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2008年5月28日 (水)

公務員制度改革で天下りはなくせるか?

今日も、朝から雲が多かったものの、まずまずいいお天気でした。夕方にはさらに雲が厚くなった気がします。気温はそんなに上がりませんでしたが、湿度が高くて蒸し暑く感じました。

昨夜、与党と民主党の間で急転直下で国家公務員制度改革基本法案に関する合意が成立し、今国会の会期内に成立する運びとなったと報じられています。まず、少し長くなりますが、我が家で購読している朝日新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

今国会成立は困難と見られていた国家公務員制度改革基本法案が会期内に成立する見通しとなった。自民、公明の与党と民主党が政府案を修正して議員立法で成立させることで歩み寄った。28日にも衆院内閣委員会で可決、29日の衆院通過を目指す。
自民、公明、民主3党の実務者は27日、国会内で協議し、修正内容について基本合意した。28日に3党の幹事長・国会対策委員長会談を開いて最終合意し、今国会で成立させる方針を確認する。
基本合意では、人事を一元化する「内閣人事庁」や政治家と官僚の接触のあり方を巡り、与党が民主党に譲歩した。政府案では幹部人事の原案は各省庁がつくり、内閣人事庁が適格性を審査するとし、省庁に人事の主導権が残る可能性があった。だが、修正案では民主党が求める「内閣人事局」を設け、官房長官が人事案を作成するとした。
政官接触については、政府案は新設する「政務専門官」を除き、公務員の国会議員への接触を「大臣の指示」がある場合などに制限していた。しかし、野党側に都合の悪い情報を出さない口実とされかねないとする民主党の反対に配慮し、制限規定を削除。代わりに、接触した場合は内容を記録して情報公開を徹底することで透明化を図ることにした。
一方、民主党はこれまで「天下り禁止」と「労働基本権の拡大」の2点の修正要求が受け入れられない限り、政府案に反対する方針だった。
しかし、「天下り禁止は政権交代してから実現すればいい」(幹部)として、基本法案に盛り込まないことを容認。労働基本権については、非現業の公務員に認められていない協約締結権について、「検討する」とした政府案を、「措置する」と表現を強めることで折り合った。
会期末まで3週間を切ったこの段階で、民主党が与党に歩み寄った背景には、労働基本権付与の問題を少しでも前進させたい連合の意向や、「改革つぶし」と批判されることへの懸念があった。一方、政官接触の制限などを巡って党内に異論を抱え、早期成立に積極的でなかった自民党側も、福田首相が今国会での成立を指示したことから、政府案を大幅に修正しても民主党との妥協を優先する姿勢に転じた。
修正案によって、公務員制度改革がどこまで前進するかは、今後の詳しい制度設計などにもかかっているが、縦割りの弊害を排除するための人事管理については政府案より前進したといえる。一方、不正や税金の無駄づかいの温床と批判される天下り問題は手つかずだった。

