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2007年11月 5日 (月)

10月の雇用統計は米国経済の底堅さを見せつける

今日も、朝からまずまずいいお天気でした。午前中を中心に陽射しもあって、この季節にしては気温も上がりました。でも、最高気温は20度には達しなかったようで、秋は着実に深まりつつあります。

米国・失業率と非農業部門雇用者数の推移

先週金曜日に発表された10月の米国の雇用統計は、非農業部門の雇用者数で見て前月比16万6000人増となり、米国経済の底堅さを見せつける結果となりました。米国の経済指標ですので、 Wall Street Journal が開設している WSJ.com のサイトから最初の2パラだけを引用すると以下の通りです。

A surprising surge in October payrolls suggested a U.S. economy running at two speeds -- with strength in the service sector offsetting weakness from a plummeting housing sector and gyrating credit markets.
Employers added 166,000 jobs in October, the Labor Department said, the most in five months. The unemployment rate remained unchanged at 4.7% despite widespread worries that the odds of a recession are rising.

ブルームバーグ社の集計による事前の予想平均は85千人増でしたから、166千人増は倍近い結果となり、引用の通り、5ヶ月振りの高い伸びのポジティブなサプライズとなりました。これも引用にある通り、失業率も少し上昇すると考えられていたんですが、9月と変わらずで4.7%でした。この雇用統計を見る限り、米国の景気後退のオッズ odds は高まらなかったかもしれません。
雇用者数の増減を業種別に詳しく見ると、引き続き、製造業を中心とする鉱工業が減少して、政府を含むサービス業が増加する構造に変化はないんですが、企業サービス65千人増、娯楽サービス56千人増、教育サービス・ヘルスケア43千人増が雇用者増を牽引しています。金融市場を揺るがしているサブプライム・ローン問題に関する業種としては、鉱工業に分類されている建設業が4ヶ月連続の減少ながら、8月▲29千人減、9月▲14千人減に続いて、10月は▲5千人減と減少幅が小さくなっています。商業向け不動産建設や公共投資が建設雇用を下支えしているのではないかと言われています。それから、いろんな銀行や証券会社のレイオフが報道される中で、金融サービスは8月▲13千人減、9月も同じく▲13千人減の後、10月は2千人増となり、わずかながら水面上に浮上しました。最後に、私が注目していた小売サービスは8月に▲4千人減と減少に転じてから下げ足を速めて、9月▲12千人減、10月▲22千人減となっています。先週11月1日のエントリーで取り上げたように、今年のクリスマス・セールは昨年とは逆に、原油価格の上昇局面にブチ当たってしまったものですから、信用不安から消費マインドも明るくないことも手伝って、小売業界の警戒姿勢がうかがえる雇用情勢となっています。この警戒姿勢の現れのひとつとして、一部には値引きを前倒しで実施して顧客の囲い込みを始めているとのウワサもあったりします。先にリンクを張っておいた WSJ.com のサイトでは "A seasonally adjusted drop in payrolls among retailers could portend caution heading into the holiday shopping season." に続くパラグラフで、 adjust its promotional plans を示唆する OfficeMax の例を引いたりしています。
米国の雇用統計に引っかけて、やや関係の薄い点ではありますが、2点ほど補足すると、まず、昨年の今ごろにウワサになっていた米国の生産性低下による雇用の増加は、我が同業者の間ではまったく影を潜めました。インフレへの影響の点では昨今の原油高に起因するインフレと生産性低下に起因して、生産性でデフレートした実質賃金上昇から引き起こされるインフレとでは、金融政策当局の反応がまったく違うことが考えられるんですが、今週7日の水曜日に発表される7-9月期の米国の労働生産性・単位労働コストの統計でも、年率1%を超える着実な生産性向上が見込まれており、生産性の鈍化に起因する雇用増の話題は見られなくなりました。もうひとつは、カリフォルニア州南部の山火事の影響なんですが、雇用統計は毎月12日を含む週の調査に基づいていますので、この調査週の後に発生した山火事の影響はない旨を米国労働省が明らかにしています。非難住民は100万人を超え、昨年のハリケーン・カトリーナに匹敵する被害をもたらしている山火事ですから、今後の米国経済に何らかの影響をもたらすことが考えられますが、今回の雇用統計には影響は現れていないようです。

私は、決して、サブプライム・ローン問題に端を発する金融市場の動揺が収束したと考えているわけではありませんが、11月1日のエントリーの結論と同じで、統計に現れた雇用の底堅さがどのように反映されるか、引き続き、米国のクリスマス・セールの動向が注目点といえます。

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