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2008年7月30日 (水)

鉱工業生産指数は景気後退局面入りを強く示唆

鉱工業生産指数の推移

昨夜、しばらくブログの更新をお休みするようなことを書いたばっかりで、やや恥ずかしいんですが、今日の鉱工業生産指数を見て、やっぱり、昨年10-12月期をピークに景気後退局面入りしている確率が高いと考え直しましたので、短いエントリーをアップします。
上のグラフは青い折れ線が月次の鉱工業生産指数で、赤が四半期です。どちらも季節調整済の系列です。今年に入って、1-3月期と4-6月期の2四半期連続で前期比マイナスを付け、さらに、製造工業予測指数は7月▲0.2%減、8月▲0.6%減となっていることから、7-9月期も含めて3四半期連続の低下となる可能性が極めて高いと私は考えています。また、6月の結果は資本財出荷が▲6.2%減と大幅に落ち込みましたから、設備投資も弱含んで来ることが十分考えられます。加えて、このブログでは詳細は取り上げませんでしたが、先日の貿易統計や家計調査で外需と個人消費の一層の減速が確認されています。従って、景気指標を総合的に考え合わせると、私も何度か行ったり来たりしましたが、やっぱり、日本の景気は昨年10-12月期をピークに、景気後退局面に入っている確率が極めて高いと私は考えています。1-3月期のGDP統計がかなり強い数字だったものですから、多くのエコノミストとともに私もやや逡巡したものの、やっぱり、足元ですでに景気後退に入っていると考え直しました。何か、突飛な統計が出ない限り、この見方は変わらないような気がします。

とっても忙しくしているんですが、いろいろと考えが変遷した懺悔のつもりで、今夜のエントリーはアップしました。ひょっとしたら、明日も何か書くかもしれないと、景気局面だけでなく、コチラも考え直し始めています。そうなると、ダブル懺悔かもしれません。

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2008年7月29日 (火)

日本に初めてオリンピックのメダルをもたらした競技とは?

今日も、いいお天気で気温も上がって、毎日蒸し暑い日が続いています。変わり映えのしないお天気ですが、日本の夏を感じます。

北京オリンピックのロゴ

今日は失業率の統計が発表されましたが、今夜のエントリーでは取り上げません。またまた、オリンピックの話題です。我が家で購読している朝日新聞ではオリンピックの開会式までのカウントダウンが始まっており、いよいよ北京オリンピックの開会式の8月8日まであと10日と迫りました。大いに盛り上がって来ているようです。私のこのブログでも、7月に入ってからだけでも、7月3日にはメダル獲得数の予想、7月12日にはメダルのデザインと記念紙幣なんかを取り上げており、今夜のエントリーでは知っている人が少ないと私が感じている、オリンピックにおいて日本が初めてメダルを獲得した競技に関するトリビアな日記です。
まず、正解はテニス競技なんですが、日本が近代オリンピックで初めて獲得したメダルがテニス競技だったことを知る人は少ないと思います。日本人が初めてメダルを獲得したオリンピックは1920年の第7回大会で、アントワープにて開催されました。獲得したメダルは銀メダルが2個で、どちらもテニス競技で獲得したメダルです。シングルスで熊谷一弥選手が、ダブルスで熊谷一弥選手と柏尾誠一郎選手のペアが銀メダルに輝いています。熊谷選手と柏尾選手の2人はウィンブルドン大会のチャレンジ・ラウンドのファイナルでビル・チルデン選手と名勝負を繰り広げた清水善造選手なんかとともに、前世紀20世紀初頭の我が国テニスの黎明期に活躍した名選手で、テニスをやる私なんかからすれば神様みたいな人達です。メダルは取っていませんが、清水選手はウィンブルドン選手権での対戦で、チルデン選手が転倒した際に、起き上がって打ち返せるような、ゆっくりとした球を送ったことで広く知られています。私は小学生のころに道徳か何かの教科書で見た記憶があります。その名も『やわらかなボール』という伝記のような本も出ています。
名前を挙げた3人について、熊谷選手は慶応義塾大学から三菱合資会社銀行部(後の三菱銀行)、柏尾選手と清水選手はともに東京高等商業学校(後の一橋大学)から三井物産です。なお、出身校や職場からして、柏尾選手と清水選手がペアを組むのが自然な気がしないでもないんですが、実は、熊谷選手と柏尾選手はともに米国のニューヨーク勤務、清水選手はインドのカルカッタ勤務だったことが関係しているようで、20世紀初頭の交通の発達していない時期に、この地理的な隔たりは大きかったのであろうことが容易に想像されます。生まれ年は熊谷選手が1890年、清水選手が1891年、柏尾選手が1892年ですから、ほぼ同世代といえます。ついでながら、チルデン選手は1893年生まれです。この当時の日本のテニス界はいわゆる軟式テニスの世界で、熊谷選手はまだウエスタングリップだったそうですし、清水選手のフォームは逆足であったといわれています。まさに我が国テニスの黎明期です。当時のテニスの名門校は東京高等商業学校と東京高等師範学校(後の東京教育大学、筑波大学)の両校だったんですが、この二強に早稲田大学と慶応義塾大学が割り込んで来て、両校の覇権を脅かしつつあった時期だそうです。
さて、オリンピックに戻って、熊谷選手はシングルスのファイナルで南アフリカ出身のルイス・レイモンド選手と対戦し、惜しくも負けました。どちらも左利きのサウスポー対戦だったようです。ダブルスの熊谷・柏尾組は英国のマックス・ウーズナム&ノエル・ターンブル組にやっぱりファイナルで敗れます。後日、熊谷選手はシングルスの銀メダルについて「日本代表選手として勝つべき試合に敗れ、悲憤痛恨の涙に暮れた」と回想しているそうです。私にはとっても立派な成績に見えるんですが、当時の熊谷選手は全米ランキング3位に位置しており、ファイナルの相手だったレイモンド選手よりも格上であったことに加え、柏尾選手とペアを組んだダブルスのクオーターファイナルでルイス・レイモンド&ブライアン・ノートン組に勝利を収めていたことから、このような発言になったと伝えられてます。いずれにせよ、オリンピックのテニス競技で銀メダルを取ったんですから、現在の我が国テニス界のレベルからは考えも及びません。1920年といえば、昭和の前の大正の御代ですから、我が国テニスの黎明期において、オリンピックの銀メダルに輝いたり、ウィンブルドン選手権のチャレンジ・ラウンドのファイナルまで進む選手がいたんだということは、ある意味で、驚くべきことだという気もします。
私が知る範囲では、女子の伊達公子選手なんか別として、最近の我が国テニスの男子選手の最高の成績は1995年のウィンブルドン大会における松岡修造選手のクオーターファイナルではないかと思います。中継ではなくニュースか何かで見たんではないかと覚えていますが、勝ってクオーターファイナル進出を決めた時、松岡選手はコートを走り回り、最後はコート上で大の字になって空を仰いでいたりして、かなり大げさに表現していたことが記憶に残っています。私は同じ日本人としてやや恥ずかしく感じたんですが、もしも、松岡選手がオリンピックで銀メダルを取ったりしたら、興奮してもっと突飛なことを始めそうな気もしないでもありません。オリンピックの銀メダルとは、それほどスゴいことだと思います。なお、ウィンブルドン大会以外のグランドスラム選手権に関しても、1918年の全米選手権で熊谷選手はセミファイナルまで勝ち進んでいて、松岡選手のクオーターファイナルを上回っていたりします。

今夜のエントリーでは、失業率統計をほったらかしにしつつ、北京オリンピックの開会式を10日後に控えて、我が国のオリンピックの歴史をひも解き、我が国に初めてのオリンピックのメダルをもたらしたのはテニス競技であった、という割合と知られていない事実に関するトリビアな日記でした。100年近い昔の日本の男子テニスは強かったんです。

このエントリーから2-3日の間、ブログの更新をストップします。すぐに再開しますので、ご容赦下さい。

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2008年7月28日 (月)

エコノミストの仕事とはどういうものか?

