2023年2月 6日 (月)

メディアをザッピングした本日の雑感

なかなかリポート採点が終わらない無間地獄に陥りつつも余裕を失いたくない今日このごろです。メディアをザッピングして簡単に2点だけ、そして、別件から1点だけ記録しておきたいと思います。

日経新聞のサイトで、「日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診 政府・与党が最終調整」と題する記事を見ました。記事のポイントを3点引用すると以下の通りです。注目は3番めのポイントでしょう。さらに、頭の回転が鈍い私にはよく理解できないジェンダー論を振りかざして、日銀OGである日本総研理事長が副総裁に就任したりすれば、アベノミクスはこれで完全に終了し、デフレに逆戻りした上で新たな景気停滞の10年が始まると私は予想します。他方で、「新しい戦前」にならないよう願っています。

【この記事のポイント】
  • 日銀次期総裁に雨宮正佳副総裁を充てる案で政府が調整
  • 2人の副総裁も含めた人事案を2月中に国会に提示
  • 異次元緩和の副作用をふまえ金融政策の正常化が使命に

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Economist 誌から The world's most, and least, democratic countries in 2022 の画像を引用すると上の通りです。いくつかの段階に分けて民主主義と権威主義が色分けされています。米国はもはや full democracies のではなくなり、西欧以外では、日本・韓国、チリなどのごく限られた国しか残らなくなってしまったのかもしれません。私の直感的な印象で、当然ながら、ヘリテージ財団の Index of Economic Freedom と強く相関しています。ただし、ヘリテージ財団は日本の経済的自由度は韓国よりも低い、とランキングしています。まあ、中国についてはもっとも権威主義レジームが強くて、経済的自由度も低い、というのは衆目の一致するところかもしれません。

最後に、どうでもいい点をひとつだけ、リポートの採点をしていて気づきの点です。というのは、当然ながら、学生番号と指名をチェックしながら採点しているわけですが、伝統的な名前が少なくなっている気がします。何が伝統的な名前かといえば、名前の最後の文字です。すなわち、男子学生の名前で「x男」、「x雄」、「x夫」と書いて、「xxお」と読ませる名前はほとんど見かけなくなりました。女子学生の方では「x子」が、これもほとんどいません。むしろ、いわゆるキラキラネームの方が目につくくらいです。漢字も凝ったものが多いです。我が家では小学校2年生とか3年生で初めて自分の名前を漢字で書く時に苦労しないように考えて、子供達の名前には10画未満の漢字を使いましたが、恐ろしく複雑な漢字を使っている名前も見かけます。実は、私が東京にいた時に師事した書道の先生から、お勤めが定年になった後に非常勤で近くの都立高校の書道教員をして、卒業証書の名前を400人とか500人分書く時、もう60歳を過ぎた書道のお師匠さんでも初めて見る漢字が必ず2-3人はあった、と聞かされた記憶があります。私は多様化はそれそのものとしてはいいことだと考えていますが、社会的な混乱をもたらすまでに多様化するケースはどうか、とも思っており、それくらい年齢を重ねてしまったのかもしれません。

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2023年2月 5日 (日)

昨年の映画のヒット作やいかに?

やや旧聞に属するトピックながら、1月31日に、日本映画製作者連盟から「日本映画産業統計」が明らかにされています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が徐々にフェイドアウトし、興行収入はCOVID-19前の水準に戻りつつあるように見えます。pdfのプレスリリースもアップされています。まず、朝日新聞のサイトからニュースの最初のパラだけを引用すると以下の通りです。

100億円超えメガヒットが4作、3本は日本アニメ 昨年の映画興収
大手映画4社で作る日本映画製作者連盟(映連)は31日、昨年の興行収入が前年比31.6%増の2131億1100万円だったと発表した。現在の発表形式になった2000年以降では7位の数字。コロナ禍で大きく落ち込んだが、19年以前の水準にほぼ戻った。

ということで、100億円超のメガヒット4本をはじめとして、邦画と洋画を取り混ぜたトップ5は以下の通りです。洋画の「トップガン マーヴェリック」以外、すなわち、トップ5に入った邦画はすべてアニメ、ということになります。

  1. One Piece Film Red (197.0億円)
  2. 劇場版 呪術廻戦 0 (138.0億円)
  3. トップガン マーヴェリック (135.7億円)
  4. すずめの戸締まり (131.5億円)
  5. 名探偵コナン ハロウィンの花嫁 (97.8億円)

最後に、私は映画は見ていませんが、ノベライズされた小説を読んだ「すずめの戸締まり」のポスターは以下の通りです。

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2023年2月 4日 (土)

