2026年1月18日 (日)

今年の花粉はどうなの?

いよいよ花粉シーズンが近づき、1月15日に日本気象協会から「2026年 春の花粉飛散予測 (第3報)」が明らかにされています。日本気象協会のサイトからポイントを3点引用すると次の通りです。

2026年 春の花粉飛散予測 (第3報)
  • 2月上旬に、九州や、中国・東海・関東の一部でスギ花粉飛散開始
  • 飛散のピークは、早い所では2月下旬から
  • 飛散量は、西日本では例年並み、東日本と北日本では例年より多い

続いて、同じく日本気象協会のサイトから 2026年 飛び始め予想 を引用すると次の通りです。関西方面は、2月中下旬といったところでしょうか。この先、2月にかけての気温は平年並みか高く、暖かい日には花粉がわずかに飛び始める見込みだそうです。

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続いて、同じく日本気象協会のサイトから 2026春 花粉の飛散傾向 を引用すると次の通りです。関西方面は、平年並みかやや多いといったところでしょうか。でも、甲信越から北の方では平年よりい多い予想が目立っています。これは、2025年夏が全国的に高温・多照で雄花が形成されやすい気象条件だった、ということに起因しているようです。

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私の鼻や目はまだ花粉を感じていませんが、それでも、昨日あたりから気温がかなり上がって、花粉は感じないものの、くしゃみが出始めています。まあ、いずれにせよ、嫌なシーズンを迎えることになります。

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この週末は大学入学共通テスト

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昨日から大学入学共通テストが始まっています。私の居住地では、昨日こそ暖かだったのですが、今日はかなり冷え込んでいます。少子化に伴い、大学は徐々に広き門となることが予想されますが、入学後の学費負担は決して軽くはありませんし、現時点ではまだ大学全入制にはほど遠いです。ですので、合格を祈念することはせず、受験生諸君が自分の持てる力をすべて発揮できるよう期待します。

がんばれ大学受験生!

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2026年1月17日 (土)

今週の読書はいろいろ読んで計6冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、郡司大志『金融政策の効果測定』(慶應義塾大学出版会)では、1999年2月のゼロ金利から始まって、2024年3月の量的・質的金融緩和の解除と金融政策の「正常化」までの期間の金融政策の効果の測定を試みています。因果推論を活用した計測なのですが、計測対象が適切かどうかは疑問です。マルチェロ・ムスト[編著]『マルクス・リバイバル』(地平社)では、資本主義や共産主義、さらに、民主主義から始まって22のチャプターで専門家たちが最近時点でのマルクス研究の成果を紹介しています。ただ、日本人研究者は参加しておらず、マルクス研究で遅れを取っているのだろうか、と思ってしまいました。岩井圭也『真珠配列』(早川書房)では、近未来の中国を舞台に、異常な速さで進行する癌による死者が出始め、その中に有力政治家の子息が含まれていて、北京市公安局刑事偵査総隊の捜査官アーロンが、ウイグル人の遺伝子エンジニアであるマリクの協力を得て操作を進めます。麻根重次『千年のフーダニット』(講談社)では、コールドスリープした7人が1000年後に目覚めると、そのうちの1人が死んでいた、という事件について、ハウダニットとフーダニットの謎を解き明かそうと試みます。SF的な色彩豊かなミステリです。和仁かや『江戸の刑事司法』(ちくま新書)では、バーチャルお白州ということで、タイトル通りに、徳川幕府の「公事方御定書」を基に、さらに、実際の裁判記録である「御仕置類例集」などをひも解いて、徳川時代の刑事司法を紹介しています。碧野圭『凜として弓を引く 覚醒篇』(講談社文庫)は、中学を終えて名古屋から東京に引越して来て、武蔵西高校に入学する矢口楓を主人公とする弓道青春小説であり、そのシリーズ第5巻に当たる本書では、西武蔵高校弓道部は関東大会に出場し、同級生の真田善美はインターハイの個人戦で優勝します。
今年2026年の新刊書読書は先週に4冊、今週の6冊を加えると合計で10冊となります。また、これらの新刊書読書のほかに、瀬尾まいこ『幸福な食卓』(講談社文庫)、『千年のフーダニット』の前作である麻根重次『赤の女王の殺人』(講談社)、大山誠一郎の短編集『密室蒐集家』と『赤い博物館』と『記憶の中の誘拐』(文春文庫)も読んでいます。ただ、新刊書ではないので、本日のレビューには含めていません。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のツイッタ)、あるいは、mixi、mixi2などでシェアしたいと予定しています。

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まず、郡司大志『金融政策の効果測定』(慶應義塾大学出版会)を読みました。著者は、大東文化大学経済学部現代経済学科教授だそうです。本書は、タイトル通りに、金融政策の効果を測定していますが、当然ながら主眼は四半世紀に渡った非伝統的な金融緩和政策にあります。すなわち、1999年2月のゼロ金利から始まって、2024年3月の量的・質的金融緩和の解除と金融政策の「正常化」までの期間の金融政策の効果の測定にあります。そして、もともとの著者の姿勢がどうなのかは私は存じませんが、軽く想像されるように、否定的な側面が全面に押し出されている印象があります。ただ、手法としてははやりの因果推論を用いています。というのは、しばしば金融政策分析に用いられるニュー・ケイジアン・モデルには明示的な銀行部門がないから、という理由です。ただ、冒頭第1章で、金融政策や金融政策の効果に関する定義では「はっきりしない」と結論していて、金融論は専門外の私なりにも、本書で金融政策の効果として測定している代理変数に疑問あるものもないわけではありません。例えば、第7章でETF買入れ政策で株価が押し上げられていたという結論ですが、第8章でROA/ROEを企業のパフォーマンス指標として用いると逆の結果が得られます。要するに、株価はROA/ROEを反映していない、という矛盾を不問にした分析がどこまで整合性ある結果を引き出せているかは疑問です。また、第5章のインフレーションターゲティング政策も、効果を測定する指標として企業パフォーマンスを取るのが適当かどうかも疑問です。日銀法は冒頭で、日銀は物価安定を通じて国民経済の健全な発展に貢献するという役割を負うと規定していますが、ほとんどの分析で企業が金融政策効果測定の対象になっている印象があり、国民生活への影響は無視されている、ないし、いわゆるトリックルダウン効果が前提されていると考えられます。せいぜいが、第6章の個人の借入れ意欲に対する効果くらいで、消費への効果分析をもっと前面に打ち出してもいいように思うエコノミストは私くらいで、多くのエコノミストは企業への効果に目が行くのは悲しいことかもしれません。最終第10章のテーマである金融政策に何を求めるのかの視点が、少し私とはズレている気がしました。最後に、私は黒田総裁当時の日銀の異次元緩和は失敗だったと考えています。大きな理由は物価目標を達成できなかったからです。

