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2008年1月18日 (金)

日本経済の比較優位はどこにあるのか?

今日も、朝からが広がり、陽射しがなくて気温が上がりませんでした。東京の今日の最高気温はこの冬最低だったそうで、ここ数日と同じで、真冬の冬本番の気候が続いています。明日からセンター試験が始まるんですが、日曜日の午後には雪が舞うかもしれないとの天気予報でした。

1人当たりGDPの各国比較

昨夕、経済財政諮問会議が開催されました。しかし、これほど、注目されなかった諮問会議もめずらしいのではないでしょうか?少なくとも、私が見た範囲では、新聞の扱いがとっても小さかった印象があります。主として、来年度の経済見通しや中期計画の「日本経済の進路と戦略」に関する記事がありましたが、今までになく後ろの方の紙面で扱いが小さかったような気がしないでもありません。その中で、まったくメディアには注目されなかったんですが、甘利経済産業大臣が「各国の一人当たりGDPと主要産業について」と題する資料を提出しています。そのエッセンスが上のグラフです。つい最近まで日本の1人当たりGDPは世界でも指折りの水準にあったのに、内閣府が昨年12月に発表した「国民経済計算確報」ではOECD諸国の中で18番目となりました。もちろん、米ドル換算ですから為替レートの問題が大きいんですが、諸外国を眺め渡しても我が国の経済力が落ちていることを実感している国民が多いことも事実だろうという気がします。また、本日の政府3演説の経済演説においても大田大臣がこの事実について触れていました。
しかし、上のグラフは典型的な経済学の誤りを体現しているように思います。1人当たりGDPの高い国を金融、IT産業、資源国と分析し、フランス、ドイツ、日本の3国を製造業国と分類した上で、いかにも高付加価値産業への移行を促すような政策意図を感じさせるグラフになっていると言わざるを得ません。比較優位を無視した議論だという気がします。その意味では、典型的に経済学を誤解している可能性があります。もちろん、一国の産業構造を分析して世界と比較し、その国の比較優位がどこにあるかはフォーマルな分析をしても容易に議論出来るものではありませんし、かつての幼稚産業論はすでにサポートされなくなっているとしても、戦略的貿易論などを誤用して比較優位を作り出せると誤解されている場合もありますから、仕方がない面もあるんでしょうが、ややお粗末な議論だと受け止めるエコノミストもいそうな気がしないでもありません。ただし、フォーマルな分析抜きに、さらに、日本に比較優位があるかどうかは別にして、あくまで私の直感として、金融サービスは上のグラフにあるようなOECD諸国との生産性ギャップが大きいと言う理由で、キャッチアップの余地が残されているような気がしていることは確かです。でも、これは比較優位とはまったく別の観点です。

かなり昔の2006年7月27日付けのエントリーで私は観光立国に大きな疑問を呈しましたが、今でも所管産業を含めて、何らかの特定の産業の育成を官庁の仕事だと考えているのだとすれば、余りにも時代錯誤なものですから危機感を覚えます。やや私の拡大解釈かもしれませんが、官庁からの育成補助策がなければ育たない産業を育成しようとするのはムダ以外の何ものでもないような気がしてなりません。

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