認識しているのですが、正面切っての環境問題ではなく、こういったニッチなグリーンウォッシュも少し勉強してみたい、という気になりました。

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次に、イアン・ゴールディン『移民は悪か?』(プレジデント社)を読みました。著者は、英国オックスフォード大学教授であり、ご専門はグローバリゼーション、開発学のようです。本書の英語の原題は The Shortest History of Migration であり、2024年の出版です。英語の原題に比較して、どうしてこういう邦訳タイトルになったのかはまったく不明ですが、基本的に、移民の歴史をポジな観点から振り返っています。ボージャス教授の議論などとは違います。全体で370ページほどのボリュームの2部構成になっており、序に続く第1部で270ページほどを費やして本来のタイトル通りに移民や移住の歴史を概観した後、第2部で100ページ足らずながら、移民や移住の経済効果ほかを分析しています。まずそもそも、人類がアフリカから out of Africa したわけで、それが移住の始まりであることは確かです。ギリシア・ローマの古典古代から移住はありましたが、本格的には中世後期から始まるという本書の見立てには、どこまで同意するかは歴史の見方によります。本書では、中世後期のセファルディの追放によるユダヤ人のディアスポラあたりを念頭に置いているようで、その後のアフリカから米州大陸などへの黒人奴隷の強制的な移住、あるいは、流刑先への移住なども視野に含めています。ただ、そういった宗教的観点や経済的インセンティブあったとはいえ強制的な移住はともかく、エコノミストとしての私の観点からは、やっぱり、本書の第7章の19世紀半ばからの米州大陸への集団移住以降が重要と考えています。南北米州大陸への集団移住と同時期に、中国人の海外移住も大規模に始まっており、本書ではそれほど大きく取り上げてはいませんが、日本語の「華僑」という言葉に示されているように、世界のいくつかの都市でチャイナタウンが出来たりしているのは広く知られている通りです。そして、本書でも指摘しているように、20世紀初頭の第1次世界大戦まで国境という概念はそれほど強いものではなく、国際法に基づくパスポートは一定普及していたとはいえ、国境を越境する移動や移住への制限はかなり緩やかであったと考えられます。それが、20世紀初頭の第1次世界大戦で一変したことは本書でも強調している通りです。第2部では第12章と第13章の移民と経済の問題がどうしても中心的なトピックとなります。私自身も remittances の問題を "An Essay on Remittances Effects to Economic Development: A Survey" と題する紀要論文を取りまとめたことがありますが、本書でも、古代中国の送金システムである「飛銭」を紹介したりしています。いずれにせよ、移民や移住に関してはいくつかの観点から賛否あることと思いますが、多様化が進むことだけをとっても経済的に悪いことではないと本書では指摘しており、私も同意します。その移民や移住の歴史を本書はコンパクトに取りまとめています。

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次に、方丈貴恵『矛と盾』(角川書店)を読みました。著者は、我が母校である京都大学のミス研ご出身のミステリ作家です。デビュー以来この作家の作品はだいたいの作品は読んでいると私は自負しています。本書は、タイトル通り、というか、何というか、どちらが矛でどちらが盾かはさて置き、罪を犯した者を必ず捕らえて有罪にするという意味で、絶対に逃さない探偵である草津、そして、その草津を助手としてアシストする霧島、逆に、事件を隠蔽して証拠すら捏造して犯人を確実に逃がすという意味で、必ず無罪にする仕事人のヒミコこと氷見の3人が主たる登場人物です。3人は一時期同じ中学校の同級生だったことがあるという設定です。長編というよりは、短編から中編くらいの連作中編集といった構成で、3章から編まれています。第1章では本書全体のプロットも案内しつつ、雪山の別荘で置きた殺人事件の密室トリック、第2章が健康食品会社の社長の殺人事件で、東京と大阪という距離的に離れた場所をめぐるアリバイトリック、第3章が東京西部の山奥の閉鎖的な集落における密室かつアリバイトリック、となっていて、それぞれに趣向を凝らしている点は評価できると思います。ただし、同じ学校に在籍した同級生が犯罪者と探偵で対決するという趣向は、例えば、青崎有吾「ノッキンオン・ロックドドア」のシリーズもあって、それほどめずらしいわけではありません。しかも、論理的に犯人を探るwhodunnitや手法を推理するhowdunnitではなく、草津が早々に犯人を指摘した後、お互いに探偵サイドでは証拠を捏造したり、あるいは、逃がす方では証拠を隠滅したり、といったアクション合戦に重点が置かれている気がします。ですので、探偵サイドの草津が自らを知の領分、助手の霧島を暴の領分とうそぶいていますが、決して「知」の占める比率がそれほどでもなく、「暴」の方もそれなりに重要なポイントとなっています。ミステリではハードボイルドなんかでそういうのがありそうな気がします。ただ、論理的なパズルとしては物足りません。そして、明確にシリーズ化はしないという作者の強い意志が最後に表明されています。コナン-ドイルによるライヘンバッハの滝と同じです。また、第3章の出来事は推理題材としてはいいのかもしれませんが、近代国家日本の首都近くの事件としてはいかにも異質な気がして、到底ありえない違和感を感じました。ギリギリ及第点の60点は稼いでいるかもしれませんが、論理性に欠けたストーリー展開である点が難点であり、それほどの高評価は差し上げられないと感じました。私はこの作家のファンですから読んでおきましたが、そうでなければ、私からオススメするのは少し躊躇します。

