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2007年8月 1日 (水)

経済政策における改革派のポジション

今日もいいお天気で、気温も上がって蒸し暑かったです。関東甲信地方から北は、ようやく、今日になって梅雨が明けたようです。

今日の東証株式市場は大きく値を下げました。大引けは前日比377円91銭安の1万6870円98銭でした。昨日の終り値との比率を考えると、マイナス2.19%の大幅な下げとなります。 NIKKEI.NET のサイトから最初の2パラグラフだけ引用すると以下の通りです。

1日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続落。大引けは前日比377円91銭(2.19%)安の1万6870円98銭だった。終値で1万6900円を割り込んだのは3月16日以来、4カ月半ぶり。7月31日の米株式相場が大幅反落だったほか、外国為替市場での円高・ドル安を受けて朝方から大きく下げて始まった。値がさハイテク株を中心に売られ、後場に入るとさらに下げ幅を拡大し、日経平均は1万7000円を割り込んだ。東証株価指数(TOPIX)は反落。朝方から下げ幅を拡大し、きょうの安値圏で大引けとなった。
後場に入り、下げ幅は一時400円を超える場面があった。米の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)の焦げ付き問題が米国の実体経済に悪影響を及ぼしかねないとの見方が広がり、信用収縮懸念から世界的に資金が「質への逃避」を意識して、債券に向かった。アジア諸国の主要株価指数が軒並み下落していたことも売り材料になった。市場では「参院選での与党惨敗を受け、日本の政治が混乱しかねないとの懸念が広がっている」と指摘する声もあった。

私の目から見ると、米国経済がサブプライム問題に端を発して実体経済に悪影響が及ぶ可能性が出てきたため、為替の円高傾向とともに日本企業の収益が悪化する可能性が高まったことから、とっても正直に株価が下げたようです。しかし、日本企業の業績はサブプライム問題を抱えた米国企業ほどは悪化しないハズなんですが、他方で、引用にもある通り、政治の混乱の要因もあり、プラス・マイナス併せて、結局、米国なんかと同じように株価が下がっているようです。もちろん、基が米国のサブプライム問題ですから、危険回避というか、質への逃避も生じており、株が下げて債券が上げているわけです。ここで気になるのは政治の混乱が、ほぼ同義で改革路線の後退と受け止められていることです。外国人投資家なんかは改革後退をとっても嫌っているように私には見えます。では、経済政策における改革路線とはどのようなものなんでしょうか?
基本的には、改革派の経済学では緩和的な金融政策と緊縮的な財政政策の組合せが想定されています。しかし、財政政策については緊縮的なスタンスが行き過ぎて増税にまで行き着くと改革派とは見なされないように受け止められています。実証研究の成果を引用する形で、歳出削減と歳入増加の割合が7対3が望ましいと議論されたこともありました。今年度でも20兆円を超える国債を発行しているんですが、取りあえず、基礎的財政収支をゼロ、ないし、小幅の黒字に止めるのが改革派の財政政策と考えられます。微妙なさじ加減が必要そうな気がしないでもありません。マーケットでは「政府にカネを持たせるな」という声き聞きますが、これがバックにあるのかもしれません。
他方、金融政策は基本的に緩和的、すなわち、低金利が志向されているようです。財政再建の立場からドーマー方程式の第2項をマイナスにするため、名目成長率を超えない金利水準が必要との意見もありました。金利水準が低いと何が起こるかと言えば、貯蓄超過主体から貯蓄不足主体への所得の移転が生じます。伝統的には家計が貯蓄超過主体で企業や政府が貯蓄不足主体と考えられていますが、昨今の好調な企業収益から一部には貯蓄超過になっている企業もあります。これに従って、政府は通常考えられる以上に大きな貯蓄不足主体となっています。加えて、忘れていけないのは海外部門で、日本から見て海外部門は貯蓄不足主体ですから、低金利に伴う円安によりドル建て価格が低下する効果が生じています。実質為替レートと名目レートの違いを捨象すれば、交易条件は為替レートの逆数ですから、円安が進むと海外部門から見た交易条件が改善していることになります。ですから、日本の輸出品をいっぱい買ってくれています。
最後に、財政金融政策とは少し違うカテゴリーかもしれませんが、改革派は高成長を志向しています。成長とは労働力の増加、資本ストックの増加、全要素生産性( TFP ) の向上ですから、少なくとも、低金利は資本ストックの増加には寄与します。しかし、日本はすでに人口減少時代に突入し、女性や高齢者の労働力率を上昇させることは一時的には可能でも、移民の受入れという、ややトリッキーな政策を採用しない限り、労働力は傾向的に減少することは明らかです。また、1990年代の低成長期の原因として、東京大学の林教授なんかは全要素生産性の低下が原因であるとする実証研究結果を発表していたりしますので、生産性を向上させて成長を加速するのは大いに有望そうに見えます。しかし、現時点では、政策的に全要素生産性を引き上げることには大きな無理があります。全要素生産性を決定する要因が解明されていないからです。全要素生産性の決定要因を多くのエコノミストが納得する形で提示できれば、ノーベル経済学賞は間違いありません。

いずれにせよ、私から見れば、改革派の経済政策のポジションは決して自明ではなく、とっても微妙なものに見えます。野放図な財政拡大は改革派とは見なされませんが、逆に、大幅な増税も排除されています。成長の加速は政策的に実現できるかどうか、かなり怪しげです。政府が構造改革として取り組むべき課題を改めて考える必要はないのでしょうか?

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