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2008年4月28日 (月)

『数学で犯罪を解決する』(ダイヤモンド社) を読む

今日は、スッキリと晴れ上がっていいお天気でした。最高気温は20度近くまで上がったようです。ランチタイムに六本木をうろついていたんですが、半袖にサングラスという外国人を見かけました。そろそろ、そんな季節になったんだという気がします。

『数学で犯罪を解決する』私はエコノミストですので、経済関係の本を読むことが多いんですが、時折、数学関係の本も読みます。経済学と数学はかなり似通った部分があり、数学はエコノミストには必須だと考えているからです。昨年11月14日のエントリーでは「モンティ・ホール問題の周辺事情をひも解く」と題して、ローゼンタール教授の『運は数学にまかせなさい - 確率・統計に学ぶ処世術』を参考に、モンティ・ホール問題の解説のマネゴトもしました。ということで、この週末あたりに、スタンフォード大学のデブリン教授とカリフォルニア工科大学のローデン教授の『数学で犯罪を解決する』(ダイヤモンド社) を読みました。翻訳は山形浩生さんと守岡桜さんです。デブリン教授は数学に関する啓蒙書の著書も多く、私でも知っているくらいですから、割合とファンもいるんではないかと思います。なお、この本は、米国のテレビ・シリーズで、日本でもスカパーで放映されている "NUMB3RS"、邦題「NUMBERS: 天才数学者の事件ファイル」の数学に関する解説本です。著者の両教授はドラマの数学監修者らしいです。ドラマは、タイトルの通り、カリフォルニア科学大学の天才数学者であるチャーリー・エップス教授が、兄の FBI 捜査官ドンを助けて難事件を解決するという内容のようです。カリフォルニアが舞台となっているらしいです。残念ながら、我が家はスカパーと契約していませんので、私はこのテレビを見たことはありません。でも、本を読むだけでも十分に楽しめると思います。もっとも、アマゾンのレビューなんかを見ている限りでは、数学の専門家からすると物足りないのかもしれません。
目次というか、章別構成は以下の通りです。かなり、雰囲気が分かると思います。

  1. ホットゾーンを発見: 犯罪の地理的プロファイリング
  2. 初歩の統計で犯罪捜査
  3. データマイニング: 大量情報からパターンを抽出
  4. 予兆が初めてあらわれるのはいつ?: 変化点検出
  5. 画像エンハンスと再現
  6. 未来を予測する: ベイズ推論
  7. DNAプロファイリング
  8. 秘密:暗号づくりとその解読
  9. 証拠の信頼性は?: 指紋に対する疑念
  10. 点をつなぐ: ネットワークの数学
  11. 囚人のジレンマ、リスク分析、対テロ対策
  12. 裁判所の数学
  13. カジノでの犯罪: 数字で胴元を負かすにへ
  14. NUMB3RSシーズン3までの数学的あらすじ

この前後に「訳者口上」と「訳者あとがき」が加わります。この手のテレビ・ドラマの裏側にある科学的な解説書としては、サイモン教授の『X - ファイルに潜むサイエンス - ミュータント、ウイルス、エイリアンの実像』なんかが有名なんですが、ちょっと、私の専門分野からはかけ離れていて、私はまだ読んでいません。この『数学で犯罪を解決する』を本屋さんで見かかけた時に、私が興味をひかれたのはデブリン教授の本だからというのが一番で、基本的には統計と確率だろうと思っていたんですが、変化点検出やデータマイニングからニューラル・ネットワークまで、さらに、ゲーム論としてもかなり現代的な囚人のジレンマまでかなり幅広い分野を扱っていて、少しびっくりしました。もちろん、ロサンゼルスを舞台にしたドラマですから、お近くのネバダ州のラスベガスのカジノのお話もあります。チラリとではありますが、カオス理論についても応用しているようです。今や、社会科学で数学を応用しかつ数学的な美しさを持っていることから、「社会科学の女王」と呼ばれるのは経済学ではなく犯罪捜査学なのかもしれません。特に、経済学は公式統計に頼る度合いが強いように感じるんですが、独自統計を豊富に利用可能な点では犯罪捜査の方に分があるかもしれません。現代では、特定個人やギャングなどの犯罪だけではなく、テロを防止するには体系的な数学の活用が必要であろうことは、シロートの私にも分かるような気がします。

最後の「訳者あとがき」に山形さんから、参考文献が豊富に紹介されています。何度も登場するローゼンタール教授の『運は数学にまかせなさい - 確率・統計に学ぶ処世術』も出て来ますし、モンティ・ホール問題と明記せずに、訳者がモンティ・ホール問題を解説していたりして、思わず笑ってしまいました。参考文献はどうしても講談社ブルーバックスが多いように見えたのは私の気のせいかもしれません。

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