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2008年1月31日 (木)

米国経済の動向と米国大統領候補の景気対策案

今日も朝からいいお天気でしたが、昨日よりもかなり気温が下がったように思います。でも、ランチタイムに外出するのにコートは不精してしまいました。

GDP GrowthFed-Funds Target

米国の GDP 統計と金利の引下げが発表されました。昨年10-12月期の米国の成長率は年率で0.6%と大幅に減速し、米国連邦準備制度理事会 (FED) は定例の連邦公開市場委員会 (FOMC) を開催し、政策金利である FF レートを50ベーシス引き下げて3.0%とすることを決定しました。いずれも上のグラフの通りです。まず、いつもの NIKKEI.NET からこれらの記事を引用すると以下の通りです。

米GDP、0.6%成長に減速・10-12月期
米商務省が30日発表した昨年10-12月期の実質国内総生産(GDP)の速報値は、前期の昨年7-9月期に比べ年率換算(季節調整済み)で0.6%増えた。実質成長率は前期の4.9%を大幅に下回り、急減速した。昨年1-3月期の0.6%以来、3.四半期ぶりの低水準となった。住宅投資が26年ぶりの大幅な減少となり、個人消費と設備投資の伸びも鈍化した。市場では景気後退の懸念が強まりそうだ。
2007年暦年の実質成長率は2.2%。前年の2.9%より減速し、02年の1.6%以来、5年ぶりの低水準を記録した。
昨年10-12月期の実質成長率は市場予測の平均値である1.2%の半分にとどまった。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を発端とする金融不安が長引き、実体経済に幅広い打撃を与えたことが浮き彫りになった。
住宅投資は前期比23.9%減。8四半期連続の減少で、1981年10-12月期の35.1%以来の大幅な落ち込みとなった。住宅ローンの融資基準が一段と厳しくなり、建設や販売の不振に拍車がかかった。
米、0.5%追加利下げ・FF金利3%に
米連邦準備理事会(FRB)は30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.5%引き下げ、年3%とすることを賛成多数で決定、即日実施した。金融機関向けの貸出金利である公定歩合も0.5%引き下げ、年3.5%とした。
FF金利の引き下げは昨年9月のFOMCから5回目。22日に0.75%の緊急利下げに踏み切ったばかりだが、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を発端とする金融不安や景気悪化に歯止めをかけるため、一段の金融緩和を決断した。
FOMC終了後に発表した声明は「金融市場はかなりの緊張状態にある」と指摘。金融不安が長引き、住宅市場の低迷や雇用の鈍化が鮮明になったとの判断を示した。「景気下振れのリスクがなお残る。必要に応じて迅速に行動する」と述べ、追加利下げの可能性に含みを残した。

引用が長くなってしまいましたが、この米国の経済の大幅な減速に対して、すでに報道されているように、大統領府は rebate check と呼ばれる戻し減税1000億ドルをはじめとする1500億ドル規模の減税を中心とする景気対策を発表しています。すでに、議会下院を通過し上院で審議中なんですが、日本ではそんなに注目されていないものの、対抗する民主党の大統領候補者も以下のように景気刺激策を発表しています。我が同業者のレポートからの丸写しの孫引きですが、各候補者のホームページから取ったものだそうです。

  • クリントン候補 (総額700-1100億ドル)
    • 緊急住宅基金:300億ドル
    • 低所得家庭向け暖房費支援:250億ドル
    • 失業保険の給付延長:100億ドル
    • 代替エネルギー促進プログラム:50億ドル
    • 個人への戻し減税:400億ドル (状況に応じて)
  • オバマ候補 (総額750-1200億ドル)
    • 一律250ドルの戻し減税 (雇用が3ヶ月連続で減少した場合、再度同額給付) :350-700億ドル
    • 年金受給者へ250ドル給付 (雇用が3ヶ月連続で減少した場合、再度同額給付) :100-200億ドル
    • 住宅差し押さえ救済基金:100億ドル
    • 極度に住宅市場が冷え込んだ地域へのインフラ支援:100億ドル
    • 失業保険給付の増額:100億ドル

繰返しになりますが、大統領府の案が1500億ドル規模で戻し減税が中心ですから、即効性を重視していると見られます。極端なことをいえば、年央に集中的な対策を講じて景気後退を食い止めようとする姿勢が見られます。他方、民主党候補者の案はいずれも住宅基金を含んでいます。オバマ候補なんかは Foreclosure Prevention Fund なんて直接的かつ分かりやすい名称を付したりしています。何分、同業者から送られて来たレポートの丸写しで、私も詳細を検討しているわけではありませんので、内容は微妙に違う可能性がありますし、直感的にはやや金額が少ない気もしますが、住宅債権買取機構のようなものを考えているのであれば、かなり根本的な解決策と評価できます。ただし、救済のために qualify するのに時間がかかり、大統領府案のような即効性は望めない可能性が高いと受け止められています。別の観点ですが、戻し減税は消費性向次第で確実性が必ずしも高くないと考えられる一方で、オバマ候補の案に含まれているインフラ整備の公共投資は確実性が高いとも評価できます。他方、私が見た範囲で、現在のブッシュ大統領と同じ共和党の候補者からは、大統領府案に付け加える形で、35%の企業法人税率を25-20%に引き下げるとか、設備投資の償却を加速させる案も示されています。共和党候補者の中でもハッカビー候補からはかなり極端な案が示されています。すなわち、個人及び企業に対する連邦所得税を廃止して消費税に統一することにより、労働へのインセンティブ低下を防止することが提案されています。もっとも、実現性は疑問視されていたりもします。ある意味で当然です。

Economic Concerns

米国経済は年央の景気後退の可能性を含めて、崖っぷちと表現するエコノミストもいたりして、かなり微妙な局面にあるんではないかと見られている中で、大統領選挙でも上のグラフに見られる通り、経済問題に対する米国民の関心は高まって来ており、再び、"It's the economy, stupid." が大統領選挙の争点になる可能性も十分あるんではないかと私は考えています。

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