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2008年4月11日 (金)

上野泰也『チーズの値段から未来が見える』(祥伝社)を読む

今日は、朝のうちは昨日からの雨が降っていましたが、昼前からお天気は急速に回復し、よく晴れていいお天気になりました。午後からは気温も昨日に比べてグッと上がったようです。この時期の役所のオフィスは外気温とともに変化し、今日の午後は25度に達していました。そろそろ夏物に衣替えする季節かもしれません。

上野泰也『チーズの値段から未来が見える』(祥伝社)みずほ証券のチーフマーケットエコノミストで、「日経公社債情報」が毎年実施している債券アナリスト・エコノミスト人気調査のエコノミスト部門において2002年から昨年まで6年連続でトップを快走している上野泰也さんの『チーズの値段から未来が見える』(祥伝社)という本を読みました。どうして読んだかというと、econ-econome さんのブログ「日々一考(ver2.0)」でオススメされているのがひとつの理由です。もちろん、他にも理由はありますし、econ-econome さんがオススメしている本をすべて読んでいるわけでもありません。原則として、私は経済関係の本についてはアマゾンのレビューは書いても、このブログでは取り上げないことにしているんですが、上野さんのこの本を「軽い読み物」に位置付けるのは極めて不正確かつ著者に失礼としても、少なくとも学術書ではありませんし、エコノミスト向けというよりは一般ビジネスマン向けのような気がしないでもありませんから、本の中身の軽重はともかく、2夜も続けて英語で書かれた分厚な IMF のリポートを取り上げましたから、昨夜のエントリーの最後で宣言したように、今夜は、このブログのエントリーとしては脱線しつつ軽く取り上げたいと思います。見れば分かるんですが、左上の写真が本の表紙です。ネットで見かけた画像の中には著者の顔写真のあるカバーの帯を入れて撮っているいるものもありましたが、私が見た範囲では著者の写真映りが万全ではない気がして、あえて顔写真のないものを選びました。なお、2月28日付けのエントリーで川上未映子さんの「乳と卵」を取り上げた際には、帯に著者の顔写真が入っている画像を採用したんですが、決して、著者の性別やルックスによる差別的な扱いをしているわけではありません。このあたりは趣味の問題です。
さて、本題に入って、この本は最後の第5章に練習問題まで付いていて少しびっくりしたんですが、第3章と第4章あたりが読みどころなんだと思います。でも、私が大いに同意したのは、著者が何度も書いているように、経済は「素直」であり、「ひっかけ」はない、ということと、同じことの別の表現なんですが、「裏ネタ」を知る必要はなく、公表資料で勝負、という点です。著者がキーワードをカギカッコ付きで表現しているのが気にかからないでもありませんが、カギカッコなしと同じと考えて解釈しています。先月3月14日付けのエントリーの最後のように、私がこのブログでも何度か主張して来ましたが、経済はマーケットであり、マーケットは需給で決まり、市場撹乱的な要因を過大評価するのは疑問だと私は考えています。底流に流れるものは同じだという気がします。また、著者は債券エコノミストなんですが、一昔前の証券エコノミストなんかは、今で言うところのインサイダー取引スレスレの情報を有り難がるような向きもなくはなかったように記憶しています。マーケット・エコノミストにとっては情報は多いに越したことはないんでしょうが、この本でも書かれているように、収集した情報にフィルタリングをかけてシナリオを描く分析能力が勝負というのが本筋だと私も思います。私はマーケット・エコノミストではないので情報収集も怠りがちで、少し前までは、誰でも入手できる公表統計を基に、専門家しか扱えないようなソフトウェアを乱用して複雑怪奇なモデルを組んで、世間がびっくりするような結果を出すのが趣味だった時期もあったりします。これは別の話です。
とってもいい本なんですが、あえて難点を2点だけ上げると、まず、第5章の練習問題はヤメていただきたい。もちろん、著者の問題ではなく、明らかに編集者の問題だと思いますが、最近の流行りになっているボックス囲みのコラムか何かで処理できなかったものでしょうか。それから、これは著者の問題だと思うんですが、推理小説好きの著者とはいえ、204ページでデニス・ルヘインの『シャッター・アイランド』を勧める力の入れようは、大きな唐突感があります。私は『シャッター・アイランド』を読んでいるからいいんですが、知らない人はもっと大きな唐突感を感じるんではないかと思います。加えて、私のような読んだ人間には、ルヘインなら代表作は映画化もされた『ミスティック・リバー』ではないのか、という気がしないでもありません。代表作ではない本をオススメするところが渋いとも言えますが、もしも、お会いする機会があれば質問してみたいところです。でも、この2点とも瑣末な点ですから、とってもオススメ出来るいい本だと思います。
最後に謎かけをひとつ。最後の第5章の練習問題の最初の Q1 の「お盆や年末年始の宿泊料金が高い理由は?」の答えが「需要がそれだけ多く見込めるから。」になっています。それでは、本の中には何度か登場するタクシー料金について、「深夜タクシー料金はどうして割増になるのか?」という問を立てると、答えは宿泊料金とは違うと私は理解しています。ホントの答えは監督官庁がそう決めたから、なんでしょうが、経済学的に考えると、おそらく、終電や終バスが出た後には、深夜タクシー料金は独占価格の決定に移行するからなんだろうと私は考えています。お盆や年末年始の宿泊料金が需要曲線の上方シフトにより高くなるのに対して、深夜タクシー料金は供給曲線が限界費用曲線から限界収入曲線に移行し上方シフトするためであると考えるのが自然そうな気がします。本の中には身近な話題として表題にもなっているチーズの他に、タクシーや行楽なんかが取り上げられていますが、最初の Q1 の割増料金に関する練習問題で宿泊料金を取り上げて、タクシーの深夜割増料金にしなかったのは、著者の慧眼であると言えましょう。でも、初級編で宿泊料金、応用編でタクシーの深夜割増料金を並べて練習問題として出題するのもカッコいいような気がしないでもありません。

なお、上野さんは東洋経済新報社から『デフレは終わらない - 日本経済の虚像と実像』という本も近く出されると聞いています。こちらも楽しみです。それから、いつもの通り、アマゾンと mixi のレビューにも今夜のエントリーと同じ趣旨で投稿しておきました。もちろん、どちらも5ツ星です。

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