21世紀版「前川リポート」は何を目指すのか?
昨夜の雨も明け方までには上がり、今日も、朝からいいお天気でしたが、風は残り気温は上がらずに寒かったです。
昨夕、経済財政諮問会議の「構造変化と日本経済」専門調査会の第1回会合が開催されました。今朝の朝刊各紙で取り上げられていたものの、ネット上では余り見かけませんでしたので、このブログでは初めてのような気もしますが、産経新聞のサイトから記事の最初の3パラを引用すると以下の通りです。
「平成版・前川リポート」を策定する内閣府の「構造変化と日本経済」専門調査会(植田和男会長)が26日、初会合を開いた。グローバル化に乗り遅れ、少子高齢化で内需の伸びも期待できないなど、日本経済には閉塞(へいそく)感が漂う。成長の足かせとなっている構造的な課題をあぶり出し、持続的な成長の処方箋(せん)を示せるか。6月の取りまとめに向けて骨太の議論が進められる。
初会合では、(1)グローバル化の中で日本が抱える弱点の克服(2)消費を増やし、景気拡大を続けるための賃金配分(3)格差是正(4)日本の国際貢献などを論点とする方針を確認した。議論のなかでは、委員から「国際的に通用する高度人材の教育、育成が不可欠だ」といった意見や、「世界的な改革競争のなかで、日本は遅れている」との指摘もあった。
大田弘子経済財政担当相は初会合に出席し、「新しい経済構造の視点を出してほしい」とあいさつ。これに応えて、植田会長も「国民に夢を与えられるリポートにしたい」と抱負を述べた。ただ、論点自体が経済財政諮問会議などと重複感があることは否めない。具体性のある提言をどこまで盛り込めるかも不透明だ。
さらに、ついでなんですが、政府の経済財政諮問会議のホームページにある名簿と検討事項(案)へのリンクをリファレンスのために残しておきたいと思います。以下の通りです。
さらにさらにで、一応、検討事項(案)へのリンクを張ったんですが、私なりに11項目を整理して、ポイントとなるキーワードを取り出すと以下の通りです。
- 比較優位構造
- 資金還流
- リスクと脆弱性
- 資本と労働の成果配分
- 格差
- 家計資産の活用
- 供給力
- 成長分野
- 制度設計
- アジアの一員としての位置付け
- 環境
約20年前の元祖「前川リポート」が作成された1986年4月当時は、私はすでに公務員として働いていましたが、膨大な貿易黒字を抱える日本が諸外国からの批判もあって、内需拡大や市場開放の必要性を打ち出した点に特徴がありました。他方で、金融や格差、あるいは、中国をはじめとするアジア新興国といったファクターはほとんど希薄であったことも事実です。プラザ合意後の急激な円高の中で取りまとめられた「前川リポート」が「国際協調のための経済構造調整研究会報告書」というその正式名称の通り、経済構造調整を主眼としていたのに対して、対外不均衡は構造という質ばかりではなく、為替という量でも調整できる可能性を含めて、「前川リポート」取りまとめの後ではありますが、私は日本経済モデルの担当者として大量のシミュレーションをこなしていた記憶があります。逆に言えば、過去の経済構造をパラメータに取り込んだ経済モデルでは、当時のコンピュータの技術水準の制約もあって、「前川リポート」に盛り込まれた経済構造調整をシミュレーションすることが難しかったことも事実です。
最後に指摘しておきたいのは、政府が中長期的な構造調整政策に取り組むのは当然としても、同時に、短期的なマクロ政策の舵取りは中央銀行たる日銀の役割です。政府と日銀が沿う方の役割を果たしてこそ効率的な経済政策運営が可能となります。現時点で、誰が日銀総裁になるのかは分かりませんが、政府が動き出したタイミングであるからこそ、日銀の役割も重要だという気がします。
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