今週の読書はまたまた経済書なしで計5冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、伸井太一・鎌田タベア『笑え! ドイツ民主共和国』(教育評論社)は、社会主義時代の旧東ドイツのジョークを収録しています。あさのあつこ『乱鴉の空』(光文社)は、小暮進次郎と遠野屋清之介が主人公となる弥勒シリーズの時代小説で、シリーズ第11巻目となります。絲山秋子『まっとうな人生』(河出書房新社)は、十数年前の『逃亡くそたわけ』の続編であり、富山県を舞台にしています。保阪正康『昭和史の核心』(PHP新書)は、太平洋戦争を中心に昭和史をひも解いています。最後に、中村淳彦『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社新書)は、新宿歌舞伎町を舞台に中年男性から風俗産業で資金を得た女性がホストに貢ぐというエコシステムを貧困女性に対するインタビューをてこに明らかにしています。
ということで、今年の新刊書読書は、先月1月中に20冊、そして、2月に入って今週の5冊の計25冊となっています。後期の授業を終えて、何となくだらけて経済書を読んでいないのは別としても、『乱鴉の空』は私はミステリと考えていますが、最近の読書では極めてミステリが少なくなっています。来週こそはしっかりとミステリも読みたいと思います。

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まず、伸井太一・鎌田タベア『笑え! ドイツ民主共和国』(教育評論社)です。著者は、ドイツ製品文化・サブカルライターと東ベルリン生まれでドイツ語ネイティブのフリーライターです。実は、1月21日付けの朝日新聞の読書欄で紹介されていて大学の生協で買い求めました。日本人的な観点からすると、欧州のジョークは英国が一番であって、ドイツ人はそれほどジョークを得意としているわkではない、特に、社会主義体制下の旧東ドイツは尚さら、という見方がありそうな気がしますが、私はそれなりに外国生活を経験して、旧ソ連や社会主義だったころの東欧圏でもジョークはいっぱいあるのは知っていました。例えば、先日のブログでも取り上げましたが、東ドイツ製の自動車トラバント(あるいは、ソ連製のラダでも何でもOK)とロバが道で出会った際の会話で、ロバがトラバントに対して「自動車くん」っと挨拶を呼びかけるのに対して、トラナbトが挨拶を返して「ロバくん」と呼びかけると、ロバが不機嫌になり、ロバの方はトラバントに対して「自動車」とサバを読んで格上げしているのだから、トラバントもロバのことを「ウマ」くらいにお世辞をいえないのか、と文句を垂れる、といったものです。トラバントは「自動車」ではない、それは、ロバがウマではないのと同じ、という趣旨です。もっとも、私の知っているこのトラバントに関するジョークは本書には収録されていませんでした。ただし、本書でも、そういった種類の旧東ドイツに関するジョークが、ドイツ、ないし、東ドイツの概要の解説から始まって、政治ジョーク、お役人ジョーク、生活ジョーク、インターナショナルなジョーク、ブラックなジョーク、などと分類されて収録されています。ドイツ語の表現とともに収録されていて、当然に、邦訳するよりもドイツ語そのままの方がヒネリが利いている、というジョークが少なくありません。実は、私は大学生の頃は第2外国語はドイツ語を取った記憶が鮮明にあるのですが、まったくドイツ語は理解しません。むしろ、在チリ大使館に3年間勤務しましたので、スペイン語の方が理解がはかどります。でも、東欧のスラブ語ではなく、西欧のラテン語から派生した言語はそれなりに共通性があります。英語で clear は日本でも理解されやすい外来語ですが、ドイツ語では klar、スペイン語では claro になります。英語では限られた意味しか持ちませんが、ドイツ語やスペイン語では単独で使うと「もちろん」という肯定の回答になったりします。おそらく、イタリア語とスペイン語は大元のラテン語にもっとも近いんではないか、と私は想像しています。でも、他の言語をそれほど理解しませんし、パリに行った際にはフランス語ではなくスペイン語ですべて済ませていた程度の語学力ですので、詳細は不明です。脱線しましたので本書に戻ると、私も知っている範囲で、モノ不足をモチーフにしたジョークと情報制限や情報操作をモチーフにしたジョークが印象的でした。前者では、資本主義地獄に対して社会主義地獄では生産が不足して針山ができない、とかですし、後者ではナポレオンが東ドイツの製品でもっとも欲しがるのはご当地の新聞で、ワーテルローで破れたことを知られずに済む、というものです。ナポレオンについては、本書では言及していませんが、ロスチャイルドがワーテルローで英国勝利の情報をいち早く得て巨利を得た、という史実を踏まえています。本書で欠けている最後のポイントなど、もう少しドイツから視野を広げた方がジョークをより楽しめる、という些細な難点はありますが、まあ、面白い本でした。

