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2008年2月21日 (木)

今年の1-3月期のうるう年効果とその後の消費動向を考える

今日も、朝からいいお天気で、最高気温も2日連続で10度を上回ったようです。最高気温と連動しているのかもしれませんが、昨日あたりから花粉が飛び始めたような気がします。鼻が詰まります。

少し前に、今年の1-3月期はうるう年効果で統計上は景気のいい数字が出ると書きましたが、今夜はこのうるう年効果とその後の消費の動向について考えたいと思います。まず、GDP統計から過去の計数を拾ってみました。現在の 93SNA になってから比較可能な計数で、1998年以降の四半期別の前期比年率成長率をパーセント表示したものが下の表です。

1998年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
▲7.5▲2.0+2.2+0.6
1999年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
▲3.3+2.5▲0.4+2.3
2000年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
+7.4+0.9+0.8+3.5
2001年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
+1.9▲2.2▲4.4▲2.1
2002年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
+1.4+3.6+2.7+0.6
2003年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
▲1.5+2.8+2.3+6.4
2004年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
+4.4▲0.8+1.6▲0.7
2005年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
+2.6+4.6+1.9+2.4
2006年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
+2.0+3.5+0.2+4.2
2007年1-3月期4-6月期7-9月期10-12月期
+3.9▲1.4+1.3+3.7

上の色付きのセルがうるう年の2月29日を含む四半期です。きちんとしたフォーマルな統計的な処理をすれば明らかなのかもしれませんが、一見して成長率が高めに出ている疑いを指摘できると思います。現在の 93SNA では季節調整はセンサス局法の X-12 を使っていて、うるう年調整は可能なんですが、実際には、うるう年効果を除去するパラメータの設定をオフにしているようなことも聞きました。ただし、GDP 統計はいわゆる2次統計ですから、1次統計で季節調整がなされてうるう年効果が除去されていれば、2次統計の GDP には出て来ないことも考えられるんですが、2次統計を作成する上で季節調整済みの1次統計を使うことはレアケースだと考えられ、おそらく、原系列の1次統計を2次統計に加工した上で季節調整をかけていると考えられますから、原系列の統計はモロにうるう年効果を持っていると考えられます。
このうるう年効果について、考え方は様々なんですが、まず、統計上の処理の方法であって、景気実感とは関係ないとの意見もあり得ます。しかし、営業日が1日多くなって、それだけ売上げなんかも増えるわけですから、私は景気実感としても決して無視できないと考えています。マグニチュードとしてどれぐらいかといえば、素直に考えれば、四半期90日ほどの営業日が1日増えるわけですから、前期比で1%、年率では4%くらいの押上げ効果が考えられます。しかし、懐疑的に考えるエコノミストはうるう年でも所得が増えない点を強調します。所得が変わらないのに消費が大きく増えるとは考えられないというわけです。しかし、お給料が同じでも、テレビを見て電力を消費しますし、ご飯も食べます。うるう年はこれが1日分多くなりますから、何らかの効果があると考えるのが自然ではないでしょうか。
ただし、別の要因で今年の1-3月期の景気を下押しする要因がありました。自動車の自賠責保険の保険料が4月から引き下げられることです。もちろん、自動車そのものに比べて、自賠責保険料はそんなに大きい額ではありませんから、びっくりするような効果はないと考えられていましたが、それでも、3月末に自動車を買おうとする人は1-2週間待って4月に買った方がおトクなのですから、自動車販売を3月から4月にシフトさせる要因となり得ると考えられていました。しかし、今日の東京新聞のサイトで、国土交通省が「自賠責保険は1-2ヶ月の短期契約と、4月以降の安い保険料が適用される長期契約を同時に結ぶことができる」との通達を出したことが報じられています。現時点での評価は難しいものの、新車の買控えを緩和する効果があるのではないかと期待されます。
また、うるう年効果の1-3月期を終えても、7-9月期には北京オリンピックというイベントが控えており、2年前のサッカーのワールドカップを上回る経済効果を見込むエコノミストも少なくありません。ドイツよりも格段に近いですから、オリンピック観戦の旅行はもちろんですし、大型テレビなんかも売行きが増加する可能性が大いにあります。この経済効果はオリンピックが開催される7-9月期に限定されるものではなく、大型テレビなんかは4-6月期から売れ始める可能性もあります。オリンピック関係のグッズも売れるかもしれません。

日本の景気循環日付けはやや生産統計に偏りがありますから、ひょっとしたら、昨年10月の生産統計のピークを景気のピークと判定する可能性も十分ある一方で、先週、2月14日付けのエントリーの繰返しになりますが、消費を中心に見ていると、GDP 統計の上から日本経済の本格的な減速が確認されるのは今年の年央以降になる可能性があります。建築基準法ショックから住宅投資が前期比で立ち直れば、もっと後ズレする可能性すらあります。見方を変えると、典型的な認知ラグを発生させる可能性も残されていますから、景気動向の把握には万全を尽くすべき時期であることはいうまでもありません。

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