2024年9月16日 (月)

怒涛の4連勝でタイガースは優勝戦線に踏みとどまれるか?

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ヤクルト000000000 050
阪  神00000210x 3120

広島・ヤクルトと4連勝して、阪神は優勝戦線に踏みとどまれるでしょうか
9月1日の巨人戦に負けて、私は今シーズン終戦を覚悟したのですが、阪神が広島に連勝する間に巨人がヤクルトに連敗し、そのヤクルトに阪神が連勝して、巨人を2ゲーム差でピタリと追走しています。広島がやや脱落気味でしょうかね。
それにしても、青木選手の引退は甲子園でも大コールで感激しました。引退した鳥谷と早大の同級生だったと記憶しています。やっぱり、外野手に比べて内野手、それもショートは肉体労働が厳しそうな気がするのは私だけでしょうか。

次の中日戦も、
がんばれタイガース!

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自転車のヘルメット着用は広がるか?

9月12日、今年の秋の全国交通安全運動の実施に合わせて警察庁からプレスリリースがあり、飲酒運転や携帯電話仕様に関する事故などとともに、自転車関連交通事故も取り上げられています。特に、プレスリリース資料の中から 自転車乗車用ヘルメットの着用状況 を引用すると以下の通りです。

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ヘルメット着用上位3件の愛媛県、大分県、群馬県では40%を超えていてびっくりしています。ちなみに、プレスリリース資料の最終ページには都道府県別の自転車乗車用ヘルメット着用率調査結果のテーブルがあり、近畿各府県はすべて全国平均の17.0%を下回っています。東京は15.1%なのですが、まあ、私の実感としてもこんなもんだろうと思います。府県別には、滋賀県11.1%、京都府12.5%、大阪府5.5%、兵庫県7.7%、奈良県13.7%、和歌山県14.9%となっています。私の勤務校でも、自転車置き場のステッカーを交付される条件として、保険加入は義務となっていますが、ヘルメットをしている学生はほとんど見かけません。自転車置き場でヘルメットを見ると、学生ではなくほぼほぼ教職員だったりします。はたして、自転車のヘルメット着用は進むんでしょうか。意識の低さを実感します。

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2024年9月15日 (日)

久しぶりのロングライドで宇治橋周辺のポケふたを見に行く

ポケふたを見に行きました。今日ではなく昨日の午後なのですが、私にしては久しぶりに遠出して京都府宇治市の宇治橋近くに新しく設置された2枚のポケふたを見てきました。
瀬田の唐橋から瀬田川-宇治川に沿ってのルートで、道路標示ベースで片道33キロのなのですが、往復でいろいろあって70キロくらいのロングライドでした。土曜日でしたが、暑さのためか、それほどお仲間もおらず、年齢なりにのんびりしたものでした。まあ、予算をケチっての安いクロスバイクを漕いでいるのが60半ばのジーサンですから、スピードが出るわけもありません。それでも、30度を軽く超える午後でしたので、最後の方はヘロヘロになりました。やっぱり、それなりの距離を行こうとすればロードバイクの方がいいのだろうかと思わないでもありません。東京ではロードバイクはそれなりの乗りこなしが必要と考えていたのですが、関西とはいえ京阪神でもなく、県庁所在市でもないご当地ではもっとカジュアルで、私はクロスバイクでも車道を走っていますが、ご当地のロードバイクは80%が歩道をチンタラと走っています。グローブだとかサングラスなどのアイウェアとかもなしで、当然のようにノーヘルです。まあ、ご当地のロードバイクはほとんどママチャリと変わらない乗り方ですので、東京と違ってハードルが高くなくて、私もロードバイクに手を出してみようかと物欲が募っています。
下の写真はい1枚目が私のクロスバイクをバックに、ヤバソチャとチャデスのポケふた、2枚目はヒバニーとパッチールのポケふたとなっています。実は、宇治市内にはもう1枚ポケふたがあって、10月2日にオープンするニンテンドーミュージアムの中に敷設されています。ミュージアムが開館したら、ヒマを見つけて駆けつけたいと思います。

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2024年9月14日 (土)

今日は私の誕生日

今日は私の誕生日です。
もうすっかり年金の受け取れる65歳を超えて66歳になります。ですから、「めでたくもあり、めでたくもなし」という一休宗純の心境かもしれません。
もう少し大学教員を続けます。

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今週の読書は経済書からホラー小説まで計6冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
今年の新刊書読書は1~6月に160冊を読んでレビューし、7月に入って計20冊をポストし、合わせて180冊となります。目標にしているわけでも何でもありませんが、年間300冊に達する勢いかもしれません。なお、Facebookやmixi、あるいは、経済書についてはAmazonのブックレビューなどでシェアする予定です。