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次に、あさのあつこ『乱鴉の空』(光文社)です。著者は、『バッテリー』などの青春小説でも有名な小説家です。本書は「弥勒」シリーズの最新刊であり、シリーズ第11作めに当たります。私は、たぶん、全部読んでいると思います。主人公は、極めてニヒルですべてを見通したかのような八丁堀同心の小暮進次郎、そして、国元では刺客・暗殺者として育てられながら江戸に出て商人として成功した遠野屋清之介ですが、小暮進次郎の手下の岡っ引きである伊佐治も重要や役回りを演じます。ということで、本書では、小暮進次郎の屋敷が奉行所の探索にあって小暮進次郎が姿をくらますとともに、手下の伊佐治が大番屋にしょっぴかれて取調べを受けるところからストーリーが始まります。まずは、遠野屋清之介が伊佐治の店である梅屋に現れて、商いのツテから伊佐治の釈放に努めます。そして、小暮進次郎の行方は遠野屋清之介がつきとめ、別の案件に見えた鍛冶職人やその関係者が襲われるという事件から、謎が解かれていきます。実に大きな天下国家にかかわる事案であることが明らかにされます。本書では、最後の方に遠野屋清之介に発見されるまで、ほぼほぼ小暮進次郎が不在なので、いつもとは違う雰囲気のストーリー展開です。その分、というわけでもないのでしょうが、伊佐治の家族、というか、梅屋の一家の様々な面を垣間見ることができます。また、このシリーズは時代小説ながら、基本的にはミステリだと私は理解しており、これまた、小暮進次郎の頭の中だけで謎解きがなされる、というのもこのシリーズの特徴です。ある意味で、このシリーズの終りが近いことを感じさせた作品でした。というのは、このシリーズは町方の小さな事件から始まって、少し前には抜け荷=密輸のお話が出てきましたし、この作品では、繰り返しになりますが、公儀を揺るがせかねないほどの天下国家の大事件が背景に控えている可能性が示唆されます。同心と岡っ引きの事件探索に実は凄腕の剣術家の商人が関わってストーリーが展開される、という基本ラインはほぼほぼ終了した気がします。でも、少なくとも遠野屋に手妻遣いの新たな人物が送り込まれてきましたし、少なくとも次回作には続くんだろうと思います。まあ、何と申しましょうかで、シリーズ終了まで私は読み続けそうな予感があります。最後の最後に、有栖川有栖の本格ミステリに『乱鴉の島』というのがあります。大丈夫と思いますが、お間違えにならないようご注意です。

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次に、絲山秋子『まっとうな人生』(河出書房新社)です。著者は、小説家であり、「沖で待つ」により芥川賞を受賞しています。たぶん、私はこの「沖で待つ」と、本書の前作に当たる『逃亡くそたわけ』とか、やや限られた作品しか読んでいません。ということで、前作に当たる『逃亡くそたわけ』は福岡の精神病院から20歳過ぎの女子大生の花ちゃんが、名古屋出身で慶応ボーイの20代後半サラリーマンのなごやんが脱走して、阿蘇や鹿児島までクルマで逃走する、というストーリーでした。本書は、何と、その花ちゃんとなごやんが十数年を経て富山県で再会し、ともに家族持ち、というか、結婚して配偶者を得、さらに、子供もともに1人ずつもうけるという舞台設定での続編です。ですから、前作で何度も登場したマルクス『資本論』からの一節はまったく出てきません。そして、前作では、まだ精神病が治り切っていない段階でも逃亡劇でしたが、本作では薬の服用はあるものの、ライオンめいた精神科医に飛び込んで診察して薬の処方箋を出してもらう、といったシーンはありません。ストーリーは、2人が富山県で再会して家族ぐるみのお付き合いが始まる、というところから始まり、共通の趣味であるキャンプに行ってなごやんの家の犬が行方不明になって探したり、さまざまな人生、もちろん、タイトル通りのまっとうな人生に起こり得るイベントへの対応で進みます。最後の方で、なごやんが音楽フェスに行くかどうかで、絶対に行くというなごやんと反対する花ちゃんやなごやんの奥さんが仲違いしそうになったり、といったクライマックスに向かって進みます。このあたりは、コロナ文学の一部が現れています。実に、作者の筆力がよく出ている優れた作品です。ストーリー、というか、大衆文学に求められがちなプロットの面白さ、あるいは、結末の意外性などをまったく持たなくても、これだけ書ければ読者は満足する、という意味での純文学のパワーが感じ取れます。まあ、シロートが書いているわけでもないですし、芥川賞作家なのですから当然といえます。ただ、プロットではないかもしれませんが、「沖で待つ」にせよ、前作『逃亡くそたわけ』にせよ、この作品でも、恋愛関係にない男女の仲、というか、関係や心の動きなどを実にうまく表現しています。他の作品をそれほど読んでいるわけではありませんが、この作者の真骨頂を増す部分かもしれない、と思ったりしています。男女の機微も含めて、本書では風景や情景というよりも、登場人物の心の動きが実に繊細かつ美的に描写されています。それらを表現する言葉を選ぶセンスが抜群です。まあ、これも当然です。最後に、2011年3月の東日本大震災やそれに起因した原発事故の後には、震災文学と呼ばれる作品がいくつか発表されました。本書は、その意味でいえば、コロナ文学といえるかもしれません。私は不勉強にして、ほぼほぼ初めてコロナ文学を読んだ気がします。なごやんの音楽フェス待望論ではないですが、コロナとの付き合い方を登場人物が正面から考え、小説としてコロナのある日常を描こうという試みの小説は、他にもあるとは思うものの、その中心をなす作品かもしれない、と思ったりも足ます。