今日も、天気予報では雨が続くようなことを言っていたんですが、結局、雨は降らず、まあまあいいお天気で、毎日蒸し暑い日が続いています。

先日、学生の方からメールをいただき、エコノミストの仕事についてご質問を受けました。実は、2006年2月21日付けのエントリーでも軽く取り上げているんですが、夏の人事異動の季節でもありますので、また、大学生の就職活動も本格化しつつある時期かもしれませんので、官庁エコノミストの経験しかない私ですが、少し幅広くエコノミストの仕事などについて簡単に取り上げてみたいと思います。
まず、エコノミストという職業の中で、大きく分けると勤務先によって3種類のエコノミストがいます。大学教授や准教授と呼ばれるアカデミックな世界のエコノミスト、民間企業に勤務するエコノミスト、そして、私のような官公庁に勤務する官庁エコノミスト、の3種類です。なお、中央銀行である日銀については、今夜のエントリーでは官庁エコノミストに分類しておきます。さらに、もう少し細かく分けると、大学の教授や准教授はこれ以上の細かい分類はないように思いますが、民間企業のエコノミストは、証券会社などに勤務して顧客向けに株式などの金融資産売買の基礎情報となる経済指標を解説するタイプのエコノミストとシンクタンクに勤務してより幅広い層に詳細な経済見通しやいろんな経済事象の解説を行うタイプのエコノミストがいます。前者の場合は往々にして顧客向けのクローズな情報提供になっている場合もあります。後者の場合は、例えば、最近見かけた報道で東京新聞のサイトで見たんですが、「日本から中東産油国などへの2008年度の所得流出額が前年度と比べ約17兆円増える見通しであることが、日本総合研究所の推計で26日、分かった。」みたいに、新聞に取り上げられたりもします。それから、官庁エコノミストでは、独特の用語かもしれませんが、分析と研究に分けられます。前者は「ナントカ白書」なんかで直近1年くらいの経済を分析する仕事で、後者は各省に設置されている研究所に在籍して、大学のエコノミストに近いような計量的手法を用いてディスカッションペーパーなんかを書く仕事です。日銀の場合は割合と明瞭で、調査統計局が前者、金融研究所が後者です。一応、私は「ナントカ経済白書」の執筆もすれば、政府経済見通しの作成を担当した経験もあり、さらに、研究所で経済モデルをシミュレーションしてディスカッションペーパーを書いたりとか、いかにも官庁エコノミストらしいいくつかの仕事を経験して来ました。まとめると、エコノミストは勤務先により大きく3種類、細かく5種類に分けられると思います。
まず、簡単に触れた部分もありますが、仕事について独特の業務があるのは大学のエコノミストで、それは教育です。講義やゼミがあり、学生の習熟度を試験やリポートで確認します。私はやったことはありませんが、多くの方が学生時代にやられたことがあるでしょうから割愛します。この教育を別として、エコノミスト一般の仕事は一言でデータの分析と言えます。各種のエコノミストにより、その対象や手法が異なるわけです。大学のエコノミストや官庁エコノミストの中でも研究に従事している場合は、それ相応の長い期間のデータを相手に格闘し、分析や研究手法も高度なものを用います。例えば、私の場合は状態空間表現されたモデルをカルマン・フィルターで解いたり、VAR で表現された関係からグランジャー因果を検出したり、あるいは、マルコフ・レジーム・スイッチング・モデルを用いて各期の状態の遷移確率を計算したりといった、ほとんどエコノミストしか理解できない手法を使ったりします。もっとマーケットに近いエコノミストであれば、複雑な計量手法を用いずとも、例えば、グラフを書いてそのシェイプが似通っているとか、ピークとボトムが一致しているとか、といった手法で十分な場合があります。リポートを届ける対象によっては、複雑怪奇な手法を避けることが必要な場合も十分にあり得ます。先日、取り上げた『経済財政白書』などはその中間的な存在ですから、大いに参考になると思います。特に、金融機関、特に証券会社に勤務していてマーケットに近いエコノミストなどは、顧客に対して GDP 成長率や消費者物価、鉱工業生産や貿易統計などの経済指標の解説が中心になるような印象があります。私も同業者のこういった指標解説のリポートを大量にちょうだいしていて、このブログで指標解説のマネゴトをしていたりします。消費者物価が上昇したのはどうしてで、今後の見通しはどうか、などです。もちろん、経済見通しの作成も含まれる場合が大いにあります。それから、会社によってなんでしょうが、営業活動のサポートも重要な仕事になっている場合があると聞いたこともあります。官庁エコノミストは営業活動のサポートはしませんから、私にはよく分かりません。役所や日銀は営業活動をしていないんですから当然です。でも、日銀には営業局という名称の組織がその昔にありました。これもよく分かりません。
出身学部は、一般には、大学の経済学部を卒業している場合が多く、私もそうですが、先日、著書を取り上げたみずほ証券の上野さんは文学部史学科のご出身ですし、法学部や理学部数学科の出身などのエコノミストもいます。大学で学ぶべきは英語と数学、さらに、統計学が重要だと私は考えているんですが、基礎が出来ていれば学部はそんなに重要ではないのかもしれません。エコノミスト業界に参入する場合、大学院に進学して学位を取得して大学教授を目指すルートは別にして、企業や官庁・日銀でエコノミストを目指す場合、日本では会社や役所に就職しますので、エコノミストのいる、あるいは、必要としている会社や官庁に就職することになります。後は、会社や官庁の中での人事異動ですから、一概には言えないと思います。ただし、官庁や多くのシンクタンクはこの通りなんですが、証券会社などではエコノミストがチームを組んでいる場合があります。例えば、嶋中雄二さんは独自の景気観をお持ちで、私の尊敬するエコノミストの一人なんですが、私の知り合いのエコノミストとともに三菱UFJリサーチ&コンサルティングからチームとして三菱証券に移籍したりしました。外資系の証券会社などでもチーフエコノミストを頂点として、シニアなエコノミストやジュニアのエコノミスト、さらに、日程管理などをする秘書的な役割の人まで、チーフエコノミストが採用してチームを組んでいる例をいくつか知っています。そういったチームにヘッドハンティングされると、即エコノミスト的な活動になるのかもしれません。
就職後のキャリアについても様々でしょうが、チーフエコノミストに採用されてチームに加わる場合は別として、一般的な企業や官庁・日銀のキャリアを踏むんだろうと思います。その中で、エコノミスト的な能力があって経済分析や研究の分野で重宝されれば、自然とエコノミストのセクションが長くなるんだろうと思います。海外留学でマスターを取得できるチャンスは逃すべきではありません。でも、留意すべきは、一般に終身雇用制がいまだに守られている官庁や日銀の世界でも、エコノミストの業界だけは転職が頻繁にあることです。私の知る限りでも、役所の先輩や後輩が何人か金融機関やシンクタンクに転職しています。ゼネラリストとして育てられている官庁や日銀の中でもエコノミストの仕事を続けたいと考える人も少なくなく、そういったエコノミストが転職しているように見受けられなくもありません。私の場合は、外務省に出向して海外の大使館勤務をしたり、まったくエコノミスト的ではない仕事もしましたが、もともとの役所が経済分野の官庁でしたので、何らかの意味で経済を相手にしていましたし、何よりも、ヘッドハンティングに遭遇するほどの能力に欠けていましたので、現時点まで長らく公務員生活を送っています。
最後にお給料ですが、少なくとも私のような公務員はエコノミストであってもなくても同じだということは容易に想像できることと思います。でも、外資系の証券会社などでびっくりするようなお給料をもらっているエコノミストも少なくありません。ですから、エコノミストの場合は所得を主たる眼目にして就職先を選ぶことも可能かもしれません。でも、所得を考えるのは就職の際というよりも、転職の際ではないかという気もしないでもありません。もしもチャンスがあれば、グッといいお給料のところに転職したいと私も思わないでもありません。

役所も人事異動の季節をほぼ終え、私も少し忙しくなっています。3年前に始めて、ほぼ毎日のように新しいエントリーをアップして来たんですが、このブログの更新頻度も落ちるかもしれません。しばらくの間、ご容赦下さい。

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2008年7月27日 (日)

中日にボロ負け状態の夜にヤクルトに八つ当たりする

まだ試合途中ですが、今夜は中継ぎの渡辺投手がボロく打ち込まれてボロ負け状態です。JFK につなぐ前に WE で打ち込まれて大差をつけられては、現在の下降線の打撃陣では逆転は難しそうな気もします。なお、私はミーハーな阪神ファンですから、勝った時にしか虎ブロを書かなかったんですが、今夜は、試合途中で勝負が決していない段階で、ヤクルトに抗議するためにエントリーをアップしています。
いくら何でも、この時期にジャイアンツに3タテを食らうとは、一体、高田監督は何を考えているんでしょうか?
まあ、それなりの投手を起用しているようですが、昨日も今日も巨人にボロボロに負けているのは何とかしてもらいたいと思います。今日も負けてヤクルトの対戦成績は巨人相手の5勝10敗とダブルスコア状態です。これに対して、我が阪神には7-7のタイだったりします。中日には勝ち越している始末です。広島は逆に我が阪神にボロボロに負けて巨人に勝ち越しています。ヤクルトにも広島並みにガンバレとはいいませんが、いくらなんでも、オールスター戦のお休みの直前ですから、選手を惜しげなく使って、3連戦もやれば巨人に1勝くらいは上げられないもんでしょうか。まだ試合は終わっていませんが、今夜の中日みたいな頑張りを期待します。

明日からのオールスター前の最終のヤクルト戦も、
がんばれタイガース!