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次に、小塩真司『「数値化」中毒』(PHP新書)を読みました。著者は、早稲田大学文学学術院教授であり、ご専門はパーソナリティ心理学、発達心理学だそうです。本書のタイトルを見て、いわゆるグッドハートの法則、すなわち、「ある指標が目標となると、それはもはや良い指標ではなくなる」(p.69)という経済学の領域だろうと私は思っていて、心理学の専門家が論じている点を疑問に思っていました。第6章が、そういった私の疑問を少し解消してくれて、要するに、単一の指標にはバイアスがつきものだから、多様な見方でもって評価しましょうね、という結論なんだろうという気がします。ですので、大学の合否判定や偏差値による評価など、学力に関する測定がそれなりの割合を占めています。加えて、第3章ではグッドハートの法則を補完するようなキャンベルの法則、すなわち、定量的指標が重視されればされるほど、不正行為や歪んだ行動を引き起こしやすい、という見方です。これも、全国学力テストにおける不正行為や歪んだ行動とあわせて引き合いに出されています。ただし、他方で、何らかの指標が必要なケースも有り得る、と考える読者が多いことを考慮し、本書のきわめてすぐれた点として、計測して数値化した指標による判断に代替する方法を提案しています。それが、多様な人物を選抜する方法としてp.168以降で論じられているくじ引きです。はい、ランダムサンプリングによる選抜です。ただし、無条件にくじ引きで選ぶのではなく、一定の条件を満たす範囲からくじ引きで選ぶ、という主張です。ただし、そうすると、イタチごっこで、その一定基準を満たすかどうかが、またまた、本書で指摘しているような指標になりかねない恐れがあると私は思わないでもないのですが、私はこのくじ引き方式はかなり重要な指摘だと考えています。反対意見が多いであろう点は理解していますが、例えば、選挙なんかにも有効と考えていたりします。また、人物選抜だけではなく、何らかの選択をする場合に、くじ引きが有効かどうかはケースによると考えるべきです。例えば、人物選抜のカテゴリーで考えれば、大学入学者や新規採用者などは一定範囲内でのくじ引きによる選抜が妥当な場合がありそうな気がしますが、結婚相手であれば熟慮に熟慮を重ねる必要があるのは言うまでもありません。