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まず、北村周平『民主主義の経済学』(日経BP)を読みました。著者は、大阪大学感染症総合教育研究拠点特任准教授ということらしいのですが、学位の方はストックホルム大学国際経済研究所で経済学のPh.D.を取得していますので、まあ、エコノミストと考えてよさそうです。本書では、新しいタイプの政治経済学を取り上げていて、それが民主主義を分析しています。本書が解き明かそうと試みている民主主義のうちの決定についてはとてもわかりやすく上手に解説しています。数式がかなり多くて、数式を見ただけでアレルギーを起こしかねない読者には不向きかもしれませんが、ちゃんと読めば数式もそれほど難解なものではありません。政治の決定プロセスを経済学的手法を用いて分析しようとしていますので、経済学に関心ある向きにも、政治や民主主義、あるいは、広く市民運動などに関心ある向きのも、どちらにも安心しておすすめできる良書です。ということで、私なんかの狭い了見では、政治経済学といえばかなりの確度でマルクス主義経済学に軸足のある経済学であり、特に、国際政治経済学となればほぼほぼマルクス主義経済学確定、というカンジなのですが、本書はそうではなく主流派経済学の分析手法により民主主義を考えようと試みています。ですので、民主主義における決定の基本となる選挙を考える際に根幹となるのは、どうしても、ダウンズの「中位投票者定理」になります。政策についても、本書では登場しませんが、ホテリングのアイスクリーム・ベンダー問題のような解決策と考えて差し支えありません。すなわち、ここでは単純に左翼と右翼という表現を用いるとすれば、選挙では真ん中あたりの中道に位置する中位投票者がキャスティングボードを握る、ということです。左翼と右翼でなくても、プランAに強く賛成のグループと強く反対のグループを考えても同じです。明確に賛成と反対のどちらかが賛同者大きいとすればともかく、賛成でも反対でもどちらでも大きな利害関係内容なグループの動向が決定権を持ちかねないわけです。これに加えて、本書でが因果推論の成果を取り入れて、因果関係から政策評価を試みる方法を解説しています。それ自体はありきたりですが、ランダム化比較実験(RCT)、回帰不連続デザイン(RDD)、操作変数法(IV)、差の差法(DID)です。ほぼほぼ完全に経済学の手法といえます。というか、私はそう考えています。本書では、こういった経済学の考えや手法を基本にして民主主義の決定について分析しています。ただ、注意すべきは、決定過程であって、議論の展開と関係ない最終的な投票行動の分析が中心になります。ですので、ディベートで相手の議論を否定したり、といった点は本書には含まれていません。もうひとつ、私が重要と考えているのは民主主義と経済の関係です。すなわち、前世紀末から今世紀初頭に中国のWTO加盟を議論した際、中国を世界貿易に取り込むことから中国は経済的に豊かになることが軽く予想され、この前段は達成されたといえます。そして、後段では経済が豊かになると権威主義から民主主義的な要素がより受け入れられやすくなる、という予想がありました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによる撹乱があったとはいえ、現在の習体制は民主主義からむしろ遠ざかっているようにすら見えます。民主主義と経済の関係については、同じ中国語圏でもシンガポールや台湾については経済発展とともに民主化が進んでいるように見えますが、メインランド中国ではそうなっていません。ロシアも権威主義的傾向を強めている印象がありますし、南米のいくつかの国でも民主主義が後退している可能性があると私は受け止めています。日本では、明らかに経済の停滞とともに民主主義が後退しています。安倍内閣のころから権力者は法の支配の外に置かれて、何をやっても問答無用であり、虚偽発言を繰り返しても国民がそのうちに忘却する、という流れが続いています。直近では兵庫県知事がそうです。こういった民主主義と経済の関係は、基本的に無相関であると考えるべきなのか、本書では正面から議論していませんし、私にしても理解が進みません。

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次に、南彰『絶望からの新聞論』(地平社)を読みました。著者は、朝日新聞政治部ご出身のジャーナリストであり、現在は朝日新聞を退職して沖縄の琉球新報の記者です。ということで、1年半ほど前の昨年2023年2月に鮫島浩『朝日新聞政治部』(講談社)を読んでレビューしていますが、基本的に同じようなラインのノンフィクションです。まず、印象的だったのが、朝日新聞経営陣の腰の引けた報道・編集方針です。政権に楯突く反対論に対して、ネットでの炎上を警戒して極度に慎重姿勢を取り、政権や権力に対して融和的な編集方針を本書では強く批判しています。まさに、メディアのサイドでの「忖度」といえます。さらに進んで、朝日新聞だけでなく、というか、むしろ、朝日新聞は国内メディアの中でも政権との緊張感高い方のメディアだと私は考えるのですが、その朝日新聞だけではなく国内メディアの政権や権力者との距離感についても強い疑問を呈しています。本書タイトルにある「絶望」は私を含めて多くの日本人も共有しているのではないかと思います。この「絶望」は朝日新聞だけではなく、メディアにとどまることだけでもなく、すべての日本人に関係する「絶望」なのだと思います。私自身は、ミレニアムの2000年紀が明けてからの日本は、少なくとも、民主主義や政治という面で確実に劣化していると考えています。大きな原因は経済の停滞です。経済が停滞する中で経営者サイドから労働者や組合に対する支配の強まりが始まり、それが民主主義を劣化させて政治の迷走を生み出していると思います。もちろん、政治家リーダーとして総理大臣を経験した小泉・安倍といった政権担当者の名を上げることも出来ますが、そういった総理や権力者が独走して日本を劣化させたのではないと私は考えています。経済的な停滞にもかかわらず、利潤追求という経済学的な合理性に基づく行動を取る中で、労働組合組織率に端的に現れるように雇用者サイドの力量が弱まり、同時に、政治のサイドでも雇用者に振りで経営者に有利な派遣労働に関する制度的な変更がなされたこともあって、雇用者が過酷な労働条件を行け入れざるを得なくなり、一定割合の雇用者が正社員のステータスを失って非正規に移行してしまったことから、民主主義を支えるための時間的な余裕がなくなり、もちろん、心理的な圧迫感とともに民主主義の劣化につながったのが基本的なラインであると私は考えています。加えて、議会における反対党勢力も劣化しています。一度は政権交代に成功しながら、誤った、あるいは、不十分な政策対応で総選挙1回という短期間で政権を手放しただけでなく、野党政権に対する極めて不面目な印象を国民に植え付けてしまいました。メディアの劣化については本書で詳しく展開されています。現在の政権与党では政治改革がホントにできるかは不透明ですし、少なくとも経済政策を国民目線で策定する能力はほとんどなく、大企業に有利な方向でしか経済政策は運営されないおそれが高いと私は危惧しています。本書は、日本の国としての劣化をメディアのサイドから追っているオススメの本だといえます。

