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2007年11月 9日 (金)

日米の金融政策当局の動向を読む

今日は、朝からまずまずいいお天気でした。でも、時刻が進むとともに雲が広がって、明日は雨が降るとの天気予報です。

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) のバーナンキ議長が上下両院合同経済委員会 (Joint Economic Committee) で経済の現状と見通し (economic situation and outlook) について証言 (testimony) を行いました。私は FED のホームページ で見たんですが、景気の先行きに関してはかなり悲観的な見通しを証言しています。すなわち、第3四半期の成長は "solid--at a 3.9 percent rate" であるとした上で、その次のパラグラフは "Looking forward, however, the Committee did not see the recent growth performance as likely to be sustained in the near term." と始めて、このパラの締めくくりに "Overall, the Committee expected that the growth of economic activity would slow noticeably in the fourth quarter from its third-quarter rate. Growth was seen as remaining sluggish during the first part of next year, then strengthening as the effects of tighter credit and the housing correction began to wane." と経済成長について結論しています。なお、念のためなんですが、主語になっている "the Committee" は連邦公開市場委員会 (FOMC) のことです。さらに、続くパラグラフでは "downside risks" について、金融市場の悪化や住宅価格の低下による消費者心理 (consumers' willingness) や投資家の関心 (investors' concerns) の低下を上げていたりします。もちろん、経済成長だけでなく、インフレへの警戒感も "But the inflation outlook was also seen as subject to important upside risks." として、原油や一次産品市況の上昇とドル安が短期的にヘッドラインのインフレ (overall inflation) を上昇させたり、インフレ期待が大きくなる長期的なリスクにも言及しています。最終的に、10月31日の FOMC で25ベーシスの金利引下げを実施した後で、金融政策のスタンスは上下両方向のリスクに対してほぼバランスした "the stance of monetary policy roughly balanced the upside risks to inflation and the downside risks to growth." と結論していたりします。
いくつか報道も拝見しましたが、まず、やや別の観点の報道として、 NIKKEI.NET や同様に asahi.com では、共和党のブレイディー下院議員が、「損失額は最終的には、(80年代を中心にした)米中小金融機関・貯蓄貸付組合(S&L)危機で債務不履行になった総額約1500億ドルに匹敵する可能性があるか」と質問したところ、バーナンキ議長は「ほぼ当を得た推定といえる」としてこれを認めた、とのサブプライムの損失に関する報道を見かけました。バーナンキ議長は7月の議会証言でサブプライム関連の損失を「500億-1000億ドル」と見積もっていたんですが、その直後に広がった金融不安の影響を考慮し、国際通貨基金 (IMF) が9月の報告書で試算した「1700億-2000億ドル」に近い水準に上方修正したもようであるとの報道でした。日本の新聞の報道ではこちらも注目されていたように思います。さて、本筋に戻ると、このバーナンキ議長の議会証言に対して、今後の金融政策運営をめぐる見方がいくつかあるようです。まず、 Wall Street Journal のサイトでは、"Why Fed Expects Growth to Slow" と題して、成長減速とインフレの両にらみながらも、12月11日の FOMC での利下げを催促する内容とも読めなくもない報道を見かけました。他方で、Financial Times のサイトでは、 "Bernanke warns on risks of higher inflation" と題して、インフレ警戒感をあらわにした報道もあったりします。
結論的に言えば、私自身は12月の FOMC でさらに25ベーシスの利下げを決めるんではないかと考えていますが、昨日のバーナンキ議長の議会証言と併せて、この直前の一昨日11月7日に、FED のミシュキン理事による米国議会下院の小規模企業委員会 (Committee on Small Business) での証言やウォーシュ理事による New York Association for Business Economics での講演 (speech) では、利上げ慎重姿勢が示されたとして、利下げを見送るとの観測も出て来ています。まあ、 金融政策のスタンスが roughly balance なんですから、動く必要がないともいえますし、どちらかに動いても OK とも考えられます。6週間おきに開催される FOMC の直近の会議から10日ほどの現時点で、この先1ヶ月以上先の次の FOMC を予想しても仕方がないということなのかもしれません。

なお、今夜のエントリーのタイトルを「日米の金融政策当局の動向を読む」としてしまいましたので、ごくごく短く、かつ、ついでに日銀の動向についても紹介しますと、今日の午後に、日銀の金利引上げ時期についての予想を含む(財)経済企画協会の ESP フォーキャスト調査が発表されました。リンク先の右下の図6に円グラフがあります。これによると、先月発表分までは12月を中心に年内利上げを予想する同業者エコノミストが30人中15人と半数を占めていたんですが、さすがに、今回は31人中の4人まで減りました。減った行き先は来年1月が9人、2月が14人となっています。私のブログの10月22日付けや31日付けのエントリーでも取り上げたんですが、私から見れば当然ながら、私が「大きな驚き」と表現した年内利上げ派は大きく減りました。もう少し早くに気付いて欲しかったものだと思わないでもないですが、それはともかく、まだ1-2月に集中しているのは少し疑問が残ります。米国の例を上げると、日本の証券会社に相当する投資銀行の決算は11月に集中しており、市中銀行は12月決算が多いんですから、通期決算が発表される1-2月には何らかの金融市場を撹乱するウワサや決算発表そのものが出て来る可能性が高いと私は考えています。先日の第3四半期決算の発表でもシティ・グループのプリンス会長が辞任するような騒ぎが起こったりするんですから、通期の決算で何が飛び出すのか、分かったものではありません。もちろん、何もなければ日銀は1-2月に利上げするとの前提なんだろうと無理やり好意的に解釈することも出来るんですが、先行き経済のリスクを分析・評価するのはエコノミストの重要なアウトカムのひとつであるべきだと私は考えていますので、蓋然性がそんなに高くない前提に基づいて議論する姿勢は、少し、あるいは、大いに疑問が残るような気がしないでもありません。突然ながら、よく引合いに出されるエコノミストに関するジョークを紹介すると、無人島にエンジニアとエコノミストが大量の飲料と食料の缶詰とともに流れ着いたんですが、缶切りが見当たらないためエンジニアがプラクティカルに何とか缶詰を開けようとしてもダメだったので諦めかけたところ、エコノミストがやおら「ここに缶切りがあると仮定しよう」と切り出した、というものがあります。認識が至らないのは論外としても、昨今の金融市場の動向に鑑みて、「欧米金融機関の通期決算が発表されても何ら金融市場の動揺を引き起こすことはないと仮定しよう」というのは、このジョークにやや近いと考える人がいてもおかしくないような印象を私は持ちます。繰返しになりますが、先行きリスクを分析・評価して蓋然性の高いシナリオを提示できるのがまっとうなエコノミストなのではないでしょうか?

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