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下の子を将棋教室に連れて行く

今日も、朝から少し雲が多く、昨日ほど気温は上がりませんでした。午後からかなり雲が広がっり、夕方から少し雨が降り出しました。久しぶりの雨です。でも、毎日蒸し暑い日が続いています。

天野将棋教室にて下の子

今日は久し振りに午後から下の子を連れて天野三段の将棋教室に行きました。前回は一番乗りでしたが、今日は少し途中で休憩してから起きましたので最後の方でした。このブログでも何度か取り上げたように、天野三段は第49期王位戦七番勝負第1局や第79期棋聖位決定五番勝負第2局などの記録係を務め、売出し中のようです。でも、ブログを拝見すると、三段リーグで苦戦が続いているようです。
我が家の下の子が最初に天野三段に教わったのは3月の春休みに行った将棋会館道場のビギナーズセミナーでした。真田八段のオススメでした。将棋教室では最初の方で詰め将棋などを教わり、後半の部で対局で教わります。最初の時の対局では10枚落ち、すなわち、天野三段の方が王将の他は歩が一列だけでした。その後、ビギナーズセミナーや将棋教室にお誘いいただくたびに、ウチの子も少しずつ進歩して、8枚落ちで天野三段が金を付け、さらに、6枚落ちで銀も付けるようになり、今日の将棋教室でも引き続き6枚落ちで修行中です。しかも、何枚落ちであっても待ったをはさみながら、天野三段にご指導いただきつつ、最後はウチの子が勝つようになっていたんですが、今日は初めて負けたようです。本人にはかなりショックだったようなんですが、いつも勝ってばかりというよりも、たまには負けないと修行にならないような気もします。
ここから話が脱線します。ウチの子はおにいちゃんも下の子もまだ小学生ですから、まだまだ先の話なんですが、私なんかは50歳が近づいてきており、大学時代の友人なんかとは老後の趣味について話をしないでもありません。一気に話が飛ぶのは私のブログの特徴です。実は、知り合いで尺八を習い始めた人がいて、日がな1日中尺八をやるのも時間がもたないと言っていましたが、私の場合は書道なんかをもう一度習うのもいいんではないかと思ったりしています。将棋に手が出ないのは、カラッ下手だということもありますが、将棋やマージャンなどのボードゲームは、最近では、同好の仲間と対戦するというよりもパソコンを相手にするゲームになりつつあるような印象を持っているからです。でもやっぱり、日本なんかでは囲碁将棋、あるいは、外国のゲームで、チェスやコントラクト・ブリッジなどのボードゲームは友人と交流できますから、いい趣味だという気がします。
実は、私が在チリ大使館に勤務していた1990年代の初頭に、コントラクト・ブリッジの NEC カップ世界大会決勝がサンティアゴで開催され、しかも、当時の上司である大使がブリッジ好きだったものですから、ブリッジを盛んにやっていたんですが、このところはトンとやらなくなってしまいました。ちょうど私の帰国の直前に Max Hardy 氏の "Two over One Game Force" が出版されたりして、今は知りませんが、チリでは日本語文献よりも英語のほうが入手しやすかった時代でしたので、Dorothy Hayden Truscott 女史の古典的なテキストである "Bid Better, Play Better" などとともに、人から借りて読んだりした記憶があります。なお、どうでもいいことですが、"Bid Better, Play Better" は10年ほど前にリプリントされたと聞いたことがあります。私はリプリント前のボロボロの本を借りたことを覚えています。ある程度深くブリッジをやったことのある人なら、名前くらいは聞いたことのある古典だという気がします。

なんとなく、今日のエントリーは下の子を将棋教室に連れて行ったところから始まり、在チリ大使館に勤務していた当時のブリッジの話まで脱線してしまいました。「お出かけの日記」と「海外生活の思い出の日記」で迷ったんですが、我が家は子供中心の生活ですので、「お出かけの日記」に分類しておきます。

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2008年7月26日 (土)

中日に完勝した夜に月間 MVP について考える

今夜のテレビは特番ばっかりだったもので、めずらしく、最初の方からプロ野球観戦をしていました。3回くらいまではボロボロに押されっぱなしだったんですが、4回に関本内野手の連夜の長打で上げた2点を先発の下柳投手と JFK のリリーフ陣が守り切った、いかにも阪神らしい勝ちパターンの試合でした。昨夜は安藤投手の完投で出番のなかった JFK なんですが、久保田投手は完璧に抑えましたし、ウィリアムス投手の軽やかなフィールディングも見事でした。藤川投手については何をか況やです。昨夜に続いて3時間足らずで終わってしまいましたが、球場に足を運んだファンには満足いく試合だったでしょう。
テレビを見ていると、戦況の解説を別にして、今夜もヒーローになった関本選手の月間 MVP の話題と新たにタイガースに加わったリーソップ投手の話題が出ていました。リーソップ投手についてはよく知らないんですが、関本内野手の月間 MVP について、テレビでは数字的には横浜の村田選手の方が、打点やホームランで先行しているようなことを言っていました。テレビでは関本選手の貢献度の高さを強調していましたが、首位を独走している阪神とブッチ切りの最下位の横浜ですから、ややムリがあるような気がしないでもありません。現在の年間100敗ペースに近い横浜を見ていると、私は1990年代の阪神を思い出してしまいます。せめて、月間 MVP くらいは横浜の選手に取らしてやりたいという気もしないでもありません。月間 MVP に発奮してタイガースの優勝を脅かすようなことはないと私は断言します。我が阪神はリーグ優勝と日本一が何よりの目標でしょう。

個人タイトルよりも優勝目指して、
がんばれタイガース!

今夜もトラックバックの交換はお風呂の後にでも。

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『ハリー・ポッターと死の秘宝』を読み終える

今日も、朝から少し雲が多かったものの、まずまずいいお天気で気温も上がりました。梅雨が明けてから雨も降らず、毎日蒸し暑い日が続いています。

『ハリー・ポッターと死の秘宝』ようやく、『ハリー・ポッターと死の秘宝』を読み終えました。我が家では、子供達と私がポッタリアンで、女房はビデオや映画しか見ません。私は第5話の『不死鳥の騎士団』と第6話の『謎のプリンス』の邦訳が発売された時は、新しいハリー・ポッターのシリーズが発売されるたびに、第1話にさかのぼって全部を通して読んでいたんですが、今回だけは直前の『謎のプリンス』だけで済ませました。我が家のおにいちゃんも『謎のプリンス』を読み返していたようです。なお、2冊買ったとはいえ、子供達が大喜びで読んでいる合間を縫って、私は主として夜間に読み進みましたので、少し寝不足気味だったりします。一応、米国版の原書は読んだとはいうものの、私には私の事情があって今月中に邦訳を読み終えたいと考えていたので、子供達とバッティングしないように読むんですから、多少の寝不足は致し方ないのかもしれません。でも、少なくとも、邦訳を読み終えた現時点では、寝不足になってまでも読んだ甲斐はあったように感じています。すでに忘れたか、読み飛ばしたか、あるいは、私の語学力の不足から理解できなかったか、いずれの理由かは分かりませんが、特に最初の方で、新鮮に感じた部分も多々ありましたし、後の方は後の方で、テンション高くスピード感あふれる展開を堪能しました。後半の怒涛のような展開の中で、少しテンポが緩むのがホグワーツ校長になったスネイプ教授がヴォルデモート卿に殺されてから、ハリーがその記憶に飛び込むところと、キングスクロス駅でハリーがダンブルドア校長先生と会話を交わす2つの章なんですが、このあたりの私の理解は間違っていませんでした。自分の語学力に少し安心しました。なお、この先はネタバレを含みますので、未読の方はご注意下さい。
まず、私が把握していなかったのは2点あります。ハーマイオニーの両親がオーストラリアに避難したのは分かっていたんですが、娘がいることすら忘却させられていたとは知りませんでした。ハーマイオニーがハリーとともにダンブルドア校長先生のミッションを遂行しようとした強い意志の表れを感じます。それから、オリバー・ウッズが不死鳥の騎士団として最後のホグワーツの戦いに参加していたのも知りませんでした。ハリーがホグワーツ校に入学した時のクイディッチ・チームのキャプテンです。コリン・クリービーの死体を運んでいました。この2点に加えて、英語版では詳細が分からないのかと思っていたんですが、作者が人が死ぬ場面を極力割愛している配慮が邦訳ではよく読み取れました。先ほどのコリン・クリービーの場合もそうですし、ルーピンとトンクス夫妻もいきなり死体で現れます。最初の章でチャリティー・バーベッジ先生が残忍な殺され方をするもんですから、児童文学としてはいかがなものかと思わないでもなかったんですが、その後は十分な配慮が行き届いているように感じます。もちろん、ストーリーの展開からスネイプ教授の死に方は詳述する必要がありますし、最後のヴォルデモート卿の死に方も、自分の死の呪いが反射したのであって、ハリーが殺したのではないことを強く示唆するために、この程度の書き方はやむを得ないと思います。難点をひとつだけ言えば、ホグワーツ校内にある部屋で、ダンブルドア軍団が陣取っていた「必要の部屋」とドラコ・マルフォイなんかがハリーを待ち伏せしていて、レイブンクローの髪飾りが隠してあった「隠された品の部屋」が少し混乱しているような気がしないでもありませんでした。
何度か同じことを書いたような気がしますが、よく考え抜かれたプロットで、人が死ぬ場面の処理も見事でした。スネイプ教授やダンブルドア校長先生の別の面も無理なく描き出されています。児童文学の金字塔と呼ばれるにふさわしい最終巻だと思います。特に結末は、ホグワーツの戦いが一段落して、ハリーが一度死んでヴォルデモート卿がホグワーツ校に入った後、組分け帽子からグリフィンドールの剣が現れてネビル・ロングボトムがナギニの頭を切り落としたり、禁じられた森のケンタウロスなどが加勢したり、クリーチャーが先頭に立って屋敷しもべ妖精が戦いに加わったりと、物語は最高潮に達します。その最後で、一番最後のハリーとヴォルデモート卿が対峙する場面では、ややハリーの説明口調が冗長と感じ、ゴルゴ13ならすぐに引き金を引くだろうナと思わないでもありませんが、物語を締めくくるには必要だという気がします。終章の「19年後」で、かなりの謎解きをしつつも含みを持たせるのも効果的だと見受けられます。

