« 米国経済の動向と米国大統領候補の景気対策案 | トップページ | 午前中は小学館の学年雑誌を買いに行き、午後はおにいちゃんと理科教室に行く »

2008年2月 1日 (金)

磯崎憲一郎『肝心の子供』(河出書房新社)を読む

今日も朝からいいお天気でしたが、朝夕は昨日や一昨日よりもさらに気温が下がったように思います。でも、昼間は陽射しもたっぷりで暖かですから、今週はずっとランチタイムに外に出ているんですが、今日もコートはなしでした。

磯崎憲一郎『肝心の子供』(河出書房新社)

少し経済評論の日記が続いたので、今夜のエントリーは週末前の軽い話題ということで、久し振りに、読書感想文の日記です。今週、河出書房新社から出版されている磯崎憲一郎さんの『肝心の子供』を読みました。ブッダにまつわる4世代に及ぶ壮大な叙事詩です。まず、河出書房新社のホームページにある内容紹介を引用すると以下の通りです。

ブッダ、束縛という名の息子ラーフラ、孫のティッサ・メッテイヤ。人間ブッダから始まる三世代を描く新しい才能。「身体性を持ったボルヘス」保坂和志氏、「あらゆる意味で壮大な小説」角田光代氏、他選考委員絶賛!

河出書房新社の紹介は慎み深いのか、第44回文藝賞受賞作であることに触れていません。そういうマーケティング・ポリシーなのかもしれませんし、単に忘れているだけかもしれません。私独自の分類により、借りる本だと考えて港区立図書館で借りて読みました。かなり余白の多いページで、しかも100ページ余りですから、1時間ほどで読めると思います。わたしはかなり感激したので3回ほど読み返しました。単純にヒマだったのかもしれません。短編ではないにせよ、長編とは言えませんから、中篇だという気がしますが、扱っているのは数十年の期間ですから、私にはかなり読み応えがありました。内容と叙述の素晴らしさからしても、十分、五つ星です。なお、今夜のエントリーは意識せずにネタバレがいっぱい含まれそうな気がしますから、読み進む場合はご注意下さい。
ブッダの父王スッドーダナ、スッドーダナに束縛という意味のラーフラと名付けられたブッダの子、さらに、ブッダの孫でラーフラの子のティッサ・メッテイヤと続く4代にわたる壮大な叙事詩です。私は日本人としては敬虔な仏教徒ではなかろうかと思わないでもないので、ブッダにまつわる小説ということで特に興味深く拝読しました。歴史の流れというものを感じさせるスケールの大きい物語をコンパクトで美しい小説に仕上げた著者の力量に感服しました。銀器の窪みに溜まる黒い錆、樹木の変わらぬ姿、時間を経ずに子供が生まれた瞬間に成り立つ親子関係、饒舌な隣国の王ビンビサーラの語る鉄が支配する歴史、その鉄のゆえに始まる戦争に従事する少年兵ティッサ・メッテイヤ、淡々と流れる時間の上にものすごく重いテーマを込めて、著者の筆力は止まるところを知らないといっていいと思います。
私が見た範囲で、文藝賞の選考委員を務めている保坂和志さんは、「ブッダの孫にあたるとされる男がになってしまった話といってもいい」と選評に書いています。また、世間一般では「悟り」に関する本だと評価されているようにも聞きます。私のブログではあえてカギカッコ付きで「悟り」と表現しておきたいと思います。無理やりに、この2点を総合すると「悟り」とは猿になることだといえるのかもしれません。でも、生きながら「悟り」に達する道を選ぶのではなく、死後の輪廻転生からの解脱と極楽浄土への生まれ変わりを願う、私のような一向宗の念仏者には少し違った風に読めました。すなわち、ややエコノミスト的な表現を借りると、大きなマクロの歴史の流れとその中のマイクロな親子関係、特に父子関係をとっても突き放した視点から描き切った小説です。

繰返しになりますが、とってもオススメの五つ星です。図書館で借りるので十分でしょうから、多くの方が手に取って読むことを願っています。

|

« 米国経済の動向と米国大統領候補の景気対策案 | トップページ | 午前中は小学館の学年雑誌を買いに行き、午後はおにいちゃんと理科教室に行く »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/20840/10187244

この記事へのトラックバック一覧です: 磯崎憲一郎『肝心の子供』(河出書房新社)を読む:

« 米国経済の動向と米国大統領候補の景気対策案 | トップページ | 午前中は小学館の学年雑誌を買いに行き、午後はおにいちゃんと理科教室に行く »