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2008年1月21日 (月)

経済対策により米国は景気後退を回避できるか?

今日は、朝からが広がり、陽射しがなくて気温が上がらず寒かったです。昨夜から今朝にかけて雪が舞うかもしれないとの天気予報だったんですが、我が家の下の子の願いも虚しく、東京では少なくとも積もるくらいの雪は見られませんでした。

Rerun

先週金曜日に米国大統領府から経済対策の骨子が発表されました。上の表は2001年対策と比較した "Wall Street Journal" のサイトにあったものです。まず、その WSJ.com のサイトから記事の冒頭の3パラを引用すると以下の通りです。

As President Bush laid out his vision for an economic stimulus that could reach $150 billion, Democrats in Congress and the administration diverged about how to spread around its benefits.
The tension is emerging as a sticking point amid broad consensus that the government should do something quickly to prop up the lagging economy. The White House wants tax cuts to help a wide range of individuals and businesses. Privately, it has floated a plan that focuses on rebates of up to $800 for individuals and $1,600 for married couples.
In addition to tax cuts, congressional Democrats say they also want spending targeted at specific groups such as the unemployed. They have also discussed denying rebates to taxpayers who earn more than $85,000 and offering them to those who don't pay income taxes at all. Both ideas are likely to be opposed by the White House, at least initially.

上の表にもある通り、大きな項目は戻し税で、納税者1人当たり800ドル、共働きなら1,600ドルと2001年のITバブル崩壊時の300-600ドルの3倍近くの規模を確保していることです。米国は日本のような議院内閣制ではなくて大統領制ですから行政府と議会が完全な分権となっているため、まだまだ政府と議会との調整の余地が残っていて、総額は確定していないんですが、大雑把にGDPの1%の規模の経済対策になるとの報道です。その主要なパーツが小切手による戻し税となっているわけです。規模としてはGDP比で1%と報じられていて、問題は時期なんですが、大統領選挙の年でもあり、議会も早い対応を考えているようで、4月の上中旬には可決されるとの見込みだそうです。4月の上中旬に法律として成立すると、行政府の執行から考えて6-7月の年央の実施になると考えられます。前回の2001年や2003年と同様のスケジュール感となる可能性が高いと考えられます。
どうしてスケジュール感が大切かというと、今年の年初に米国の投資銀行が相次いで米国経済が第2-3四半期にマイナス成長を記録して景気後退に入るとのレポートを出したことに関係がありそうな気がしないでもありません。そのひとつはポールソン財務長官の出身母体であるゴールドマン・サックス証券だったりします。もちろん、民間金融機関のエコノミストは言うに及ばず、官庁エコノミストも含めて、エコノミストの経済見通しはポジション・トークの面がありますから、そのまま額面通りに受け取るのはリスクがないとはいえません。でも、ポールソン財務長官の出身の投資銀行であれば、それなりの影響力は持っているのかもしれません。いずれにせよ、GDP1%規模の減税を年央に実施するとして四半期に引き直すと年率で4%に相当します。減税ですからすべてが支出に回らない可能性もあり、大雑把に半分くらいが支出されるとして、GDP2%くらいのインパクトがあるとメノコで計算すれば、年央の第2-3四半期のどちらかがマイナス成長を回避できる可能性が高まるような気もしないでもありません。
それにしても、昨年後半当たりまでは、サブプライム・ローン問題は長引く可能性があって、2008年中か2009年前半くらいまで米国の景気は減速するとの見通しもあったりして、長引く方に注目が集まっていたんですが、世の中の流れはとっても速くて、今年初めには年央に景気後退の可能性があるとのレポートが出て、さらに、ひょっとしたら、今年の第1-2四半期がマイナス成長になって景気後退ではないかとの見通しすらあるよなことも聞きました。そうすると、すでに米国経済は景気後退に片足を入れてしまっていることになり、今回の大統領府の経済対策も遅きに失した、ということにもなりかねません。

経済対策には認知ラグ、実施ラグ、波及ラグの3種類のラグがあるということは大学の初級マクロ経済学でも教えているんではないかと思いますが、実際に体験すると様々な難しい面があることも事実です。今日の東証日経平均株価の500円超の下げも日本の輸出関連企業の下落幅が大きいようですし、改めて、日本でも景気転換点の足音を感じ始めているエコノミストもいるのかもしれません。

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