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次に、保阪正康『昭和史の核心』(PHP新書)です。著者は、作家、評論家とされていますが、私は基本的にジャーナリストに近いラインと考えています。ですから、文藝春秋の半藤一利と同じような属性、と考えていたりします。なお、本書の最終第5章のそれも最後の方で半藤一利が言及されていて、本書の著者はそれに対して「作家の」という形容詞を付けていて、やや笑ってしまいました。他方で、著者は太平洋戦争当時の軍部に対してき分けて批判的な見解を本書でも明らかにしており、ある意味で、リベラルなのかもしれない、と思ったりします。まあ、違うかもしれません。ということですので、本書のタイトルに即していえば、昭和史の最大重視されるべき史実は太平洋戦争、ということになります。ただ、それは本書の著者でなくても大部分の日本国民は同意することと思います。ですから、ハッキリいって、本書はそれほど歴史の勉強になるものではありません。著者独自の見解がいくつか見られますが、たぶん、平均的な日本人と大きくは違わないものと私は受け止めています。加えて、本書巻末で示されているように、本書に初出の論考はありません。すべて、毎日新聞、信濃毎日新聞、共同通信から配信されたコラムなどを編集し直したものですので、新たに発見された歴史的事実が示されているわけでもありません。ただ、いくつか考えるべき論点は示されています。すなわち、著者の最も関心深い戦争についてで、本書では軍部が日清戦争の教訓から戦争を「儲かるもの」として捉え、太平洋戦争でも勝つまで遂行する、という姿勢を崩さなかった、と指摘していますが、私は違うと思います。というのは、基本的に儲かるかどうかを経済学的に考えると、設備投資と同じで投資とリターンの収益性を考えることになりますので、「勝つまで止めない」ではなく、そもそも「始めるかどうか」についてキチンと原価計算する、ということが要諦です。ですから、原価計算が出来ていなかった、というのが真相ではなかろうか、あるいは、原価計算を判断する主体がいなかった、ということだろうと思います。後者から考えるに、本書でも指摘しているシビリアン・コントロールが欠如していた、ということになります。日清戦争や日露戦争では、明らかに、政府首脳が戦争をやるかやらないか、あるいは、どこで止めるか、についてしっかりと判断を下しています。まあ、第1次世界対戦が欧州の勝手で始まって、勝手で終わってしまったために、やや感覚がおかしくなった面はあると思います。でも、経済計算や原価計算で戦争を考えるのは限界、というか、軍部の態度がそうだったとするのにはムリがあります。加えて、ほぼほぼ日本国内で議論が尽きていて、海外の反応という要素がまったく欠落しています。このあたりを批判的に考えながら読み進み必要があります。

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最後に、中村淳彦『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社新書)です。著者は、ノンフィクション・ライターで、少し前までは風俗ライターだったと本書では自ら記しています。本書は、タイトル通りに、新宿歌舞伎町、特に、ゴジラヘッドが特徴的な新宿東宝ビルができた2018年以降に、そのあたりに集まり出したトー横キッズなどを中心に、風俗産業や街娼などで中年男性から得た資金をホストに貢ぐといった使い方をする貧困女性などを取材して取りまとめた結果です。なお、おそらく、本書では言及されていませんが、プレジデントオンラインにて本書と同じタイトル、同じ著者による『歌舞伎町と貧困女子』という連載がありますので、おそらく、かなりの程度には連動しているのだろうと想像されます。取材対象はあくまで歌舞伎町貧困女子であり、繰り返しになりますが、表裏を問わず風俗産業で男性から得た資金を持って、多くの場合はホストに貢いだり、何らかの暴力的な要因も含みつつ男性に奪取されたり、といったために貧困に陥っている女性です。そして、中には月収100万円超の女性もいますが、それをホストに貢ぐために稼いでいるのであって、自分の消費に回す部分は極めて小さい、ということが想像されます。加えて、こういったインタビュー対象の女性の中には、何らかの精神的な疾患や障害を抱えている人もいます。個別のインタビィーは本書を読むか、プレジデントオンラインを見るのがベストですので、個々では詳細には言及しませんが、とても悲惨な現状が明らかにされています。まあ、合いの手に、警察の規制が厳しくなって活動範囲が大きく制限されるようになったヤクザの現状なども、まあ、歌舞伎町のエコシステムの一部でしょうから、簡単にルポされていたりします。私は性産業で搾取される女性に極めてシンパシーを感じていて、一般社団法人Colaboの活動などは強く支持していますが、ただ、本書でも例外があって、パパ活の定期19人で月に150万円以上稼いで、ホストに入れあげることもなくガッチリ貯金している女子大生がいましたので、こういうのをクローズアップしてColaboの活動などに反論したりするする連中もいるのだろうと思います。何と申しましょうかで、60歳の定年まで公務員だった私のような凡庸な人間には、なかなか目につかない世界なのだという気はしますが、こういった現実がまだまだある点は忘れるべきではないと思います。最後に、歌舞伎町における資金の流れ、というか、中年男性から風俗産業の女性が資金を得て、それがホストに貢がれる、という歌舞伎町のエコシステムに何度か言及されていますが、その食物連鎖の底辺の男性にはインタビューがなされている一方で、頂点のホストへのインタビューはありません。少し物足りないと感じる読者もいそうな気がします。

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2023年2月 3日 (金)

1月の米国雇用統計はちょっとびっくりの+517千人増を記録

日本時間の今夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、非農業部門雇用者数の前月差は直近の1月統計でも+517千人増となり、失業率は前月からさらに低下して3.4%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に5パラ引用すると以下の通りです。

U.S. jobs report today: Economy added 517,000 jobs despite recession risk; unemployment fell to 3.4%
Employers added a booming 517,000 jobs in January as hiring unexpectedly surged despite high inflation, rising interest rates and the prospect of a weakening economy.
The unemployment rate fell from 3.5% to 3.4%, lowest since 1969, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had forecast 185,000 job gain.
The blockbuster jobs total will likely not be welcomed by a Federal Reserve looking for job gains and wage growth to slow to further reduce high inflation and bolster its plan to pause its aggressive interest rate hike campaign in coming months.
As a result, futures traded for the Dow Jones Industrial Average dropped by nearly 80 points after the report was released.

よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが広がった2020年4月からの雇用統計は、やたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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ということで、米国の雇用は非農業部門雇用者の増加が、ちょっとびっくりの+517千人蔵を記録しました。加えて、失業率もさらに低下して3%台半ばのここ50年来の水準を続けているわけですので、労働市場の過熱感は継続していると考えるべきです。もちろん、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が強力な金融引締めを実施していますが、それでも、直近の連邦公開市場委員会(FOMC)では、従来の利上げ幅から大きく縮小させて25ベーシスポイントにとどめました。私自身は米国経済はインフレ抑制のコストとして景気後退に陥るであろうと考えていましたが、1月の雇用統計を見る限り、雇用はまだまだ強いとしか言いようがありません。例えば、引用した記事の3パラ目にあるように、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは+200千人を下回る+185千人程度の雇用増との見通しだったので、実績は上振れた印象です。加えて、失業率も前月からさらに低下しています。明らかに、米国連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーが長期的な均衡水準と考える+4%を下回った状態が続いています。私が知る限り、昨年2022年も、一昨年2021年も、なぜか、1月の雇用者数増加幅は大きく跳ねる傾向があるのですが、毎年1月には季節調整をかけ直すので、何らかの統計のクセが出ている可能性は否定できませんが、それにしても、+500千人超の雇用増はちょっとしたサプライズです。ですので、USA Todayの記事の5パラめにあるように、FEDのさらなる強力な金融引締めを予想して株式市場は下落するという反応を見せました。他方で、米国のメタなどの大手IT企業が相次いで大幅な人員整理を打ち出していると報じられており、こういった動きが統計に反映されるのには少し時間がかかるのかもしれません。他方で、量的には失業率も雇用者数も加熱気味なのですが、同じ米国労働省の統計で見る限り、賃金上昇もインフレもピークを越えたように見受けられるのも事実です。下のグラフは、時間あたり賃金の伸びと消費者物価の前年同月比上昇率をプロットしています。少なくとも、パッと見ではすでにピークを超えた印象があります。

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節分にまくのは大豆ではない???

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昨日2月2日付けのウェザーニュースのコラムで、「節分といえば大豆?」と題するコラムがあり、北日本などでは大豆ではなく落花生をまく、という事実を、何と、60代半ばになって初めて知りました。上の画像はウェザーニュースのサイトから引用しています。
ウェザーニュースでは全国落花生協会にインタビューし、私が判断する限り合理的な理由としては、「雪の中に撒いた豆を拾うのは落花生の方が楽ですし、後で食べることを考えると殻に入った豆の方が衛生的である」と指摘されています。私は平均的な日本人よりは合理的であろうと自負していますが、まあ、ご指摘の通りなのかもしれません。でも、逆に、私は日本一の落花生の産地である千葉県民を3年ほどしていたことがありますが、千葉県では落花生ではなく大豆を使っていたように記憶しています。

まだまだ、人生で知らないことはいっぱいあるようで、年齢がいくつになっても勉強です。

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2023年2月 2日 (木)

帝国データバンク「『食品主要195社』価格改定動向調査」やいかに?

一昨日1月31日に、帝国データバンクから「『食品主要195社』価格改定動向調査」の結果が明らかにされています。リポートでは、今年2023年に値上げする食品は調査対象となった主要食品メーカー195社で、4月までに1万品目を超え、足元で値上げの動きが収まる気配は見られない、としています。まず、帝国データバンクのサイトから主要な結論を3点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 月間2000品目超の値上げ、夏まで常態化の可能性も 今後注目は「輸入小麦」と「飲料」
  2. 年内値上げは食品主要195社で1万品目突破 前年より3カ月早く到達
  3. 2月は加工食品で昨年以降最多の「値上げラッシュ」 3月には菓子が月間最多に

もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。物価が上昇する中で、特に食品価格の動向は注目されるところですので、リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 2023年の食品値上げの品目数/月別 を引用すると上の通りです。2023年1月末までに決定した今年中の飲食料品値上げ品目数は、上場する主要105 社で1万482品目、非上場の主要90社で1572品目がそれぞれ予定されており、累計で1万2000品目を超え、4月1日までに累計で1万品目を突破します。特に、4月には輸入小麦の価格改定が控えており、その結果がどのように反映されるかは必ずしも十分に確定されていないものの、大きな注目の的となっています。当然に、改定幅次第では現在のところ値上げの動きが比較的沈静化しているパンなどの製品価格に波及する可能性が十分あります。ほかに、物流などのコスト増が続いていますので、かさ張って重い酒類や飲料の値上げ動向も注意が必要です。値上げの原因としては、原材料高を理由とするものが99.5%に達し、加えて、原油高などのエネルギー88%、プラスチック容器などの包装・資材71%、などが理由に上げられています。

