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2007年4月10日 (火)

労働市場における賃金と雇用の因果関係

今日も朝からいいお天気で、気温も上がりました。昼間は風も弱くて、穏やかならしい一日でした。夜には雲が広がりました。

何度もこのブログで主張して来ていることなんですが、日本経済がデフレ脱却の最終局面にある中で、私は賃金が上昇することがデフレ脱却の十分条件であると考えています。その他に、為替相場で円安が2-3年間くらいの相当期間継続することを重視するエコノミストもいますし、かなり無条件に先行きインフレ圧力の強まりを前提にしている場合もあったりしますが、私はすでに需要面からの必要条件はかなりの程度に満たされているので、後は、供給面からの十分条件が満たされるのを待っている状態であると考えています。
ついつい、待っていると書きましたが、この十分条件は時間がたてば自動的に満たされるものではないことは当然です。しかし、それでなくてもセンシティブな労働市場のことですから、政府が介入するなんてトンデもないことです。今年に入ってから、安倍総理大臣をはじめとして、政府・与党から財界に対して賃金引上げに対する要望めいた発言はありましたが、今年の春闘でも賃上げ交渉はショボいものに終わりました。もっとも、春闘そのものが死語になった可能性すら指摘されています。
最近の労働需給を見ていると、景気回復局面の長期化に伴って、求人が増加して失業率もかなり下がって来ており、通常は、人手不足から賃金が上昇するような局面に入っているような気もするんですが、実際には賃金上昇の兆しすら見出せません。フィリップス曲線のコンテクストからは考えられない事態となっているわけです。ですから、今夜のエントリーではフィリップス曲線を離れて、賃金が上昇しない要因を考えてみたいと思います。
第1に考えられることは、昨年2006年10月3日付けのエントリーで取り上げたヘクシャー・オリーン理論に立脚する要素価格均等化定理によるもので、グローバル化の進展により、中国なんかの途上国と同じ生産関数の企業や業界では中国並みの賃金に低下する圧力が加わると言うものです。今年3月15日付けのエントリーでは資本の収益率が均等化していないと指摘しましたが、やっぱり、賃金が下方硬直的なために途上国並みまで下がらないために、資本収益率が途上国並みに上がらない不完全な均等化プロセスが進行している可能性があると私は考えています。
第2に、人口動態的な要因です。少し前まで2007年問題が指摘され、団塊の世代が退職を始める2007年から、労働力人口に劇的な変化が生じることが予想されていましたが、景気拡大局面でそれが起こりましたから、賃金の高い団塊の世代が退職する一方で、賃金の低い若年層が大量に採用されていることから、加重平均での賃金上昇が抑えられている可能性があります。デフレが厳しかったころには若年層の失業率が高くて、フリーターやニートの問題が指摘されていましたが、ここ1-2年で若年層の失業率は劇的に低下して来ています。15-24歳の失業率は2003年に年平均で10.1%を記録してから、昨年2006年12月には6.1%まで低下しています。最近の全体の失業率が4%前後であるだけに、まだまだ水準としては高い印象があるんですが、逆にいえば、25-34歳の5%程度とともに、若年層の失業率はもう少し低下する余地があるわけで、今しばらく、高給取りの団塊の世代が退職して、入替りで若年層が労働市場に参入する形で、人口動態的にマクロの加重平均された賃金の上昇が抑えられる可能性があります。
現時点での日本の労働市場においては、フィリップス曲線的な文脈で労働需給の逼迫から賃金が上昇するという因果関係ではなく、もしも、何らかの要因で賃金が先決的に低く抑えられているのであれば、私の知り合いのエコノミストの説なんですが、賃金が低いので企業が雇用を増加させるという因果関係が働いているのかもしれません。

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