児童文学でありながら、私のような中年のオッサンにも十分楽しめましたし、多くの方が手に取って読むことをオススメしたいと思います。今まで、ハリー・ポッターのシリーズでは第3話の『アズカバンの囚人』がいかなる観点からもベストだと私は思っていたんですが、邦訳を読み終えた直後の現時点では、この『死の秘宝』がシリーズのベストではないかと思い始めています。

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2008年7月25日 (金)

ワーッハッハで中日に完勝した試合で庄田外野手に注目する

今日も、「ドラえもん」にチャンネル権を奪われ、7時半過ぎから CATV のスカイAでのテレビ観戦です。ネットで確認して安藤投手と川上投手のエースの投げ合いで、1回ウラに先取点を取った状況は不明ながらも、2点目は5番に入った関本内野手のヒットらしいと情報を仕入れていたものの、「ドラえもん」直後の戦況がよく把握できず、5回ウラ二死満塁で関本内野手がバッターボックスしか分かりませんでしたが、何球か粘った後、見事な満塁ホームランで中日の息の根を止めてくれました。
戦況をよく理解していない私に配慮して、葛城選手がアッサリと三振してくれた後、6回表の中日の攻撃前に、これまた、テレビ局の方も私に配慮してくれて、前半のハイライトを流してくれます。おかげで、1回ウラの鳥谷遊撃手のライト前ヒットで中日のエラーを誘って平野選手が一気にホームインした場面や、その直後の関本内野手のタイムリー、さらにテレビ局もサービスよく、4回表の中日の攻撃のウッズ選手のサードゴロ併殺打まで一気に見せてくれました。私がテレビ観戦を始めた途端に、左団扇のお気楽な展開になってしまいました。でも、それもまたよしとしましょう。
残された注目点は安藤投手がどこまで投げるか、完封するか、だったんですが、8回表に1点取られたものの、この1点ポッキリの完投勝利で結果を出してくれました。それから、今日のスタメンに入った庄田外野手をシッカリと観察することが出来ました。巨人に勝った7月22日の虎ブロで私が特筆大書した選手です。関本内野手の満塁ホームランの後の6回ウラの攻撃でバットだけ飛ばして三振した姿もバッチリ拝見しました。残念ながら、8回ウラの攻撃では代打を送られてしまいましたが、休養明けの新井選手がピンチヒッターだったんですから仕方ないのかもしれません。実は、やや古い世代ながら、こういったタイプの外野手で私の記憶に残っているのは、法政大学で江川投手や袴田捕手なんかと同学年で阪神に入団した植松外野手です。私は名前を忘れていたんですが、虎ブロのお仲間の虎虎虎さんに教えてもらいました。背番号は庄田外野手の0に対して植松選手は1でした。走攻守の三拍子そろったセンスのいい選手でしたが、私なんかの将来の3番との期待を裏切って、結局、伸び悩んだ記憶があります。どうも、私なんかには庄田外野手はこの植松選手とダブッて見えてしまいます。我がタイガースの将来のためにも庄田外野手をしっかり育てていただきたいと望みます。

それはそれとして、やっぱり、
がんばれタイガース!

お風呂の後にトラックバックの交換でも。

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消費者物価 (CPI) 上昇率はそろそろ2%を超えるか?

今日も、朝からいいお天気で昨日よりも気温が上がりました。夕方から夜にかけて雨が降るとの天気予報だったんですが、私は帰宅するまで雨には遭遇しませんでした。やっぱり、毎日蒸し暑い日本の夏が続いています。

消費者物価上昇率の推移

本日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI) が発表されました。全国の6月と東京都区部の7月です。全国の消費者物価の推移は上のグラフの通りです。青い折れ線グラフが生鮮食品を除くコア CPI 上昇率、赤い折れ線がエネルギーと食料を除く欧米流のコアコア CPI の上昇率です。6月全国のコア CPI は前年同月比で1.9%に達しました。なお、積上げの棒グラフは寄与度で、黄色がエネルギー、緑が食料、水色がその他となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する短い記事を引用すると以下の通りです。

総務省が25日発表した6月の全国の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は、生鮮食品を除く総合が102.0と、前年同月比1.9%上昇となった。上昇は9カ月連続。項目別で価格の上昇幅が大きかったのは光熱・水道(6.8%上昇)だった。生鮮食品を含む総合では102.2と、2.0%上昇した。
生鮮食品を除く総合は、日経QUICKニュース社がまとめた市場予測平均値(1.9%上昇)と同じだった。
同時に発表した7月の東京都区部の消費者物価指数(中旬の速報値、2005年=100)は生鮮食品を除く総合で101.4と、前年同月比1.6%上昇した。