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続いて、リポートから 主な食品分野 価格改定の動向 を引用すると上の通りです。品目別では、加工食品6657品目がもっとも多く、チルド麺や缶詰製品のほか、ウィンナー製品などの値上げが目立っています。次いで、ドレッシングや醤油、ポン酢製品を中心とした調味料2236品目、焼酎や輸入ワイン・ウイスキーなど酒類を中心にした酒類・飲料1810品目が続きます。

消費者サイドでは、値上げは消費抑制にしか働きませんが、企業サイドでは収益が改善される場合もありえます。それが従業員の所得に還元されれば、消費の停滞はいく分なりとも緩和される可能性もあります。コストダウンのための設備投資の動向も気にかかるところです。製品値上げの背景とした従業員への賃上げや設備投資など、企業行動に注目が集まります。

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2023年2月 1日 (水)

民主党政権下での子ども手当をどう評価すべきか?

我が家で購読してい朝日新聞を読んでいると、「子ども手当への『愚か者』発言に立憲民主反撃 『罵詈雑言言われた』」と題する記事があり、民主党政権下での子ども手当に関する評価に対して岸田総理が反省を示した、と報じられています。朝日新聞のサイトから記事の最初のパラだけを引用すると以下の通りです。

子ども手当への「愚か者」発言に立憲民主反撃 「罵詈雑言言われた」
立憲民主党は、民主党当時に児童手当の代わりとして所得制限のない「子ども手当」を創設した際、自民党から受けた攻撃に対する逆襲に出た。所得制限がないことを理由に丸川珠代参院議員から「この愚か者めが」との批判を受けたことに強く反発。丸川氏も岸田文雄首相も「反省」に追い込まれた。

はい。私も当時の子ども手当には評価すべき点があると分析し、長崎大学の紀要論文「子ども手当に関するノート: 世代間格差是正の視点から」を取りまとめています。そして、最後に、 "This study reviews circumstances of Japanese nurturing from the viewpoint of its cost and concludes that redressing the inter-generational inequality between the working and the retired generations should be one of the most effective measures to pick up birth rate." と、訳せば「本研究は、日本の子育て事情をコストの観点から見直し、現役世代と引退世代の世代間格差を是正することが、出生率を引き上げるためのもっとも有効な手段のひとつであると結論付けた。」と結論しています。まあ、私の論文の中では割と出来のいい方で、法政大学の林教授の論文で引用されたりしています。誰も見ないだろうと思いますが、参照先は以下の通りです。

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国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し改定」やいかに?

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昨日、シンガポールにおいて国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。IMFのサイトから成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。
現在のインフレは2023~24年にかけて低下するものの、平均的な成長率には達しない、と見込まれています。世界経済の成長率は今年2023年+2.9%と、昨年2022年10月時点の見通しから+0.2%ポイント上方改定されています。日本の成長率見通しも同じように、2023年1.8%と前回見通しよりも+0.2%ポイントの上方改定となっています。2023年の成長率見通しを国別に見ると、米国が+0.4%ポイント上方改定されて+1.4%、また、中国が+0.8%ポイント上方改定されて+5.2%となったあたりが寄与度が大きそうです。特に中国は0コロナ制作からの転換が成長率の上昇をもたらしている可能性があります。以下、リポートから少し引用しつつ、私なりに重点を振り返りたいと思います。
世界経済のインフレ率は、現在の+10%近い水準から、2023年+6.6%、2024年+4.3%に低下すると見込んでいますが、まだ新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック前と比較すると+3.5%ポイント高い、と指摘しています。加えて、先行きに関しては、"The balance of risks remains tilted to the downside" としており、インフレ率は低下するとしつつも、生計費危機については、"amid the cost-of-living crisis, the priority remains achieving sustained disinflation" であると指摘しています。

最後に、私は、実は、「危機」crisis というのであれば、生計費もさることながら、現在の金融引締めが流動性供給や資金調達に影響して、小規模なものかもしれないとしても、何らかの金融的な不安定につながる懸念を持っているのですが、リポートでも "With tighter monetary conditions and lower growth potentially affecting financial and debt stability" と指摘しています。これはご参考です。

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2023年1月31日 (火)

いよいよ球春到来、明日から始まるプロ野球のキャンプやいかに?

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いよいよ球春
明日から、西武ライオンズを除くプロ野球11球団がいっせいにキャンプインします。上の画像は朝日新聞のサイトから引用しています。
我がタイガースは例年通り沖縄県の宜野座村野球場です。岡田監督が返り咲いて、今年こそアレを目指してがんばってください。

リーグ優勝と日本一目指して、
がんばれタイガース!

