2020年1月23日 (木)

2か月連続で貿易赤字を記録した12月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から昨年2019年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲6.3%減の6兆5771億円、輸入額も▲4.9%減の6兆7296億円、差引き貿易収支は▲1525億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年12月の貿易収支、1525億円の赤字 通年は2年連続赤字
財務省が23日発表した2019年12月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1525億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1510億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比6.3%減の6兆5771億円、輸入額は4.9%減の6兆7296億円だった。
併せて発表した19年の貿易収支は1兆6438億円の赤字だった。通年ベースの貿易赤字は2年連続。輸出額は18年比5.6%減の76兆9278億円、輸入額は5.0%減の78兆5716億円だった。

いつもの通り、コンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが貿易赤字▲ 1510億円でしたから、実績の▲1525億円の赤字はほぼほぼジャストミート、何のサプライズもなかったといえます。また、季節調整済みの系列を見ても、12月の貿易収支は▲1025億円の貿易赤字となっており、2018年年央7月からほぼ1年半に渡って貿易赤字を続けており、黒字を記録した月は例外的ともいえ、2019年中では2月と6月だけで、前者2019年2月の黒字は明らかに中華圏の春節の影響だと私は考えています。この1年半の間、上のグラフの下のパネルに見られるように、季節調整済みの系列で見て、輸出入とも緩やかに減少のトレンドにあるように見えるのは、明らかに、米中間の貿易摩擦による関税率引上げに起因した世界的な貿易の停滞やひいては世界経済の需要低迷の影響であると考えるべきです。ここ1年半ほどのトレンドとして、日経新聞の記事「輸出入3年ぶりマイナス 米中貿易戦争で需要減」をはじめとして、年統計に注目した報道の通りといえます。このブログでは景気動向に私自身の興味があるものですから、出来る限り、high frequency という観点から、年統計よりも四半期統計、四半期よりも月次統計を重視していますが、報道では年統計に着目したものが多いので、ここでは、少しニッチを狙って四半期統計に着目したいと思います。すなわち、2018~19年の2年に渡って貿易収支は赤字を続けているわけですが、2019年の各四半期でも、季節調整していない原系列のベースながら、4四半期連続で貿易収支は赤字を続けました。特に、直近では2019年7~9月期▲5263億円、10~12月期▲2249億円となっており、ホントは経常収支ながら貿易収支だけから見て、2019年10~12月期の貿易収支の赤字幅が縮小していますからGDP成長率に対して外需はプラス寄与する可能性が高い、と私は考えています。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、輸出数量については前年同月比でまだマイナスとはいえ、12月統計では輸出数量の前年同月比のマイナス幅が大きく縮小していることも事実であり、先進国も中国も需要は回復に向かいつつあることから、我が国の輸出数量にもようやく底入れの兆しが見て取れます。

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2020年1月22日 (水)

世界経済フォーラム主催のダボス会議におけるOXFAMのリポートやいかに?

いくつかの報道に見られる通り、今週1月21日から24日までダボス会議が開催されています。その中から まあ、私の趣味に従って、昨年と同様にOXFAM のリポート Time to Care に注目したいと思います。ダボス会議の主催者である世界経済フォーラムのサイトにも言及がありますし、もちろん、pdfの全文リポートサマリーリポートもアップされています。このリポートでは、性差別経済が不平等の危機を拡大している "our sexist economies are fuelling the inequality crisis" と、特に以下の3点を例として強調しています。OXFAMのサイトから引用しています。

Time to Care
  • The 22 richest men in the world have more wealth than all the women in Africa.
  • Women and girls put in 12.5 billion hours of unpaid care work each and every day - a contribution to the global economy of at least $10.8 trillion a year, more than three times the size of the global tech industry.
  • Getting the richest one percent to pay just 0.5 percent extra tax on their wealth over the next 10 years would equal the investment needed to create 117 million jobs in sectors such as elderly and childcare, education and health.

下の INFOGRAPHICS は、全文リポートの p.8 から引用していますが、サマリーリポートの p.6 にもほぼほぼ同じものが掲載されています。

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男女間の性別の不平等をはじめとして、格差や不平等は単に不正義であるだけでなく、大きく経済を歪めていると私は考えています。何としてもこれらの不平等を是正し、経済を正常な状態に戻す方策を探る必要があります。その意味でも、OXFAM Japan が2018年9月限りで解散したのは誠に遺憾千万、残念この上ありません。

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2020年1月21日 (火)

IMF「世界経済見通し改定」やいかに?