記事にある通り、プラスのインフレ率は9ヶ月連続で、1.9%の上げ幅は1997年4月の消費税率引き上げの影響を除けば1992年12月の2.0%以来だそうです。上のグラフにも見える通り、エネルギーと食料の寄与度が大きく、エネルギーの寄与度が1.13%、生鮮食品を除く食料が0.79%となり、CPI 上昇のほとんどをこの両セクターが占めたことになります。特に、ガソリンは前年同月より24.2%値上がりし、コア CPI を0.63%押し上げています。他方、エネルギーと食料以外のその他の水色は、小幅ながらまだマイナスを続けています。しかし、コアコアの CPI も6月にはプラスに転じました。
私の見立てでは、第1に、すでに基準年から3年が経過していますから、計測誤差も0.5-0.6%くらいあってもおかしくないでしょうし、第2に、まだエネルギーと食料に偏った相対価格の変化であって一般物価水準の変化まで達していない、と考えているんですが、今夜のエントリーの論点はこのインフレ率の見方と日銀の対応の2点です。まず、この物価上昇の経済的インパクトをどう見るかなんですが、考えられるルートは2つあります。物価上昇⇒企業収益圧迫⇒景気減速、と進むルートと、物価上昇⇒生活費上昇⇒賃金上昇、と考える連想ゲームのルートです。前者はエネルギー価格の上昇に当てはまりやすく、後者は食料価格に対応しやすいと考えることが出来ると思います。もっとも、若い人は「連想ゲーム」なんて知らないかもしれません。中年以降のエコノミストの用語かもしれません。本題に戻って、現在のエネルギーと食料が先導するインフレが、私の言うところの一般物価水準の上昇、昨夜も取り上げたアジア開発銀行 (ADB) や国際通貨基金 (IMF) などの国際機関の言うところの2次インフレに展開するには賃金の上昇が十分条件になります。これは日本のデフレ脱却の議論で私が指摘したとおりです。そして、現在の相対価格の変化に基づく物価上昇が賃金の上昇につながるかどうかは、労働市場の柔軟性と国民のインフレ期待がキーポイントになります。私の直感ですが、日米欧の先進国において、特に、日米両国においては労働市場の柔軟性がかなり確保されている印象があります。ホンの少しかもしれませんが、欧州は日米ほどの労働市場の柔軟性はないかもしれず、その意味で、欧州中央銀行 (ECB) が利上げを実施したのではないか、という議論は7月17日付けのエントリーで展開したと記憶しています。さらに、アジア新興国などでは労働市場の柔軟性に欠ける場合も大いにあることについては、昨夜7月24日にアジア開発銀行のリポートを取り上げたエントリーで指摘した通りです。もうひとつのインフレ期待については決定的な計測が困難でもありますが、少なくとも現時点の日本ではインフレ期待が高まっていると感じているエコノミストは少ないように思います。先ほどの連想ゲームからインフレ期待につながりかねない可能性は少しずつ高まりつつあるように私は感じていますが、他の国は別として、結論は日本については一般物価水準の上昇は足元の経済情勢では起こりにくいと多くのエコノミストは考えているんではないかと思います。
第2の論点で、今夜のエントリーのタイトルにしましたが、来月にもインフレ率が2%を超えると考えるエコノミストが多い中、2%という数字は日銀の「物価安定の理解」の上限です。もちろん、コア CPI が2%を超えたら自動的に日銀が利上げを実施すると理解しているエコノミストはいないと思いますが、一応、それなりの区切りの数字であることは確かです。こういった場合、金融引締め局面における日銀の動向に先行しているのが水野審議委員であると多くのエコノミストが考えているように思いますが、ちょうどタイミングよくと言うか何と言うか、昨日24日に水野審議委員は青森で講演し、すでに日銀のホームページに要旨がアップされています。ほぼ結論と目される「金融政策運営の考え方」では、「わが国経済を覆う霧は当面晴れそうにありません。現在は、物価の安定を通じて持続的な成長に貢献するという金融政策の目的を達成する上で、金融政策決定会合で『現状維持』を決定することに積極的な意味があると思います。」と発言しています。要するに、日銀はインフレ率が「物価安定の理解」の上限である2%を超えても、景気や成長の観点から金利引上げはすべきでないというご意見のように読み取れます。

いつかのエントリーで触れたかもしれませんが、現在の商品市況の高騰を背景とする物価上昇は、少なくとも日本では相対価格の変化に止まっていて、労働市場の柔軟性が高い一方でインフレ期待も低いことから、一般物価水準の上昇には達しておらず、従って、金融政策を引締め方向に動かす局面にない、というのが今夜のエントリーの結論です。水野審議委員といくつかの論点で意見が一致して光栄です。

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2008年7月24日 (木)

アジア開発銀行 (ADB) の "Asia Economic Monitor 2008"

今日も、朝から少し雲が多かったものの、いいお天気で気温も上がりました。やっぱり、毎日蒸し暑い日本の夏が続いています。

今日、財務省から6月の貿易統計が発表されました。メディアの報道では今年上半期の数字が取り上げられていたんですが、6月の単月で見ると、輸出が7兆1596億円で55ヵ月振りの減少、輸入が7兆210億円で9ヵ月連続の増加となり、貿易収支は1386億円とほぼゼロになりました。商品市況の高騰と世界経済の減速の結果だというほかありません。特に、6月については欧州向けの輸出が2ケタ減少となったのを見ると、いよいよか、という気もしないでもありません。貿易収支の結果は市場のコンセンサスを大きく下回りましたが、東証の日経平均株価は3日連騰となりました。株価は統計指標だけで動いているものではないことを実感します。でも、今夜のエントリーではこの貿易統計はこれ以上は取り上げません。

ということで、一昨日、アジア開発銀行 (ADB) から "Asia Economic Monitor 2008" が発表されました。昨夜のエントリーでもチラッと書きましたが、寡聞にして私には聞き慣れないリポートでした。半年に1回、ASEAN10カ国、中国、香港、韓国、台湾を対象にしたリポートのようです。ADB はフィリピンのマニラに本部があるんですが、このリポートはシンガポールで発表されています。詳しいことは私にはわかりません。まず、ADB のサイトから記者発表の最初の2パラを引用すると以下の通りです。

Economic growth in emerging East Asia will moderate to 7.6% in 2008 and 2009 from 9.0% in 2007 as the region weathers a global economic slowdown, sharp rise in food and energy prices and volatility reigns in financial markets, says a new report by the Asian Development Bank (ADB).
The region's slowing yet solid growth outlook remains vulnerable to a higher-than-expected spike in inflation, protracted slowdown in the US and any further tremors in global financial markets, says the July issue of Asia Economic Monitor (AEM).

成長率の総括表はリポートの33ページにありますが、引用の通り、対象地域全体で2007年の9.0%成長に比べて、2008年と2009年はともに7.6%とやや減速する見通しとなっています。他方、インフレ率は同じく対象地域全体で2007年の3.9%から2008年に6.3%に上昇した後、2009年には4.6%と少し落着きを取り戻す形になっています。インフレの総括表はリポートの36ページにあります。見通しのリスクとしては、インフレ、米国経済の減速、金融不安の3点を上げています。
政策課題としては、何といってもインフレ抑制が大きな眼目で、今月7月2日にこのブログで取り上げた国際通貨基金 (IMF) のリポートと同じように、インフレ抑制のための金融引締めを上げていますが、同時に、通貨制度の柔軟性が低くて米ドルへのペッグやカレンシーボード制を取っているアジア新興国では金利引上げによる資本流入から通貨が増価圧力にさらされるため、複雑な政策遂行になることに注意を呼びかけています。財政政策については、貧困層に対する配慮から注意深い制度設計を求めつつも、人為的な固定価格制度や補助金については問題を先送りするだけであると指摘しています。総合的に、所得の流出を伴う交易条件の悪化に対しては、為替制度やその他の硬直的な制度を見直し、構造改革を進める必要性を明らかにし、これらの構造改革がアジア新興国の投資環境を改善することも忘れるべきではないとしています。金融市場の関係では国際機関らしく外貨準備への注意も盛り込まれています。

Change in Inflation and Output Growth

後半の48ページからは "Special Section" と題して、いくつか興味深い分析を提示しています。上のグラフはこのセクションの最初に置かれているもので、2007年と今回のリポートの見通しの2008年の各国の経済パフォーマンスの変化を示しています。紺色で下に向かっている矢印が成長率で、赤で上に向かっているのがインフレ率です。ベトナムのインフレ率のみ右軸になっています。「スタグフレーション」という用語はマイナス成長で2桁インフレくらいの印象でしょうから、このリポートでも「スタグフレーション」とは表現していませんが、インフレと成長の減速というベクトルの異なる対応が必要です。ADB も IMF と同じで、まず物価安定とインフレ抑制を前面に打ち出している印象があります。特に、このブログでは引用しませんでしたが、52ページの表で、アジア新興国においては先進国である EU や米国などよりも食料とエネルギーの消費者物価に占めるウェイトが高いことが示されています。

Inflation Expectations

次に、興味深かったのはインフレ期待について、ADB がかなり重視していることです。上の表の通り、かなり各国でインフレ期待が上昇して来ていることが読み取れると思います。特に、現在のインフレは食料とエネルギーの寄与の高い1次インフレなんですが、これに対して金融政策当局が明瞭はシグナルを発信しなければインフレ期待がさらに上昇し、国内賃金の上昇からホームメードの2次インフレに悪化する危険を指摘しています。金利引上げによる通貨の増価も輸入物価の安定につながるとし、読みようによっては為替の増価容認という気もしないでもありません。最後に、食料とエネルギーの価格高騰は世界的な現象であるとし、食糧安全保障の観点からも、地域的あるいは世界的な政策協調の強化を要請しています。

それにしても、数年前の日本経済のデフレは同じベクトルの政策遂行でしたし、その際に、インフレ期待に関する適切な金融政策が取られたかどうかには、少なくとも私は疑問が残ると考えていますが、ベクトルの方向が異なる政策が必要とされ、さらに、インフレ期待に踏み込んだ議論をこのリポートは展開しているんですから、アジア新興国のこれからの政策運営を注目したいと思います。なお、いつもは国際機関のリポートは英語でそのまま書いていたんですが、やや読みにくくて評判が悪け、かつ、私の方でもかえってメンドウだったりしますので、今夜のエントリーは最初の引用以外は出来る限り日本語で書いてみました。

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2008年7月23日 (水)