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次に、丸山正樹『夫よ、死んでくれないか』(双葉社)を読みました。著者は、小説家です。ミステリが得意分野なのかもしれません。30代半ばの女性3人、主人公の甲本麻矢、大学時代の友人の加賀美璃子と榊友里香が主要な登場人物です、まず、甲本麻矢は大手の不動産会社勤務、結婚後5年を経過して寝室を別にしたセックスレスで夫婦の間は冷え切っています。加賀美璃子はフリーランスの編集者・ライターで、離婚を経験したバツイチです。榊友里香は結婚7年目の専業主婦で、3人の中で唯一の子持ちで娘がいます。亭主の榊哲也を「ガーベ」=garbageと呼んでいます。まあ、いろいろとあるのですが、榊友里香が亭主のガーベを突き飛ばして亭主の榊哲也が「逆行性健忘」という記憶障害になってしまいます。榊友里香は甲本麻矢と加賀美璃子を呼び出して、亭主の榊哲也を殺害しようと試みますが、結局、決行には至りません。他方、榊哲也は最近10年ほどの記憶を失っただけではなく、人格的にも穏やかな好人物になるのですが、記憶障害が回復する可能性はあると医師から告げられます。そして、主人公の甲本麻矢の方でも事件が起こります。夫の甲本光博が失踪してしまうのです。香水の香りなどから不倫している女性の存在が疑われます。甲本麻矢の勤務先には失踪の事実を伏せていたのですが、職場の後輩の鳥居香奈から雰囲気が少し変わったのではないか、と指摘を受けてしまいます。鳥居香奈はバリキャリの甲本麻矢に憧れていて、仕事でも目標にされています。他方、失踪中の甲本光博から甲本麻矢にメールが送られてきて、何と、甲本光博と加賀美璃子のツーショットの写真が添付されていました。しかし、甲本麻矢が加賀美璃子に確認して、不倫ではないと判断します。そこで、甲本麻矢は亭主の失踪の原因を探るためにパソコンのパスワードのロックを解除して起動したところ、甲本麻矢の亭主の甲本光博と榊哲也のつながりが浮かび上がります。そうこうしているうちに、榊哲也が逆行性健忘から回復し、すべてを思い出して、殺害の決行は思いとどまったものの、救急への連絡をひどく遅らせた点などから、甲本麻矢と加賀美璃子に慰謝料を請求しようとします。そのころ、甲本麻矢は業界トップ企業にヘッドハンティングの誘いがあり、榊哲也にまつわるスキャンダラスな出来事を考慮して断ります。で、最後の最後に、こういった一連の出来事の謎が解き明かされます。ということで、あくまで一般論ながら、本書のように夫に死んでほしいと考えている妻がいっぱいいる一方で、逆に、妻に死んで欲しいと願っている夫もかなりいるんではないか、という気がしています。

