科学計算用ソフトウェアの発掘と販売
昨日の朝日新聞の夕刊に大学で忘れ去られたソフトウェアを発掘してビジネス化する試みの記事が掲載されていました。科学実験などのシミュレーションの技術計算を行うソフトウェアだそうです。結構、売り物になるんでしょうか?
実は、私もジャカルタで1本だけソフトウェアを開発しました。一応、科学実験のシミュレーションの際の技術計算をするソフトです。一時、WEB上で公開されていましたので、一応、私はオンラインソフト作家ということになっています。ごく一部ながら、EmEditorのアカデミックライセンスをちょうだいするなど、オンラインソフト作家としての恩恵も受けていたりします。もちろん、エコノミストが作成したソフトですから、流体実験とか土砂崩れとかのシミュレーションではなく、計量経済モデルのシミュレーションをするソフトです。
開発言語はBASICでMicrosoftのVisual BASICを開発言語としてプログラミングをしました。Excleからデータを読み取って、シミュレーション結果もExcelに書き出すようになっていました。ただし、計量モデルの方程式の推計は外部アプリケーションであるTSPで行い、その方程式をBASICの文法に合致したコードに書き直すことにしていました。このモデルの方程式コードをガウス・ザイデル法でbackward-lookingに解きます。シミュレーションの方法も、ゼロレベルチェック、トータルテスト、ファイナルテストが選択できるようになっています。
モデルのシミュレーション結果はExcelに書き出し、グラフ化したり、タイルのUを算出したり、2つのシミュレーション結果から乗数表を作成したりする機能もあります。もう少しいろんな付加的機能を考えていたんですが、だんだんと面倒になり放棄してしまいました。
いうまでもありませんが、私が使いやすいようにカスタマイズされていますし、方程式の推計は外部アプリケーションに頼っていますし、計量経済モデルのシミュレーションに特化したプログラムとなっています。さらに、残念なことに、Visual BASICでコンパイルした実行ファイルはジャカルタのパソコンに置いてきてしまい、手元にはソースコードを基にリビルドしたExcelのVBAマクロのバージョンしか残っていません。日本に帰国する際に、ジャカルタ時代のWEBサイトからも削除してしまいました。
BASICに初めて接したのは1989年に米国のFEDでリサーチアシスタントをしていた時で、メインフレームのコンピュータしか知らなかった私には、パソコンでプログラミングする言語として開発されたBASICは大きなショックでした。Fortranに比べて、とても安直でいい加減な開発言語だとの印象がありましたが、それだけに、私のように「水は低きに流れる」を信条にしている人間には、とてもやさしいプログラミング言語として手放せなくなりました。おかげで、BASICからCに移行するのに失敗してしまい、私はいまだにCのプログラミングができません。ただし、一時、ボーランドがDelphiのパーソナルバージョンを無償提供していたことがあり、私も少しこれで遊んだ経験がありますので、ほん少しだけですがPascalも理解します。Pascalの方がBASICよりも論理的で厳密だと思います。その分、ファンが多いのも理解できます。私のようなアバウトでいい加減な人間はBASICの方が性に合っているのではないかとと思っています。
なお、開発言語ではなく、計量経済ソフトウェアのパッケージとしては、先ほどのTSPやEViewsなどにしても、汎用のソフトであれば数百ドルが相場です。大規模なシミュレーションを行う自然科学や工学系のソフトであれば、特に、汎用でなくて個別開発された特注ソフトなら、おそらく、汎用の計量経済ソフトと価格が2桁くらい違いそうな気がします。ひょっとしたら、モノによれば3桁ぐらい違う可能性もあるかもしれません。それだけに、自然科学や工学系のシミュレーションソフトウェアは転用がきけばビジネスになるのかもしれません。
私の経験からして、ビジネスに乗せる最大の障害はマニュアルの整備だと思います。なにしろ、自分でプログラムを組んで自分で使うわけですから、ほとんど、マニュアルなんてものは要りません。ソースコードの隅々まで自分自身で把握している場合がほとんどでしょう。しかし、逆に、それでは開発者以外のユーザを想定していないわけですから、ほかの研究者にとっては使い勝手が悪かったり、極端な場合には、そもそもソフトウェアを動かすことすら難しかったりする可能性もあります。
もうひとつの難点は、やっぱり、著作権の問題です。私がジャカルタでプログラミングしていた時も、前任者のコードを大いに参考にしましたし、大学の研究室などで開発されたソフトウェアも以前の諸先輩のコードを参考にすることも大いにありえることだと思います。ですから、埋もれたソフトウェアを発掘してビジネスにするのも大いに結構なんですが、これらのソフトウェアのうちで汎用性のありそうなコードをどこかで管理して、オープンソースで以後の開発を進めるのもひとつの考えられる案だと思います。
いずれにせよ、埋もれて忘れ去られたソフトウェアに光を当てて、もういちど発掘してビジネスにする試みはすばらしい着眼点だと思います。
私が開発した計量経済モデルのシミュレーションソフトも売れないかなあ。誰か買ってくれないかなあ。
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