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次に、榎本博明『すぐに「できません」と言う人たち』(PHP新書)を読みました。著者は、MP人間科学研究所代表だそうですが、これだけではよく判りかねます。ご専門は心理学で、博士の学位もお持ちのようです。本書では、主として、タイトルの「できません」は職場での発言や態度として考えているようで、私の勤務する大学で学生が示すものはスコープ外なのかもしれません。本書ではいくつか例が上げられており、興味がないと言って仕事を断る、諦めずに何とかするという気力がない、自分の頭で考えずに、すぐに人に頼ってくる、自分には「できない」と言う権利があると思っている、管理職になるのを避けようとする、キャリアに傷がつくのを恐れ、予防線を張る、好き嫌いを仕事にもち込む、実力不足なのにクリエイティブな仕事しかしたがらない、といった例です。私は少なくとも多様化した選択肢の中で、仕事を進める上でこういった選択をするのは、十分理由のあることで、そういった選択を自己責任でする限り、職場では許容する必要があるのではないか、という考え方もできると考えています。私が今の立命館大学の前に教員経験がある長崎大学では、教授になるのを嫌がっていた准教授がいたりしました。教授になると学部の役職を引き受けねばならず研究時間が減る、という理由だったと記憶しています。したがって、今の立命館大学で准教授も副学部長をやっているのを知って、私は驚愕したりしました。ですので、自分の人生でウェルビーイングを向上させるために、そういった選択は可能にするような経済社会の方がむしろ望ましいとすら私は考えています。その意味で、本書は令和の若者に昭和の仕事のやり方を押し付けているような気がして、少し違和感あります。もうひとつの違和感は、社会的に、あるいは、経済全体で解決するべき課題を個人で解決しようというムリが出ているような気がしてなりません。いつも私が例として引き合いに出すのですが、交通事故を減らそうとすれば、信号を設置して、横断歩道を引いて、速度制限や何やといった規制を導入することで達成できるわけで、個人の努力だけで交通安全が達成できると考えるのは、私は楽観的に過ぎると見なしています。本書は経済社会全体の変化を企業の管理職が個人で何とかしようと努力する方向を指し示しているような気がしてなりません。ただ、1点だけ私が同意したいと思うのは、自分から見た主観的な自分自身の能力と客観的な能力のギャップの存在なのですが、それは今に始まったことではありません。昔から「夜郎自大」という言葉もあるように、自分自身の能力は客観的な評価よりも過大評価してしまうものではないでしょうか。

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2026年6月12日 (金)

オリックスにも負けて泥沼の4連敗

  RHE
阪  神000010000 150
オリックス20000000x 250

【神】 村上、木下 - 坂本
【オ】 ペルドモ、入山、高島、吉田、岩嵜、山崎、椋木、マチャド - 若月

オリックスにも負けて、泥沼の4連敗でした。
先発村上投手は7回2失点ですから、十分QSといえます。わずかに立ち上がりの初回にソロホームランを2発被弾しての負け投手です。実に、かわいそうです。打線は相変わらずサッパリです。5回の押出しフォアボールの1点に抑え込まれてしまいました。6回以降はこまかな継投で目先をかわされ、ノーヒットに終わりました。

明日は何とか、
がんばれタイガース!

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高校生の時の仲間のグリットは長期に影響が及ぶ

もう10年も前になりますが、アンジェラ・ダックワース『やり抜く力 GRIT』でも注目されたgritについて、高校生のころの仲間のグリット high school peers' grit がかなり長期の波及効果を持つとする研究成果が、"Gritty Peers" と題する学術論文で定量的に明らかにされています。まず、論文の引用情報は次の通りです。

次に、ジャーナルのサイトから論文のAbstractを引用すると次の通りです。

Abstract
We use the National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Health to explore how high school peers' grit, a personality trait characterized by perseverance and passion, influences long-term outcomes approximately 15 years after high school. Exploiting random variation within schools across cohorts and the longitudinal nature of our data, we find that peer grit significantly increases future earnings by 4.2%, especially for students from disadvantaged backgrounds. This implies that peer grit may help bridge socioeconomic gaps. We uncover three potential channels through which peer grit affects long-term earnings: college enrollment, job alignment with long-term career goals, and increased resilience to difficulties. Additionally, peer grit leads to higher job satisfaction and asset accumulation. Thus, peer grit's effects extend beyond short-term educational performance and persist into adulthood.

