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2008年1月 9日 (水)

世銀の "Global Economic Prospects 2008"

今日は、朝から少し雲が広がっていたんですが、昼前から冬晴れのいいお天気になりました。気温も昨日ほどではなかったんですが、この季節にしてはかなり上がりました。

昨日、世銀から "Global Economic Prospects 2008" (GEP2008) が発表されました。よく分かりませんが、世銀の本部があるワシントンではなく、ロンドンでの発表となっています。いつもの通り、フルテキストが世銀のホームページからダウンロード出来ます。まず、NIKKEI.NET のサイトから記事を引用すると以下の通りです。なお、ネットには見当たらなかったんですが、夕刊には経済見通しの表が掲載されていました。どうでもいいことで、世銀の発表文はロンドン発だったんですが、なぜか、日経新聞ではワシントン発となっています。

世界銀行は8日、最新の世界経済見通しを発表した。2008年の実質経済成長率については、日本が1.8%、米国が1.9%にとどまると指摘。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を発端とする金融不安などの世界的な打撃を織り込み、昨年5月時点の予測をそれぞれ0.6ポイント、1.1ポイント下方修正した。
世銀は昨年8月9日に本格化した金融不安を受けて「国際市場は不確実性の高い局面に入った」と強調。08年の日本と米国の成長率もその影響で減速し、07年実績見込みの2.0%、2.2%をいずれも下回ると予測した。
米国の住宅価格が大幅に下落し、金融不安が悪化すれば、米景気が後退局面に突入する可能性もあるとみている。08年のユーロ圏の成長率も2.1%にとどまり、07年実績見込みの2.7%を下回ると予測した。
08年の中国は10.8%、インドは8.4%。新興国の高成長は続くものの、世界全体では3.3%と07年実績見込みの3.6%を下回るとの見通しを示した。

全体で200ページを超える分量で、当然ながら正本は英語なもので、私には全部を読み通す能力も気力もありませんから、10ページ余りの Overview のチャートを中心に、プリントアウトもせずにモニター上でザッと目を通しただけです。また、取りあえず、2009年までの成長率見通しのサマリーは、レポートの22ページにある Table 1.2 The global outlook in summary, 2005-09 で確かめることが出来ます。もちろん、フルテキストだけでなく、Overview だけのファイルをダウンロードすることも出来ます。
日本の新聞で取り上げられている経済見通しの数字は別にして、全体の論調として見ておくべきは、特に強調している点が2点あり、ひとつめは好調な途上国経済が世界を支えるというデカップリング論です。私のブログでも昨年9月18日付けのエントリーで「国際機関のエコノミストはデカップリング論がお好き?」と題して、アジア開発銀行 (ADB) から出された "Asian Development Outlook 2007 Update" を取り上げて以来、その後も、9月25日付けの「国際通貨基金 (IMF) の Global Financial Stability Report」、12月7日付けの「経済開発協力機構 (OECD) の経済見通しにおけるデカップリング論」などで盛んに出現しています。もはや、見飽きた気がしないでもありません。GEP2008 でも、Overview の最初に現れるグラフが "Figure 1 Robust growth among developing countries should cushion the developed country slowdown" というタイトルになっていて、高所得国の成長率が2-3%程度であるのに対して、途上国では7%前後に達するという現状を明らかにしていたりします。
もうひとつ注目すべき論点は、途上国に対する technology diffusion です。自然科学や工学的な狭い意味での技術の波及だけでなく、慎重なマクロ経済政策運営も含めて、途上国において過去15年間で全要素生産性 (TFP) と所得の向上がもたらされていると結論付けています。全部で3章構成のうちの第2章と第3章で、Chapter 2 Technology and Technological Diffusion in Developing Countries と Chapter 3 Determinants of Technological Progress: Recent Trends and Prospects と題して、かなりの分量を割いて分析しています。従来は、高所得国の技術進歩が途上国に波及しにくかったのに対して、最近時点では、広い意味での技術革新が途上国に所得の増加と貧困削減をもたらしているとの前向きの評価です。特に私が印象的だったのは、Overview の5ページにある "Figure 5 Technological achievement tends to level off at different income levels in different regions" のチャートです。繰返しになりますが、自然科学や工学的な技術だけでなく、経済政策運営なども含めていますから、Figure 12 のタイトルは "Developing regions have much poorer governance than do OECD countries" だったりします。それから、技術が波及して行く経路として、貿易と直接投資以外に8ページの Figure 8 では "Diaspora and other networks" という言葉を使っていて、この方面の用語に詳しくない私なんかはちょっとドキッとしたりしました。
最後に、仕上がりの経済見通しの数字については、まず、上の引用では2008年までしか触れられていないんですが、GEP2008 では2009年まで明らかにしています。日本を見ると2008年1.8%に続いて、2009年は2.1%ですから、カレンダー通りの歴年と財政年度の違いはありますが、政府経済見通しとかなり似通った数字だと言う印象を持ちました。ということは、逆に見れば、少なくとも日本に関してはかなり楽観的な見通しと言えるのかもしれません。国際機関が大好きなデカップリング論に基づいた見通しであれば、なおさら楽観的な傾きを有しているように受け取られがちな気がしないでもありません。しかし、米国経済についてはかなり慎重な見方で、第1章では "Risks and uncertainties: Danger of a banking crisis and a U.S. recession" と題した節を設けて分析していますし、随所に、「米国が景気後退に入ったら…」との表現が見られることも事実です。しかし、最終的には米国についても2008年1.9%、2009年2.3%と徐々に上向いていくシナリオを考えているように見受けられます。

いずれにせよ、私のブログでも何度か言明しているように、日米ともに今年から来年にかけて景気転換点を迎えるかどうか、経済政策運営の点から重要なポイントに差しかかっているような気がしてなりません。

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