エコノミストのトラック・レコードから見た景気の現局面
今日も、朝からいいお天気でした。昨日よりもホンの少しだけ気温も上がったような気がします。霞ヶ関周辺の官庁街の銀杏もすっかり色づきました。
今日の午後に(財)経済企画協会から ESP フォーキャスト調査の集計結果が発表されました。私はこの財団の会員ではないので、公表されているレポートの1枚目しか見られないんですが、特に、今夜のエントリーのタイトルにしたエコノミストのトラック・レコードの観点から、各調査結果のpdfファイルにある図2と図6を注目しています。図2はそのものズバリで、調査月ごとの2007年度と2008年度の成長率見通しに関するエコノミストのトラック・レコードが読み取れますし、日銀の金利引き上げ時期を問うている図6も何ヶ月かのグラフをつなぎ合わせると、平均的なエコノミストのトラック・レコードが透けて見えます。
まず、今年度と来年度の実質成長率見通しのトラック・レコードは以下の表の通りです。日本経済フォーキャスター36人(機関)の平均値となっていますが、調査月によって回答数は異なっています。実質成長率ですから単位はパーセントです。なお、転記ミスの可能性を排除できませんので、詳細は上のリンクから原典資料をご覧下さい。
調査月 | 2007年度 見通し | 2008年度 見通し |
---|---|---|
1月 | 1.92 | 2.32 |
2月 | 1.98 | 2.32 |
3月 | 2.05 | 2.38 |
4月 | 2.19 | 2.32 |
5月 | 2.13 | 2.23 |
6月 | 2.18 | 2.27 |
7月 | 2.29 | 2.30 |
8月 | 2.29 | 2.30 |
9月 | 2.15 | 2.17 |
10月 | 1.77 | 2.06 |
11月 | 1.66 | 2.00 |
12月 | 1.51 | 1.98 |
要するに、7-8月までは上がり続けて、それをピークにして本年度も来年度も落ち続けています。12月調査では本年度1.5%、来年度2%あたりがコンセンサスの平均値になっているようです。誰がどう考えても明らかなんですが、景気が拡大している局面では、エコノミストのトラック・レコードは下振れし、見通しが段々と上方修正されるのに対して、景気が減速するような場合には、この逆で、現在のように下方修正が続く結果が観察されると考えられます。上の表を見る限りでは、今年8月のパリバ・ショックから始まる一連の金融市場の混乱あたりから景気減速が認識され始めたと見ることが出来ます。ESPフォーキャスターに参加しているような素晴らしいエコノミストから私はワンテンポ遅れますので、「そろそろ景気は転換点を迎えるのか?」と題したエントリーを書いたのは9月10日でした。もっとも、景気転換と減速は大きく違うことは言い訳しておきます。
それから、日銀の利上げ時期についても、今回のESPフォーキャスト12月調査の発表で2月と7月に大きく割れました。実は、半年前の年央くらいまで私も8月利上げを予想していて、6月25日付けのエントリーでは「私の知り合いの最弱気派のエコノミストでさえ白旗を上げかかっている」とか、7月2日付けのエントリーでは「日銀のスケジュール通りに8月に利上げされると言うのが市場のコンセンサスになっている」とか、8月利上げを当然視していました。ESPフォーキャスト調査でも、6月調査でほぼ半数、7-8月調査ではほぼ 3/4 のエコノミストが8月利上げを予想していたりしました。これも上のパラと同じで、8月のパリバ・ショックから始まる一連の金融市場の混乱で大ハズレとなりました。その後、9月調査では10月利上げ予想に大きくシフトした後、10月調査では12月利上げと来年2月利上げに割れたものの、半数は年内利上げを予想し、11月調査では大きく来年1-2月利上げ予想にシフトしました。このパラの最初に書いたように、今回の12月調査では来年2月と7月に割れました。私は10月22日付けのエントリーで福井総裁の任期中の今年度いっぱいは利上げは難しいのではないか、との見通しを明らかにしましたし、その後も、日銀の「展望リポート」を取り上げた10月31日付けのエントリーや11月9日付けのエントリーでも同様の主張を繰り返していますので、ようやく、世間のエコノミストが私の見方にジワジワと近づいて来た気がしないでもありません。でも、今でも2月利上げを予想する向きがあるのには少し驚かされます。私も8月利上げを予想していたんで、エラそうなことは言えないのかもしれませんが、この点についてはESPフォーキャスターのトラック・レコードがさらに悪化する可能性があります。なお、現時点で、私は次の利上げは早くても来年年央だと考えています。ひょっとしたら、年末か年度末かにずれ込む可能性も否定しませんが、何分、利上げ時期に一定の影響を及ぼすと考えられる日銀総裁・副総裁が3月に3人そろって交代しますので、4月以降の金融政策を予想するのはかなり困難であることも事実です。
米国にはブルーチップ・エコノミック・インディケーターズの調査がありますが、日本でもこのESPフォーキャスト調査が優れたトラック・レコードを残すような信頼性の高い調査になるためには、日銀の利上げ時期の予想がキーポイントとなる可能性があるのかもしれません。
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