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次に、マイク・モラスキー『ピアノトリオ』(岩波新書)を読みました。著者は、米国のセントルイス生れで、今年2024年3月まで早大の研究者をしていて、現在は名誉教授です。同じ出版社から、昨年2023年に『ジャズピアノ』上下巻を上梓し、第74回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しています。ご当地には県立図書館で所蔵していて、私も興味分野だけに読もうかと考えないでもなかったのですが、諦めた記憶があります。ということで、ややお手軽な新書版で本書を読んでみました。第1章の導入部分のピアノトリオの聞き方から始まって、やっぱり、第2章からがメインとなり、モダンジャズ初期の名演から最近時点までの演奏が網羅的に取り上げられています。ただ、本書でも明記しているように、あくまでピアノトリオですので、ソロやカルテットより大きなコンボでの演奏が主となっているピアニストは入っていません。例えば、セロニアス・モンクとか、ハービー。ハンコックです。私も50年をさかのぼる中学生や高校生のころからモダンジャズを聞きはじめ、いかにも日本人的に最初はコルトレーンから入りました。しかし、いつのころからか、コルトレーンを聞くには前日から十分な睡眠を取って体調を整え、気合十分の体制でないと聞けなくなってきて、今ではピアノトリオ中心に聞くようになっています。私自身の音楽の聞き方としては、リラックスや癒やしではなく、緊張感を高めて仕事やスポーツなんかに臨む、というカンジで聞いています。知り合いとお話していて、そういう音楽の聞き方はレアケースではないか、と指摘され、確かに、以前はそういう聞き方をするのは軍歌ぐらいと思わないでもなかったのですが、テニスプレーヤーの錦織圭がヌジャベスの音楽を試合前に聞いているとインタビューで答えたりしています。試合に対する集中力を高めるというよりは、心穏やかに落ち着くためのようですが、緊張感を高める音楽の聞き方があってもいいと私は考えています。コルトレーンはまさにそういうアルバムを多く残しています。ピアノトリオのモダンジャズも、決してBGMとして流すだけではなく、いろんな聞き方ができるという点を本書でも強調しています。第1章では、ユニゾン奏法、ブロックコード、ロックハンド奏法などのピアノテクニックにも言及しています。誠に残念ながら、日本人ピアニストは小曽根真や上原ひろみに言及ありますが、演奏は取り上げられていません。後、モダンジャズですので、どうしても米国中心になるのは理解できますが、欧州のジャズももう少し取り上げて欲しかった気もします。エンリコ・ピエラヌンツィなんて、いい演奏をいっぱい残しています。最後に、ピアノではありませんが、先週の9月7日にテナーサックス奏者のソニー・ロリンズが誕生日を迎えています。1930年生だそうです。本書でも言及されていますが、ジャズプレーヤーには薬物使用や荒れた生活で早世する人が少なくなく、自動車事故でなくなる人もずいぶんといます。そういった中で、90歳を大きく超えているのは少しびっくりです。

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次に、スティーヴン・キング『死者は嘘をつかない』(文春文庫)を読みました。著者は、私なんぞがいうまでもなく世界のホラー小説の大御所です。本書は、作家活動を開始してから50周年を祈念した第3弾となります。文庫オリジナル長編だそうです。なお、第1弾が『異能機関』上下、第2弾が『ビリー・サマーズ』、そして、本書に続く第4弾の日本独自中篇集『コロラド・キッド 他2篇』も今月9月に入って刊行されています。まあ、私はキングをコンプリートに読むほどのファンではありませんから、暑い時期の怪談話というわけではないものの、適当につまみ食いして読んでいるわけです。なお、英語版の原題は Later であり、2021年の出版です。ということで、ニューヨーク、ないしその近郊を舞台とし、本書の主人公のジェイミー・コンクリンが22歳の時点で、9歳ころからの自分を振り返るというホラー小説です。語り手のジェイミー自身が何度も、これはホラーストーリーであると繰り返しています。そして、ジェイミーには死んだ人が見えて、会話を交わせたりするわけです。ジェイミーの家族はシングルマザーの母親であるティア・コンクリンだけであり、ティアの兄でありジェイミーの叔父であるハリーが若年性認知症を発症して、ティア・コンクリンが文芸エージェントの仕事を引き継いでいます。ティアの同性のパートナーはニューヨーク市警の刑事であるリズ・ダットンです。主人公のジェイミーは死者が見えて、会話が交わせますので、大人の事情によりその「能力」が利用されてしまったりします。すなわち、隣室の老夫婦の奥さんが亡くなった折に、亡くなったミセス・バーケットの指輪のありかを聞き出したりするまではよかったのですが、徐々に少年には荷の重い死者との対面を強いられるようになります。まず、文芸エージェントである母親のティア・コンクリンの収入の大きな部分を占めていたクライアント、作家のレジス・トーマスがシリーズ最終巻を書き残して亡くなった直後、すでに死んだ作家から最終巻のあらすじを聞き出すよう母親から要求されます。死者から聞き出した内容を、作家が遺稿を残したことにして、実は、エージェントの母親がジェイミーの聞き出したあらすじからシリーズ最終巻を自分で書いて出版するという運びなわけです。こういった死者と話す際に、なぜか、死者はジェイミーに対して、というか、他の人に対してはいざ知らず、ジェイミーに対しては嘘をつけずに、しかも、どうやら、黙秘を貫く権利もないようです。そして、母親のパートナーである刑事は、結局、不祥事により警察を解雇されるのですが、警察勤務中に、あるいは、警察解雇後に死者から聞き出すよう要求され、大きなトラブルになるというホラーです。最後の最後に、ジェイミーは自分の父親が誰なのかを知ることにもなります。『It』なんかでも感じたのですが、キングがこういった若者や子供を描写するのがとても上手だと思ってしまいました。私は青春小説が好きなのですが、キングは青春小説に優れた作家だと実感できます。

