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2006年1月30日 (月)

最適解の算出

最近、格差についての議論が盛んになっています。小泉政権下で格差が拡大したのではないか、との観点からの議論が多いのですが、内閣府はそれを否定する資料を作成して、月例経済報告閣僚会議に提出したりしています。

エコノミストは独特の表現かもしれませんが、配分と分配を厳格に区別します。配分については大いに論じますが、分配については歯切れが悪くなります。配分とは資源配分のことであり、事実問題として捉えられますが、 分配とは所得分配を指し、価値問題を取り扱うからです。誤解を恐れずにいえば、資源配分は効率の問題で、効率化すれば全体のパイが大きくなる可能性がありますが、所得配分は誰にどう配分するかで、もっといえば、格差がどれくらいが望ましいか、とは、エコノミストからは何らかの意見をいえない、あるいは、いうべきではないとの考えをする人が多いからです。
例えば、所得面での格差がまったくなくなるということは、いくらがんばって働いてお給料を稼いでも、一定額以上は税金で持っていかれて、別の言い方をすれば、限界税率が100%になって、政府が最終的な平等を実現してしまうことですから、勤労意欲が大いに減退すると考えられます。しかし、格差が大き過ぎて、憲法で保障する文化的な生活ができる最低所得も得られないようであれば、それはそれで問題でしょう。現実の格差が大きすぎると判断されれば、何らかの所得格差を調整する手段が導入されるべきであると考えられます。生活保護であったり、累進課税であったりします。しかし、それをどのレベルで行うかは、エコノミストは何もいいたがりません。

これはとても奇妙に見えます。ゼロでも100でもダメなんだったら、その間のどこかに最適解があるハズで、十分な情報があればそれを算出できなければおかしいです。でも、その作業をエコノミストはしたがりません。政治的な選択に任せようとします。効率のための事実問題ではなく、価値問題として分類される場合も多いです。

私の勝手な感想ですが、これは実際の計算問題として、あまりに複雑で計算し得ないからだと思っています。正確な算出を期待できるだけの情報がない、というわけです。

格差是正のための所得配分問題で、1980年代前半の米国レーガン政権下のラッファーカーブを思い出された方も多いでしょう。あの時は、私が持ち出した格差のゼロも100も困るという論法と同じで、例えば、個人所得税の税率はゼロから100までですが、ゼロの時も100の時も税収はゼロになると考えられます。すなわち、税率ゼロであれば税収ゼロは当たり前なんですが、税率が100%だとすると、所得をすべて税金として政府が取り上げるわけですから、誰も所得を得ようとするインセンティブがなくなり、要するに、働いても所得税の税率が100%であれば、誰も働いて所得を得ようとする人がいなくなるから、税収もゼロとなります。所得税の税収は所得×税率なんですが、税率ゼロの時は×の後ろの税率がゼロとなり、税率100%の時は×の前の所得がゼロになるから、ともに税収はゼロとなります。ここまでは論理的には正しいような気がします。
ですから、ラッファーカーブの議論では、税率ゼロと100の間のどこかに税収を最大にする最適解があると考えられます。これも大きなムリはないように見受けられます。しかし、最後でコケるんですが、当時の米国の税率は、税収を最大にするという意味での最適解よりも高い、との議論がまかり通ったのです。つまり、税率を下げれば税収が増える、というわけです。これはかなり怪しいといわざるを得ません。はっきりいえば「トンデモ経済学」だと思います。
しかし、しかし、なんですが、あの世界の超大国の米国で、しかもその米国の大統領がこの説を信じ切って、さらに、さらに、で、米国議会までがその税法案を可決してしまいました。蛇足ですが、もともと議会とは国王や政府が勝手に税金を取り立てないように、国民の側から監視するために設置されたのが起源ですから、議会はこのチェック機能を果たす必要があります。しかし、ここは呉越同舟・同床異夢であったとしても、税率引下げの議案は多くの議員から賛同を得られやすいと想像されます。で、結局のところ、税率を引き下げた結果、米国の税収は減少してしまいました。

この結果、エコノミストは最適解があるハズと理解していながらも、最適解そのものを算出するのに、とても慎重になった気がします。

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