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2008年5月12日 (月)

野田稔+ミドルマネジメント研究会『中堅崩壊』(ダイヤモンド社) を読む

今日も、朝からが広がり、陽射しはありませんでした。少し肌寒かったような気がします。台風が接近して来ており、再び、お天気は下り坂のようです。

『中堅崩壊』昨年2007年8月2日付けの「日本経済を支えるのはミドル・マネジメントか、トップ・マネジメントか?」と題するエントリーで取り上げて以来、専門外ながら、私の経営学的な関心として、日本のマネジメントにおける競争力の源泉はトップ・マネジメントか、ミドル・マネジメントか、どちらにあるかを考えていたりしたんですが、最近、本屋さんの店頭で『中堅崩壊』というタイトルの本を見かけましたので、ついつい衝動買いしてしまいました。野村総研ご出身の明治大学の野田稔教授と野田教授の主宰するミドルマネジメント研究会が出しています。副題は「ミドルマネジメント再生への提言」となっています。ただし、この本では、私がミドル・マネジメントとトップ・マネジメントの二分法で論じたのに対して、シニア・マネジメントも入れた三分法となっていたりしますが、豊富なアンケート調査結果なんかも取り入れられており、現在の日本におけるミドル・マネジメントの現状把握と分析に、それなりに役立つものかと期待して購入しました。「それなりに」と書いたのは、私の専門外の経営学的な観点のため、私には必ずしも十分な理解がはかどらなかっただけで、専門分野の違う人には「大いに」であるかもしれません。まず、本書の雰囲気の理解のために目次を掲げると以下の通りです。

  • 第1章 長期不況がもたらしたミドル崩壊の実相
  • 第2章 バブルミドルの焦りと問題意識 - ミドル & ジュニア 1000人アンケート調査結果
  • 第3章 丹羽宇一郎会長が考えるミドル問題の本質
  • 第4章 ミドルマネジメント・エクセレンスに向けた先進事例
  • 第5章 創造するミドルのための新たなキーワード
  • 第6章 ミドルマネジメントに必要なコンピテンシーを探る

結論から言うと、私の求めるものと少し違っていたので、今夜のエントリーでは読書感想文の範囲にこだわらず、私なりにミドル・マネジメントについて論じてみたいと思います。
まず、『中堅崩壊』での取り上げられ方と少し違うんですが、生産要素としての労働については、シニア・マネジメントを取りあえず無視すると、ルーティンをこなすジュニアのプレーヤーや工場のレイバーとイノベーションを企業に取り込もうとするトップ・マネジメントと、その間にルーティンを指揮して、イノベーションをルーティン化・具体化するミドル・マネジメントがいるんだと私は考えています。なお、『中堅崩壊』ではイノベーションという言葉は使われておらず、ミドル・マネジメントがジュニアのプレーヤーの業務を同時に行うプレーイング・マネージャー化していて、多くの業務を抱え込む多重債務者となっているとの分析が提示されています。これはこれで秀逸な分析だと思います。ただし、繰返しになりますが、イノベーションという言葉は使われておらず、「改革」という漠たる概念で置き換えられているように感じました。イノベーションよりも生産フロンティアの拡大に近い概念かもしれません。もっとも、イノベーションもプロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションに二分されていて、トップ・マネジメントがやるべきなのは前者であって、ミドル・マネジメントは後者を担当しているんだと私は考えています。『中堅崩壊』では年齢による区分が用いられていますが、イノベーションやルーティンに対する役割の違いは、プレーヤーとミドル・マネジメントとトップ・マネジメントの階層の定義に近いと私は考えています。なお、私の使うイノベーションとは経済学用語の技術であり、工学的な製品開発とは違います。生産要素たる資本と労働の組合せを最適化して、利潤、または、場合によっては、売上げを極大化することを指しています。
経済がグローバル化する中で、ルーティンをこなすジュニアや工場のレイバー層は新興国の追上げを受けて、かなり競争力を失っています。逆に、トップ・マネジメントは欧米諸国に水をあけられたままで、産業や規模を横断して外資の導入に極めて消極的です。外資の導入とは外国のマネジメントの導入を意味することを敏感に察しているのでしょう。消去法でもないんですが、日本で競争力を保持し続けているのは、プロセス・インベーションが強いことも傍証として、ミドル・マネジメントであろうと私は考えているわけです。ただし、最近時点ではこういった従来からの構造が急速な変化を生じていることは確かです。
バブル崩壊後の氷河期とか超氷河期とか呼ばれていた就職難の時代を経て、部下のいないミドル・マネジメント層が形成され、今世紀に入ってからのデフレ期から現在に至るまで、というか、いまだにデフレが続いていると考えてもおかしくないと私は感じていますが、業務量の増加したミドル・マネジメント層がお給料が上がらないことも含めて急速に疲弊して来ていることは確かです。同時に、現時点のトップ・マネジメント層がバブル崩壊やデフレの後始末に追われた年代であることも事実です。このような基本認識の下で、ジュニアなプレーヤーや工場のレイバー層が新興国に対して競争力を持つようにするには、給与を切り下げることが困難とすれば、かなり厳しい課題と私は考えています。量的なものを飛び越えた質的なイノベーションによる画期的な生産性の向上が必要となるからです。ミドル・マネジメントが担当するプロセス・イノベーションでは限界があるようにも感じます。何らかの基礎的な分野でのイノベーションが必要になる可能性が高く、ひとつの方法は、私のブログでも主張して来た再度のキャッチアップの実行であり、外資の導入もマネジメントの向上のために視野に入れるべきだと私は考えています。しかし、トップ・マネジメントは極めてこれに消極的です。

この閉塞感に対する解決策として、『中堅崩壊』では、システム面でプロジェティスタ制度を導入すると同時に、この制度的な改革によって内発的動機付けを高めることを提唱しているように見えます。ミドル・マネジメントだけを対象に考える部分均衡的な解決策かもしれませんが、私は評価できないと考えています。残念ながら、より大局的な見方を提示できる解決策を今後とも探したいと思います。控えめに言っても、この本はそんなに私のニーズにはマッチしませんでした。

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