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次に、入江敦彦『怖いこわい京都』(文春文庫)を読みました。著者は、京都は西陣で生まれ育った京都人であり、作家、エッセイストです。現在はロンドン在住だそうです。ということで、本書は2010年に新潮社から刊行された単行本に加筆して文庫化されています。かなり加筆して、百物語よろしく99話を収録しています。9章から構成されていて、異形の章では、闇の狛犬、魔像、人喰い地蔵など、伝説の章では、丑の刻参り、狐塚、清滝トンネルの信号など、寺院の章では、血天井、釘抜きさん、化野など、神社の章では、七野神社、天神さん、呪歌など、奇妙の章では、御札、エンササンザ、千躰仏など、人間の章では、京女、タクシー、イケズなど、風景の章では、墓池(一応、念のためですが、「墓地」ではなく「墓池」であって、タイプミスではありません)、古井戸、鬼門など、幽霊の章では、幽霊街道、公衆トイレ、四辻など、妖怪の章では、鵺、土蜘蛛、天狗などが、それぞれ取り上げられています。一部に例外はありますが、基本的にほぼほぼすべてのテーマで具体的な場所や施設が明記されています。例えば、風景の章の墓池は西方寺などです。何といっても、1200年前からの古都であり、神社仏閣、あるいは、それに付随するお墓なんかもいっぱいありますので、京都の怪談話は尽きません。菅原道真なんて讒言により左遷されて怨霊になって京都に舞い戻るわけですから、由緒正しき歴史の深さを感じます。私が公務員をして東京に住んでいたころ、子供たちを卒業させた小学校は南青山にあって、ボーイスカウト活動は乃木神社を拠点とした港18団でしたし、少し歩いて明治通りに出れば東郷神社なんてのがあって、その親分格の明治神宮何かとともに、ひどく新しい神社な気がしました。上野の寛永寺なんてのも、東叡山という山号に示されているように、比叡山延暦寺が京の都の辰巳の鬼門を守るのと同じ趣旨でお江戸の鬼門を守るために、徳川期初期に創建されているのはよく知られた通りです。もちろん、京都にも平安神宮なんてミョーに新しい神社があるのも事実ですが、東京都京都の歴史の長さの違いを実感できます。それだけに、恨みつらみのたぐいも歴史を経て強大化している可能性を和は感じます。もっとも、他方で、本書でも取り上げられている京都の心霊スポットとして、清滝トンネルや東山トンネルは近代に入ってからのスポットです。明らかに、逢坂の関なんかは東海道の一部であって、京都の三条通りからつながっていますので、トンネルではなく山道です。まあ、昔はトンネルなんて掘れなかったわけです。いずれにせよ、私は本書の著者と同じで、いわゆる霊感なんてものをまったく持たず、しかも、基本的に近代物理学で解明できる範囲で生活や仕事をこなしていて、超自然的な現象や存在は視野に入りませんが、こういった歴史を感じる怪談話は決して嫌いではありません。まだまだ暑い日が続く中で、冷気を感じさせる読書をオススメします。

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2024年9月13日 (金)

紀要論文 "Estimating Output Gap in Japan: A Latent Variable Approach" を書き上げる

我が勤務校の紀要論文集である『立命館經濟学』に掲載していただくべく "Estimating Output Gap in Japan: A Latent Variable Approach" を書き上げました。何と申しましょうかで、私は60歳で公務員を定年退職し、その後の再就職先のこの勤務校でも65歳で定年退職し、雇用期限の70歳に向かっているところですので、もはや特段の上昇志向はなく、毎年夏休みに1本だけ学術論文を書いています。一応、サマリは以下の通りです。

Summary
Since the late 1990s, Japanese economy was in deflation for more than twenty years. Recently, there have been some signs of ending deflation. Deflation is usually defined as sustained decline of prices frequently associating economic stagnation. The economic stagnation can be measured by various means, and this paper among those explores measurement of the output gap or the GDP gap. At first, the study organizes the measurement methods for estimating the output gap such as the production function approach, the univariate approach employing mechanical filters, the empirical approach based on Okun's law, and the structural vector autoregression (SVAR) approach using the latent variables. The paper adopts one of the latent variable approaches employing the state space model based on Kuttner (1994) and tries to estimate Japanese output gap from mid-1990s comparable with output gap measured by other methods.