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次に、マルチェロ・ムスト[編著]『マルクス・リバイバル』(地平社)を読みました。著者は、カナダのトロントにあるヨーク大学社会学教授であり、マルクス研究の復権に近年多大な貢献をしてきた論者として世界的に知られる存在だそうです。実は、この編著者を招いて、今週、私の勤務する立命館大学で講演会がありました。私も出席しようかと考えなくもなかったのですが、先週に私が参加した経済学部教員の飲み会で講演会が話題になり、reprpductive/reproduction とは、私は something 不妊治療だと思っていて、普通は不妊治療も含めた生殖医療を指すのですが、マルクス研究では「再生産」という特殊な意味を持つ、と聞いて少し驚いてしまいました。少なくとも本書冒頭の資本主義を邦訳している我が同僚教員の宇野派のプリンスは、私の理解が通常の英語の理解だろうと認めてくれましたが、どうも、マルクス研究の界隈では違うようです。私は官庁エコノミストとして60歳の定年まで公務員をしていて、まさに、政府公認の経済学を持ってお仕事をしてきたわけで、マルクス研究ははるか彼方の大昔の大学生だったころで終了しています。ですので、日本語でも理解がおぼつかないマルクス研究なのに、英語の講演会では出席しても意味はなかろう、と考えて出席は取り止めました。本書も読んでみましたが、それほど理解がはかどったとも思えません。序章に続いて、冒頭の資本主義や共産主義、さらに、民主主義から始まって22のチャプターで専門家たちが最近時点でのマルクス研究の成果を紹介しています。最後の22章は、マルクス主義と題してウォーラーステイン教授が執筆しています。繰返しになりますが、冒頭章は資本主義と共産主義から始まる一方で、私がマルクス研究のもっとも興味ある経済学と歴史研究については章立てされていない点は少し不思議に感じました。まあ、好意的に考えれば、経済学や歴史研究についてはすべてのチャプターでそれぞれ言及されている、ということなのかもしれません。いくつかの章で史的唯物論というのはお目にかかった気がしますが、それでも、歴史発展の方向性や法則は私にとってはマルクス研究のもっとも重要なポイントのひとつですので、章立てしてほしかった気がします。最後に、ノーベル経済学賞に日本人がまったくウワサにもならないように、主流派経済学では日本の学界や研究者は決してトップレベルに達していません。ほど遠いといえます。本書を読むと、これまた、マルクス研究でも日本人研究者がまったく執筆に参加していません。グローバル化をテーマとする第16章執筆のチョン・ソンジン教授が慶尚北道国立大学の所属となっていて、韓国のご出身のように見えます。日本人研究者は主流派経済学だけでなく、マルクス研究でも遅れを取っているのだろうか、と少し気になってしまいました。極めて限定的な私の経験からして、日本のマルクス研究は脱成長と環境問題に重点を置いているように見えますが、AIをはじめとする技術進歩の問題にもマルクス研究の観点からの発言を期待しています。はい、大いに期待しています。

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次に、岩井圭也『真珠配列』(早川書房)を読みました。著者は、小説家なのですが、最近ではドラマの原作となった『最後の鑑定人』が人気のようです。本書の舞台は近未来の中国であり、その理由はゲノム操作の規制がもっとも緩やかな国のひとつだからであり、本書はそのゲノム操作をテーマとしています。タイトルの真珠配列とは理想的なゲノム配列を意味します。癌をはじめとする病気に罹患しにくかったり、肥満しにくい体質だったり、というような感じで、いわゆるデザーナベビーのヒトゲノム配列のようなものです。それをこれから生まれてくる生殖段階で実施するデザイナーベビーではなく、すでに生まれた後の成人などでゲノム操作をする、というものです。あらすじは、異常な速さで進行する癌による死者が出始め、特に、その死者の中に有力政治家の子息が含まれていて、北京市公安局刑事偵査総隊=犯罪捜査課の捜査官である郝一宇=アーロン・ハオが本書の主人公で、操作を担当する警察官の1人です。捜査協力者として、新疆ウイグル自治区出身のウイグル人の遺伝子エンジニアであるマリク・ヌアイマーンと協力しているのですが、ウイグル人は漢人から強く差別されており、ほとんどテロリストとみなす警察官もいたりします。例えば、アーロンが付き合っている恋人がいて、彼女の父親が警察幹部であることから、アーロンはそのコネを持って出世を期待しているのですが、その恋人の父親がウイグル人を捜査から外すように圧力をかけたりします。ということで、ゲノム操作と異常に早く進行する癌の関係をめぐって捜査が進み、真相が明らかにされます。最後に、ゲノム操作とか遺伝子関係の私の知識は極めて限定的なのですが、そういったこの界隈の情報をそれほど持ち合わせていなくても、ミステリとして十分楽しむことが出来ます。ただ、ウイグル人に対する漢人の感情については、少し日本人の想像を超えています。