本日1月21日から開催されたダボス会議を前に、昨日1月20日に国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update, January 2020 が公表されています。副題は、Tentative Stabilization, Sluggish Recovery? とされており、前半部分もさることながら、特に後半部分がよく中身を表している気がします。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、成長率の総括表をIMFのブログ・サイトから引用すると以下の通りです。

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見れば明らかなんですが、昨秋2019年10月時点の見通しから全般的に成長率については下方修正されています。今年2020年の世界経済の成長率は昨年10月時点の見通しから▲0.1%ポイント下方改定されて+3.3%と見込まれている上に、来年2021年も▲0.2%ポイント下方修正されて+3.4%と予測されています。この下方修正の要因は、リポートでは、"The downward revision primarily reflects negative surprises to economic activity in a few emerging market economies, notably India" と、インドに起因することを明記しています。広く報じられた通り、住宅金融のノンバンクであるデワン・ハウジング・ファイナンス(DHFL)のデフォルトによる金融混乱を指していると多くのエコノミストは受け止めていることと思います。ただ、同時に、IMFのブログ・サイトでは、"some risks have partially receded with the announcement of a US-China Phase I trade deal and lower likelihood of a no-deal Brexit" と、米中間の第1段階の貿易合意の発表、また、合意なきBREXITの可能性の低下などをリスク低下の要因として上げています。私が見た範囲では、全国紙各紙とも見通し下方修正の要因としてインドに軽く触れている一方で、もっと明るい話題というか、何というか、米中貿易合意とか、BREXTの方の注目度が高かった気がします。先行きについては、リポートでも、"On the positive side, market sentiment has been boosted by tentative signs that manufacturing activity and global trade are bottoming out" と、製造業と世界貿易の落ち込みがボトムアウトする兆候により市場センチメントが向上する、とする一方で、"few signs of turning points are yet visible in global macroeconomic data" と、世界のマクロ経済には転換点を示すデータはまだほとんどない、と先が長い可能性も示唆しています。
日本の成長率見通しについては、今年2020年が+0.7%成長と前回見通しから+0.2%ポイント上方修正された一方で、来年2021年は変わらず+0.5%と見込まれています。このあたりが潜在成長率近傍なのかもしれません。なお、今年2020年の成長率を上方改定した理由は、"healthy private consumption, supported in part by government countermeasures that accompanied the October increase in the consumption tax rate,robust capital expenditure, and historical revisions to national accounts" と、昨年2019年10月の消費税率引上げに合わせた政府経済対策にも部分的に支援されて消費が堅調であり、設備投資も伸びているとしています。ただ、最後のポイント、すなわち、過去にさかのぼっての国民経済計算統計の改定という理由は、まあ、わざわざこんなことを明記するんですから、統計の信頼性に対する苦情にやや近い気もします。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2019年度+0.8~+0.9
<+0.8>
+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.4~+0.5
<+0.4>
 10月時点の見通し+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.6~+0.8
<+0.7>
+0.4~+0.6
<+0.5>
 2020年度+0.8~+1.1
<+0.9>
+1.0~+1.1
<+1.0>
+0.9~+1.0
<+0.9>
 10月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.2
<+1.1>
+0.7~+1.1
<+1.0>
 2021年度+1.0~+1.3
<+1.1>
+1.2~+1.6
<+1.4>
 10月時点の見通し+0.9~+1.2
<+1.0>
+1.2~+1.7
<+1.5>

最後に目を国内に転ずると、本日、日銀「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しは上のテーブルの通りです。各セル下段の>< >内は中央値となっています。ただし、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、その他の情報とともに、引用元である日銀の「展望リポート」のサイトからお願いします。IMF見通しに従って、というわけでもないんでしょうが、日銀見通しも成長率については上方修正されていて、日銀自身も「展望リポート」1ページめのサマリーで、成長率については「2020年度を中心に、上振れている」と見ている一方で、物価の見通しについて「おおむね普遍」と自己評価しています。上のテーブルで明らかな通り、実は、やや下方修正という見方も成り立つような気がします。

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2020年1月20日 (月)

「中長期の経済財政に関する試算」の結果やいかに?