結局、推計は何度かやり直してみたのですが、どうにもピンと来るものがなくて、最初の方の推計結果で正面突破を図ることにしました。以下の通りです。GAPのシリーズが私の推計結果で、CAOは生産関数アプローチに基づく内閣府の推計結果です。私の推計による産出ギャップが大きいのは、消費者物価(CPI)上昇率ではなく日銀が公表している企業物価指数のうちの国内物価(PPI)を使っているからです。どうして、CPIではなくPPIを使ったかというと、PPIには消費税の影響を除く指数があるからです。でも、例えば、もっともインフレの激しかった20222年12月の統計で見ると、CPI上昇率は+4%の過ぎないのに、PPIの方は+10%を超えていたりしています。この大きなインフレが、結果として、大きな産出ギャップに現れたと考えています。

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2024年9月12日 (木)

商品市況と円高の影響で上昇幅が縮小した8月の企業物価指数(PPI)と自動車の認証不正を底に企業マインドの回復続く法人企業景気予測調査

本日、日銀から8月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+3.0%の上昇となり、先月6月統計からさらに上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業物価指数、8月2.5%上昇 8カ月ぶりに伸び鈍化
日銀が12日発表した8月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は123.0と、前年同月比で2.5%上昇した。7月(3.0%上昇)から伸び率が0.5ポイント鈍化した。民間予測の中央値(2.8%上昇)より0.3ポイント低かった。中国経済の減速による銅など原材料価格の下落が響いた。
8カ月ぶりに伸びが鈍化した。企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
内訳では、銅など非鉄金属が前年同月比11.4%上昇と、7月(18.9%)から伸び率が縮まった。非鉄金属の主要消費国である中国景気の減速を受け、商品相場が下落したことが影響した。
円高の進行が輸入物価の伸び鈍化につながった。円ベースの輸入物価指数は2.6%上昇で、7月(10.8%)と比べて伸び率が鈍化した。24年8月のドル・円相場は平均で1ドル=146円台と、7月(157円台)から円高にふれた。
電力・都市ガス・水道は10.6%上昇し、7月から増加幅が拡大した。政府が停止した電気・ガスの補助金が価格の押し上げにつながった。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+2.8%と見込まれていましたので少し下振れた印象でした。国内物価の上昇幅が大きく縮小したした要因は、引用した記事にもある通り、中国の景気減速による商品価格の低下と円高です。政府による電気・ガスの補助金は停止されたままで、物価の押上げ要因となっています。非鉄金属をはじめとする商品価格の下落と円高ですから輸入物価への影響が大きく、前年同月比ベースで輸入物価は4~7月まで2ケタ上昇でしたが、8月は一気に+2.6%まで上昇幅を縮小させています。原油についても基本的に童謡の価格動向が観察されます。すなわち、円建て輸入物価指数の前年同月比で見て、6月+22.0%、7月+22.2%の上昇が、8月統計では一気に+6.5%まで上昇幅を縮小させています。ちなみに、8月統計の原油の契約通貨建て価格の前年同月比上昇率は+5.3%を記録しています。何度も繰り返している通り、我が国では金融政策を通じた需給関係などよりも、原油価格のパススルーが極端に大きいので、上昇にせよ下落にせよ国内物価にも無視し得ない影響を及ぼしています。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、電力・都市ガス・水道が7月の+6.5%から8月は+10.5%に大きく上昇幅を拡大しています。食料品の原料として重要な農林水産物は7月の+4.0%から8月は+5.3%と上昇幅をやや拡大しています。したがって、飲食料品の上昇率も8月+2.1%と高止まりしており、ほかに、非鉄金属が+11.4%が2ケタ上昇を示しています。ただし、石油・石炭製品は7月+0.4%から8月には▲4.0%と下落に転じています。原油価格が円建てでも上昇を示している一方で、石油・石炭製品の価格の落ち着きはやや不思議であると私は受け止めています。

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また、本日、財務省から4~6月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は前期の4~6月期に+0.4とプラスに転じた後、足元の7~9月期は+5.1と2四半期連続のプラスを記録し、先行き10~12月期には+7.2、2025年1~3月期でも+4.7と、順調にプラスを続けると見込まれています。法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは上の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、企業物価(PPI)と同じで、景気後退期を示しています。
自動車の品質不正問題が響いて、BSIのヘッドラインとなる大企業全産業で見て前期の1~3月期に瞬間風速で小さなマイナスをつけたものの、前期の4~6月期にはプラスに転じ、足元の7~9月期、先行きの10~12月期から2025年1~3月期と企業マインドは順調に回復する見通しが示されています。この間、大企業レベルでは製造業・非製造業ともにBSIはプラスと見込まれています。雇用人員も引き続き大きな「不足気味」超を示しており、大企業全産業で見て9月末時点で+27.0の不足超、12月末で+24.1、来年3月末でも+21.3と大きな人手不足が継続する見通しです。設備投資計画は今年度2024年度に全規模全産業で+12.5%増が見込まれています。これまた、製造業・非製造業とも2ケタ増を計画しています。それなりに期待していいのではないかと思いますが、まだ、機械受注の統計やGDPに明確に反映されるまで至っていませんので、私自身は計画倒れになる可能性もまだ残っているものと認識しています。

果たして、10月1日公表予定の日銀短観やいかに?

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2024年9月11日 (水)

帝国データバンク調査による「米作農業の倒産・休廃業解散動向」やいかに?