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次に、麻根重次『千年のフーダニット』(講談社)を読みました。著者は、ミステリ作家なのですが、2023年に『赤の女王の殺人』で島田荘司選 第16回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞して、作家としてデビューしています。この前作は私はすでに読んでレビューしています。本書と前作とはまったく何の関連もなく、それぞれ独立した作品として楽しむことが出来ます。本書、基本的にはミステリと考えるべきなのですが、舞台はほぼほぼ1000年後の世界です。冷凍睡眠=コールドスリープした7人が1000年後に目覚めると、そのうちの1人が死んでいた、という事件について、ハウダニットとフーダニットの謎を解き明かそうと試みます。主人公はコールドスリープした7人のうちのクランです。若くして妻を喪い失意に沈んで人類初のコールドスリープに参加します。ほかにも、イリヤ、シーナ、カイ、シモン、クロエ、マルコのさまざまな事情を抱えた男女7名は「テグミネ」という繭のような装置で長い渡る眠りにつき、1000年後に目覚めると、テグミネのなかでミイラと化したシモンの他殺体を発見することになるわけです。そして、残された6人は、結局、コールドスリープの施設の外に出て活動を始めます。最後はどんでん返しもあって、当然ながら、驚くべき真相が待っています。SF仕立てのミステリで、単行本で400ページ近くと、それなりのボリュームありますが、とてもスラスラと読めます。当然、コールドスリープや何やの基礎知識は必要とされません。ただ、コールドスリープに入るには、本人以外が装置のオペレーションをする必要がある、というのがポイントです。また、私のベタな感想では森博嗣『すべてがFになる』を思い出してしまいました。はい、この2点はギリギリながらネタバレではないと思います。最後に、私個人としては、ハウダニットとフーダニットの謎解きはいいとしても、動機にややムリを感じました。

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次に、和仁かや『江戸の刑事司法』(ちくま新書)を読みました。著者は、早稲田大学法学学術院教授であり、ご専門は近世日本法制史だそうです。本書では、バーチャルお白州ということで、タイトル通りに、徳川幕府の「公事方御定書」を基に、さらに、実際の裁判記録である「御仕置類例集」などをひも解いて、徳川時代の刑事司法を紹介しています。本書冒頭でも指摘しているように、近代以降の日本や西洋の刑事司法と違って、徳川期は理不尽な拷問をしたり、残酷な刑罰を乱発したり、といったイメージがある一方で、人情味溢れるいわゆる「大岡裁き」だって存在した、というTVドラマの影響も見逃せないところです。本書では章別に、盗みと火附といった犯罪から始まって、不倫、というか、いわゆる姦通、さらに、現時点でも決して議論がつきない処罰なのか更生なのかの議論、また、現代的な心神耗弱の前近代の表れのひとつである「物の怪」などに起因した乱心による犯罪、最後に、女の罪、のそれぞれを取り上げて歴史的にひも解いています。裁きを下す裁判官役の役人も、重罪である資材や遠島を申し渡す際には前もって幕閣の老中に確認するなど、手続き面も大いに言及されています。もちろん、近代的な三権分立の概念が成立する以前のことであり、立法権と行政権と司法権すべてを幕府が一手に握って、さまざまな配慮をしつつも、近代的な行政や司法制度と違って強権的な裁きを行っていた例があることは明らかです。その意味で、国際法を無視して独裁者的に振る舞って、勝手な利益を追求する米国トランプ政権のやり方を少し思い起こさせるものがありました。

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次に、碧野圭『凜として弓を引く 覚醒篇』(講談社文庫)を読みました。著者は、ラノベ作家であり、私が聞いたのことがあるのは「書店ガール」のシリーズです。読んだことはありませんし、渡辺麻友が主演し、稲森いずみも出演しているTVドラマ化されていたのは知っていましたが、それほど熱心には見ていません。この「凜として弓を引く」シリーズは、初巻から始まって、「星雲篇」、「初陣篇」、「奮迅篇」ときて、本書「覚醒篇」で5巻目となります。当たり前ですが、私は第1巻から第4巻まで順に読んでいます。中学を終えて名古屋から東京に引越して来て、武蔵西高校に入学する矢口楓を主人公とする弓道青春小説です。同級生の真田善美やその兄の真田乙矢に誘われて、近くの神社の弓道教室に通うようになり、かつて名門弓道部のあった武蔵西高校2年に進級して、弓道同好会として復活させて各種大会予選に出場する、というのが第4巻奮闘篇までです。この第5巻覚醒篇では、3年生に進級して同好会を弓道部に昇格させて、主人公の矢口楓は引き続き部長を務めます。西武蔵高校弓道部は関東大会に出場し、同級生の弓友である真田善美はインターハイの個人戦で優勝したりします。関東大会やインターハイの場面もあるわけですので、都内や関東に限らず弓道部のある全国の高校のライバルも何人か登場します。そして、この第5巻の最後で、主人公の矢口楓は武蔵西高校を卒業して西北大学に推薦入学により進学します。西北大学というのは「都の西北」なんですから、早稲田大学がモデルなんではないかと想像しています。当然、弓道部がありますし名門だという設定です。主人公の矢口楓や同級生の真田善美が大学生になって、まだまだ、第6巻以降に続きます。なお、私は弓道についてはまったく知識も経験もなく、本書で頻出する弓道の技術的な用語はすべてすっ飛ばして読んでいます。たぶん、そのあたりの知識や情報があった方が読書を楽しめそうですが、そこはラノベですので、窮屈なことはいわない方がいいと思います。

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2026年1月16日 (金)

世界経済フォーラム Global Risks Report 2026 に見る経済リスクの後退

来週1月19日から始まるダボス会議を前に、世界経済フォーラム(WEF)から、一昨日の1月14日、「グローバルリスク報告書 2026」Global Risks Report 2026 が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。まず、世界経済フォーラムのサイトからリポートの要旨を引用すると以下のとおりです。

Global Risks Report 2026
The Global Risks Report 2026, the 21st edition of this annual report, marks the second half of a turbulent decade. The report analyses global risks through three timeframes to support decision-makers in balancing current crises and longer-term priorities. Chapter 1 presents the findings of this year's Global Risks Perception Survey (GRPS), which captures insights from over 1,300 experts worldwide. It explores risks in the current or immediate term (in 2026), the short-to-medium term (to 2028) and in the long term (to 2036). Chapter 2 explores the range of implications of these risks and their interconnections, through six in-depth analyses of selected themes. Below are the key findings of the report, in which we compare the risk outlooks across the three-time horizons.

