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2008年1月24日 (木)

「日本経済の進路と戦略」を読んで、消費税増税に反対する

今日は、朝から冬晴れのいいお天気でした。気温も上がり、ライチタイムにはコートなしで外出したりしました。でも、風が少し強くて、体感気温はそれほど上がらなかった気がします。

経済成長成長シナリオリスクシナリオ
歳出削減14.3兆円11.4兆円14.3兆円11.4兆円
基礎的
財政収支
GDP比
▲0.1%
GDP比
▲0.5%
GDP比
▲0.6%
GDP比
▲1.0%

やや忙しくして米国経済に目を奪われている間に、先週、経済財政諮問会議と閣議で「日本経済の進路と戦略」が決定されました。その少し前から内閣府の財政試算が示され、「進路と戦略」でも名目成長率3%台前半の成長シナリオ、歳出削減も14.3兆円のケースAだとしても2011年度に基礎的財政収支が黒字化しないとの結果に少し当惑した人もいるかもしれません。財政再建に関する試算結果は上の表の通りです。なお、上の表の基礎的財政収支は2011年度の計数です。それから、この前段として、昨年10月に内閣府が試算した社会保障給付と増税の関係は、やや古いかもしれないんですが、どこかの新聞社のサイトから取ったものは下の通りです。

2025年度の増税必要額

これらの議論をかなり無理やりに総合すると、財政赤字を解消することが重要であり、さらに、このままでは財政赤字が解消できないのであれば消費税を増税すべきであるという結論に達しかねませんが、私は大きく異を唱えます。ごく単純かつ直感的にいえば、消費税の増税は成長率を押し下げるからです。経済学的な用語ですが、消費税はいわゆる効率的な税制であり、直接税である所得税に比べて、経済成長に寄与する労働供給を阻害する部分が小さいといわれていますが、消費に対するペナルティを含んでいるわけですから、経済成長にマイナスのインパクトを有することは言うまでもありません。1997年の例は消費税率の引上げだけでなく、アジア通貨危機とか山一證券をはじめとする金融不安とかの複合的な要因も上げられますが、消費税がわずか3%から5%に引き上げられただけで、多くの国民が消費抑制的な効果を認めたんではないかと私は思います。まだ10年余り前のイベントですから、フォーマルな分析は多くなく、私が知る範囲でも本家本元の財務省の「ファイナンシャル・レビュー」で消費税率引上げが景気を悪化させたわけではないとの反論的な分析があるくらいで、このブログでは直感的な反論しか出来ませんが、国民の素直な受止めとして、消費税率の引上げが、特に、上の表にあるように場合によっては10%を超えるような消費税率引上げが経済に抑制的な影響を与えないハズはないと言わざるを得ません。
私の直感では、成長シナリオとリスクシナリオの差は成長会計で言うところの資本や労働といった生産要素が増加する寄与ではなく、おそらく、全要素生産性 (TFP) で見ているような気がしますし、確かに、TFP を決定する要因は経済学で解明されておらず、これが分かればノーベル賞ものと言われるのも事実ですが、成長を促進する手段はいくつかあると考えています。控えめに言っても、今世紀初頭のデフレは経済政策の失敗による面が大きく、従って、デフレによる成長の阻害は広義の政府、統合政府の経済政策運営の失敗に近いと私は考えています。しかし、現在の経済財政諮問会議をナナメから観察していると、どうも増税に傾斜した議論が行われているような気もしないでもありませんし、再び経済政策の失敗が繰り返される恐れがないとも言えません。

私はそんなにリフレ派のメインストリームではないように感じる時もあるんですが、今夜のようなエントリーを書いていると、やっぱり、私は成長重視のリフレ派なんだろうなと自覚が高まってしまいます。

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