参議院選挙後の経済動向を読む
今日も朝から雲が広がり、午前中には雷雨がありました。夕立みたいなもんですから、すぐに止んだんですが、午後からも雲は晴れませんでした。気温はそんなに上がらなかったような気がするんですが、それでも、蒸し暑いことに変わりはありません。
参議院選挙結果も明らかになり、午後には安倍総理大臣が記者会見しましたので、今週からは先週までの夏休み気分を排して、少しくらいは経済について語りたいという気分になっています。ということで、今夜は参議院選挙結果を受けて、今後の経済動向について考えてみたいと思います。ただし、私のように官庁エコノミストを自称する者にとって、公務員という側面から見れば、選挙はボスを選ぶプロセスであり、また、エコノミストとしての特性から、政局については専門外という制約があり、選挙結果を全体として論ずるのはムリがあります。このため、今夜のエントリーでは次の3点に絞って考えたいと思います。すなわち、タイムスパンの短い順に、市場の反応、財政再建の見通し、日銀総裁人事への影響、の3点です。
第1に、市場の反応なんですが、今日の東証の日経平均終り値は17,289円30銭と先週末に比べて5円49銭上げました。先週後半から株価は調整局面に入っていると言えます。午前のザラ場では一時200円くらい下げた局面もありました。為替相場はジリジリと円高が進行しているように見えます。でも、大雑把に見て、市場は参議院選挙結果を材料にしていないようです。先週後半からのサブプライム債券を仕込んだ CDO なんかの損失に伴う米国市場発の株安が発端となって、質への逃避が生じているだけのようです。米国では株価が下げた一方で、債券が買われて金利は下げましたし、米国市場ほどではないんですが、東京市場でも同じようなことが生じていると考えられます。今日は株価が少し上げたので、債券は売られて金利が上がりましたが、逆の場合は逆になるように思います。特に、今日の東京市場は今夜の米国市場を見極めようとする様子見の雰囲気が支配的でしたから、米国市場次第で、明日は下げ局面に戻る可能性が十分あると予想されます。今週中にザラ場で日経平均が17,000円を割ることもあり得ると見られています。でも、基本的には、企業業績が好調なので、調整局面はそう長くないと私は見通しています。企業業績の点から気がかりなのは為替相場なんですが、ジリジリと円高が進んでいるのは、市場の需給的にはドルの独歩安であると見ています。要するに、小規模ながら米国市場からドル建て資産が逃げ出して円建てやユーロ建ての資産が買われているわけです。もちろん、他の通貨に比較して円キャリー取引が積み上がっていますから、ユーロに対しても円は増価しているんですが、本質的には、米国のドル建て資産から外へシフトが生じていると考えています。せっかく取り上げたんですが、現時点では、金融市場は参議院選挙結果をまったく材料視していないと言えます。ここ数日の米国市場の方向性を見極めた上で、株価は企業業績に応じて上昇傾向に戻ると私は考えています。
第2に、消費税増税や財政再建は厳しくなりました。私は野球に例えて、三本間に挟まれたと表現しています。希望的観測も含めて、完全にタッチアウトになったわけではないんですが、かなり、風前の灯のような気がします。でも、まだホームに帰れる可能性が残っているとすれば、民主党の傾向が財政支出を増加させるものであると前提して、その財源手当てのために法人税の税率引下げを取り止めるのは当然としても、年金や医療の充実のために消費税を引き上げる必要が生じ、その後の選挙次第で、増税はそのままに食い逃げして歳出削減だけを進める内閣が引き継ぐ可能性があるんではないかと思います。もちろん、そんなに短期の動きでないでしょうし、極めて小さい可能性だとは思いますが、可能性はゼロではなく、その意味で、風前の灯ながら三本間に挟まれて、まだアウトにはなっていないと考えています。少なくとも今秋からの消費税論議は封印される可能性が極めて高まったと言えますし、もともと、政治につきものの財政赤字バイアスは選挙結果によって拡大したのは確かです。
第3に、興味あるのは日銀総裁人事です。もちろん、内閣改造もありますから、公務員にとってのボスも変わるんでしょうが、現在の福井総裁も来年3月には任期切れとなりますから、秋口くらいから後継総裁人事が始まる可能性があります。言うまでもなく、日銀総裁人事は国会の同意人事ですから、衆参両院で過半数による同意を得なければなりません。衆議院では自民党が過半数で、参議院では野党が過半数ですから、ラクダが針の穴を通るような人事が求められます。少なくとも、チラホラと噂に上っていた竹中教授のラインは完全に消滅したと考えられます。しかし、規定路線の武藤副総裁の昇格も財務省OBであると言う理由で見送られる可能性がホンの少し高まったような気がしないでもありません。とすると、新日銀法施行から2代続けて日銀OBだったんですが、次も日銀OBの可能性が高まるかもしれません。武藤副総裁と同じ昭和41年入行の理事経験者なんかも候補になる可能性がないとは言えません。ただし、私が前の小泉内閣と安倍内閣とで大きく違っていると感じているのは、安倍内閣の人事に対する執着性です。我々公務員に対して天下りの再就職斡旋なんかの人事一本槍で改革を進めようとしているように見えるとの意見も聞いたことがあり、小泉内閣の時のような郵政民営化なんかの政策よりも人事を重視する傾向があるのだとすれば、日銀総裁人事も一波乱あるのかもしれません。
いずれにせよ、6月29日付けのエントリーで論じたように、エコノミストの夏休みは意外と長そうな気がするんですが、公務員の夏休みは今年は短いのかもしれません。この両面を併せ持つ私の場合はどうなるのか、サッパリ分かりません。
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