先週金曜日、1月17日に経済財政諮問会議が開催され、スマート化・グリーン化投資と関連人材投資を軸とした産業構造・経済構造の再構築などをはじめとする2020年前半の主要議題や来年度予算とともに、「中長期の経済財政に関する試算」、すなわち、財政収支と公債残高のGDP比の試算が2029年度まで示されています。

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見れば判ると思いますが、上のパネルが国・地方のプライマリ・バランスのGDP比、下が国・地方の公債等残高のGDP比となっています。報道では、プライマリ・バランス黒字化が目標の2025年度に達成できず、赤でプロットされている成長実現ケースでも2027年度に先送りされ、青のベースラインケースでは試算期間中の2029年度までではプライマリ・バランスは赤字のまま、という点が強調されていたように私は受け止めています。でも、上のグラフをよく見れば、プライマリ・バランス赤字を続けるベースラインケースでも、公債残高のGDP比は190%くらいで安定します。現代貨幣理論(MMT)を持ち出すつもりもありませんが、このあたりで十分ではないでしょうか。

なお、国際通貨基金(IMF)のサイトによれば、「世界経済見通し」World Economic Outlook の改定が本日1月20日のダボス会議で明らかにされる予定となっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2020年1月19日 (日)

今年の花粉飛散予想やいかに?

つい先日までお正月気分だったんですが、早くも1月の終わりに近づき、2月に入れば花粉の季節となります。やや旧聞に属する話題ながら、東京都福祉保健局から先週1月16日に「令和元年度東京都花粉症対策検討委員会(第2回)検討結果」として、花粉の飛散開始日は2月14日から18日ごろ、また、今春の飛散花粉数は、例年の6割、昨春の6割程度、との報道発表資料が明らかにされています。参考資料の「飛散花粉の総数の予測」のpdfファイルから都内12地点平均の飛散花粉数の経年変化のグラフを引用すると以下の通りです。

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おそらく、3月中には私は関西に引っ越す予定なんですが、昨シーズンや平年の6割程度の飛散であれば、かなりラクそうな気もします。

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2020年1月18日 (土)

今週の読書は経済書をはじめとして文庫本まで含めて計7冊!!!

先週の読書は巡り合わせにより経済書がなかったりしたんですが、今週の読書は、明々白々たる経済書が2冊あり、経済活動にも十分配慮した進化心理学の専門書、モバイル機器を通じたアテンション経済に対する批判など、以下の計7冊の読書だったんですが、うち3冊は文庫本だったりします。この先、しばらく、読書のペースは落ちそうな気がします。

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まず、鶴光太郎・前田佐恵子・村田啓子『日本経済のマクロ分析』(日本経済新聞出版社) です。著者3人は、経済企画庁ないし内閣府において「経済白書」または「経済財政白書」の担当部局の課長補佐や参事官補佐を経験したエコノミストです。ただし、なぜか、というか、何というか、課長や参事官を経験したわけではないようです。いずれにせよ、私自身が従来から考えているように、本流の官庁エコノミストはこういった白書などのリポートを、政府全体や個別の役所の公式見解として取りまとめることを担当する人たちなんだろうと思います。私も、とある白書を1回だけ執筆担当したことがありますが、「経済白書」や「経済財政白書」といった役所を代表する白書ではありませんでしたし、それもたった1回のことです。他方、私の場合は長らく研究所に在籍して、「役所の公式見解ではなく、研究者個人の見解」という決まり文句をつけた学術論文を取りまとめることが多かったような気がします。まあ、私は傍流の官庁エコノミストなのだと改めて実感しました。ただ、どうでもいいことながら、最近知ったんですが、私が白書を担当したころとは違って、「経済財政白書」なんぞは執筆担当者の個人名が明記されるようになったりしています。少しびっくりしました。というおとで、本書は我が国のバブル経済が崩壊した1990年ころ以降から現在まで約30年間の日本経済を概観し、いくつかのパズルを設定して解き明かそうと試みています。第1章で成長の鈍化をほぼほぼすべて生産性と要素投入という供給サイドで説明しようと試みていて、私なんぞの傍流と違って、本流の官庁エコノミスト諸氏はやっぱり供給サイド重視で、見方によればかなり右派的な思考をするんだと感心してしまいます。ただ、3章の景気循環あたりから需要サイドにも目が向くようです。全体として、大きなテーマに対して索引まで含めても250ページ足らずのボリュームの本に仕上げようとしていますので、よく表現すれば、とてもコンパクトに日本経済を概観して諸問題を提起している、といえますし、他方で、やや辛口に表現すれば、もう少していねいに掘り下げた分析も欲しいところ、という気もします。これは私自身でもまったく実践できていないんですが、エコノミスト的に問題に対する診断を下すことは出来ても、コンサルタント的に問題に対処する実践的な処方箋を提示することは難しい、と常々感じます。その昔に、よくゴルフをプレーしていたころの判りやすい例として、エコノミスト的には「ボールをティーアップしてドライバーを振って、250ヤード先のフェアウェー中央に飛ばす」というのがアドバイスとしてどこまで適当なのかどうか、もっと実践的に、ヘッドアップしないとか、脇を締めるとか、そういったアドバイスが必要なのではないかと思わないでもありません。繰り返しになるものの、私自身も実践できていませんが、本書におけるパズルへの回答は、その意味で、エコノミスト的なようにも見えます。