ハリー・ポッター最終巻第7話『死の秘宝』の発売

今日も、朝からいいお天気で気温も上がりました。いつもの通り、かなり蒸し暑かったです。昼休みに外出して1時ギリギリのオフィスに戻ると汗だくになってしまいました。

『ハリー・ポッターと死の秘宝』

どうして、昼休みに外出したのかというと、丸の内オアゾにある丸善本店にハリー・ポッターのシリーズ最終巻である第7話『ハリー・ポッターと死の秘宝』を買いに行ったからです。原書の英語版の発売から遅れること1年、邦訳は本日発売です。おそらく、いわゆる先進国としてはもっとも遅い翻訳の発売ではないでしょうか。英語と日本語の差が大きいと言えばそれまでかもしれませんが、英語を読みこなす人口比率の低さを表しているような気がしないでもありません。でも、そんなに悲観することもなく、昨日の夜に確認したところ、邦訳発売前の時点で、アマゾンのレビューをすでに60人近い人が書き込んでいますから、原書を読んだ人もかなりいるものと思われます。まったく自慢そのものですが、私も米国版の原書を読んだ一人です。昨年2007年11月22日のエントリーで長々と章別のストーリーをアップしていたりします。私のこのブログの最長エントリーではないかと思います。
私は原書を読んだとはいうものの、我が家でもおにいちゃんも下の子もハリー・ポッターの大ファンで、すでに第6話までは読んでいますから、女房がアマゾンで今日届けてもらうように予約してありました。でも、今朝早くから開店して発売している本屋さんもあると聞き及びましたが、初版は180万部の印刷だそうで、売り切れることはあるまいと考えて、私は昼休みに買いに行きました。これだけのベストセラーですし、180万部ですから最終巻くらいは我が家にも2冊ずつあってもよかろうということになったからです。実は、上の画像の左下にある初回限定の特製バッグもお目当てだったりします。第6話の『謎のプリンス』の発売の時にも、これと同じようなバッグが、やっぱり、表紙の色調に合わせて緑色のバッグがオマケでついて来たのを思い出しました。今回はロイヤルブルーです。なお、アマゾンで予約した分にはアマゾン特製のブックカバーもオマケでついて来ました。黒と黄色のタイガースカラーだと思わなくもありませんでした。いずれにせよ、章別のストーリーをアップした2007年11月22日の直後の2007年11月27日のエントリーでは、邦訳が出ると我が家では下の子が譲って、おにいちゃんが先に読むんだろうと書きましたが、私が2冊目を買ったことにより、兄弟仲良く読み進むことが出来ます。
ホンの少しだけですが、私も子供達の合間を縫って邦訳を手に取ってパラパラとめくってみました。私が手に取ったのはどうしても下巻の方が中心ですから、最後の方の展開のテンポが速くなって来た時、2人の女性から発せられた印象的な言葉がどのように翻訳されているか、に注目しました。以下の通りです。

  • 第30章 セブルス・スネイプ去る
    マクゴナガル教授
    "Man the boundaries, protect us, do your duty to our school!"
    「境界を警護し、我々を守りなさい。我らが学校への務めを果たすのです!」
  • 第36章 誤算
    モリー・ウィーズリー
    "NOT MY DAUGHTER, YOU BITCH!"
    「私の娘に何をする!この女狐め!」

マクゴナガル教授の"Man the boundaries" は「総員配置につけ」くらいの感じかと思っていたんですが、結果的には、上のような翻訳でした。モリーの "NOT MY DAUGHTER" も、娘のジニーを押しのけてベラトリックスと対峙した時ですから、「お前の相手は娘じゃないよ!」くらいの感じだと思います。まあ、"BITCH" は児童文学では翻訳しにくいのは私も理解しています。

昨日、アジア開発銀行 (ADB) から "Asia Economic Monitor 2008" なんて余り聞きなれないリポートが出されたりしたんですが、今日は何といってもハリー・ポッターの話題で盛り上がろうと思います。最終巻を2冊ずつ買ったのは、兄弟仲良く読み進むのもありますが、さらに、私は私の事情があり、今月中には読み終えたいと考えているからでもあります。8月1日からは少しタイヘンだったりします。

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2008年7月22日 (火)

巨人に打ち勝った逆転勝利でマジック再点灯!

ワーッハッハでジャイアンツに逆転勝ちして、マジック再点灯です。
いつものように、ネットで試合経過を確認すると、先発の上園投手がボロく打ち込まれているようで、いきなり4点のビハインドでテレビ中継を見る気を失くしたんですが、NHK の7時からのニュースの最後のスポーツニュースで 4-3 になっているのを知り、急遽、テレビ観戦に移ります。直後の5回ウラに逆転し、逆転した代打の桧山選手のあたりはショボかった気がするんですが、しっかりと塁を進めた走者が矢野捕手のタイムリーで生還して点差を広げます。リリーフ陣の継投もピタリと決まりました。
目に付いたところでは、反省点は何といっても先発の上園投手でしょう。打撃陣とリリーフ陣に救われました。それから、私は全く知らないんですが、途中から庄田外野手というのが出ています。エラーで出塁してホームまで帰って来たり、私がテレビを見ていた時には、桧山選手が決勝点を入れたセカンドゴロよりも、よっぽど冴えたセンター前のヒットを打ったりしていました。桜井外野手を押しのけて1軍に上がっているんですから、これから少し注目したいと思います。

明日もやっぱり
がんばれタイガース!

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『経済財政白書』と『労働経済白書』の分析から

今日も、朝から少し雲が多かったものの、いいお天気で気温も上がって、蒸し暑かったです。今日は1年で一番暑いとされる二十四節気の「大暑」に当たるそうです。

『経済財政白書』から本日の閣議に『経済財政白書』と『労働経済白書』が提出されました。上のグラフは『経済財政白書』について報じた朝日新聞のサイトから引用しています。私が従来から主張しているように、すでに足元で景気後退局面入りしている可能性は否定できないものの、政府の公式見解としては、2002年2月から景気拡大局面が続いているんですが、この景気拡大局面において、実質国内総生産 (GDP) の成長のうち過半が輸出の寄与によるものだと分析しています。輸出依存度が高いだけに、逆に、米国のサブプライム・ローン問題に端を発して世界経済が大きく減速する中で、日本経済も踊り場的な減速を迎えていることは明らかで、米国をはじめとする世界経済の動向に依存する経済構造の脆弱性が指摘されています。でも、これは政府が進めて来たグローバル化の流れの中で当然だったのではないでしょうか。また、景気拡大の中で、個人消費が盛り上がらないことについては、中国などの新興国で低賃金の労働力が増えた影響により、国内でも賃金が伸び悩んでいることが主因と分析しています。加えて、パートなど非正規雇用の労働者の比率が高まったことも、賃金が伸びない理由の一つに挙げています。労働市場改革は構造改革の成果のひとつだと思うんですが、成功だったのか、失敗だったのか、もう少し評価を分かりやすくして欲しい気がします。なお、エネルギーについては、1970年代の2度の石油危機の直後には省エネが急速に進んだものの、近年はエネルギー効率がほぼ横ばいとなっていて、産業界などが「改善の手を休めてしまった」と厳しい見方を示しています。私は直感的にはエネルギー価格の高騰が余りに急速なので企業が追い付いていないのであり、この見方はやや厳しすぎるような気がしないでもありません。最後に、今回の白書では本格的に税制を取り上げたのも特徴的です。社会保障財源を確保するために税率引上げに向けた本格的な議論に入る必要があるとの主張です。これはもっともだと思うんですが、私のようにもう少し中長期的な視点を持つエコノミストからすれば、IS バランスの観点からの議論も必要だと考えています。すなわち、消費税を増税すれば、IS バランス的には家計の貯蓄過剰が減少して、政府の投資過剰が圧縮されるんですが、家計貯蓄もかなり下がって来ており、すでにマクロで貯蓄過剰となっている企業の投資を促進する観点も必要です。そうすると、家計に増税して企業に減税する姿となり、国民一般からは大きな批判を受けることにもなりかねません。この兼合いをどのようにバランスさせるかも考える必要があります。出来れば、私ももう少し考えた上で日を改めて取り上げたいと思います。

『労働経済白書』から続いて、『労働経済白書』です。こちらも右のグラフは朝日新聞のサイトから引用しています。非正規雇用と生産性について、少し疑問がないわけではありませんが、不の相関関係を認めています。すなわち、従来から生産性が低いサービス業での非正規雇用が急増する一方で、生産性が高い製造業での正社員が削減されている結果、低生産性部門が温存されて、日本経済全体の労働生産性にマイナスの影響を及ぼしている可能性が指摘されています。しかし、余剰人員削減で生産性を向上させたことも事実ですし、因果関係が逆転している可能性があると考えないでもありません。非正規雇用が増加したために低生産性部門が温存されたのではなく、規制などにより低生産性のサービス部門を温存したがために非正規雇用が増えている面を見落としているような気がします。さらに、国際競争にさらされていないサービス部門では外資の導入も生産性向上の一案だと考えられるんですが、この視点は抜け落ちています。『労働経済白書』が指摘するように、非正規雇用の増加はコスト削減には有効でも、労働者の職業能力の向上を通じた生産性向上にはつながりにくい面があることは事実ですが、高い生産力を担う労働者は企業内での職務経験を積み重ねながら育成されるだけではありません。長期雇用への回帰を提言しても時代の流れを元に戻すことは出来ないように私は感じています。生産性を取り上げるのであれば、格差問題には踏込み不足だとする意見もあり得るような気がします。