たぶん、リポートの Key findings p.12 の FIGURE 7 Relative severity of global risks, short term (2 years) and long term (10 years) と第1章 Global Risks 2026-2036: The Age of Competition p.20 に現れる FIGURE 17 Relative severity of global risks, short term (2 years) and long term (10 years) は同じものだと思うのですが、後者の方を引用すると次の通りです。

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見れば判りますが、横軸が Short-term severity (2 years)、縦軸が Long-term severity (10 years) となる散布図です。基本的に、このグラフの右上に行くほど短期でも長期でも深刻度が高い、ということなのですが、大雑把に短期の深刻度は長期と正の相関にあるように見えます。これまた大雑把に、Debt にせよ、Economic downturn にせよ、青いドットの経済的なリスクは、経済以外のほかの環境や地政学のリスクに比較して、深刻度はそれほど高くない、とみなされているようです。ですので、リポート p.19 では、"Economic risks are absent from the top 10 rankings when it comes to the outlook for the next decade, featuring primarily at the lower end of the risk ranking." と評価されていたりします。

私はダボス会議はそれほど注目していませんので、これくらいでお茶を濁しておきますが、何かあれば、また、取り上げたいと思います。

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2026年1月15日 (木)

上昇率が縮小した12月の企業物価指数(PPI)

本日、日銀から昨年2025年12月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+2.4%の上昇となり、58か月連続の上昇です。先月11月統計からやや伸びは縮小したとはいえ、日銀物価目標の+2%を上回って高い上昇率が続いています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。


国内企業物価12月は前年比2.4%上昇、24年4月以来の低い伸び
日銀が15日に発表した12月の企業物価指数(CGPI)速報によると、国内企業物価指数は前年比2.4%上昇した。農林水産物や非鉄金属などが上昇に寄与した。58カ月連続プラスとなったが、伸び率は縮小して2024年4月(1.2%上昇)以来の低さとなった。前月比では0.1%上昇だった。
指数は2020年水準を100として128.1。指数は比較可能な1980年以降で最高水準となっている。
前年比の上昇で最も指数の押し上げに寄与したのは農林水産物で、前年比26.8%上昇した。集荷業者が農家に支払う概算金が引き上げられたことがコメの値上がりにつながったほか、鳥インフルエンザ発生の影響で鶏卵も上昇した。
非鉄金属は銅、金などの市況上昇の影響で、飲食料品は原材料や包装資材などの諸コスト上昇を転嫁する動きなどでそれぞれ値上がりした。
全515品目中、前年比で上昇したのは364品目、下落は127品目。差し引きは237品目。
日銀の担当者は「今月は銅をはじめとする非鉄金属市況の上昇と、原油市況の下落がおおむね相殺し、全体として小動きとなった」と説明した。
前年比の伸び率は縮小傾向にあるものの、専門家は「高市政権の拡張的な財政政策への懸念などから円安が進行しており、輸入物価の上振れがラグを伴って国内企業物価の上昇圧力となる」(大和証券のエコノミスト、鈴木雄大郎氏)と指摘する。先行きについては「政策効果の影響を除けば、伸び率は徐々に下げ渋っていく公算が大きい」(同)という。
合わせて公表された2025年(暦年)の企業物価指数は前年比3.2%上昇で、伸び率は前年の2.4%から加速した。農林水産物、飲食料品、非鉄金属などが上昇に寄与した。

インフレ動向が注目される中で、長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下のパネルは国内物価指数そのものを、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、企業物価のうちヘッドラインとなる国内物価上昇率は、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.4%でした。実績の+2.4%はジャストミートしましたが、引き続き、日銀物価目標の+2%を大きく上回っていることは事実です。国内物価が上昇率が高止まりしている要因は、引用した記事の3パラ目にもあるように、農林水産物とそれに連動した飲食料品の価格上昇です。引き続き、コメなどが高い上昇率を示しています。また、対ドル為替相場は、高市内閣の成立により円安が進んでおり、2025年10月+2.2%、11月+2.6%の円安の後、12月も+0.5%の円安となり、平均で対ドルレートは150円台半ばを記録しています。さらに、私はエネルギー動向に詳しくないので、日本総研「原油市場展望」(2026年1月)を参考として見ておくと、1月のWTI原油先物価格は、米国によるベネズエラ攻撃やイランにおける反政府デモの激化などから、地政学的リスクの増大を通じた供給懸念により一時60ドル台に乗せたものの、先行き見通しについては「原油価格は、年央にかけて50ドル台前半に下落する見通し。」とされています。加えて、「ベネズエラにおける急速な原油増産は困難」と指摘しています。ただ、円ベースの輸入物価指数の前年同月比は、今年2025年2月から11か月に渡ってマイナスを続けてきましたが、12月統計では前年同月から横ばいを示しています。いずれにせよ、国内物価の上昇は原油価格ではなく国内要因による物価上昇であることは明らかです。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、まず、引用した記事にもある通り、農林水産物は2025年11月の+29.8%からやや減速したとはいえ、12月も+26.8%と高止まりしています。これに伴って、飲食料品の上昇率も12月は+5.0%と、前月11月の+5.1%とほぼ同じ上昇率となっています。電力・都市ガス・水道は11月の▲1.0%から、12月は▲4.5%と政府の電気・ガス料金負担軽減支援事業により下落幅を拡大しています。ただ、この政策は3月使用分までですので、4月からはどうなるのか不透明です。引用した記事の4パラ目にもある非鉄金属は11月の+14.9%から12月には+22.1%と上昇幅が大きく拡大しています。

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2026年1月14日 (水)

第一生命経済研究所のリポート「どうなる? 2026年の物価と家計負担!」

やや旧聞に属するトピックながら、1月5日に第一生命経済研究所から「どうなる? 2026年の物価と家計負担!」と題するリポートが明らかにされています。結論を先取りすると、昨年2025年から4人家族で約+8.9万円の家計負担増の可能性がある一方で、政府による物価高対策により▲2.5万円の負担軽減策が取られる、と見込んでいます。物価上昇を中心に簡単にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 輸入物価と消費者物価 のグラフを引用すると上の通りです。オレンジの折れ線グラフの消費者物価上昇率は、少しラグを伴いつつもブルーの輸入物価上昇率と連動していたのですが、ここ1-2年の最近時点では、コメ価格の上昇がインフレの大きな要因となっている点に現れているように、輸入インフレではなく国内要因に基づく物価上昇であると結論しています。はい、私も従来から日本のインフレは金融政策取りも石油価格の方に敏感に反応すると考えていましたが、最近ではコメをはじめとする食料価格の影響が大きいのは、その通りです。ですので、円安が進んでも為替が大きく物価に影響するという状態ではない可能性があります。少なくとも、金利引上げによって為替を円高に誘導してインフレ抑制を図るという政策割当は疑問が大きいといわざるを得ません。

