米国が景気後退局面に入る確率を新しいデカップリングが低下させるか?
今日も、朝からいいお天気だったものの、昼前から雲が広がりました。午後から南関東の沿岸部では雨が降るかも知れないとの天気予報ですが、結局、東京では傘のいるような雨らしい雨は降りませんでした。
12月10日付けの Wall Street Journal で、新しい Economic Forecasting Survey: December 2007 が公表されています。左のグラフにある通り、今月から12ヶ月以内に米国が景気後退局面に入る確率は平均で38%に高まりました。グラフの通り、8月のパリバ・ショックを受けて9月予想から確率が大きく高まり、10-11月と連続して少し落ち着いたものの、12月調査では4割に近づいています。実は、先日、外資系証券会社の経済見通しセミナーに参加して、来年、米国経済がリセッション入りする確率を知り合いのチーフエコノミストが40%と弾いていたので、妙に符合していると感じてしまいました。私も40%までは大きくないものの、無視し得ない確率だろうと感じ始めています。しかしながら、Wall Street Journal のサーベイ調査でもリセッションの確率をもっとも高く見通しているエコノミストでも50%ですから、高くても五分五分といったところなんだろうと思います。もちろん、この確率は昨年2006年7月24日付けのこのブログのエントリーで取り上げたように、「事前の確率分布と事後の実現値の確率」のうちの事前の確率分布ですから、口の悪い人に言わせれば、エコノミストの経済見通しはアテにならないのかもしれません。
翻って、日本が景気後退局面に入る確率は、ひょっとしたら、米国よりも高い可能性があると私は考えています。どうしてかというと、国際化の遅れから新しい形のデカップリング論に乗り遅れる可能性があると考えているからです。もっとも、日本の金融機関はサブプライム・ローン問題で欧米ほどは大きな痛手は受けていないように見受けられますから、金融面でのデカップリングを必要としない可能性も十分あります。新しい金融面でのデカップリングは今日の日経新聞1面トップにもあったように、サブプライム・ローン問題で欧米の金融機関が新興国からの資本に依存する向きがあることです。スイスの金融大手UBSがサブプライム・ローンの損失に対して、中東やシンガポールなどの政府系ファンドからの資本増強について報じた記事を NIKKEI.NET のサイトから最初のパラだけ引用すると以下の通りです。
スイスの金融大手UBSは10日、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)に伴う損失で新たに100億ドル(約1兆1100億円)の評価損を計上すると発表した。関連の証券化商品の評価額下落が止まらないためで、累計損失は約1兆6000億円に達した。欧米金融大手の抱える同様の損失額は全体で8兆円を突破、さらに膨らむ恐れがある。UBSは同日、シンガポール、中東の政府系ファンドから130億スイスフラン(約1兆3000億円)の出資など2兆円近い資本増強を実施した。
少し前まで、デカップリング論は新興国への輸出が景気を下支えするとの実物経済を中心に据えた考え方だったような気がしていました。例えば、先週金曜日の12月7日のエントリーで取り上げた "OECD Economic Outlook No. 82, December 2007" なんかでは、"growth was being supported by … still buoyant world trade driven by robust growth in emerging economies" との表現だったりしました。しかし、米国のシティ・グループが中東のアブダビ投資庁から資本調達したことも記憶に新しい出来事ですし、輸出だけでなく資本も新興国に依存する傾向が出てきたように思います。昨夜のエントリーでも少し触れたように、米国経済の場合は実物面では堅調な指標が発表される一方で、金融面では先行き不安が残っていますから、金融面で新興国から資本を受け入れてデカップリングされれば景気後退局面に入る確率が低くなる可能性もあり得るかもしれません。
日本の場合はサブプライム・ローン問題などによる金融面からの先行き不透明感は欧米よりも少ないように感じていますが、景気後退局面に入る確率を小さくするためには、輸出入なんかの実物面での国際化とともに金融面での国際化をさらに進めて、好調なアジアをはじめとする新興国とのデカップリングを進めることも重要なのかもしれません。
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