ノーベル経済学賞
今年度のノーベル経済学賞が来週月曜日10月9日の日本時間で夜に発表されます。かなり前ですが、トムソン財団が経済学賞に限らず、今年のノーベル賞の有力候補をホームページで特集しています。ただし、トムソン財団は科学財団ですから、文学賞や平和賞の有力候補の発表はなく、物理学、化学、医学・生理学、経済学の4分野だけです。そうです。経済学は科学なんです。
ノーベル経済学賞は通例は1分野だけで、複数名が受賞することもありますが、トムソン財団が発表した今年のノーベル経済学賞の有力候補は3分野・7名で、以下の通りです。
- 国際貿易理論への貢献に対して
Jagdish N. Bhagwati 米国コロンビア大学教授
Avinash K. Dixit 米国プリンストン大学教授
Paul Krugman 米国プリンストン大学教授- 情報技術への投資と経済成長、また計量経済学で広く応用される技術のモデル化に関する貢献に対して
Dale W. Jorgenson 米国ハーバード大学教授- 取引費用の経済学、契約、インセンティブとコーポレートガバナンスなどに関する貢献に対して
Oliver D. Hart 米国ハーバード大学教授
Bengt R. Holmstrom 米国マサチューセッツ工科大学教授
Oliver E. Williamson 米国カリフォルニア大学バークレイ校教授
要するに、すべて米国の経済学者ばっかりが注目されているようです。さらに、トムソン財団のリストアップはかなり正統派のエコノミストを網羅している印象があります。ただし、ひとつだけトムソン財団のリストアップの難点を上げれば、3点目の取引費用の経済学については、すでに、1981年に英国のコース教授が受賞していることです。ウィリアムソン教授らの新たな理論展開は、戦前に展開されたコース教授の取引費用の経済学を大きく超えるものであると私は理解していますが、果たして、どこまで評価されるんでしょうか。もっとも、情報の非対称性に関する分析への貢献については、1996年にマーリーズ教授とビックリー教授が受賞した後、2001年にスティグリッツ教授とアカロフ教授などが同じ貢献で受賞していまし、ゲーム論への貢献についても、アカデミー賞を受賞した映画のビューティフル・マインドで有名になったナッシュ教授らが1994年に受賞した後、昨年にシェリング教授とオマーン教授が受賞していますから、同じように取引費用の経済学でも、25年もたてば再び受賞する可能性が十分あると思います。
今世紀に入ってからの最近のノーベル経済学賞は、一部前のパラグラフと重複しますが、2001年はスティグリッツ教授とアカロフ教授などに情報の非対称性による分析への貢献に対して、2002年はカーネマン教授とスミス教授に心理学などの導入による行動経済学への貢献に対して、2003年はエングル教授とグレンジャー教授に時系列分析の手法や精度の向上への貢献に対して、2004年にはキドランド教授とプレスコット教授に実物景気循環(リアル・ビジネス・サイクル)に関する研究への貢献に対して、昨年2005年はシェリング教授とオーマン教授にゲーム理論への貢献に対して、それぞれ授与されています。
私は2002年の行動経済学と昨年2005年のゲーム論に関する門外漢なんですが、それ以外の情報の非対称性、時系列分析、リアル・ビジネス・サイクルについては、とってももっともな受賞だとの印象を受けた記憶があります。なお、最近5年間の受賞者11人のうち、9人が米国人で、米国人でないのは英国人のグレンジャー教授とノルウェー人のキドランド教授だけだそうです。
トムソン財団のリストには日本人は入っていません。私の学生時代にはロンドン大学の森嶋教授が日本人でノーベル経済学賞に最も近いといわれていたりしたんですが、東京大学の宇沢教授とともに、かなりお歳を召してしまった印象があります。スタンフォード大学の青木教授と雨宮教授、あるいは、政策研究大学院大教授の速水教授なんかも論文の引用本数が多いので、ある意味で有力だと聞いたことがあります。でも、これらのエコノミストもかなりお歳に思えます。次の世代では、東京大学の林教授あたりなんでしょうか。
昨日のエントリーでも取り上げましたが、村上春樹さんがカフカ賞を受賞して、今年のノーベル文学賞の有力な候補といわれていますが、ノーベル経済学賞も日本人が出て欲しいと思います。
| 固定リンク
コメント