« ケロロ軍曹にハマり、コミックとアニメの違いを考える | トップページ | ライブドア事件に見る囚人のジレンマ »

2006年5月25日 (木)

やっぱりプロ野球球団は公共財か?

今日の朝日新聞の朝刊の報道によると、阪神タイガースの星野シニアディレクター(SD)が、来月末の阪神電鉄の株主総会で村上ファンドから役員を受け入れることになれば辞任する意向であると表明したそうです。また、同じ朝日新聞の夕刊ですが、阪急ホールディングズの村上ファンドとの阪神電鉄株についての交渉が今週末にも決着するのではないか、との憶測記事もあります。朝日新聞はネット上で阪神電鉄株に関する特集を組んでたりします。今日の夕方の便で村上ファンドの村上代表が帰国したので、少しテレビなんかで報道されていたりしました。
プロ野球球団の阪神タイガースが、昨年と同じようにセパ交流戦に入ってから、今夜は千葉ロッテ相手に少し苦戦ですが、基本的には、快調に連勝街道を続けているのに対して、親会社の阪神電鉄の先行きは不透明感でいっぱいです。阪急ホールディングズと村上ファンドの交渉が決裂すれば、6月末の株主総会で村上ファンドの推薦する取締役が過半数を占めるのはほぼ確実で、球団ごと経営の実権は村上ファンドに移ることになります。あきれるほどの阪神電鉄の無策を報道する週刊誌もあったりします。

昨年10月13日と14日の2日にわたって、このブログでプロ野球球団が公共財かどうかを取り上げましたが、最近では、私はプロ野球球団を公共財であると考える方に傾いています。公共的なリソースをつぎ込むかどうかは別にして、プロ野球球団はかなり大きな外部経済効果を有すると考え始めています。その上、同時消費が可能、つまり、みんなで寄ってたかって阪神タイガースを応援しても自分の応援が減るわけではありません。もちろん、球場のシートは希少性の高い有限な資源ですから、かなり高額で取引されているんではないかと思いますが、私のように、自宅でCATVを見ながら応援している分にはコストは生じません。
それから、少しだけ脱線するんですが、企業の社会的公共性のようなものについてコメントしておきたいと思います。よく、特定の企業について、社会的にとても有益な製品を生産しているので社会的な公共性を有している、といい立てる場合がありますが、私はこれに大きな疑問を持っています。例えば、何でもいいんですが、鉛筆でも、自動車でも、ビールでも、パソコンでも、クリーニングサービスでも、いずれも社会にとってなくてはならない必需の生産物であったり、サービスであったりするのは大いに認めます。企業が生き残っているのは、その生産する財が社会に必要であると認められた証拠でもあります。
しかし、例えば、ここでも何でもいいんですが、自動車で考えると、自動車が社会にとって必需の重要な生産物であることは大いに認めますが、特定の会社の自動車が社会的に絶対に必要であるわけではありません。固有名詞を出せば、トヨタの自動車である必要も、日産でなければならない必然性も、ホンダが不可欠であるわけも、全然ないんです。自動車が社会にとって必要な財であることと、特定のメーカーの自動車が社会にとって必需の財であることとは別の話なんです。もちろん、国産車である必要すらないわけで、輸入車でもいいわけです。
ですから、ここでモノをビールに変更すると、私はお酒をあんまり飲みませんので、そもそも、ビールが日本社会に必需の財なのかどうか、よく分かりませんが、百歩譲ってビールが必需品であるとしても、例えば、キリンのビールが日本社会の必需品であるわけではありません。キリンがビールを作らなくなっても、ビール党がとても困るわけではありません。アサヒ、サッポロ、サントリーなどのビールを飲めばいいわけです。民間企業の生産する財は代替するほかの企業がいくつもあります。
しかしながら、プロ野球球団はビールのようなわけにはいきません。同じプロ野球なんですが、阪神タイガースが消滅したり、あるいは、野球をやらなくなれば、巨人で野球を楽しむか、といわれれば、疑問を感じる阪神ファンはいっぱいいると思います。まあ、例が悪かったかもしれませんが、地域性を重視するとしても、阪神からオリックスに乗り換えるのは、鉛筆を三菱からトンボに切り替えるのよりとてもコストが高いのではないかと容易に想像されます。プロ野球球団は同時消費性がとても高い割には、は代替の弾力性がとても低いわけです。

私は心情的には星野SDに近い部分はまったくなく、むしろ、村上ファンドの村上代表の行動や考え方により共鳴しますが、プロ野球球団はとても公共財に近いものであるとの認識は持っていないでしょうから、この点が心配です。村上ファンドの運営実態についてはいろいろと批判する向きもあり、ひょっとしたら、ライブドアのホリエモンの次の特捜部のターゲットは村上代表かもしれないとの週刊誌情報もありますが、今回の帰国で何か不測の、あるいは、想定外の検察の行動があったとしても、阪神電鉄自身が当事者意識を持って、村上ファンドが保有している株式の処分について、阪急ホールディングズ任せではなく、阪神タイガースの野球ファンまで含めて、もっとも望ましい解決が何なのかをよく考えるべきだと思います。

|

« ケロロ軍曹にハマり、コミックとアニメの違いを考える | トップページ | ライブドア事件に見る囚人のジレンマ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: やっぱりプロ野球球団は公共財か?:

« ケロロ軍曹にハマり、コミックとアニメの違いを考える | トップページ | ライブドア事件に見る囚人のジレンマ »