何となく、キチンと読んだわけではないんですが、今日発表された白書について、少し批判的な見方も含めて示してみました。もちろん、ここで取り上げただけでなく、多くの重要な論点を含んでいますので、ご興味ある方は一読をオススメします。

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2008年7月21日 (月)

ポケモン映画「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール ギラティナと氷空の花束 シェイミ」を見に行く

今日も、朝からいいお天気で気温も上がって、蒸し暑かったです。梅雨も明けて夏休みになり、どこから見ても夏本番です。

ニンテンドーDSを持って出かける子供達

今日は夏休みに入って3連休の最終日で、一家そろってポケモン映画を見に行きます。でも、その前に、腹ごしらえでカルネステーション銀座店でランチにします。その名の通り、銀座にありますが、8丁目の銀座ナインにあるドンキホーテの下の地下1階ですから、実は、新橋からの方が近かったりします。詳細はリンク先でどうぞ。「カルネ」とは私の知る限り、スペイン語で「肉」を意味します。イタリア語なんかのラテン語系統の言語でも同じかもしれません。スペイン語では "carne" と表記します。肉のハナマサの直営店で、カルビ・ロース・タン・レバー・鳥モモ・ササミ・豚カルビ・豚ロースなどなど、焼き肉食べ放題のお店です。しかし、我が家のグルメ評論家の下の子が重視するアイスはランチタイムにはなく、評価がグッと下がります。値段的には、平日が1人1000円、週末が1200円にアップするも飲み物がつきますから、かなりオトク感があります。子供料金の設定はありません。夜の料金は別のようです。店内は広くて、300席くらいあるんではないでしょうか。もう少し清潔感が欲しいところかもしれません。私や下の子のように量を食べる人間がいるんでしたらオススメです。予約も受けてくれました。

「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール ギラティナと氷空の花束 シェイミ」

ということで、ランチの後はマリオンでポケモン映画を見ます。左の画像はちょうど1週間前の7月14日のエントリー「夏休み子供向け映画のレビュー」で取り上げた画像を使い回しています。先週の木曜日の7時から、いつもの「ポケモン」の時刻に昨年の劇場版映画をテレビで放映していたんですが、やっぱり、劇場に来ると画像やサウンドの迫力が違います。さらに、映画が始まる前にニンテンドーDSのポケモンのゲームに映画の主人公ともいえるシェイミをもらえます。前売り券にはレジギガス引換券がついて来るのは6月22日付けのエントリーで紹介した通りです。そのレジギガスは最後の方で出て来ます。毎週日曜日の「ポケモンサンデー」でやっていたロバートも、最後のエンドロールで「スペシャルサンクス」で登場していました。昨年や一昨年のポケモン映画にくらべて、ロケット団の存在感が格段に低いような気がしました。もともとが SF ですから、ストーリは荒唐無稽です。このあたりは「ドラえもん」と大差ありません。

ポケモン映画を見終えた子供達

しっかり食べて映画を楽しんで夕方に帰宅しました。私と下の子は有楽町ビックカメラに立ち寄って、夏休み向けのガンプラも買い込みました。昼食が焼き肉の食べ放題でしたので、夕食はとっても軽く済ませる予定です。最近、ポケモンの話題が少ないので、今夜のエントリーは「ポケモンの日記」に分類しておきます。

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2008年7月20日 (日)

王羲之「蘭亭序」に感激する

今日も、朝からいいお天気で気温も上がって、蒸し暑かったです。でも、昨日ほどは湿度が高くなかったようにも感じました。昨日の屋外作業と今日の室内活動の差かもしれません。

王羲之「蘭亭序」(八柱第三本)

今日は両国にある江戸東京博物館に行きました。我が家のある青山から行くんでしたら、都営大江戸線の両国駅から歩いてすぐでした。特別展「北京故宮 書の名宝展」を見に行きました。お目当ては何といっても王羲之の「蘭亭序」です。上の画像の作品です。なお、上の画像は Wikipedia の巨大な画像にリンクを張ってあります。王羲之の「蘭亭序」以外にも、黄庭堅の「草書諸上座帖」、蔡襄の「行書自書詩」、顔真卿の「行書湖州帖」、沈度の「楷書敬斎箴」などが展示されています。江戸東京博物館のホームページには詳細な展示資料目録が PDF ファイルでアップロードしてあります。
まず、何といっても「蘭亭序」について、もちろん、王羲之の真跡は現存しませんから、今回展示してあって私が見たのは、北京の故宮博物館に保存されている八柱第三本です。馮承素の臨摸といわれています。筆路が鮮明なのが特徴的で、高校の教科書などで紹介されることも多い模写です。割り印として使われた「神龍」の印が、端に半分残っているので神龍半印本とも呼ばれています。なお、「神龍」は唐時代の年号です。北京の故宮博物館には清の乾隆帝が蒐集した三点の模写本の「蘭亭序」が有名です。八柱第一本、第二本、第三本と呼ばれています。今回、日本に来たのは先ほども書いた通り、馮承素の臨摸になる八柱第三本です。なお、八柱第一本はかの有名な虞世南、第二本はチョ遂良であろうと推定されています。なお、「チョ」の字は IME で変換できません。悪しからず。唐の太宗が初唐の三大家にそれぞれ模写させたんですが、欧陽詢の模写は特に出来がよかったので石碑に彫らせて、模写そのものは現存していないと言われています。
言うまでもなく、「蘭亭序」は書聖と呼ばれる王羲之が書いた書道史上最も有名な書作品です。28行324字から成っています。永和9年(353年)3月、蘭亭に会して曲水の宴が開かれた折に作られた詩集の序文の草稿が「蘭亭序」で、あくまで草稿ですから、追加・修正・消した部分なんかもあり、王羲之自身が後に何度も清書をしようと試みたんですが、草稿以上の出来栄えにならなかったと言い伝えられています。まさに、何も意図しないで無心で書かれたもので、書道の世界では「率意の書」と呼ばれます。なお、私が知る限り、八柱第一本、第二本、第三本などの各種の模写については、真跡の通りに追加・修正・消した部分も忠実に模写されていると聞いたことがあります。
感想は何とも言えません。素晴らしいの一言です。感激を超えて、大袈裟に言えば、こんな名品が見られるのであれば、ここまで生きて来てよかったとすら感じます。王羲之の書を極端なまでに愛した唐の太宗皇帝が「蘭亭序」だけは手に入らず、最後には家臣に命じて、王羲之の子孫にあたる僧の智永の弟子である弁才の手から騙し取ることまでして、自分の陵墓に副葬させた話は有名です。この太宗皇帝がすべての王羲之の書を蒐集して副葬させたために、現代の我々は王羲之の真跡を見ることが出来ませんが、この太宗皇帝の気持ちも理解できないでもありません。馮承素の臨摸になる八柱第三本ですら素晴らしい出来栄えでした。見ることは出来ませんが、王羲之の真跡になる「蘭亭序」はさぞかし素晴らしいのだろうと、想像力貧困な私のような者にでも理解できます。
今回の特別展は日中平和友好条約30周年記念だそうで、繰返しになりますが、「蘭亭序」以外にも、黄庭堅の「草書諸上座帖」、蔡襄の「行書自書詩」、顔真卿の「行書湖州帖」、沈度の「楷書敬斎箴」などが展示されています。一般展示前の内覧会には福田総理も出席したそうです。全体的に、行書の作品が多くて、草書や私の大好きな楷書の作品はやや少なめな気がします。もちろん、書道展ですから、隷書や篆刻の作品もありました。バランスよく展示されている印象があります。北京の故宮博物館を紹介するビデオも放映されていたりしました。書道展ですから、ややお年を召した女性が多いのはいつものことです。会場は少し暗いので、説明文などを読む場合には私はメガネが必要だったりしました。

書の趣味ある方でしたら、入場料の1300円もカタログの2500円も決して高くありません。9月15日までの開会だそうです。比較的時間的余裕のある夏休み公開ですし、何といっても、「蘭亭序」は本邦初公開だそうですから、ご興味ある方はお見逃しなく。