繰返しになりますが、いわゆる学力に近い概念の認知能力に対して、grittは非認知能力に属する能力であり、目標達成に向けて困難や挫折に負けず、努力を継続して最後までやり抜く力とされていて、冒頭に言及したダックワース女史の本によれば、Guts=度胸、Resilience=回復力、Initiative=自発性、Tenacity=執念の4要素で構成されると指摘しています。論文では、自分自身のグリット own grit とともに、仲間のグリット peer grit の重要性を National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Health のデータを用いて、高校卒業15年後の長期的な成果にどのように影響しているかを分析しています。その結果、将来収入 future earnings を+4.2%増加させることを定量的に確認しています。

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そして、その要因を分析した結果が上の Table 9 Underlying mechanisms です。ジャーナルのサイトから引用しています。4要因をモデル式に入れて検証していますが、リスク回避=Risk aversionには統計的な有意性が見られず、残りの3要因、すなわち、大学進学=College enrollment、長期的なキャリア目標に沿った仕事の選択=Job aligned with career goals、そして、困難の克服力=Overcome difficulties が統計的な有意性を示しています。さらに、グラフやテーブルは引用しませんが、仕事への満足度の向上や資産形成=higher job satisfaction and asset accumulation についても、仲間のグリットからいい影響を受けることが示されています。

自分でがんばるのは、もちろん、重要なのですが、周囲の仲間からがんばるためのいい影響を受け取るのも重要、という結論が示唆されています。特に、高校生のころというのは思春期の感じやすい年ごろでもあり、いい影響を及ぼしてくれるいい友人と接することが出来る学校に学ばせてやりたい、という親ごころもよく理解できる気がします。

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2026年6月11日 (木)

哀れ、ソフトバンクにも3連敗

  RHE
阪  神000101000 290
ソフトB00020010x 370

【神】 伊藤将、湯浅、畠、及川 - 坂本
【ソ】 スチュワート・ジュニア、津森、木村光、松本裕、杉山 - 海野

ソフトバンクに3連敗でした。哀れなもんです。
先発伊藤将投手は5回2失点ですから、QSに近くて、久々の先発にしてはよく投げた気がします。リリーフ陣も、結果的には畠投手が失点して負け投手になりましたが、決して責められません。問題は野手陣、打つ方です。今夜の試合も、相手を上回る9安打を放ち、四死球も4ありながら、決定打がなく得点できません。少し前の矢野監督の時代に逆戻りしたのかもしれません。

明日はオリックス相手に、
がんばれタイガース!

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法人企業景気予測調査は中東の武力衝突で足元4-6月期に停滞

本日、財務省から4~6月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は足元の4~6月期は▲0.5、先行き7~9月期には+4.3、10~12月期には+4.5と、景況感は改善が続くと見込まれています。2月末に始まった米国とイスラエルによるイラン攻撃に伴う中東の武力衝突が企業マインドに影を落としつつも、先行きには楽観的な、見通しが示されています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

大企業の4-6月景況感、4四半期ぶりマイナス 中東混迷響く
内閣府と財務省が11日発表した4~6月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス0.5だった。4四半期ぶりのマイナスとなった。中東混迷による原油高などが影響した。
調査時点は5月15日。指数は自社の景況が前の四半期より「上昇」と答えた企業の割合から「下降」の割合を引いて求める。前回1~3月期の大企業全産業はプラス4.4と3四半期連続のプラスだった。
4~6月期の大企業製造業はマイナス1.8と4四半期ぶりのマイナスとなった。1~3月期はプラス9.6だった自動車・同付属品製造業が今回はマイナス19.4だった。食料品製造業はマイナス7.4だった。ともに原材料や資材の価格上昇が響いた。
非製造業はプラス0.0で4四半期連続のプラスとなった。金融業・保険業は貸し出し金利や株価の上昇により収益が改善した。サービス業は欧米からの訪日客の宿泊需要が堅調だったほか、専門サービスなどコンサル需要の増加もプラスに寄与した。
大企業の先行きは全産業ベースで7~9月期はプラス4.3、10~12月期はプラス4.5と改善が続く見通しだ。
中堅企業の現状は全産業がマイナス3.9で4四半期ぶりのマイナスとなった。中小企業の全産業はマイナス17.6と低迷している。
財務省の担当者は「景気が緩やかに回復しているとの政府認識と齟齬(そご)がない。中東情勢など含め、今後の企業動向を注視していく」と語った。