公務員制度改革については幹部人事の管理、政官接触のあり方、労働基本権など、いろんな論点があるんでしょうし、事実関係は報道に譲るとして、今夜のエントリーではタイトルの通りに天下りに焦点を絞りたいと思います。私の考える論点はたったひとつで、合理的な解決方法もひとつだと考えています。たったひとつの天下りの論点は、長期雇用制度の下での OJT とスキルの形成です。日本の場合は、最近は大きな変化が見られるとは言うものの、長期雇用が続いて来た中で、企業特有の職業文化が形成されており、必要とされるスキルが企業ごとに違っているということを意識する必要があります。作っているものが、例えば、自動車と同じであっても、トヨタとホンダとニッサンなんかでは必要とされるスキルが異なる場合が少なくないと私は考えています。技術分野では汎用性が高い場合もあるでしょうし、事務分野でも会計なんかは違いは小さそうな気がしないでもありませんが、人事なんかは企業ごとに必要とされるスキルが異なり、汎用的なスキルは必ずしも確立されていないように見受けられます。それでも、民間企業であれば、競合する同種の財を作っていたり、似通ったサービスを提供している場合もあり、同業他社や違う業種でもスキルが活かせる部署に転職する例もあり得るんでしょうが、独占的な公共サービスを提供している官庁の場合はそうはいきません。極端な例ですが、警官の職務を遂行する上で拳銃の射撃のスキルは必要とされる場合もあるものの、再就職先の民間企業では絶対に評価されないと私は考えています。かなり市場原理主義者に近い私でも、市場で供給されない公共財を提供するのに必要な公務員のスキルを市場価格で測ることはムリだと思います。しかし、それでも、再就職させることが必要であれば、この前提が重要なので繰り返しますが、もしも再就職させる必要があるのであれば、何らかのお土産を付けての天下りということになるのかもしれません。なお、付言すれば、一部の大企業なんかでは官庁の天下りに近い形で関連企業なんかに再就職している例もありますが、これは自分の企業の利益の範囲でやっていることですから、税金でやっている官庁と同列に論じるべきではありません。組織に特有のスキルを必要とされるのであって、しかも、組織が独占的かつ市場では供給されないサービスを提供していて、さらに、繰返しになりますが、再就職させる必要があるのであれば、何らかのお土産を付けて天下りするのも合理的な面があることは否定できません。
しかし、この前提とした再就職の必要性に私は疑問を持っています。もっと明快に言えば、官庁の天下りを廃止する唯一の合理的な方法は定年まで雇用を継続することだと私は考えています。もちろん、少子高齢化の流れの中で定年延長も含めるべきであることは言うまでもありません。この場合、問題とされるのは給与負担の問題ですが、私は解決可能だと考えています。もっと大きな問題は後で取り上げますが、給与負担については、第1に、民間企業などと同様に、一定の年齢で昇給をストップする制度が官庁にもあるわけですから、そんなに大きな額にはならないような気がします。第2に、もしも、官庁の外の市場では何のスキルも発揮できない公務員が、100%のお土産で天下りしているのだとすれば、そのお土産分の予算を削除することが可能です。昔は特殊法人と称していた独立行政法人や社団・財団などの公益法人に対する予算を削減すれば給与経費が捻出できるのではないでしょうか。その場合、天下り公務員を受け入れることで事業が成り立っている組織のプロパー職員がもっとも大きな影響を受けることになるのかもしれません。例は悪いかもしれませんが、道路公団のファミリー企業なんかを想像する向きもありそうな気がしないでもありません。少なくとも、給与負担について考える場合、日本の公務員は政府系企業まで含めても、人数や人件費は一国全体の人口や経済規模から見て、先進諸国の中でかなり小さい方だという事実は認識しておく必要があります。例えば、内閣府から野村総研に調査を委託した「公務員数の国際比較に関する調査」なんかでも明らかです。むしろ、雇用を定年まで継続する際に、私が最も懸念するのは給与負担ではなく、若手公務員の士気の問題です。現時点で、ある程度の職階に達している場合は別にして、もしも、定年まで雇用を延長することにより、昇進のスピードが遅くなるのであれば、若手公務員の士気を殺ぐことにもなりかねません。昇進のルートを複線化するなどの方策も考えられなくもありませんが、それはそれで問題が残りそうな気がします。いずれにせよ、人間に大いに関係する制度改革なんですから、余りに急速に進めるのではなく、漸進的に執り行う必要があることは言うまでもありません。

私は広くプロファイルを公開しているように、キャリアの国家公務員です。自慢話で恐縮ですが、上級職試験に合格しただけでなく、人事院に併任されて試験委員を務めたこともあります。公務員制度改革のモロの当事者ですから、自分では意識せずにバイアスのかかった見方をしているかもしれません。また、どの政党の案に近いのかもよく知りませんし、少なくとも、それを知った上で、その政党に近い意見をプロパガンダしようという意図はありません。いろんな立場の違いによっても、いろんな考え方があるんだろうと思います。まじめなコメントやトラックバックは大いに歓迎しますが、管理者の目から見て不適当なものは削除させていただきます。そのあたりは個人的に運営しているブログなんですから、管理者の特権というものです。

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