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弱含み続く鉱工業生産指数(IIP)と物価上昇に追いつかない商業販売統計と堅調な雇用統計ほか

本日は、月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも昨年2022年12月統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.1%の減産でした。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.8%増の15兆1930億円でした。季節調整済み指数では前月から+1.1%の増加を記録しています。また、雇用統計では、失業率は前月から横ばいの2.5%を記録し、有効求人倍率も前月から横ばいの1.35倍となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産2年ぶり低下 22年0.1%下落 コロナ前下回る
経済産業省が31日発表した2022年通年の鉱工業生産指数(15年=100)は前年比0.1%低下の95.6だった。2年ぶりに低下した。新型コロナウイルス流行前の19年(101.1)を下回っている。中国・上海市のロックダウン(都市封鎖)が解除された22年6月以降、生産用機械工業や自動車工業が回復していた反動が影響した。
22年10~12月期は95.4(季節調整済み)と前期比で3.1%低下した。
22年12月の指数(同)速報値は前月比0.1%低下の95.4だった。2カ月ぶりに低下した。生産判断は「弱含み」を維持した。国内外での需要減が響き、幅広い業種で前月を下回った。
生産は全15業種のうち、10業種で低下した。汎用・業務用機械工業は前月比で6%マイナスだった。ボイラー部品で前月からの反動が出たほか、汎用内燃機関は搭載製品が他の部品の調達不足で生産が減少した。鉄鋼・非鉄金属工業は3%、電気・情報通信機械工業は1.2%、それぞれマイナスとなった。
4業種は増加した。航空機用発動機部品などの自動車工業を除く輸送機械工業は4.5%増えた。自動車工業は0.6%、生産用機械工業は0.7%、それぞれ増加した。無機・有機化学工業のみ横ばいだった。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は1月は前月比で横ばいを見込む。企業の予測値は上振れしやすく、例年の傾向をふまえた経産省の補正値は4.2%のマイナスとなった。2月の予測指数は4.1%の増加を見込む。
経産省の担当者は今後の見通しに関して「コロナ感染拡大の国内外の経済への影響や、物価上昇について注視していく必要がある」と話した。
12月の小売販売額3.8%増 飲食料品の価格上昇も影響
経済産業省が31日発表した2022年12月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比3.8%増の15兆1930億円だった。10カ月連続で前年同月を上回った。飲食料品の価格上昇でコンビニエンスストアやスーパー、ドラッグストアなどで増加が目立った。
コンビニは前年同月比3.9%増の1兆1014億円、スーパーは4.2%増の1兆5490億円だった。ドラッグストアは11.1%増の7312億円。新型コロナウイルスの感染拡大で医薬品の販売が好調だったという。
百貨店は3.7%増の6776億円、家電大型専門店は2.5%増の4845億円となった。ホームセンターは2カ月ぶりに増加に転じ、2.8%増の3395億円だった。除雪用品がよく売れた。
小売業販売額を季節調整済みの前月比で見ると、1.1%の増加だった。基調判断は「持ち直している」で据え置いた。
22年の年間小売販売額は154兆4040億円に上り、前年比で2.6%の増加となった。
求人倍率1.28倍に上昇、失業率は2.6%に低下 2022年
厚生労働省が31日発表した2022年平均の有効求人倍率は1.28倍と、前年を0.15ポイント上回った。新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開に伴い求人が伸びた。総務省が同日発表した22年平均の完全失業率は2.6%と前年に比べて0.2ポイント低く、4年ぶりの低下となった。雇用状況は改善している。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。22年は平均の有効求人が前年比12.7%増となり、有効求人倍率の上昇に寄与した。
22年の雇用状況は月を追うごとに改善した。厚労省があわせて発表した22年12月の有効求人倍率(季節調整値)は1.35倍と前月比で横ばいだった。1月の1.20倍から上昇し、8月以降は1.3倍台で推移している。
コロナ禍前の19年平均(1.60倍)には届かないが、先行きは有効求人倍率の回復が続く可能性がある。先行指標となる新規求人倍率は22年平均が2.26倍と、前年を0.24ポイント上回った。22年12月も2.39倍と、コロナ禍前だった19年12月の2.41倍に近づいている。
22年平均の完全失業者数は179万人で前年比16万人減った。減少は3年ぶり。就業者数は6723万人と前年比10万人増えた。22年12月の完全失業率は2.5%で前月から横ばいだった。
15歳以上の人口に占める就業者の割合を示す就業率は22年平均が60.9%と、前年比0.5ポイント上昇した。上昇は2年連続で、25年ぶりの高水準となった。

とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は▲1.2%の減産という予想でしたので、実績の▲0.1%減にはサプライズはありませんでした。ただし、引用した記事にもある通り、減産は減産ですので、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断を「生産は弱含んでいる」で据え置いています。先月の下方修正を維持した形です。中国の上海における6月からのロックダウン解除をはじめとする海外要因から、7~9月期は季節調整済みの系列の前期比で見て+5.8%の増産でしたので、9~12月の▲3.1%の減産は反動の面もあるともいえます。もっとも、欧米先進国ではインフレ対応のために急激な金融引締を進めており、海外景気は大きく減速していますので、これも含めて内外の需要要因の方が大きいと私は考えています。例えば、経済産業省の解説サイトでは「12月は、汎用・業務用機械工業を始めとして多くの業種で低下したことなどから、2か月ぶりに低下」と減産の要因を解説しています。他方で、製造工業生産予測指数を見ると、足元の1月は12月から横ばい、2月は+4.1%の増産と、それぞれ予想されています。もっとも、上方バイアスを除去すると、1月の予想は前月比▲4.2%減となります。産業別に112月統計を少し詳しく見ると、減産寄与が大きいのは汎用・業務用機械工業の前月比▲6.0%減、寄与度▲0.47%、鉄鋼・非鉄金属工業の前月比▲3.0%減、寄与度▲0.18%、電気・情報通信機械工業の前月比▲1.2%減、寄与度▲0.11%などなどとなっていて、他方、生産増の寄与がもっとも大きかった産業は輸送機械工業(除、自動車工業)の前月比+4.5%増、寄与度+0.09%、自動車工業の+0.6%増、寄与度+0.08%、生産用機械工業の前月比+0..7%減、寄与度+0.06%、となります。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売額は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大による行動制限のない状態が続いており、外出する機会にも恵まれて堅調に推移しています。今年のゴールデンウィーク明けにはCOVID-19が感染法上の5類に分類されるようですから、小売業をはじめとする商業販売の上では追い風といえるかもしれません。季節調整済み指数の後方3か月移動平均でかなり機械的に判断している経済産業省のリポートでは、12月までのトレンドで、この3か月後方移動平均の前月比が+0.1%の上昇となり、ギリギリでプラスを維持していますので基調判断を「持ち直している」で据え置いています。他方で、消費者物価指数(CPI)との関係では、8~10月統計では前年同月比で+4%を超える増加率となっており、CPIの上昇率を上回る伸びを示していたのですが、11~12月統計ではCPI上昇率に届かず、やや雲行きが怪しくなってきています。インフレの高進と同時に消費の停滞も始まっている可能性が否定できません。引用した記事では、ホームセンターの除雪用品の売上増はご愛嬌としても、インバウンドの増加もあって百貨店などの売上が増加しているようです。最近まで石油価格の上昇に伴って増加を示していた燃料小売業が、11月統計の前年同月比では▲2.6%の減少に転じ、厳冬の12月統計でも+3.2%増にとどまっています。おそらく、数量ベースではさらに停滞感が強まっている可能性があります。ということで、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。第2に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていません。ですから、足元での物価上昇の影響、さらに、サービス業へのダメージの大きな新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響は、ともに過小評価されている可能性が十分あります。特に、前者のインフレの影響については、12月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、ヘッドラインも生鮮食品を除くコアCPIも、ともに前年同月比上昇率で+4.0%に達しており、名目の小売業販売額の+3.8%増はやや物価上昇を下回っています。ですから、この2点を考え合わせると、実質の小売業販売額は過大評価されている可能性には注意すべきです。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分はほかのグラフと同じで景気後退期を示しています。そして、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から横ばいの2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、前月から小幅改善の1.36倍と見込まれていました。実績では、失業率は市場の事前コンセンサスにジャストミートし、有効求人倍率は市場予想からやや下振れしました。総合的に見て、「こんなもん」という気がします。いずれにせよ、足元の統計はやや鈍い動きながらも雇用は底堅いと私は評価しています。ただし、休業者が12月統計では前年同月から+42万人増と、やや増え方が大きくなっている気がします。特に、製造業で+8万人となっている点は気がかりです。そういった中で、雇用の先行指標である新規求人を産業別に、パートタイムを含めて新規学卒者を除くベースの前年同月比伸び率で見ると、製造業が▲0.1%減とわずかながら減少に転じています。2022年は11月まで一貫してプラスでしたが、12月になって新規求人数がマイナスに転じたのは先進各国での景気の停滞を反映している可能性が高いと私は受け止めています。逆に、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、など、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のダメージの大きかった産業で新規求人が増加しています。別の観点からすれば、雇用調整金などによりCOVID-19のダメージから労働市場を遮断する政策から、スムーズな労働移動が必要な段階に移った、のかもしれません。そうだとすれば、育休中かどうかは別として、リスキリングが必要になる可能性があると思います。

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以上に加えて、本日、内閣府から1月の消費者態度指数が公表されています。消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。1月統計では、前月から+0.7ポイント上昇し31.0を記録しています。指数を構成する4指標のうち、3指標が上昇しています。すなわち、「雇用環境」が+2.2ポイント上昇し37.2、「収入の増え方」が+0.5ポイント上昇し35.6、「暮らし向き」が+0.4ポイント上昇し27.8となっていますが、ただ、「耐久消費財の買い時判断」だけが▲0.2ポイント低下し23.5を記録しています。たぶん、「耐久消費財の買い時判断」については、いく分なりとも物価上昇の影響が見られると私は考えています。統計作成官庁である内閣府では、消費者マインドの基調判断について、先月12月統計の「弱まっている」から「弱い動きがみられる」と半ノッチ上方修正しています。従来、この消費者態度指数の動きは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大とおおむね並行しているのではないか、と私は分析していたのですが、さすがに、消費者マインドは物価上昇と一定の連動性を高めつつある、と考え始めています。

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最後の最後に、本日午前、シンガポールにて国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。10月時点での見通しからやや上方改定となっています。すなわち、今年2023年の世界経済の成長率見通しは+0.2%ポイント上方改定されて+2.9%と見込まれています。また、日を改めて取り上げたいと思います。

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