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次に、井上智洋『MMT 現代貨幣理論とは何か』(講談社選書メチエ) です。著者は、駒澤大学の研究者です。従来から、AI導入経済におけるベーシックインカム、左派的な財政拡張論などで、私は注目しています。ということで、本書はコンパクトに現代貨幣理論(MMT)について取りまとめた入門書となっています。ただ、著者もまだ完全にMMT論者として、MMTのすべての理論に納得しているわけではないことは明記しています。貨幣の成り立ちについても、その昔の宋銭の導入などの商品貨幣の例を見ても、「万人が受け取る」という主流派経済学の考え方は捨てがたく、MMTの根源的な貨幣論への部分的な反論も持ち合わせています。私は貨幣論の方はともかく、いまだに、MMTの財政によるインフレのコントロールについては疑問を持っています。すなわち、本書では取り上げていませんが、財政政策は基本的に法定主義であって、認知ラグと波及ラグはともかく、決定ラグが金融政策よりもかなり長い可能性が高くなっている上に、本書でもやや批判的に紹介している雇用保障プログラム(Job Guarantee Program=JGP)の運用については、財政支出の柔軟性がどこまで確保されるかはもっとも疑問大きいところです。すなわち、デフレであれば財政赤字を増やして、インフレであれば財政赤字を削減するわけですが、そもそも、それほどの機動性を確保できるかが疑問な上に、どのような歳入や歳出が柔軟に増減できるかは未知数といわざるを得ません。現在の日本のようにデフレだから何らかの財政支出を増加させるとしても、インフレに転じた時に簡単にその財政支出をカットできるかどうか、その点が疑問であるとともに、そんなに簡単にカットできるような歳出をして雇用を維持すべきかどうかも疑問です。私の基本的な経済に対する見方として、財政よりも雇用の方がとても重要性が高いのは十分に認識していて、おそらく、日本のエコノミストの中でも財政と雇用の重要性の開きがもっとも大きなグループに属しているのではないか、とすら思っているんですが、インフレ時に簡単にカットできるような歳出によって維持すべき雇用の質については、国民のモチベーションをどこまで引き出せるかは否定的な思いを持ってしまいます。加えて、本書の著者が指摘しているように、10年やそこらの期間であれば現在の日本クラスの財政赤字のサステイナビリティは問題ないとしても、30年とか50年の期間を考えれば、JGBを取り扱う金融市場がどのように動くかは、何とも、経済学のレベルでは予測がつきません。ただ、逆にいえば、5年とか10年くらいで集中的にデフレ脱却を目指す政策としてはMMTはかなり可能性あるんではないか、という気もします。いずれにせよ、昨年2019年11月9日の読書感想文で取り上げたレイ教授の『MMT 現代貨幣理論』では、立命館大学の松尾教授が「MMTの命題は『異端』ではなく、常識である」と題した巻末解説を寄せていましたが、数年間でのデフレ脱却を目指す政策の観点からは、その通りだと私も考えます。ただし、本書の著者はユニバーサルなベーシックインカムの推進論者なんだと私は理解していますが、MMT理論に基づくとベーシックインカムの財源は財政赤字ではなく、キチンとした財源が必要、という点は忘れるべきではありません。インフレに転じたからといって、ベーシックインカムを削減したり、取り止めたりすることはできないからです。