かなり長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

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繰返しになりますが、統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元の4~6月期はわずかにマイナスを示したものの、先行きには好転すると見込まれています。したがって、企業部門の景況感は順調に改善を続けていると考えるべきです。ただ、繰返しになりますが、中東の武力衝突やその余波としての石油価格上昇には今後とも不透明感がつきまといますので、先行き企業マインドにどのような変化があったかは、現状では不明としかいいようがありません。過去の数字と見なすエコノミストも少なくないと私は想像しています。なお、日銀発表によれば、日銀短観の調査表発送日は5月28日、基準回収日は本日6月11日だそうですから、この法人企業景気予測調査の結果から日銀短観が大きく異なる可能性は少ないと私は考えています。
景況判断指数(BSI)以外の生産要素過不足に関するマインド、すなわち、雇用と設備投資を簡単に見ておきたいと思います。まず、雇用については、引き続き大きな「不足気味」超となっており、大企業よりも中小企業、さらに、中堅企業で「不足気味」超が大きくなっています。ただし、引き続き不足超の水準は高いものの、6月末の現状判断よりも先行きの9月末や12月末では徐々に不足超のDIが低下する傾向となっています。設備投資も雇用ほどではないにしても小幅な「不足気味」超で推移しており、大企業よりも中堅企業や中小企業の規模の小さな企業で「不足気味」超が大きくなっています。このため、今年度2026年度、ソフトウェアを含み土地を除くベースで設備投資計画は+8.2%増となっています。ただ、設備投資のスタンスとしては、大企業や中堅企業では「維持更新」がもっとも重要度が高くなっていて、わずかに、中小企業では「生産(販売)能力の拡大」がトップの重要度となっています。

はたして、6月調査の日銀短観やいかに?

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2026年6月10日 (水)

格の違いを見せつけられてソフトバンクに連敗

  RHE
阪  神020000000 271
ソフトB00021030x 690

【神】 大竹、畠、及川、津田 - 伏見
【ソ】 松本晴、木村光、オスナ、松本裕、杉山 - 海野

ソフトバンクに連敗でした。
打つ方は伏見捕手のラッキーパンチで2回に2点を先制した後は鳴かず飛ばずで、結局、その2得点で終わりました。クリンナップ3人で1安打ではどうしようもありません。先発大竹投手は5回まで3失点、4回に2点を失ってからはズルズルと投手陣も失点を重ねました。特に、及川投手は四死球を出しては打たれて自滅した形です。
なお、藤川監督が7回の攻撃で、2度目のリクエスト失敗の後に抗議して、判っていて退場させられました。結果、そのウラに及川投手が乱調を来したわけですが、この判りきった退場劇はショウとしてのプロ野球のひとつの要素と考えるべきです。監督は笛を吹きましたが、及川投手はまったく勘違いして、ほかも選手はだれも踊らなかったわけです。

明日は3タテを阻止すべく、
がんばれタイガース!

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上昇率がさらに加速した5月の企業物価指数(PPI)

本日、日銀から5月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+6.3%の上昇となり、先月4月統計の+5.3%から上昇率がさらに加速しています。2023年3月以来の高い伸びとなりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月の企業物価指数6.3%上昇、3年ぶり高水準 原油高で値上げ品目拡大
日銀が10日発表した5月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は134.5と前年同月比で6.3%上昇した。伸び率は4月(5.3%)と、民間予想の中央値(5.5%)を上回り、23年3月以来3年2カ月ぶりの高水準となった。原油価格の高騰が幅広い製品に波及し始めている。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
内訳を見ると、中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇の影響が引き続き顕著だった。石油・石炭製品は13.8%上昇し、前月の5.3%から8.5ポイント拡大した。ガソリンや軽油に加え、エンジンオイルなどの潤滑油の価格も上がった。
化学製品はナフサの価格上昇を受けてポリエチレンやポリプロピレンなどに値上げの波及がみられ、伸び率が13.4%となった。前月の10.1%から3.3ポイント拡大した。日銀の担当者は「(供給網の)川中に相当する材まで価格の上昇が広がってきている」と指摘した。
非鉄金属は42.2%の上昇だった。中東情勢の悪化で製錬に必要な硫酸の供給が減り、銅の市況が上昇したほか、生産拠点が攻撃を受けたことでアルミニウム合金などの供給懸念も発生した。
電力・都市ガス・水道は前月がマイナス1.2%だったところ、プラス0.2%に転じた。政府の支援施策が終了したことが背景にある。飲食料品は原材料や資材の価格上昇を転嫁する動きが続く。今後については「包装資材の価格転嫁の動きもあると聞いている」(同)という。
円ベースで見た輸入物価指数は25.5%上昇し、伸び率は22年11月以来の高水準となった。日銀が公表している515品目のうち、価格が上昇したのは418品目、下落したのは82品目だった。15品目では価格が変わらなかった。