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次に、リポートから 消費者物価インフレ率と春闘賃上げ率 のグラフを引用すると上の通りです。このグラフだけを見ると、消費者物価指数で計測したインフレは春闘賃上げ率を下回っており、実質賃金が上昇しているように見えますが、先週1月8日に厚生労働省から公表された毎月勤労統計でも明らかなように、昨年2025年11月の統計まで11か月連続で実質賃金は前年同月を下回ってマイナスを記録しています。ですので、上のグラフも一定の幅を持って見ておく必要はありますが、日本経済研究センター(JCER)によるESPフォーキャスト通りに今後も消費者物価が推移するとすれば、2025年のインフレ率+3.1%に対して2026年のインフレ率は+1.8%に鈍化する、と指摘しています。私も、おそらく、インフレ率は近く日銀物価目標の+2%を下回る可能性が高いと考えています。
このインフレ予想にしたがって、リポートでは、「家計の1人あたり負担増加額は2025年に前年から+3.8万円(4人家族で+15.3万円)増加した後に、2026年はそこから+2.2万円(4人家族で+8.9万円)の増加にとどまると試算される」と結論しています。加えて、ガソリン軽油の暫定税率排しなどの「政府の物価高対策でインフレに伴う今年の家計負担額は▲22%程度軽減される」とも試算しています。

60歳の定年までの公務員のころは管理職でしたが、私も再就職でヒラ教員となって労働組合員に復帰しました。まずは、春闘でしっかりと賃上げを勝ち取ることが必要です。それがなければ、多くの前提が崩れることになりかねません。

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2026年1月13日 (火)

2か月連続で悪化した12月の景気ウォッチャーと貿易黒字が拡大した11月の経常収支

本日、内閣府から昨年2025年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2025年11月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.1ポイント低下の48.6、先行き判断DIは+0.2ポイント上昇の50.5を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+3兆6741億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

街角景気12月は0.1ポイント低下、2カ月連続悪化 物価高など重荷
内閣府が13日に発表した12月の景気ウオッチャー調査で現状判断DIは48.6となり、前月から0.1ポイント低下した。2カ月連続のマイナスで、回答者からは物価高や中国からの渡航自粛の影響について言及があった。
現状判断DIのトレンドを見極める上で重視している3カ月移動平均は48.8で、前月から0.5ポイント上昇した。内閣府の担当者は「全体として前月から大きく変化はなかった」とし、ウオッチャーの見方も「景気は、持ち直している」で据え置いた。
指数を構成する3部門では、雇用関連が前月から1.4ポイント上昇し49.5となった。一方、家計動向関連が48.2、企業動向関連が49.2と、それぞれ0.3ポイント低下した。家計関連では「物価高の影響により、忘年会シーズンの飲食店への納品が増加せず、お歳暮商品の売り上げも伸びなかった」(四国=一般小売店[酒])、企業関連では「物価高に伴うコストの拡大に対して、価格転嫁が進んでいない」(中国=通信業)といったコメントがみられた。
中国の渡航自粛の影響については「中国からのインバウンドの減少は回復のめどが立たず、長引くことが懸念される」(近畿=旅行代理店)といった指摘があった。
日銀の利上げ実施に関しては「金利上昇で企業の資金繰りや個人ローン返済に与える影響が懸念され、景気回復が勢いづくことは見込めない」(九州=金融業)など、相対的にネガティブな影響を指摘する声が多かった。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月から0.2ポイント上昇の50.5。2カ月ぶりに前月を上回った。内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」とまとめた。
調査期間は12月25日から31日。日銀は18-19日に開いた金融政策決定会合で、政策金利を0.75%に引き上げることを全員一致で決めた。
経常黒字、11月は前年比10%増 貿易黒字拡大で
財務省が13日発表した国際収支状況速報によると、11月の経常収支は前年同月比10%増の3兆6741億円の黒字と、ロイターがまとめた民間調査機関の事前予測とほぼ同水準だった。黒字は10カ月連続。貿易収支の黒字幅が拡大したことが主因。
海外子会社からの配当収入などを示す第一次所得収支の黒字幅は前年から65億円拡大し、3兆3809億円となった。第二次所得収支は2880億円の赤字と、赤字幅が縮小した。
貿易収支は6253億円の黒字と、黒字幅が前年から5062億円拡大。半導体・電子部品、医薬品、非鉄金属などの輸出がアジア向けを中心に伸びた一方、輸入は3カ月ぶりに減少に転じた。
ドル/円相場は155.12円と前年比0.9%の円安(インターバンク直物相場・東京市場中心値の月中平均レート)だった。
一方、訪日外国人客(インバウンド)は前年比10.4%増の351万人と11月としては過去最高となった。ただ、出国日本人の増加やインバウンドの消費単価の減少などから、旅行収支は黒字が前年比1055億円減り、4524億円となった。旅行収支を含むサービス収支は441億円の赤字に転じた。
農林中金総合研究所の理事研究員、南武志氏は、かつての国際収支のけん引役だった貿易黒字の拡大は、4月以降のトランプ関税による輸出減少の反動増の可能性があると指摘、今後の展開には引き続き注視が必要とした。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では昨年2025年10月統計の49.1まで6か月連続で上昇を記録した後、11月48.7、そして、本日公表の12月48.6と2か月連続で低下しています。先行き判断DIも同様に上昇を見せており、10月統計は前月から+4.6ポイント上昇の53.1となっています。他方、先行き判断DIはやや荒っぽい動きを見せており、昨年2025年10月統計で前月から+2.8ポイントの大きなジャンプを見せて53.1を記録した後、11月50.3、12月50.5と推移しています。本日公表の昨年2025年12月統計の季節調整済みの現状判断DIをより詳しく前月差で見ると、家計動向関連のうちでは、小売関連が▲1.8ポイントの低下のほかは、飲食関連が+6.5ポイント、住宅関連が+3.3ポイント、サービス関連も+0.5ポイント、それぞれ上昇しています。住宅関連については、11月統計で前月から▲3.3ポイント低下した反動が戻っただけであり、ならしてみれば、前々月の10月統計から横ばいにしか過ぎません。したがって、それほど改善したという印象ではありません。企業関連では、製造業が+1.6ポイント上昇したものの、非製造業は逆に▲2.0ポイント低下しています。製造業でも、米国の通商政策の影響が一巡した可能性が十分あります。また、家計関連と企業関連とは別の雇用関連は前月から+1.4ポイント上昇しています。人手不足の影響かもしれません。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を昨年2025年10月統計から「景気は、持ち直している」と上方修正し、12月統計でもこれを据え置いています。ただし、国際面での米国の通商政策とともに、国内では価格上昇の懸念は大いに残っていて、今後の動向が懸念されるところです。景気判断理由の概要について、引用した記事にもいくつかありますが、内閣府の調査結果の中から、近畿地方の家計動向関連に着目すると、「様々な値上げが影響しており、特に米については新米の価格も高く、販売量が伸びない。クリスマスケーキやおせちの予約も、前年を下回っている(スーパー[企画担当])。」といった物価上昇の悪影響を上げた意見を見かけました。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事の通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスは実績とほぼ同水準の黒字ということでしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、+3.6兆円余りの黒字の見込みでしたので、実績の+3.6兆円兆の黒字はほぼ市場のコンセンサスに一致しています。季節調整していない原系列の統計では、引用した記事にもあるように、貿易収支が+6000億円を上回る大きな黒字を記録したのに加え、第1次所得収支が3兆円を上回る黒字を計上しています。何といっても、日本の経常収支は第1次所得収支が巨大な黒字を計上していますので、貿易・サービス収支が赤字であっても経常収支が赤字となることはほぼほぼ考えられません。はい。トランプ関税によって貿易収支や貿易・サービス収支の赤字が拡大したとしても、第1次所得収支で十分カバーできると考えるべきです。ですので、経常収支にせよ、貿易・サービス収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても特段めでたいわけでもない、と私は考えています。ただ、米国の関税政策の影響でやたらと変動幅が大きくなるのは避けた方がいいのは事実です。

