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2006年11月15日 (水)

マーケットの向こう側

先週終りに証券会社に勤める知り合いの女性からメールをもらって、今週になってからランチをごいっしょして来ましたが、何だか気に入らないことがあったのか、バイサイドの人の悪口ばかりを聞かされました。私に一気にしゃべったら気が落ち着いた様子でした。私の方はポカンとしたままでした。その気もないのに、さらに、内容もよく知らされないままに、トラブルシューターにされてしまった格好です。
エコノミストが重視する市場には、当然ながら、売り手と買い手がいます。また、役所は税金を強制的に徴収して、グータラとそのお金をムダに使ったりする場合もありますが、民間企業ではそんなことをしていては、企業として存続できません。広い意味で何らかの原材料を買って、社内でプロセスして付加価値をつけて売ることで収益を上げています。付加価値の中には手数料などと呼ばれるものも含まれます。鉄とプラスチックから自動車や電気製品を製造するのはもちろんですが、中東から原油を日本の製油所に運ぶのも、原油自体は何の変化もしていませんが、そのありかを変更させることにより付加価値がついています。私の知り合いが勤めている証券会社だって、後に少し取り上げますが、同じような付加価値を生み出しています。
少し誤解を与えかねない表現かもしれませんが、我が家の子供達だって安く買って高く売るのがビジネスの常識だと知っていたりします。もっとも、我が家の子供達はクロノスのネット・ゲームでフリマを展開しているので、安く買うというよりも、気前のいいモンスターが落として行ってくれるアイテムをタダで拾って、それを自分のパーソナル・ショップやフリマでそれなりの値段をつけて売ったりしているわけです。周囲のフリマを観察して、微妙な価格設定をすることもあるようです。
話を元に戻して、証券会社の場合は、資金調達をしようとしている企業などの社債や株式などの発行のディールを獲得したりして、それらの有価証券を生命保険会社や銀行などの機関投資家に売ったりするそうです。証券会社はセルサイドで、生命保険会社や地方銀行などの機関投資家はバイサイドと呼ばれるそうす。私の知り合いの女性は、このバイサイドの悪口をさんざん私にいって、何かのストレス解消をしたわけです。
私は有価証券のセルサイドとバイサイドの関係は詳しくないんですが、有価証券を離れて一般に、元請と下請けのような分かりやすそうな場合を別にして、バイサイドの方が強いと思われていながら、実は、セルサイドの方がプレステージが高くて、力関係が強い場合が少なくありません。製造業なんかで川上産業から川下産業に行くにつれて、企業としても規模が小さくなっていくことはしばしば観察されます。大企業が製造した商品を全国展開の大手の問屋さんが卸売りして、最後に地域のパパママ・ストアで売る場合なんかが典型です。最後の買い手である消費者は、まったくの個人だったりします。
特に、高炉を有している鉄鋼メーカー鉄鋼専業の商社なんかの関係は特にメーカー優位が確立していると聞いたことがあります。私の大学時代の友人のおとうさんは鉄鋼専業商社を経営する社長さんだったんですが、規模が違うとはいえ、新日鉄なんかの鉄鋼メーカーには頭が上がらないといっていたりしました。その息子の私の同級生が新日鉄に就職が内定した時は、とても喜んでくれたそうです。もう20年以上も前の話ですから、その後は少しくらいは力関係が変化したのかもしれませんが、大使館の外交官として駐在したチリでも、メーカーと総合商社の間で同様の例を見聞きしたことがあります。また、トヨタ自動車などの自動車メーカーと地域のディーラーの間でも、同じような関係があり、メーカーが強い力関係を持っていると聞いたことがあります。私が卒業した京大ではなく、東大を卒業してトヨタ自動車に就職した知り合いがいて、こんな話をしていた時に、トヨタ自動車と東京トヨペットのディーラーとでは、どちらに子供を就職させたいか、と切り返されたことがあります。社会的なプレステージの違いについて、私も思わず納得させられてしまいました。
エコノミストの考える範囲ではなく、もう少し経営学的な考察の対象かもしれませんが、マーケットで対峙する売り手と買い手の力関係は、市場の効率性に影を投げかけることがあるのかもしれません。力関係が何を源泉にしているのかにもよりますが、商品情報をパワーの源泉にしているのであれば、情報の非対称性のためにマーケットの効率性が歪められる可能性は十分にあり得ます。ひょっとしたら、資本関係上の優位でも同じことがいえるかもしれません。単なる商習慣でエラそうにしているだけであればオッケーのような気もします。
エコノミストが全幅の信頼を寄せるマーケットの向こう側には誰がいるんでしょうか?

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