インフレ動向が注目される中で、長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下のパネルは国内物価指数そのものを、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。なお、ちょっと見づらいかもしれませんが、下のパネルの指数水準が急にスティープになったのは先月の2026年3月からです。

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まず、企業物価のうちヘッドラインとなる国内物価上昇率は、引用した記事の最初のパラにあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+5.5%でした。また、ロイターの記事では、市場の事前コンセンサスは前月比で見ていて、予想の+0.5%に比べて実績が+0.9%であった旨を報じています。いずれにせよ、実績の上昇率はかなり上振れしているのですが、前年同月比で見て、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの予想レンジ上限は+7.7%でしたから、これを上回るほどではありませんでした。ヘッドラインとなる国内物価だけでなく、輸出物価は+20.6%、輸入物価も+25.5%の2ケタ上昇を示しています。市場の事前コンセンサスを上回る上昇率となった理由は、引用した記事にもあるように、米国とイスラエルによるイラン攻撃から引き起こされた中東での軍事衝突、それに伴う石油価格の上昇です。本日公表された企業物価指数の輸入物価のうちの円建ての原油価格は、それぞれ、4月+36.6%、5月+53.6%の上昇率を示しています。私はエネルギー動向に詳しくないので、日本総研「原油市場展望」(2026年5月)を参考として見ておくと、WTI原油先物価格の先行き見通しについては、中東の軍事衝突次第ということのようで、「イランでの軍事衝突が夏頃までに終結することを前提とする標準シナリオでは、原油価格は100ドル前後で当面高止まりした後、緩やかに下落する見通し。」としつつも、当然、夏ごろに終わる可能性が決して大きいわけではないことから、「ただし、米国とイランが戦闘を再開すれば、価格が150ドル程度まで急騰するリスクも。」と指摘しています。はい、本日のヘッドラインニュースを見る限り、ヘリの撃墜により戦闘が再開されるリスクが高まっているような印象を私は持っています。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率と下落率で少し詳しく見ると、まず、注目の石油・石炭製品は4月+5.3%でしたが、5月統計では+13.8%の上昇となっています。これに伴って、化学製品も4月の+10.1%から5月には+13.4%に跳ね上がっています。ナフサについては品薄感が強まっているという報道も見かけました。電力・都市ガス・水道は政府の電気・ガス料金負担軽減支援事業により4月▲1.2%、4月+0.2%と価格安定が続いています。加えて、農林水産物が4月+13.2%、5月も+10.1%と2ケタの高い上昇率を示しています。農林水産物の価格上昇に伴って、飲食料品の上昇率も4-5月はともに+4.1%と、高い上昇率となっています。非鉄金属は4月+37.9%、5月+42.2%と、きわめて高い上昇率が続いています。
最後に、繰返しになりますが、こういった物価上昇が石油価格の上昇からもたらされたものであることは、多くのエコノミストは理解していますが、おそらく、経済学の専門的な知識のないテレビコメンテータなどが主張する円安原因説は、多くのエコノミストは否定すると私は考えています。すなわち、専門用語ですが、為替の変化が国内の物価に影響する度合いを示すパススルーは日本円についてはかなり低くなっているのが多くのエコノミストの緩やかなコンセンサスです。よく参照される計量的な分析を含む論文は以下の通りです。為替レートの変化から生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)へのパススルーは0.02と計測されています。したがって、▲1%ポイントのコア消費者物価の引下げをもたらそうとすれば、何と50%の円高が必要ということです。現在160円近傍の円ドルレートを購買力平価見合いの120円くらいにしても、おそらく、▲0.5%ポイントのコアCPI引下げにしかなりません。現時点で日銀物価目標の+2%を下回っているインフレを為替レートの変化でさらに下げようとすることが国民的コンセンサスを得られるかどうか、よく考える必要があります。

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