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次に、ウィリアム・フォン・ヒッペル『われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか』(ハーパーコリンズ・ジャパン) です。著者は米国出身で、現在はオーストラリアのクイーンズ大学の研究者をしています。英語の原題は The Social Leap であり、2018年の出版です。ということで、上の表紙画像に見られるように、「進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略」ということですので、やや読み始める前には懸念があり、進化心理学ですから、すべてを種の保存、あるいは、狭義にはセックスに結び付けているんではないか、とおもっていたところ、さすがにそうではありませんでした。3部故末井となっており、第1部はわれわれはどのようにヒトになったのか、第2部は過去に隠された進化の手がかり、第3部は過去から未来への跳躍、と題されていて、最後の第3部の「跳躍」が英語の原題のLEAPに当たりますし、第1部でも、熱帯雨林の樹上生活からサバンナへの移動も「社会的跳躍」と位置付けられています。その第1部は、その昔に読んですっかり内容は忘れたものの、エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』を進化心理学から解き明かしたような中身になっていて、人類史をかなり唯物史観で見ている気すらしました。本書第1部は、チンパンジーとアウストラロピテクスなど人類の祖先との比較から始まります。チンパンジーは集団で狩りをしたり敵の群れを攻撃したりする時のみ、少しだけ協力するものの、彼らは怠け者と協力者をほとんど、あるいはまったく区別しようとせず、怠け者のフリーラーダーも同じ獲物にありつける一方で、類人猿のアウストラロピテクスは集団的な石投げで狩りを行い、協力しない者を集団から追放、あるいは、処罰したと推測しています。そして、当時の生活状況からすれば、類人猿の集団から追放されれば生き残れる確率が格段に低下しただろうとも推測しています。第2部では、経済学の分野のイノベーションも考察の俎上に上ります。偉大なイノベーションを起こした人はそれほど実生活が充実しているわけではない、と指摘していたりしますし、その他、極めて多くの進化心理学の研究成果が紹介されており、出版社のサイトに目白押しで取り上げられています。たとえば、最近の経済活動の上で「モノ消費」から「コト消費」、すなわち、耐久消費財などを買うよりも旅行などの体験を重視する消費へのシフトも進化心理学の研究成果から、その正しさが裏付けられていたりします。加えて、60歳を超えた私なんぞが少し注目したのは、高齢者の孤独は喫煙などよりもよっぽど危険であり、年を取れば、むしろタバコを吸いながら仲間と談笑する方がリスクが小さいと指摘されていました。ひょっとしたら、そうなのかもしれません。今週の読書の中では、350ページ超ともっともボリュームがありましたが、トピックも楽しく邦訳も上質で一気に読めます。

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次に、カル・ニューポート『デジタル・ミニマリスト』(早川書房) です。著者は、米国ジョージ・タウン大学の研究者であり、専門分野はコンピュータ科学だそうです。英語の原題は Degital Minimalist であり、2019年の出版です。タイトルのデジタル・ミニマリストとは、トートロジーですが、デジタル・ミニマリズムを実践している、あるいは、実践しようとしている人のことであり、著者は、実際に、何人か集めてデジタル・ミニマリズムを実践することまでやっているようです。ただ、私としては、本書で使っている他の用語「アテンション・レジスタンス」の方が、より適当な気がしています。ということで、本書が指摘するように、いろんなところで、口を開けてスマホの操作に熱中している人を見かけると、私もモバイル機器の操作、おそらくは、スマートフォンを使ってのゲームとSNSには中毒性があるんではないか、と疑ってしまいます。本書では、30日間のスマートフォン断食などを提唱する一方で、スマートフォン操作に代わって、人生をもっと豊かにする趣味の充実などを提唱しています。ただ、読んでいて、私もようやく今月になってスマートフォンに切り替えましたが、私自身はミニマリズムではないとしても、少なくとも合理的な範囲でのオプティマイズは出来ている気がします。TwitterやInstagramは使っていませんが、さすがの私もFacebookは使っていて、おそらく、毎日30分くらいは使っていそうな気がします。でも、ほぼほぼ機械的に「いいね」のボタンを押しているだけで、その対象は半分以上が趣味の世界、特に阪神タイガースに関する記事だったりします。メールはスマートフォンでチェックこそすれ、実際に読む価値あるメールはスマートフォンではなく、パソコンで読んでいます。スマートフォンでそのまま削除するメールも決して少なくありません。ですから、繰り返しになりますが、パソコンも含むデジタルではなく、スマートフォンなどのモバイルに特化したタイトルにした方が判りやすかった気がします。著者は、スマートフォンをヤメにしてフィーチャーフォンに切り替え、SNSなどはパソコンからのアクセスを推奨しています。私も、ご同様に、スマートフォンなどのモバイル・デバイスからSNSにアクセスするのと、パソコンからのアクセスはかなり違うと感じていて、パソコンを多用しているのが実態です。その上で、私は私自身の「アテンション」にそれなりの価値があると自負していて、スマートフォンからのSNSへのアクセスに限らず、私のアテンションを向ける先は合理的に厳選しているつもりです。中毒性ある行為に対してはもちろん、期待値がマイナスになるに決まっているギャンブル、喫煙や過度の飲酒などなど、非合理的なアテンションの向け方、あるいは、時間の使い方は決して賢明ではないと考えていて、それなりに、主流派経済学が前提とするような合理的なホモ・エコノミカスとして考えて行動したい、と願っています。もっとも、どこまで実践できているかは不明です。

