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2007年10月24日 (水)

貿易統計速報に見る米国経済の減速とデカップリング論

今日も、朝から秋晴れのいいお天気でした。日中は陽射しがあり気温も上がりましたが、朝夕はかなり冷え込むようになりました。今日の午後に私の親元官庁で講演会があったので出向いたんですが、ランチからそのまま上着なしのネクタイとワイシャツだけの気楽な服装で行ったら、夕方に戻る時には少し寒いくらいでした。

貿易統計速報

今日、財務省から9月の貿易統計速報が発表されました。米国向けの輸出が減少する一方で、欧州とアジア向けの輸出が増加し、外需に関してはデカップリング論が成り立っているように見受けられます。いつもの NIKKEI.NET から引用すると以下の通りです。

財務省が24日発表した9月の貿易統計速報によると、米国向け輸出額は前年同月比9.2%減の1兆4254億円と5カ月ぶりに減少した。
米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題などで米経済成長が減速し、自動車や建機などの輸出が減少した。ただ、欧州連合(EU)、アジア向けの輸出は10%前後の伸びを維持し、対米輸出の落ち込みを他の地域で補う構図が鮮明になっている。
貿易黒字の総額は、前年同月比62.7%増の1兆6378億円と過去最高を記録した。対米黒字は13.2%減の7899億円と2カ月ぶりに減少。一方でEU向けは、自動車などの輸出が好調で26.4%増。アジア向けは通信機の輸出が大幅に増え58.7%増となった。

引用にないので少し統計計数を補足すると、9月の貿易収支は1兆6378億円となり、事前の市場コンセンサスである1兆4810億円を上回り、8月に続いて2ヶ月連続で増加しました。輸出は前年比6.5%増の7兆2704億円と5ヶ月振りに1桁台の伸びに減速したものの、輸入が前年比▲3.2%減の5兆6325億円と3年7ヶ月振りに前年割れした結果です。対米輸出は金額ベースで前年比▲9.2%、数量ベースで▲11.8%と金額ベースでは5月以来、数量ベースでは7ヶ月連続のマイナスを記録しています。自動車(前年比▲15.2%)を中心に幅広い品目で▲10%を超える減少が見られ、米国景気の鈍化を反映した結果と考えられます。対アジア輸出も金額ベースで前年比+8.3%、数量ベースで+7.8%と、金額ベースでは2月、数量ベースでは4月以来の1 桁台の伸びとなりました。ただし、対 EU 向けは金額ベースで前年比+13.2%、数量ベースで+9.7%と堅調を維持しています。
いろんな国の経済成長を考える場合、直接的に GDP の成長率を見るのが手っ取り早いんですが、何かから反射的にうかがえる場合もあります。例えば、よく言われるのは、必ずしも統計の信頼性が高くない中国なんかの場合は、単純に中国政府が発表する GDP 統計だけでなく、銅などの一次産品価格の動向を見ることも有効であると考えられます。同じように、米国や欧州やアジアなどの海外経済の動向について、我が国からの輸出の伸びを考えるのにも一定の理由があります。9月単月の輸出額で判断するのは余りにも早計なんですが、典型的に現れているのは、米国経済が減速していることと、輸出などで米国経済への依存度の高いアジア経済も米国経済減速の影響を免れないだろうということと、貿易などの域内依存度が高い欧州経済は米国経済の減速には抵抗力がある、といったところでしょうか。ただし、アジア経済については、日本からの輸出の増加が鈍化しているのは一時的であると見ているエコノミストが多いような気がします。理由は、米国への依存度がそれ相応に高いと見られている中国への輸出金額は前年比+16.5%と依然として堅調を維持しているからです。
それから、輸出は海外経済に依存するとしても、輸入は国内経済に依存するのは当然です。9月の輸入が3年7ヶ月振りに前年割れしてマイナスを記録したのは、我が国経済もかなり減速している証拠と言えるかもしれません。さらに、輸出が減速し、輸入が減少した結果として、貿易収支はかなり膨らんで来ています。外需に依存する成長が続いていることは言うまでもありませんが、ここ数日の間に少し為替が円高に振れているのは微妙なサインだと私は考えています。おそらく、為替が貿易に影響を与えるのは少なくとも2-3四半期のラグを持っているを考えられますので、8月のクレジット市場の影響から円高に振れて来ているのは、来年年央以降に統計に表れるんでしょうが、株式市況は円高を嫌気していますし、企業マインドにも何らかの影響を及ぼす可能性は否定できません。私が従来から主張しているように、為替相場は金融市場動向だけでなく、実体経済へ及ぼす影響も小さくないことから、外需の価格要因として今後の注目点のひとつだと考えられます。もちろん、外需の所得要因としては、一見したところ、欧州や中国が米国経済の減速をカバーしてデカップリング論が成り立っているように見受けられますが、欧州はともかく、中国をはじめとするアジア経済は米国への依存度が決して低くないだけに、楽観は出来ないような気がしないでもありません。

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