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2026年1月12日 (月)

みずほリサーチ&テクノロジーズによる今年2026年春闘の予想やいかに?

ものすごく旧聞に属するトピックながら、昨年2025年12月29日、みずほリサーチ&テクノロジーズから今年2026年春闘における賃上げ予想を取りまとめたリポート「26年春闘は25年並みの高い賃上げ率で妥結へ」が明らかにされています。タイトル通りに、今年2026年春闘における高い賃上げ率を予想しています。まず、リポートから最初のパラを引用すると次の通りです。

2026年春闘では3年連続となる5%台の賃上げ率実現へ
労働組合は2026年春の賃上げ交渉に向け、2025年に続き高い賃上げ要求の方針を公表した。インフレによる実質賃金の目減りを取り戻すための強気の要求である。一方、企業側も人手不足が早期に解決する目途が立っておらず、経営環境さえ問題なければ、組合の要求に応じる可能性が高いとみられる。企業にとっては、賃上げが単なる「コスト」ではなく「人への投資」として位置づけられており、こうした企業の「賃上げノルム」の変化も賃上げ継続の大きな要因になっていると考えられる。

リポートでは、まず、経営環境として、企業の景況感や業績見通しは良好であり、高水準の賃上げを継続し得る経営環境は整っていると評価できる、と指摘し、加えて、労働組合が総じて強気の賃上げ要求を掲げていること、さらに、日銀短観などに見られる人手不足感が極めて強いことなどを上げて、今年2026年春闘でも3年連続で+5%の賃上げ実現される、と結論しています。リポートから 春闘賃上げ率 のグラフを引用すると次の通りです。

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そして、焦点はむしろ、賃上げの有無から、賃金上昇率がインフレを上回るか、つまり実質賃金が上昇するような賃上げ幅になるかに移ってきており、食料・エネルギーなど生活必需品の価格上昇が一服することが見込まれることから、2025年同様の高い賃上げで妥結できれば、実質賃金が持ち直す可能性が高い、と見込んでいます。そうであって欲しいと、私も強く期待しています。

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2026年1月11日 (日)

Eurasia Group による Top Risks for 2026 やいかに?

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先週、Eurasia Group による Top Risks for 2026 がリリースされています。上のリポート表紙にもありますが、以下の通りです。

Risk 1
US political revolution
Risk 2
Overpowered
Risk 3
The Donroe Doctrine
Risk 4
Europe under siege
Risk 5
Russia's second front
Risk 6
State capitalism with American characteristics
Risk 7
China's deflation trap
Risk 8
AI eats its users
Risk 9
Zombie USMCA
Risk 10
The water weapon

私ははなはだ専門外で、日本語版pdfファイルもアップロードされていますので、詳細はそちらに譲りますが、2点だけ、Risk 1 は明らかですが、簡単にリポートを引用しておくと、「ドナルド・トランプ大統領は、自らの権力に対する抑制を組織的に解体し、政府機構を掌握し、それを敵に対して武器化しようとしている。」= "President Donald Trump's attempt to systematically dismantle the checks on his power, capture the machinery of government, and weaponize it against his enemies." と指摘しています。加えて、Risk 2 は誤解を招かきかねないので注意が必要です。すなわち、スラッと見ると、Risk 1 と同じように、米国のトランプ大統領が過剰な権力を手にしたようにも読めますが違います。21世紀で最も重要な技術は電気で動いており、電気自動車(EV)、ドローン、そして何よりもAIを例に上げていて、それらがバッテリー、モーター、パワーエレクトロニクス、組み込み計算機などの電気スタック=electric stack という共通の基盤を持っており、しかも、「中国はこれを掌握した。米国はこれを譲り渡しつつある。」= "China has mastered it. The United States is ceding it." と指摘しています。
世界経済フォーラム(WEF)によるダボス会議は1月19日から始まり、その直前には World Risks Report 2026 も出ることと思います。米国のトランプ政権が何を始めるか極めて不透明な地政学的リスクがある中で、コチラも注目です。