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次に、モーム、フォークナー他、小森収[編]『短編ミステリの二百年 1』(創元推理文庫) です。上の表紙画像にも見られるように、明確に第1回である旨が示されており、上中下を越えて4巻以上のシリーズになるものと私は予想していますが、詳細は明らかではありません。本書冒頭でも示されている通り、私も昨年の今ごろは江戸川乱歩[編]『世界推理短編傑作集』の第1巻から第5巻までを読んでいたりしましたが、本書が嚆矢となるシリーズについてはよく知りませんでした。江戸川乱歩編のシリーズは1844年から1951年が対象となっているらしい一方で、本書のシリーズは前後ともにさらに長いタイムスパンを持つ200年です。編者である小森収ご本人が、そういった詳細について、本書の後半部分で「短編ミステリの200年」として取りまとめていますが、序章と第1章の途中で終わっている印象で、続巻でさらに明らかにされるんではないかと私は受け止めています。出版社のサイト「Webミステリーズ」の情報でもよく判りかねます。ということで、、シリーズの全貌は不明な部分が多いんですが、取りあえず、この第1巻の収録作品は、リチャード・ハーディング・デイヴィス「霧の中」、ロバート・ルイス・スティーヴンスン「クリームタルトを持った若者の話」、サキ「セルノグラツの狼」及び「四角い卵」、アンブローズ・ビアス「スウィドラー氏のとんぼ返り」、サマセット・モーム「創作衝動」、イーヴリン・ウォー「アザニア島事件」、ウィリアム・フォークナー「エミリーへの薔薇」、コーネル・ウールリッチ「さらばニューヨーク」、リング・ラードナー「笑顔がいっぱい」、デイモン・ラニアン「ブッチの子守歌」、ジョン・コリア「ナツメグの味」、となっています。「さらばニューヨーク」の作者のウールリッチは別のペンネームはウィリアム・アイリッシュであり、アイリッシュ名義で書かれた『幻の女』はオールタイムベストのトップ10に必ず入るくらいのミステリの名作だったりしますが、サキの2作品など、あまりミステリとは考えられない短編の週録も少なくなく、どういった編集方針なのかは私にはよく理解できません。ただ、ミステリかどうかはともかく、短編の名作が収録されていることは確かですし、十分に読書を楽しめると考えてよさそうです。

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最後に、キャロル・ネルソン・ダグラス『ごきげんいかが、ワトスン博士』上下(創元推理文庫) です。シャーロック・ホームズを出し抜いたほぼほぼ唯一の女性であるアイリーン・アドラーを主人公にした「アイリーン・アドラーの冒険」シリーズの第3作です。アイリーン・アドラーが探偵役で、ホームズを出し抜いて事件を解決します。当然、シャーロック・ホームズのパスティーシュです。このシリーズで邦訳されたのはすべて同じ出版社からの文庫本で、第1作の『おやすみなさい、ホームズさん』では正典の「ボヘミアの醜聞」をアイリーン・アドラーの側から捉えた小説であり、第2作の『おめざめですか、アイリーン』ではパリの事件を解決します。これは、ホームズものの中の、いわゆる「書かれざる物語」で、ワトソン博士が言及しただけの事件なのかもしれませんが、私はそれほど熱心なシャーロッキアンではありませんから、よく知りません。第3作の本作品では、正典作者のドイル卿が混乱を示しているワトソン博士の銃創について作者なりの解釈を示しています。すなわち、ワトソン博士はアフガニスタンでの従軍により銃創を負ってロンドンに帰還するわけですが、その銃創が肩なのか、足なのかで正典に混乱が見られ、この作品では、ワトソン博士は肩に銃撃を受けた後、現地の熱病にかかって生死の境をさまよい、その際に足にも銃創を負った、という解決を示しています。ストーリーとしては、アフガニスタンの戦役でワトソン博士に命を助けられたという退役士官とアイリーン・アドラーがパリで遭遇し、ワトソン博士が命を狙われている事実を突き止め、もちろん、ホームズを出し抜いて鮮やかに解決に導く、ということになります。

