予想外の上昇を示した消費者物価はインフレ期待を高められるか?
今日も、朝から冬晴れのいいお天気でした。一昨日の雪で地上のホコリが洗い流されたようで、昨日今日と空気が澄んでいるようにすら見え、冬ながら陽射しが強烈です。でも、今日は気温が上がらず風も強かったので、とっても寒かったです。昨日と同じようにコートなしで外出したら、交差点で信号待ちをしている時なんかには、筋肉がこわばるように感じてしまいました。
今日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI) 統計が発表されました。昨年12月の全国と1月の東京都区部です。全国のベースで生鮮食品を除くコア CPI が前年同月比0.8%の上昇となり、3ヶ月連続でプラスを記録しました。ただし、その中身は上のグラフの黄色い部分に見られるように、ガソリンや灯油をはじめとするエネルギーの寄与度が圧倒的となっています。まず、いつもの NIKKEI.NET のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
総務省が25日発表した2007年12月の全国消費者物価指数(CPI、05年=100)は変動の激しい生鮮食品を除くベースで100.9となり、前年同月と比べて0.8%上昇した。3カ月連続のプラスで、1998年3月以来、9年9カ月ぶりの高い伸びとなった。ガソリン、灯油をはじめとするエネルギー、食料品の値上げが主な要因。賃金が伸び悩む中での高い物価上昇により、個人消費の下押し圧力が強まりそうだ。大田弘子経済財政担当相は閣議後の記者会見で「消費にマイナスになる」と懸念を表明。食料・エネルギーを除いたベースでは前年同月比0.1%の下落でマイナスが続いており、経財相は「デフレ脱却に向けて大きく歩み出したとは言えない」との見方を示した。
まず、注意すべきなのは、繰返しになりますが、エネルギーの寄与度が極めて大きいことです。ですから、米国流の食料とエネルギーを除くコアコアの CPI はまだ水面上には出ておらず、▲0.1%とコアコアはマイナスを続けていることです。下のグラフの通りです。ピンクのコア CPI が急角度で上げ幅を拡大しているのに対して、一番下のマーカーなしの緑色のラインがゼロに達していないのが見て取れると思います。ただし、12月の東京都区部ではゼロに達しています。ですから、今月1月10日のエントリーでも取り上げたように、原油をはじめとする国際商品市況の上昇にともなう物価上昇はデフレを悪化させます。大田経済財政担当大臣の発言の通りです。
しかし、他方で、私がここ3ヶ月くらい主張している通り、国民の生活実感として物価が上がっていることは確かで、電通が2ヶ月ごとに発表している消費実感調査のうち、物価上昇感を取り出した下のグラフに見る通り、この1年間で物価について「上がっている」と感じている人の割合は39.8%から86.4%と倍増しています。一番上のグラフの寄与度分解でもピンクの部分の非耐久財が物価押上げ効果を強めていますが、この大きな部分は食料品で、パンを含む穀類、ハム・ソーセージなどの加工肉、カレールーなどの油脂・調味料などで価格上昇が観察されています。
上のグラフの消費実感調査はあくまでバックワードの実績であって、今までのところ、先行きのインフレ期待が上昇しているようには見えないと私は感じています。と言うのは、同じ電通の消費マインド指数も内閣府の景気ウォッチャー調査と同様、2006年前半をピークにゆっくりと落ちて来ているからです。しかし、現実にプラスの物価上昇率をメディアなんかで観察して、買い物の際にも実感として物価が上がっていることを感じ取って行くうちに、国民の中にインフレ期待が高まる可能性も否定できないと私は考えています。もっと言えば、そこに希望を感じ取っていたりしないでもありません。
もう何度もこのブログで主張しているところですが、確かに、景気情勢が厳しい局面に差しかかっているところに、1%足らずのレベルでわずかとは言え、実質所得をデフレートさせるような物価上昇を歓迎しないのは言うまでもありませんが、予想以上のプラスを記録した物価上昇率に何とか国民のインフレ期待を反転させる効果を望みたいと私は考えています。
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