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2026年1月10日 (土)

今週の読書は新刊書読書少なく計4冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、ヘンリー・サンダーソン『電気自動車は本当にエコなのか』(原書房)では、電気自動車(EV)などに広く用いられているバッテリー生産のために、リチウムやコバルトといった鉱物資源が自然環境や労働条件を考えることなく乱掘されており、環境破壊や労働者の健康被害を起こしている実態に着目しています。町田章『AI時代になぜ英語を学ぶのか』(文春新書)では、言葉が持つ機能は決してコミュニケーションだけではなく、そのバックグラウンドとなる文化や体験も含めて、人間らしい思考力を身につけるために外国語学習が必要であり、自分の生まれ育った環境以外の経験も重要と指摘しています。レオ・マレ『探偵はパリへ還る』(新潮文庫)は、フランスのハードボイルド・ミステリ小説であり、第2次世界大戦下のドイツで捕虜として収容所の病院で働く探偵ビュルマは、瀕死の男から「エレーヌに伝えてくれ、駅前通り120番地」と謎の言葉を残され、釈放後フランスへ戻ると探偵助手が死の間際に同じ住所を告げます。大山誠一郎『死の絆』(文春文庫)では、赤い博物館と通称される警視庁付属犯罪資料館の館長である緋色冴子が助手の寺田聡とともに30年以上も前の事件も含めて、資料館に送られてくる事件の真相解明のために再捜査に挑みます。
今年2026年の最初の新刊書読書はこの4冊となります。これらの新刊書読書のほかに、新刊書ではないので取り上げていない年末年始の読書もかなりあります。麻根重次『赤の女王の殺人』(講談社)は同じ作者の最新作である『千年のフーダニット』への準備を兼ねて読みましたし、碧野圭『凜として弓を引く』(講談社文庫)のシリーズ計5冊も読んで、すでに、SNSでシェアしていたりします。また、本日レビューしている大山誠一郎『死の絆』(文春文庫)のシリーズ前2作『赤い博物館』と『記憶の中の誘拐』も読んでいます。加えて、シリーズ外ながら、大山誠一郎『蜜室蒐集家』(文春文庫)も読みました。ただ、新刊書ではないので、本日のレビューには含めていません。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のツイッタ)、あるいは、mixi、mixi2などのSNSでシェアしたいと予定しています。

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まず、ヘンリー・サンダーソン『電気自動車は本当にエコなのか』(原書房)を読みました。著者は、ファイナンシャル・タイムズ紙のジャーナリストです。英語の原題は Volt Rush であり、2022年の出版です。私がタイトルから期待した内容と少し違って、電気自動車に限定せずにスマートフォンなどでも広く使われている蓄電池のためにリチウムやコバルトをはじめとする各種鉱物が環境負荷を考えずに乱掘されている実態を告発しています。最初に取り上げられている金属はリチウムであり、私くらいの専門外のエコノミストでもリチウム電池は聞いたことがあります。次がコバルトであり、こういった金属あるいは鉱物資源について、周囲の自然環境や労働条件を考えることなく乱掘されており、環境を破壊するとともに、労働者の健康被害なども着目しています。その上で、典型的な環境破壊・健康被害をもたらしているのが中国企業である点が強調されている気がします。たぶん、その通りなのだろうと思いますが、何分、米国でトランプ政権が成立する前の出版ですので、今後、環境問題を無視する政権下で米国企業も名を連ねる可能性がある点は忘れるべきではありません。最後に、私が期待した内容と違っている点を書きとめておきたいと思います。すなわち、私はトヨタなんぞと同じように、現在の日本では、電気自動車(EV)が輸送部門のカーボン・ニュートラルの決め手になるとは考えていません。なぜなら、EVが走行中に二酸化炭素を排出しないのは明らかであり、製造や廃棄まで含めたライフサイクル・アセスメントでもEVの二酸化炭素排出が小さい点は確認されているのですが、そもそも、EVに充電する電力が化石燃料で発電されていれば、結局、カーボンニュートラルへの貢献が限定的になるからです。資源エネルギー庁のパンフレット「日本のエネルギー」などを見る限り、水力発電を含む再エネ比率がドイツ、英国、スペインなどで40%を超えている一方で、日本の場合、まだその半分の20%そこそこにしか過ぎません。二酸化炭素を発生させない再エネで発電された電力をEVに充電するのでないと、カーボンニュートラルは進みません。発電段階で化石燃料を使って二酸化炭素を排出していたのでは何にもなりません。その意味で、本書の内容は私の期待通りではありませんでした。

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次に、町田章『AI時代になぜ英語を学ぶのか』(文春新書)を読みました。著者は、日本大学法学部教授であり、ご専門は認知言語学だそうです。AIを持ち出す前にも、とっても有能な機械翻訳サービスが始まっており、私自身はそれほど英語については苦労していません。ですので、本書でも指摘しているように、言葉が持つ機能は決してコミュニケーションだけではなく、そのバックグラウンドとなる文化や体験も含めて、人間らしい思考力を身につけるために外国語学習が必要、という結論なのだと思います。その点は同意します。ただし、そういった異文化体験というか、自分の生まれ育った環境以外の経験のために視野を広げるのは、本書では何ら言及ありませんが、読書やズバリ海外生活なんかも大いに役立つわけで、外国語の学習以外にも手段や方法はいっぱいあります。そのうちのひとつ、という理解で私はいいと思います。本種の著者はもっとも有効な手段のひとつ、と考えているかもしれません。加えて、機械翻訳がここまで発達すればOKなのかもしれませんが、母語をしっかり理解するという役目も、私は外国語学習に期待していて、その観点も本書では抜けています。機械翻訳が今ほど発達していなかったころ、英語に翻訳しやすい日本語で考えて表現する、という作業が重要であったのを記憶している人も少なくないものと思います。そういった外国語の表現を頭に入れて母語の表現を考える、というのも有効かと私は考えています。最後に、本書はタイトル通りに「英語」の学習に特化した観点で議論を進めていますが、お示しした観点も含めて、たぶん、英語よりもスペイン語の方が論理的で本書の視点には合致しそうな気がします。例えば、ということでいえば、スペイン語には過去形が2種類あり、一定の継続性を伴う行為を示す線過去と一時的な過去の表現をする点過去です。本書では、英語の現在完了形で have gone to と have been to で苦しい言い訳めいた違いの説明をしていますが、スペイン語であればこういった説明が不要になる可能性がある、と私は考えています。ただ、pax Britanica や pax Americana の時代が長らく続いて、英語が事実上の世界標準言語の地位をしっかり占めている現在では、やっぱり、英語学習が外国語教育の中でももっとも重要になるんだろうということは理解しています。

