やっぱり米国の景気後退は軽度で済むのか?
今日も、朝からスッキリと晴れ上がった五月晴れで気温も上がりました。ゴールデンウィークも明けて、通勤電車には人が戻ったような気がします。なお、今日は中国の胡錦濤国家主席が来日していて首脳会談が行われるため、総理大臣官邸近くは厳重な警備体制で、報道陣もワンサカと押し寄せていました。
5月2日に米国の雇用統計が発表されました。右のグラフはすでに5月3日付けのエントリーで取り上げた非農業雇用者数の前月差のグラフを使い回しているんですが、上の画像はいつもの "The New York Times" の "The Labor Picture in April" です。オリジナルの大きさから少しだけ縮小をかけてあります。ヘッドラインの非農業雇用者数は前月比で▲2万人減と1-2月の▲8万人超減から大幅にマイナス幅を縮小しました。市場のコンセンサスでも▲7-8万人減でしたので、これも上回りました。産業別に見ると、製造業と建設業が引き続き大きなマイナスを記録している鉱工業が▲110千人減と1-2月よりもマイナス幅を拡大しているのに対して、非製造業は+90千人増とプラス幅を拡大しています。卸売サービス業や小売サービス業などの商業関係はマイナスを続けていますが、教育・ヘルスケア産業が引き続き高い伸びを維持しているほか、特に、専門・企業サービス業が今年に入ってマイナスを続けていたのが、4月には+39千人増となっているのが目を引きます。また、失業率は3月の5.1%から0.1%ポイント改善して4月には5.0%となりました。これも市場コンセンサスの5.2%を下回りました。この間、労働参加率は66%前後で大きな変動がないわけですから、景気が悪いので一部労働者が労働市場から退出したという動きでもないようです。
日本の景気サイクルは生産を起点として、雇用⇒消費と回ります。もちろん、生産の前に輸出や、その昔には政府の公共投資などが位置する場合もあります。他方、米国の景気サイクルは起点が雇用で、雇用から消費⇒生産とつながります。ですから、景気循環的には日本では生産が、米国では雇用が重要な位置を占めます。これを考えると、米国経済については、今回は景気後退=リセッションに入ったことは明らかだと私は考えているんですが、この4月の雇用統計が今後のトレンドを示していると仮定すれば、ひょっとしたら、リセッションが軽微で終わる可能性を示唆しているのかもしれません。もちろん、4月の単月の統計ですから確たることは言えませんが、今回の雇用統計だけでなく、リベート・チェックによる戻し減税が始まりますし、金利引下げの効果も期待されますから、政策面ではリセッションを軽微なもので終わらせる方向で経済をサポートしているように見えます。少なくとも、市場ではそのように受け止められている気がします。原油価格は WTI がバレル120ドルを突破しましたし、米国の株価はジワジワと上昇して、NY 市場のダウ平均が13,000ドルに達しています。もちろん、マーケットはマクロ経済動向だけで決まるものではありませんが、少なくともサブプライム・ローン問題による金融機関の欠損は米国では山を超え、最近時点では、 UBS などの欧州企業に注目が集まっている気がしないでもありません。
しかし、リセッションが軽微だとしても、指摘しておくべき点が2点あります。第1に、雇用統計の姿がよくないことです。建設業雇用者が大幅に減り続けていて、住宅の価格調整が長引くことを示唆していますし、卸売サービス業や小売サービス業といった商業セクターの雇用減が続いており、消費の現場は回復局面が厳しいことを予想していることが読み取れます。第2に、このブログでも繰返し表明していますが、米国経済がいわゆる V 字型で急回復するとは考えられないことです。これは私の勝手な見方ではなく、例えば、先月4月10日付けのエントリーで取り上げた国際通貨基金 (IMF) の世界経済見通しでも、米国の成長率は今年2008年0.5%、来年2009年0.6%と、一昔前の表現ながら、なべ底を這うような景気展開になることが予測されています。株や債券といった金融資産ではなく、住宅資産の実物資産としての特徴から価格調整が長引くために、消費が本格的な回復を示すまでに時間がかかることが原因です。目先のリセッションは深くはないけれど、その先の回復も力強くないといったところだと思います。
米国の景気後退が軽微であるとしても、回復の力強さがなく時間がかかるのであれば、やっぱり、ある程度のラグを伴って日本経済にも影響を及ぼすことは明らかです。その場合、少し前までのデカップリング論と同じで、新興国への輸出が米国向けの落込みをいかにカバー出来るかが、ちょっとしたポイントになるかもしれません。
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