« エコノミストのトラック・レコードから見た景気の現局面 | トップページ | おにいちゃんと誕生日プレゼントを買いに行く »

2007年12月 7日 (金)

経済開発協力機構 (OECD) の経済見通しにおけるデカップリング論

今日も、朝からいいお天気でした。今日はかなり気温が上がりました。12月にしては暖かだったような気がします。夜になっても、そんなに気温は下がっていません。

まず、今夜の本題と少し外れるんですが、注目点ということで、今朝、内閣府から7-9月期の2次QEが発表されました。前期比で1次QEの0.6%増から0.4%に下方修正され、前期比年率では2.6%から1.5%になりました。エコノミストの間でも意見が分かれていた設備投資については、私が月曜日の12月3日のエントリーで指摘した通り、下方修正になりました。この点の私のトラック・レコードはいいんですが、民間在庫が大幅に下方修正されてしまったものですから、全体でせいぜい0.1%ポイントの改定と考えていたのが、0.2%ポイントも下方修正されてしまいました。擬音語であいまいに表現すると、少し前まで、7-9月期はポンと上がって、10-12月期はドンと落ちる、と見通していたんですが、実は、7-9月期から落ち始めていたことが明らかになってしまいました。民間在庫が成長率への寄与度で見て1次QEのプラスの0.1%から2次QEでは▲0.1%に改定され、上下で0.2%ポイントも違っていたのが主たる原因だという気がします。10-12月期の成長率については、私は11月29日に公表された10月の鉱工業生産指数を見てからは、マイナス成長は回避した可能性が高まったように感じていたんですが、ひょっとしたら、やっぱりマイナス成長なのかもしれないと再び思うようになって来ました。建築着工申請の遅れが7-9月期にはまだ本格的に現れておらず、10-12月期に大きく表面化する兆しがあるのもマイナス成長の可能性が十分あると考えるひとつの要因です。

OECD Economic Outlook No. 82, December 2007

さて、本題に戻ると、昨日、経済協力開発機構 (OECD) から経済見通し、OECD Economic Outlook No. 82, December 2007 が発表されました。米国、日本、欧州の成長率とインフレの見通しの概要は上の表の通りです。日本の新聞各紙でも取り上げているところが見られました。でも、圧倒的に詳しかったのは "Financial Times" でしたので、少し長くなりますが、FT.com のサイトから最初の方の5パラを引用すると以下の通りです。

The world economy is reeling from a succession of blows which will cause growth to slow in 2008 to its lowest rate in five years, according to the Organisation for Economic Co-Operation and Development.
But the Paris-based think-tank said on Thursday that the world’s 30 wealthiest economies were in a good position to absorb much of the shock emanating from turmoil in the financial and housing markets and higher energy costs. They owed such resilience to buoyant world trade, high employment and recent high rates of corporate profitability, it said.
Jørgen Elmeskov, acting head of the economics department, said the organisation had cut its growth forecasts virtually everywhere but the outlook was “actually not that bad in view of the recent shocks”. In its twice-yearly Economic Outlook, published on Thursday, the OECD said it now expected growth in the 30-nation area next year of 2.3 per cent, down from its May forecast of 2.7 per cent.
This would be the weakest performance since 2003, when the world economy grew by 1.9 per cent as it emerged from the fall-out caused by the bursting of the technology bubble in 2000. It expected a slight upturn, to 2.4 per cent, in 2009 and held its growth estimate for this year at 2.7 per cent.
But it warned that there were big risks to this relatively benign outlook, emanating in particular from housing and financial markets and rising commodity prices. It expected stock markets to remain volatile in the face of re-pricing of risk caused by tighter credit conditions.

ついでに、OECDのパリ本部と東京事務所が公表している pdf のサマリー文書への関連リンクも張っておくと、以下の通りです。

要するに、昨日取り上げたエコノミストのトラック・レコードと同じで、国際機関でも成長率見通しは下方修正されているわけですから、世界的に景気は減速局面にあると考えられます。日本の成長率については、本年度1%台半ば、来年度2%全後とのエコノミストの大雑把なコンセンサスに対して、OECD の見通しは財政年度と歴年の違いがありますので一概に比較は出来ませんが、やや慎重な見方となっている印象があります。FT.com の引用にもある通り、先行きリスクとして、金融市場の混乱、住宅価格の下落、エネルギをはじめとする商品価格の上昇の3点を上げています。これらは私が10月22日のエントリーで取り上げた G7 ステートメントをほぼ踏襲しています。2番目と3番目の順番が異なっていて、住宅については G7 が米国に限定していたのに対して、OECD では特に限定しておらず、欧州の住宅も含む表現になっている点が少し異なるだけです。私のちょっとした印象なんですが、G7 でも OECD でも住宅と金融市場は明確に区別しており、住宅が個人消費へのパスであるのに対して、金融市場の混乱はクレジット・クランチから設備投資へのパスを念頭に置いているように見受けられます。日本の、特に、報道ではサブプライム問題として、金融機関の収益まで含めて、いっしょくたに論じているのに比べて、問題の切分けが正確になされている印象があります。
逆に、米国の住宅価格の下落は景気後退の引き金とはならない見通しを表明していることに象徴される通り、決して悲観的な見通しではありません。その根拠として、OECD は堅調な雇用が所得と消費を増加させ、好調な企業収益が設備投資を支え、新興国の成長が世界貿易の拡大につながり輸出が伸びること、などを上げています。それはそれで説得力のある議論を展開しています。お気付きになった読者もいるでしょうが、最後の点は9月18日付けのアジア開発銀行の見通しを紹介したエントリーでも取り上げたように、国際機関の大好きなデカップリング論が成り立つことをあからさまにサポートしています。デカップリング論が成り立つとの前提で、さらに、その新興国の中心である中国に地理的に最も近いにもかかわらず、日本が成長率でもインフレでも日米欧の三極の中でドンジリなのは特筆に値します。国際化の遅れが高成長を続けている新興国市場への不十分なアクセスにつながっている可能性があるような気がしないでもありません。デカップリング論が成り立つとしても、その恩恵を受けるのは十分な国際化が進んでいる国だけなのかもしれないという気がします。

欧州は言うに及ばず、米国や日本が少なくとも来年の内に景気後退局面に入る可能性がかなり低いであろうことは私も OECD 経済見通しに同意しますしが、もう一歩進んで、さはさりながら、ひょっとしたら、成長率見通しの最も低い日本が景気後退国面に入る可能性がもっとも高いかもしれない、と思わないでもありません。

|

« エコノミストのトラック・レコードから見た景気の現局面 | トップページ | おにいちゃんと誕生日プレゼントを買いに行く »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/20840/9293968

この記事へのトラックバック一覧です: 経済開発協力機構 (OECD) の経済見通しにおけるデカップリング論:

« エコノミストのトラック・レコードから見た景気の現局面 | トップページ | おにいちゃんと誕生日プレゼントを買いに行く »