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2020年1月17日 (金)

明日から始まる最後のセンター試験、首都圏は雪の可能性!?

明日から最後のセンター試験が始まりますが、ウェザーニュースによれば、下の画像の通り、首都圏で雪の可能性があるようです。早めの行動が必要です。

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がんばれ受験生!!!

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来週から始まるダボス会議を前に Global Risks Report 2020 やいかに?

来週の1月21日からダボス会議が始まります。その主催団体である世界経済フォーラムから、「グローバル・リスク報告書 2020」The Global Risks Report 2020 が明らかにされています。今週になって、私が毎日のように世界経済フォーラムのサイトを見ていたところ、月曜日の1月13日付けで "Published" と高らかに明示されたものの、"Coming Soon!" が長らく続き、pdfの全文リポートがアップされて、私の方でダウンロード可能になったのは1月15日でした。

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ということで、まず、上の INFOGRAPHICS は、世界経済フォーラムのサイトから引用しており、見れば判りますが、TOP GLOBAL RISKS: From economic to environmental. Climate now tops the risks agenda, while the economy has disappeared from the top five とのタイトルが付されています。リポート冒頭にある Figure I: The Evolving Risks Landscape, 2007-2020 を少しデフォルメしたものだと受け止めています。タイトル通りに、経済リスクが大きく後退してトップ5には見られなくなった一方で、環境リスクがクローズアップされています。Likelihood でソートすると、トップ5すべてが環境リスクで占められており、(1) Extreme weather、(2) Climate action failure、(3) Natural disasters、(4) Biodiversity los、(5) Human-made environmental disasters、の順となります。ただし、資産バブルの発生や財政危機などが後景に退いたとはいえ、この環境リスクの裏側には経済活動である企業の生産や家計の消費などが大きな要因となっているわけですから、これらの経済活動が地球環境と調和するような方策を探る必要がある、というのが大きなメッセージとなっています。下のグラフは、リポート冒頭にある Figure II: The Global Risks Landscape 2020 を引用しています。横軸にリスクが顕在化しそうな Likelihood、縦軸にはリスクが顕在化した際のダメージである Impact を取ったカーテシアン座標にさまざまなリスク要因がプロットされています。右上にプロットされているリスクほど警戒が必要、といことなんだろうと思います。

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2020年1月16日 (木)

イレギュラーな大型案件で増加した機械受注と消費税率引上げでプラスを続ける企業物価!

