貿易統計に見る日本のデカップリングの現状
今日は、朝から冬晴れのいいお天気でした。特に、昼前から陽射しがあり、気温は昨日よりも上がったような気がします。でも、今朝も朝の冷え込みは厳しかったです。
昨日、政府経済見通しが決定されたのを受けて、今日は、来年度予算の財務省原案が各省に内示されました。復活折衝が始まります。世間一般も忙しい師走なんでしょうが、霞が関では来年度予算の政府原案の決定まで、一段と多忙の度合を強めている気がします。夜を徹しての作業が続く部局も少なくありません。それから、昨日から開催されていた日銀の金融政策決定会合が終了し、金利の据置きを決めました。しつこく金利引上げの議案を提出し、金利据置きに反対票を投じ続けてきた水野審議委員も金利据置きに賛成しての全員一致だったらしいです。水野委員は7月から金利据置き反対票を投じ続け、8月のパリバ・ショックを経ても態度を変えなかったんですが、今回、金利据置きに賛成票を投じたということは、金融市場の混迷度合の深刻さを反映しているような気がしないでもありません。特に、日経新聞の報道によれば会議後の福井総裁の記者会見で、「海外経済や金融市場の不確実性に加え、国内景気も足元で減速している」との認識が示されたようです。
財務省に話を戻すと、まあ、部局が違うんでしょうが、予算の財務省原案とともに11月の貿易統計も発表しています。米国向けの輸出額が4ヶ月連続で前年割れとなり、貿易黒字も4ヶ月振りに減少しました。いつもの NIKKEI.NET のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
財務省が20日発表した11月の貿易統計速報によると、米国向けの輸出額は前年同月比6.0%減の1兆4140億円だった。3カ月連続で前年を下回るのは、2004年2月まで14カ月連続で減少して以来となる。米国は信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題などで経済成長が減速。自動車や建機の輸出が減った。輸出の落ち込みによる対米黒字の減少や、世界的な原油高などを背景に貿易黒字の総額は4カ月ぶりに減った。
全体の貿易黒字額は前年同月比12.2%減の7974億円だった。中東向けの自動車などが伸び、輸出額は9.7%増の7兆2720億円。一方、原油価格の高騰で原粗油の輸入額が5割増えるなど、全体の輸入額は13.2%増の6兆4746億円と単月として過去2番目の高水準。輸出も11月としては最高だったが、輸入の伸びが上回ったことから、差し引きの貿易黒字額が減った。
貿易統計について、まず、明らかにしておくべきは、輸出入ともに前年比で増加していることです。輸出が前年比9.7%増、輸入は13.2%増です。輸入は価格高騰を続けている原油輸入の増加と航空機の増加が主たる要因で2桁増となりました。特に、原油価格は円建てでも上昇を続けており、11月の原油輸入平均価格は1リットル57.99円と、1982年11月の過去最高値(56.96円)を25年振りに上回りました。輸出よりも輸入の伸びが高かった結果として、貿易黒字は前年比▲12.2%減の7974億円と、市場の予測をかなり下回りました。もっとも、輸出が減っているわけではありませんし、原油価格の高騰もあり、米国をはじめとする世界経済が減速に向かう流れの中で、あり得べき貿易黒字の減少と考えることも出来ます。逆に言えば、日本の景気減速が相対的に軽微に止まっているとも言えるかもしれません。
輸出について地域別にみると、米国向けが前年比▲5.6%減と10月の▲3.2%減から下げ幅を拡大しています。 EU 向けは10月の21.5%増から6.1%増となりましたが、引き続き、堅調な伸びを維持し、アジア向けは14.9%増と10月の14.6%増に続いて2カ月連続で2桁の増加を示しています。地域別品目別輸出で注目しているのはアジア向け輸出です。アジア向け輸出は、中国向けも含めて、電機輸出の伸び率が鈍化している一方、自動車や通信機などが増加しています。アジア向けは電機輸出の中でも半導体等電子部品が中国向け、アジアNIES向け、ASEAN向けと軒並み減少しているんですが、これらの製品の最終需要地はアジアではないと考えられ、北米の景気減速の影響を受けている可能性が高いと私は考えています。一方で、今年の年央以降、アジア向けには自動車や通信機の輸出が増加しており、これらはアジアを最終消費地としているのではないかと考えられます。前者のアジア向け電機輸出、特にIT関連の輸出の減少や鈍化はリスクとして認識する必要はありますが、後者のアジアを最終消費地とする製品の輸出増加は、日本のデカップリングが進んでいると評価できる面も含んでいるように私は感じています。
本来であれば、景気拡大局面が長期に続く中で、消費をはじめとする内需が主導する経済の姿が望まれるところなんですが、現状では、そうなっていないのも事実ですから、外需の動向はまだまだ重要だと私は考えています。その外需の動向が北米向け一辺倒ではなく、アジアの最終需要に基づいた輸出が増加の兆しを見せているのは、理念は別として現実的には、日本の景気にはプラスであることは言うまでもありません。
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