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2007年6月25日 (月)

国際決済銀行 (BIS) の年次報告書における円安警戒の論点は何か?

今日は梅雨らしいお天気で、朝から雨が降ったり止んだりでした。陽射しがない分、気温も上がりませんでした。

国際決済銀行 (BIS) の年次総会がスイスのバーゼルで会際され、昨日、年次報告書が発表されました。NIKKEI.NETのサイトから、最初のパラグラフだけを引用すると以下の通りです。

国際決済銀行(BIS)は24日、年次総会を開き、2006年4月から今年3月末までを対象とする年次報告書を公表した。低金利の円で資金調達し、高金利の通貨で運用する「円キャリー(借り)取引」が拡大した理由は「(欧米と日本との)金利差だ」と指摘。外国為替市場の混乱を避けるため日本の金利正常化が望ましいとの認識をにじませた。

なお、一応、BIS の年次報告書へのリンクは以下の通りです。7MB余りのPDFファイルがアップロードしてあり、英文で200ページをはるかに超えますが、ご興味ある方はダウンロードしてみて下さい。私は決してオススメしません

BIS 年次報告書では第5章 Foreign exchange markets の Highlights で、米ドルの減価をレビュー期間におけるひとつの特徴として取り上げた後、さらに、日本円はもっと減価したと明記しています。第5章の初めに為替の決定要因をいくつか上げているんですが、最初に出てくるのは米ドルとユーロと日本円の推移と短期金利を組み合わせたグラフだったりして、金利要因を最も重視している姿勢がうかがえます。特に、米国と違って、日本は経常収支黒字を記録し続ける中で円が減価したのだから、金利差以外には説明できる要因がないとも指摘しています。
他方、 carry trade において日本円とスイス・フランが funding currencies として調達され、先進国では豪ドル、NZ ドル、英ポンドが、また、エマージング諸国通貨ではブラジルのレアル、ハンガリーのフォリント、南アのランドなどが target currencies として投資先となったと指摘しています。要するに低金利の funding currencies から高金利の target currencies に対して carry trade が実行されたというわけです。このためでもないんでしょうが、スイス国立銀行(中央銀行)は7四半期連続で、6月14日に政策金利であるスイスフランの3カ月物ロンドン銀行間取引金利 (LIBOR) の目標レンジを25ベーシスポイント引き上げ、2.00-3.00% (目標値は中央値の2.50%) としています。これは、今年5月のインフレ率が0.5%と、目安となる2%を大幅に下回っていたにもかかわらず実行されていて、さらに、多くのエコノミストが9月以降も四半期ごとの利上げを継続すると予測しています。インフレ率が目安を大きく下回っていても金利を引き上げるスイス方式に日銀も注目していると言われていたりします。もっとも、欧州の小国と違って、日本のような大国が為替をアンカーにした金融政策運営をすることは考えられませんから、どこまで参考になるかは不明です。
さて、少しスイスに脱線しましたが、BIS 年次報告書を大雑把に見る限り、日本円については水準そのものを問題視するのではなく、経済成長や対外収支などのファンダメンタルズよりもかけ離れて円安が進んでいることを警戒しているようです。すなわち、為替相場の水準が円安であるために日本企業の国際競争力が過大に評価されていることではなく、金利差によって円がオーバーシュートして円安に振れているために、巻き戻し (unwind) が生じた際に、逆方向にオーバーシュートして円高が進み過ぎるなど、為替相場の乱高下が市場の不安定要因になる可能性を警戒しているようです。まあ、英文の報告書240ページ余りを全部読んだわけではないんですが、私はそういった印象を持ちました。

ここ2-3週間、経済指標なんかで日銀の金利引上げに対する追い風が吹きまくっていて、私の知り合いの最弱気派のエコノミストでさえ白旗を上げかかっているんですが、BIS 報告書も為替相場の分析から金利引上げによる円安の進行阻止をオススメしているようです。市場の予測通りに、8月のお盆明けの金融政策決定会合で日銀が利上げする環境がまたひとつ整った気がします。

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