言うべくんば真実を語るべし
私の好きな言葉です。本当は後段があって、「言うべくんば真実を語るべし。言うを得ざれば黙するにしかず」となります。出典は河上肇博士です。知ってる人しか知らないと思いますが、戦前の京都帝国大学経済学部教授だった人です。学部長もしたのかもしれません。でも、昭和3年には教授職を辞していますので、よく分かりません。私は学生時代からエラい人だと思っています。80年近くに及ぶ京都大学経済学部の歴史の中で、偉大なる教授として後世に名を残しているのは、この河上博士と学部長から京都府知事になった蜷川虎三教授が上げられると思います。
何度か、このブログでも申し上げている通り、私は京都大学経済学部の卒業生です。私が在学していた当時、京都大学経済学部には、他の学部のことは知りませんが、いわば学部祭のようなものがあり、河上祭と呼ばれていました。今もあるのかどうかは知りません。私の在学中の河上祭で河上博士生誕100年記念祭というのがありました。その前後だと思うんですが、私は先の河上博士の言葉を西陣織にしたものをもらって、本のしおりにしていたことを記憶しています。今では失くしてしまいました。もしも、まだ河上祭が続いているのであれば、125年記念祭もあったのかもしれません。年数を計算すると、割合と最近のことだと思います。
ここ数週間で大きな事件が何件かありました。秋田の小学生1年生殺害事件、和田画伯の盗作事件、村上ファンドのインサイダー事件、シンドラー社のエレベーター事故事件などです。報道されている以上の事実関係は私にはよく分かりませんが、最初に、何らかの事実関係に関して否定的で自分に都合のいい情報を明らかにしておきながら、実はそうではなかったんではないか、と想像されるケースが多いように見受けられます。
秋田の事件では死体遺棄で逮捕された容疑者が、水死した自分の娘の四十九日の折りに報道陣に対して、自分の容疑を否認するような発言をしていますし、和田画伯はいまだに盗作を認めていないようなフシがあります。でも、私はシロートですが、和田画伯の絵とスギ氏の絵を並べて見せられると、どちらかがもう一方を盗作したとしか思えません。常に和田画伯の方が後から発表しているんですから、常識的には、和田画伯の方が盗作なんだろうと思う人がいっぱいいても不思議ではありません。村上ファンドの村上前代表については、ライブドアの幹部から「聞いちゃった」と記者会見でいっていましたが、検察の調べで自ら主導したんではないかと疑われています。
これらの中で、なぜか、シンドラー社だけが港区の主催する説明会などへの出席も執拗に拒否し、説明責任を果たしていないとこき下ろされながらも、何も発表しないのが、表現はともかく、新鮮に見えます。今朝の朝日新聞朝刊の天声人語に見られるように、世間一般の評価は厳しいものがありますが、このブログの最初に掲げたように、河上博士の「言うべくんば真実を語るべし。言うを得ざれば黙するにしかず」の観点からすれば、ある意味で、もっとも誠実な対応なのかもしれません。
小さいころから「嘘つきは泥棒のはじまり」と教えられてきた方も少なくないと思います。もちろん、企業組織などの社会的な存在であれば、説明責任を求められることも大いにありましょうから、シンドラー社が何の疑問にも答えようとしない態度を評価するわけではありません。私自身の問題として、学生時代に聞かされた河上博士の言葉について、特に、前段の「言うべくんば真実を語るべし」は、今後も忘れることなく肝に銘じておきたいと思います。
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