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次に、レオ・マレ『探偵はパリへ還る』(新潮文庫)を読みました。著者は、フランスの小説家なのですが、第2次世界大戦中に国家反逆罪で収監されドイツの収容所に送られ、フランスに帰還した後、ハードボイルド小説を書き始めています。本書のフランス語の原題は 120, rue de la Gare であり、1943年の出版です。本書は本邦初訳だそうです。主人公はフィアット・リュクス探偵事務所の所長であるネストール・ビュルマであり、私立探偵と考えるべきです。ハードボイルドなミステリなのですが、ホームズに対するワトソン役は見当たりません。ストーリーは場所により2部構成となっていて、リヨン編とパリ編に分かれます。ストーリの冒頭は第2次世界大戦下のドイツで、主人公のビュルマは捕虜として収容所の病院で働いています。その病院で、記憶を喪失し瀕死の状態の男から謎の言葉を告げられます。「エレーヌに伝えてくれ、駅前通り120番地」です。その「駅前通り120番地」がフランス語の原題となっているわけです。ビュルマは収容所から釈放されて、リヨンに着いたところで、探偵事務所の助手のロベール・コロメルが射殺されます。その際に、何と、同じように「所長、駅前通り120番地」という言葉を残して死んで行きます。なお、どうでもいいことながら、文庫本の後ろカバーや出版社の紹介文で、なぜか、この助手が射殺されるのがパリであるかのような言及がなされていますが、ドイツで釈放されてスイスを横断してリヨンに到着した矢先の出来事ですので、パリではあり得ないと思います。さらに、コトを複雑にしているのが、ビュルマの秘書がエレーヌ・シャトランという名で、メッセージを伝えるべき相手と同じファーストネームなものですから、警察は彼女を尾行したりします。そして、ビュルマはパリに帰還し、いろいろと、いかにもハードボイルドな調査を実行して謎を解明し、助手の射殺犯を突き止めます。なにぶん、1943年というドイツに占領されていた当時のパリですので、科学捜査などの時代的な制約とともに、交通の不便さもありますし、まったくドイツや占領軍批判は現れません。底意地の悪いドイツ軍将校に調査の邪魔をされる、といった場面もありません。繰返しになりますが、捜査の進め方はハードボイルドですし、謎解きはとても明快です。今まで邦訳されていなかったのが不思議なくらいです。

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次に、大山誠一郎『死の絆』(文春文庫)を読みました。著者は、ミステリ作家であり、京都大学ミステリ研究会のご出身です。今まで私はまとまった本としては、この著者の作品を読んだことがありませんでしたので、初読の作家さんといえます。ただ、短編ミステリの名手ですので、どこかのアンソロジーで短編作品を読んでいるのではないかという気がします。本書は、三鷹にある警視庁付属犯罪資料館「赤い博物館」の館長である緋色冴子警視と助手の寺田聡の2人が、すでに時効となった事件などの古い犯罪について、ほぼほぼ勝手に再捜査して真実を突き止める、というシリーズ第3作です。本書以前の『赤い博物館』と『記憶の中の誘拐』についても、本書に先立って読んでいて、シリーズを順番で読書しています。館長の緋色冴子はキャリアの警察官ながら、コミュニケーション能力に問題があって無愛想で、閑職に追いやられています。表情にも乏しいので、本書では時折「雪女」と表現されていたりします。助手の寺田聡は警視庁捜査1課の敏腕刑事だったのですが、捜査資料を現場に置き忘れるという大失態があって、これまた、閑職に追いやられています。シリーズはすべて短編ミステリであり、第1作の『赤い博物館』では、緋色冴子はまったく館外には出かけず、寺田聡に捜査を任せっきりにして安楽椅子探偵の役割を務めています。逆に、第2作の『記憶の中の誘拐』では、緋色冴子は必ず資料館の外部に出かけていって、寺田聡とともに捜査活動をしています。そして、このあたりが作者のシリーズの進め方の上手なところなのですが、この第3作では、とうとう公式・非公式に警視庁捜査1課から再捜査の依頼を受ける事件も出始めています。ただ、30年くらい前の事件もあ含まれていて、関係者の記憶については作者の都合で鮮やかに蘇らせることは可能としても、いわゆる科学捜査の技術的な限界があったりするのは当然です。本書に収録sれているのは6話の短編であり、まず、「30年目の自首」では、時効が成立した殺人事件の真犯人だと男が名乗り出てきます。続いて、「名前のない脅迫者」では、飲酒運転の取締りから逃走した自動車が炎上します。続いて、「3匹の子ヤギ」では、深夜のコンビニに押し入った強盗犯がウォークイン冷蔵庫で自殺してしまいます。続いて、「掘り出された罪」では、社員寮の解体の際にコンクリートからナイフが発見され、昔の殺人事件の再捜査が始まります。続いて、表題作の「死の絆」では、衆議院議員とホームレスが、多摩川沿いの小屋で野球のバットで殴り殺された未解決事件の真相に挑みます。最後に、「春は紺色」は、前日譚であり、警視庁の兵頭英介警視と寺田聡が偶然出会って、兵頭英介と同期の緋色冴子が入庁当初に警察学校に通っていたころの謎解きの思い出を語ります。私は、このシリーズ3作だけでなく、同じ作者の短編集『蜜室蒐集家』も年末年始休みに読みましたが、いずれもとてもレベルの高い短編ミステリです。ただ、なりすまし、というか、入替りがトリックに多用されているように感じました。その点で、好みが分かれるかもしれません。

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