「博士の愛した数式」における江夏投手の役割
今日も朝から雲が広がり、梅雨らしいお天気でした。今夜から雨が降り出すとの予報です。毎日のことですが、蒸し暑かったです。
「博士の愛した数式」を読みました。といっても、マンガの方です。今年2007年3月10日付けのエントリーで紹介したリスーピアに遊びに行った時、我が家のおにいちゃんが知恵の輪のパズルを解いたご褒美にもらったマンガです。週末に向けて、軽い読み物としておにいちゃんから私が借りて読みました。言うまでもありませんが、小川洋子さんの原作で、昨年映画化もされました。映画の詳細は映画の公式サイトをご覧下さい。また、大阪ローカルではありますが、昨年3月に MBS 毎日放送の開局55周年記念企画として、ラジオ・ドラマにもなったそうです。かなり話題になった本だと思いますので、ご存じの方も多いんではないでしょうか。マンガの方はくりた陸さんが描いています。なお、今夜のエントリーはそれと意識せずにネタバレがあるかもしれません。ご注意下さい。
主要登場人物は3人で、整数論を専門とする博士とシングルマザーの家政婦さん、それに、博士にルートと呼ばれる家政婦さんの息子さんです。博士は17年前に交通事故にあい、それ以降の記憶は80分間しか続きません。博士のモデルはハンガリーの数学者エルデシュではないかと言われています。なお、博士とルートは私と同じように阪神タイガースのファンです。これはどうでもいいことではなく、それなりに重要な意味を持ちます。今夜のエントリーのタイトルにもあるように、江夏投手の背番号 28 が2番目に小さい完全数だからです。本の方は家政婦さんの視点から、映画の方は成人して中学校の数学教師になったルートが思い出を語るという視点から、それぞれ描写されています。で、結論から言うと、博士の愛した数式はオイラー方程式の特殊なものであるオイラーの等式です。一応、念のために、オイラーの公式とオイラーの等式を以下に書いておきます。
- オイラーの公式
e iθ = cos θ + i sin θ - オイラーの等式
e iπ + 1 = 0
これまた、一応、念のためなんですが、 e はネイピア数と呼ばれる自然対数の底で、 i は二乗すれば -1 になる虚数単位です。もちろん、 π は円周率で、 cos と sin は三角関数です。一般的なオイラーの公式において、 θ = π となる特殊な場合がオイラーの等式です。オイラーの公式は1748年にオイラーによって証明されています。オイラーの等式の方は、全く起源の異なる重要な定数、円周率 π とネイピア数 e が、極めて基本的な数、すなわち、加法の単位元である 0 と乗法の単位元である 1 、さらに、虚数単位 i によって結びついているという意味で特異なものである一方、複素解析における非常に重要な等式となっています。まったく予想外の調和や連関を表現していることから、オイラーの等式は人類の至宝とも呼ばれていたりします。
物語は家政婦紹介協会から家政婦さんが博士の家に派遣されて、博士が家政婦さんに靴のサイズや電話番号を尋ねるところから始まります。靴のサイズは 24 で、 4 の階乗ですから、博士は潔いと感じたりします。さらに、電話番号は1億までに存在する素数の数だそうです。これに見られるように、いくつか数学用語が出て来ます。ルート、階乗、素数、虚数なんかまででしたら、何とか、高校レベルの数学で馴染みがあるんですが、江夏投手の背番号 28 が完全数であるとか、博士が学長賞を取った歴代の人数を記念して時計の裏面に刻まれている 284 と家政婦さんの誕生日2月20日の 220 が友愛数であるとか、さらに、マンガには出て来ないような気がするんですが、過剰数や不足数、あるいは、三角数については、それなりの専門知識がないと聞いたことがないかもしれません。
阪神タイガースの江夏投手は背番号 28 です。というか、17年前に止まったままの博士の記憶の中では 28 のままで、正しくは、背番号 28 でした、と言うべきなのかもしれません。この 28 は2番目に小さい完全数だそうです。完全数とは、 1 を含めて、その数自身を除く約数の和が、その数自身と等しい自然数のことです。江夏投手の背番号の場合は 28 = 1 + 2 + 4 + 7 + 14 となります。なお、一番小さい完全数は 6 = 1 + 2 + 3 です。江夏投手と同世代の阪神タイガースの選手の背番号で言えば、藤田平内野手だったような気がします。これはどうでもいいんですが、古くは、最初の完全数が 6 なのは神が 6 日間で世界を創ったから、次の完全数が 28 なのは月の公転周期が 28日だから、と考えていた、とされていたりします。ついでながら、友愛数とは、異なる2つの自然数の組合せで、 1 を含んで自分自身を除いた約数の和が、互いに他方と等しくなるような数をいいます。親和数とも呼ばれたりします。 284 と 220 は最も小さい数の友愛数の組合せだそうです。
すなわち、17年前で止まったままの博士の記憶の中では、バッタバッタと三振を取る阪神タイガースの江夏投手は完全数 28 の背番号を背負う完全無欠なエースだったりしたんでしょうか。もうすぐプロ野球のオールスター戦の季節ですが、1971年7月17日のオールスター戦は先発の江夏投手が全パから空前絶後の9連続三振を取った歴史的なオールスター戦でした。ちなみに、全パのラインナップは、【1回裏】有藤通世(ロッテ)、基満男(西鉄)、長池徳二(阪急)、【2回裏】江藤慎一(ロッテ)、土井正博(近鉄)、東田正義(西鉄)、【3回裏】坂本敏三(阪急)、岡村浩二(阪急)、加藤秀司(阪急)、でした。今夜の中日戦は雨で中止になりましたが、ジャイアンツを3タテして阪神も調子に乗って来たような気がしないでもありませんし、江夏投手を見習って投手陣にも踏ん張ってもらって、五割を超えてさらに上位を目指して欲しいものです。
今夜のエントリーは読書感想文の日記とも考えないでもなかったんですが、マンガを読んでの読書感想文もないように思いますので、やや無理やりに阪神タイガースの日記に分類しておきます。
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