コメがスーパーなどの店頭から姿を消して価格が高騰しているのは広く認識されている通りですが、他方で、コメ農家の倒産・廃業も急増しているようです。というのも、9月5日、帝国データバンクから「米作農業の倒産・休廃業解散動向」の調査結果が明らかにされていて、今年2024年に入って1-8月で34件の休廃業と解散が発生していることが示されています。帝国データバンクのリポートから 「米作農業」倒産・休廃業解散件数 推移 を引用すると以下の通りです。

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同じ9月5日付けのNHKの「首都圏ナビ」のサイトでも報じられていますが、イネの育成はそれほど問題ないにもかかわらず、品薄が続いて入荷が不安定な状況が続いているようです。農水省の民間在庫のデータを見ても、昨年末2023年12月には298万トンあった在庫が、直近でデータが利用できる今年2024年7月には82万トンまで激減しています。
それにもかかわらず、帝国データバンクの調査によれば、2024年1-8月には、米作農業(コメ農家)の倒産(負債1000万円以上、法的整理)が6件、休廃業・解散(廃業)が28件発生し、計34件が生産現場から消滅した、とリポートされています。この要因として、帝国データバンクのリポートでは、「生産コストの上昇と深刻な後継者・就農者不足」を上げています。すなわち、生産資材、肥料、ガソリン・軽油などの値上がりが激しい一方で、価格転嫁が難しいことからコメづくりを断念したり、あるいは、就農者の高齢化や後継者不足もあって、経済学的にいえば、供給が需要に追いつかない状況となっています。一部の報道に見られたように、インバウンド観光客の消費増は私は怪しいと見ています。

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私は授業でサラリと日本の農業について取り上げないでもないのですが、それほど専門性があるとは思っていません。でも、OECD の Post-Uruguay Round Tariff Regimes の p.53 Figure 1. Post-Uruguary Round bound tariff rates, by main sectors なんぞを引用しつつ、日本の農業が巷間いわれているほど保護されているわけではない、という点はしっかりと教えているつもりです。上のグラフの通りです。

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2024年9月10日 (火)

東京商工リサーチの調査では早期・希望退職が大きく増加

先週9月5日に、東京商工リサーチから今年2024年1-8月の期間における上場企業「早期・希望退職募集」状況の調査結果が明らかにされています。まず、東京商工リサーチのサイトから 上場企業 早期・希望退職募集 推移 のグラフを引用すると以下の通りです。

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見れば明らかなのですが、リーマン・ショックの翌年2009年に2万人を超えた後、コロナ禍の2020年にも1.8万人を超え、その後順調に低下していたのですが、今年2024年に入って1~8月ですでに昨年2023年の2倍を超える7,104人の早期・希望退職の募集がなされています。募集社数としては、昨年2023年の同時期には23社だったものが、すでに41社に達しています。すべて上場企業なのですが、上場区分は東証プライムが28社で68.2%、また、黒字企業が24社、58.5%と高い割合を占めています。厚生労働省が公表している有効求人倍率を見てもまだ1倍を超えていて、少子高齢化を伴った人口減少局面に入って、人手不足が広がっていると考えられていますが、他方で、今年2024年に入って早期・希望退職募集も大きく増加しています。なお、私が朝日新聞の報道で見かけた範囲での大きな退職者募集は以下の2社です。どちらも、「早期退職者募集」と称しています。

これまた、広く報じられている中で、自民賞の総裁選において政策プランとして「雇用の流動化」を掲げているの候補者も中にはいたりします。ハッキリいって、私が推奨している高圧経済において雇用者が自分のスキルにあわせて転職先を自由に選べるのと、雇用主が雇用者を簡単に解雇できるのはまったく別の世界観です。決して、混同してはいけません。

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2024年9月 9日 (月)

下方修正された4-6月期GDP統計速報2次QEをどう見るか?

本日、内閣府から4~6月期GDP統計速報2次QEが公表されています。季節調整済みの系列で前期比+0.7%増、年率換算で+2.9%増を記録しています。2四半期ぶりのプラス成長で、1次QEからはわずかに下方改定されています。なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+3.2%、国内需要デフレータも+2.6%に達し、7四半期連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP2.9%増に低下、4-6月改定値 持ち直し基調は継続
内閣府が9日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.7%増、年率換算で2.9%増だった。8月発表の速報値(前期比0.8%増、年率3.1%増)から下方修正した。設備投資と個人消費が若干下振れしたものの、持ち直し基調に大きな変化はみられない。
QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値は前期比0.8%増、年率3.2%増だった。予測を下回った一方で、2四半期ぶりのプラス成長は変わらなかった。名目GDPは前期比1.8%増、年率換算で7.2%増で、実額は年換算で607兆円だった。
内閣府の担当者によると、ダイハツ工業などの品質不正問題で停止していた生産・出荷が再開し、自動車の購入や設備投資の再開が増えて全体を押し上げる構図に変化はなかった。
GDPの半分以上を占める個人消費は実質で前期比0.9%増だった。速報値は前期比1.0%増だった。直近の指標を反映した結果、お菓子の消費が減った。サービスでは外食の上昇寄与度が速報値の段階より縮小した。
消費に次ぐ柱の設備投資は前期比0.9%増から0.8%増に下方修正した。財務省が2日に公表した4~6月期の法人企業統計などを反映した。
公共投資は速報値の前期比4.5%増から4.1%増に下方修正した。建設総合統計などの結果を反映した。民間在庫の寄与度は前期比マイナス0.1%、政府最終消費支出は前期比0.1%増で、それぞれ速報値段階から変化がなかった。
輸出は前期比1.4%増から1.5%増になった。輸入は前期比1.7%増のままだった。前期比年率の寄与度は内需がプラス3.1%、外需がマイナス0.3%だった。
ソニーフィナンシャルグループの宮嶋貴之氏は「成長率が小幅に低下したものの、速報値の認識を大きく変えるほどではない」と指摘した。「自動車を巡る認証不正問題の一巡など一時的とみられる要因もあり、景気は引き続き踊り場だ」と評価した。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。なお、一般には大きな必要ないことながら、今回のGDP推計から内閣府のアナウンスにあるようにコロナ禍の時期のダミー変数の設定が変更されています。