本日、内閣府から昨年2019年11月の機械受注が、また、日銀から昨年2019年12月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、イレギュラーな大型案件があり、季節調整済みの系列で見て前月比+18.0%増の9,427億を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.9%の上昇と、10月から消費税率が引き上げられた影響で先月からプラスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の機械受注、前月比18.0%増 市場予想3.3%増内閣府が16日発表した2019年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比18.0%増の9427億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3.3%増だった。
うち製造業は0.6%増、非製造業は27.8%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は5.3%増だった。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いた。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
12月の企業物価指数、前年比0.9%上昇 消費増税・原油高が寄与
日銀が16日発表した2019年12月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.3と、前年同月比で0.9%上昇した。上昇は2カ月連続。消費税率の引き上げの影響に加え、原油価格の上昇で石油・石炭製品が値上がりしたことが寄与した。前月比では、0.1%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年比で4.1%下落し、8カ月連続のマイナスだった。前月比は0.2%上昇した。輸入物価は前年同月比6.8%下落し、前月比で0.9%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。10月の消費増税の影響を除いた企業物価指数は前年同月比で0.7%下落した。7カ月連続で前年を下回った。
2019年(暦年)の企業物価指数は101.5で前年比0.2%上昇した。消費増税の影響を除くと0.2%下落と、3年ぶりに前年実績を下回った。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注については、昨年2019年6月に季節調整済みの系列の前月比が+13.9%増を記録した後、7月▲6.6%減、8月▲2.4%減、9月▲2.9%減、10月▲6.0%減と4か月連続でマイナスが続いて来たんですが、本日公表の11月統計では、運輸業・郵便業で2件のイレギュラーな大型受注があり、前月から比率で+108.3%増、額で+1,026億円増、を記録したため、コア機械受注全体でも+18.0%増となりました。ただ、コア機械受注全体の増加額は+1,439億円ですから、運輸業・郵便業の増加額を差し引いても約+400億円強が増加したわけで、前月からの増加率も+5%超と考えて差し支えありません。すなわち、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比で3%を少し上回る増加だったわけですから、予測レンジ上限の+6.2%増の範囲内とはいえ、やや強めの数字と考えるべきです。ただ、イレギュラーな大型案件受注による大幅増でしたので、基調判断は変更しがたく、「足踏み」で据え置かれています。先行きについては、先月の機械受注統計公表時にお示ししたように、基本的に、横ばいないしやや減少のトレンドではないかと私は見ていますが、もしも、経済協力開発機構(OECD)の先行指標 CLI=Composite Leading Index に示されている "Stable growth momentum and below-trend growth" から、世界経済が本格的に上向けば機械受注も増加に転じる可能性が高まるような気がします。

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機械受注の方は、ちょっとびっくりの結果だったんですが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスである+0.9%の上昇にジャストミートしました。2か月連続のプラスですが、ただし、日銀から公表されている消費税を除く上昇率は12月でもまだ▲0.7%であり、11月の▲1.5%から下落幅を縮小したとはいえ、まだ前年同月比マイナスが続いています。引用した記事のタイトルにあるように、消費税率の引上げに大きく支えられ、国際商品市況における石油価格の上昇も寄与しているようで、物価動向に対して金融政策はそれほどの重要性ないのかもしれません。あるいは、現代貨幣理論(MMT)のモデルが正しくて、物価には金融政策ではなく財政政策を割り当てるべきなのか、私は基本的にリフレ派エコノミストでしたが、やや自信がなくなって来ています。

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2020年1月15日 (水)

2020年1月の日銀「さくらリポート」で示された地域の景気動向やいかに?

日銀では支店長会議が開催され、本日午後、「さくらリポート」が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。各地域の景気の総括判断と前回との比較は下のテーブルの通りで、6ブロックで横ばい、3ブロックで下方修正という結果となっています。

 【2019年10月判断】前回との比較【2020年1月判断】
北海道緩やかに拡大している緩やかに拡大している
東北一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている弱めの動きが広がっているものの、緩やかな回復を続けている
北陸緩やかに拡大している引き続き拡大基調にあるが、その速度は一段と緩やかになっている
関東甲信越輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している海外経済の減速や自然災害などの影響がみられるものの、基調としては緩やかに拡大している
東海拡大している緩やかに拡大している
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている
中国一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに拡大している幾分ペースを鈍化させつつも、基調としては緩やかに拡大している
四国回復している一部に弱めの動きがみられるものの、回復している
九州・沖縄緩やかに拡大している緩やかに拡大している

繰り返しになりますが、3ブロックで前回判断から下方修正されているものの、各地域の景気の総括判断はすべての地域で「拡大」または「回復」と示されています。この背景として、日銀では、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられる一方で、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きな循環が引き続き働いており、設備投資や個人消費といった国内需要が増加基調を続けている点を上げています。
このように、地域ブロック別の景気判断では横ばいないし下向きの修正があるにもかかわらず、来週1月20日から2日間にわたって開催される金融政策決定会合で決定される「展望リポート」に関して、以下の日経新聞や朝日新聞では、成長率見通しを引き上げるとの見込みを報じています。やや混乱を招きかねない報道だと私は受け止めていたんですが、実は、昨年末に公表された国民経済計算の確報レベルでGDPの実額が下方修正され、その後の成長率が発射台との関係で先行き見通しがやや上方修正される、というのが真相のようです。ご参考まで。

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