やっぱり「木村伊兵衛のパリ」(朝日新聞社)はすばらしい
午前中に赤坂図書館から借りた「木村伊兵衛のパリ」(朝日新聞社)を昼食後に拝見しました。
従来から、私は日本のリアリズム写真家の代表として木村伊兵衛と土門拳をこのブログなんかでも取り上げてきましたが、親しみがあって大好きな土門拳に比べて、やっぱり、木村伊兵衛は尊敬の対象です。どうして、こんな写真が撮れるのか、というより、どうしたって、こんな写真は撮れないとしか思えません。尊敬の対象たるゆえんです。ですから、赤坂図書館のカウンターで私は思わず「木村伊兵衛先生の写真集を取りに来ました」と先生付けで呼んでしまったりしました。少しバツが悪かったです。
木村伊兵衛がこの写真集の写真をパリで撮ったのは1954-55年ですから、私が生まれる前の話です。木村伊兵衛といえばライカで有名なんですが、この2度の欧州旅行は当時の日本光学がスポンサーだったとかで、ニコンで撮っています。フィルムは富士フィルムから提供された初期のカラーフィルムです。この写真集はフルカラーです。コダクロームも持って行ったそうなんですが、色調が少し柔らかくてパステルみたいに撮れるので、木村伊兵衛は富士フィルムが好きだったと書いてありました。少し国産品愛用のクサさを感じないでもありませんし、ポジのコダクロームとネガの富士フィルムを比較するムリを感じないでもありませんが、木村伊兵衛らしい感想だと思えます。当時のカラーフィルムは今のASAに換算して10くらいだったとかで、普通のモノクロのフィルムみたいに100分の1とか、200分の1くらいのスピードでシャッターを落とせず、10分の1秒くらいでしか撮れないので、少しブレている写真もありましたが、それはそれで味のある写真に見えてしまうから不思議です。また、このため、夜の写真は少なくて、昼間の写真ばかりですが、当時の技術上の制約を考えれば止むを得ません。
大判のフルカラーの写真集で、そんなに大量に売れるとも思えませんし、「木村伊兵衛外遊写真集」で既発表の写真も含まれていますが、それでも、消費税別で14000円、税込みで14700円の価格は、決して高くないと感じました。今は図書館から借りていますが、冬のボーナスで検討したいと思います。
文句なしの5つ星です。
アマゾンとmixiにも同じ内容のレビューを投稿しておきました。
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