需要項目2023/4-62022/7-92023/10-122024/1-32024/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.7▲1.1+0.1▲0.6+0.8+0.7
民間消費▲0.8▲0.3▲0.3▲0.6+1.0+0.9
民間住宅+1.4▲1.2▲1.1▲2.6+1.6+1.7
民間設備▲2.0▲0.2+2.1▲0.5+0.9+0.8
民間在庫 *(▲0.0)(▲0.6)(▲0.1)(+0.3)(▲0.1)(▲0.1)
公的需要▲0.9+0.1▲0.4+0.1+0.9+0.8
内需寄与度 *(▲1.0)(▲0.8)(▲0.1)(▲0.1)(+0.9)(+0.8)
外需寄与度 *(+1.7)(▲0.3)(+0.2)(▲0.5)(▲0.1)(▲0.1)
輸出+3.2+0.1+3.0▲4.6+1.4+1.5
輸入▲4.1+1.3+2.0▲2.5+1.7+1.7
国内総所得 (GDI)+1.2▲0.7+0.1▲0.7+0.8+0.7
国民総所得 (GNI)+1.5▲0.7+0.2▲0.6+1.3+1.3
名目GDP+2.0▲0.0+0.7▲0.3+1.8+1.8
雇用者報酬▲0.4▲0.6+0.1+0.2+0.8+0.8
GDPデフレータ+3.7+5.2+3.9+3.4+3.0+3.2
内需デフレータ+2.7+2.5+2.1+2.3+2.4+2.6

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4~6月期の最新データでは、前期比成長率がプラス成長を示し、赤の消費がプラスの寄与度を示しているのが見て取れます。

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基本的には、1~3月期に自動車の認証不正に伴って一部工場の操業停止などの動きがあったことから、4~6月期に工場稼働が再開されたものもあって、反動も含めて消費が伸びてプラス成長につながった、と考えるべきです。ですので、この反動増を割り引く必要もあり、4~6月期の年率+3%近い高成長はそれほど大きな意味はないと私は受け止めています。まあ、何と申しましょうかで、私の従来からの主張である「日本経済自動車モノカルチャー論」を補強してくれている気すらします。その昔の私の小学校のころは、ブラジル経済がコーヒーのモノカルチャーだったと主張する人もいましたし、私が大使館勤務をしていた1990年代前半のチリ経済も銅のモノカルチャーに近かった気がしますが、日本も経済規模が徐々に縮小すればさらに自動車モノカルチャーの色彩を強める可能性が否定できないと思います。

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ただ、先行きを考える場合、8月末から9月初の台風10号による列島マヒを別にして、雇用者報酬の動向が重要となります。上のグラフはその雇用者報酬の季節調整済みの系列を実額でプロットしています。広く報じられている通り、昨年春闘に続いて今年2024年春闘も画期的な賃上げを勝ち取っていて、賃上げが徐々に広がるとともに、他方で、物価の方は落ち着く方向にあるわけで、ジワジワと実質賃金が増加する方向にある点を評価すべきです。実質所得が増加すれば消費だけでなく、住宅投資も増加するでしょうし、それが企業活動にも波及するのは当然です。アベノミクス箱用の増加などをもたらして、一定の成果があったと私は考えているのですが、最大のアベノミクスの誤りは企業から家計への波及がトリックルダウンとして実現する可能性を課題に評価した点だと私は考えています。円安から輸出増、そして企業業績は回復したかもしれませんが、家計への恩恵はまったくないに等しい程度でした。これからは、その志向を逆にして家計の所得を増加させ、消費をはじめとする内需を拡大し、それが企業業績につながる、という真逆のルートを経済政策で模索すべきタイミングだと私は考えています。

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最後に、本日、内閣府から8月の景気ウォッチャーが、また、財務省から7月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+1.5ポイント上昇の49.0となった一方で、先行き判断DIも+2.0ポイント上昇の50.3を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+3兆1930億円の黒字を計上しています。

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