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2008年7月19日 (土)

中日に引導を渡した試合で3つの新鮮な発見

午前中にエントリーをアップした時点ではまだだったんですが、やっぱり、関東地方も梅雨明けが宣言されました。毎日、蒸し暑い気候が続いています。特に、今日は午後からボーイスカウトのバザーのお手伝いに行って、ボーイスカウトらしく戸外活動にいそしみましたので、とっても暑かったです。

今夜も我がタイガースは強かったです。7月には中日と9戦組まれていると記憶しているんですが、7月に入って中日戦では5連勝です。その前からで6連勝らしいです。ほぼ、リーグ優勝に関しては中日に引導を渡したといって過言ではないように私は考えています。難点を言えば、先発の安藤投手にはもう少し長いイニングを投げてほしかった気もするんですが、JFK を完全休養でリリーフ陣2番手の渡辺投手と江草投手が2イニングずつ完璧に抑えましたから、それはそれでいい投手陣の回転だったと言えなくもありません。打撃陣から見ても、投手陣から見てもいい勝ち方だったように思います。
さて、その強い勝ち方の今夜の試合で3つほど新鮮な発見がありました。モノにもよりますが、再発見と言っていいかもしれません。第1に、タイガースの長打力です。先発の安藤投手が1回ウラにいきなり点を取られたものの、鳥谷遊撃手のスリーランで3回にアッサリと逆転し、5回ウラに1点を返されて1点差に追い上げられた6回表には高橋選手のツーランで突き放し、8回にはフォード外野手のツーベースでダメ押しです。単打のタイムリーで得点したのは代打の桧山選手の1点だけです。ここまで長打で得点した試合は久し振りな気がします。私はよく知らないんですが、ナゴヤドームって東京ドームみたいに狭くてホームランが出やすかったりするんでしょうか?
第2に、中日の先発小笠原投手と平野選手の相性です。私は全く知りませんでした。明らかに中日に偏った解説をするテレビの解説者のお話で初めて知りました。前の試合では3打数3安打だったそうで、今夜の第1打席は見逃したんですが、確かに、第2打席と第3打席は平野選手が面白いように小笠原投手をいたぶってフォアボールを選んでいたように見受けました。赤星選手を休ませる意味もあったのかもしれませんが、平野選手をトップに入れた理由がよく分かりました。
第3に、フォード外野手です。まだ1軍にいたんですねえ。私はてっきり日本を離れて帰国したか、桜井外野手や今岡内野手とともにファームでクリンナップを組んでいるか、なんて思っていたんですが、しっかりと1軍に残っているようでした。8回の最後の打席では何だか振遅れ気味に見えたんですが、それが幸いして右中間を破るツーベースでダメ押し点をいれたり、その後の代打桧山選手のヒットでセカンドから一所懸命に走ってホームインしたりと、それなりに存在感を示したような気がします。

明日も
がんばれタイガース!

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エコノミストの支持を得る選挙公約は何か?

今日も、朝からいいお天気で気温も上がって、蒸し暑そうです。いよいよ関東甲信地方の梅雨明も近いのかもしれません。

昨夜のエントリーで、虎ブロは別として、国際通貨基金の世界経済見通しの改定について長々と英語を交えて書いてしまいましたので、今日のエントリーは、経済評論の日記ながら、週末の軽い話題ということで、少し前の "New York Times" で見かけたハーバード大学マンキュー教授のコラムを取り上げたいと思います。誰かのブログか何かで見かけたんですが、詳細は忘れました。というか、一応探したんですが、見つかりませんでした。タイトルは "What if the Candidates Pandered to Economists?" となっていて、7月13日付けです。大統領選挙のある年らしく、民主党と共和党の大統領候補者の名を上げつつ、決して大きな注意を引いてもらえないグループであるエコノミストの立場から米国大統領選挙の公約や政策について論じています。もちろん、"from universal health insurance to increased taxes on the rich" のいろいろな論点において、エコノミストの意見の隔たりは大きいものがあります。英国のチャーチル元首相のジョークで、「8人のエコノミストから意見を聞いたら9つの意見が出た。1人で2つ言ったのはケインズ卿だった。」というのがあるくらい、エコノミストの意見は一致を見ないものも少なくないんですが、エコノミストの大多数 (majority) の賛同を得られる米国大統領選挙公約として、マンキュー教授は以下の8点を上げています。

  • Support Free Trade
  • Oppose Farm Subsidies
  • Leave Oil Companies and Speculators Alone
  • Tax the Use of Energy
  • Raise the Retirement Age
  • Invite More Skilled Immigrants
  • Liberalize Drug Policy
  • Raise Funds for Economic Research

最後の点なんかは少しジョーク調になっていたりするんですが、最初の2点の自由貿易への支持と、その逆の農業補助金への反対はエコノミストの間で幅広い合意がありながら、政策的に採用されていない大きなポイントのひとつです。次の2点は最近の地球環境問題についても視野に入れつつ、最近の資源価格高騰に対応する政策として必要性が高まっているものです。5点目の引退年齢の引上げは、世界の最長寿国となった日本でも取り組むべき課題であることは明らかです。6点目の移民についても、マンキュー教授の指摘するように、少なくとも高技能を有する移民については受け入れる方向が正しいことに異論はないと考えられます。ただし、7点目の薬物規制については日本のエコノミストの間では広範な合意は得られていないような気もします。しかし、南米の大使館勤務の経験がある私なんかは、薬物中毒患者に補助金を与えてでも治療を受けさせる方法が有効であるする考えにやや同調しないでもない時期がありました。直接的に他人を傷つけることが可能なダガーナイフや銃器なんかについては禁止する合理的な理由があると考えられるんですが、薬物の場合は他人に迷惑をかけるとすれば、薬物を買う金欲しさに犯罪に走ったり、あるいは、中毒症状になって犯罪を含む反社会的な行動に出たりすることなどであると私は考えていますので、他人に迷惑をかけない限り、個人の自由は保障され、極端な例では、「人間をやめる」覚悟で薬物に手を出す自由もあると考えるエコノミストは少なくないような気がしないでもありません。ポイントは他人に迷惑をかけるかどうか、あるいは、他人の自由を侵害しないかどうかだと思います。事実として、2006年の職業エコノミストを対象とした投票でマリファナ合法化に賛成するエコノミストが反対の3倍を上回った結果をマンキュー教授は引用しています。マリファナをすべての薬物に拡大解釈するのはどうかと思いますし、簡単に結論の出ない難しい問題ではありますが、一昨年に亡くなったフリードマン教授がマリファナ解禁論者だったことは、少なくともエコノミストの間では有名な話です。やや薬物に関する記述が長くなってしまいました。なお、このコラムの最後は、"If you are that cynical, I won't try to dissuade you." で締めくくられています。

マンキュー教授のコラムの逆で、量的には、薬物に関する記述がこのエントリーではかなり多くなってしまったのが反省点かもしれません。土曜日10時からのいつもの「ケロロ軍曹」のテレビを見終えて、軽い話題で書き始めたつもりが重くなってしまいました。薬物規制については議論のあるところで、私も決定的な見解は持っておらず、専門家の意見を聞いたり読んだりすると、ついつい、その方向に引き寄せられてしまいます。
今日は午後からボーイスカウトのバザーのお手伝いに出かけます。

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2008年7月18日 (金)

鳥谷選手の3番を評価する

今夜の試合はあまりテレビ観戦できなかったんですが、9回表の矢野捕手の勝越しタイムリーからはしっかり見ました。あの場面で前進守備とはいえ、しっかりと打ったのがよく分かりました。それにしても、中日3連戦の敵地での第1戦、しかも、先発は中日のエース川上投手、さらに、競った試合を最終回に岩瀬投手を打ち込んでの勝利は大きいです。
今夜の試合のハイライトはいくつかありますが、私は鳥谷遊撃手を3番に入れたオーダーに注目したいと思います。今夜は1回表の3塁打と9回の攻撃の口火を切るヒットの4打数2安打で、3番バッターとしては合格点だと思います。どこかの誰かの受売りなんですが、今年の我が阪神のオーダーの大きな弱点は、今岡内野手の復調待ちの5番であることは誰の目にも明らかで、現時点では新井内野手が腰痛で戦線離脱しているものの、好調とはいえ鳥谷遊撃手をそのまま5番に入れるんではなく、新井内野手を5番に入れて、鳥谷遊撃手を6番から3番に上げるオーダーがいいんではないかと私は思っていました。今夜のオーダーはこれに近いような気がします。繰返しになりますが、どこかで誰かが書いていたか、話していたことの受売りです。
それにしても、9回表の攻撃の途中から、我が家の下の子とテレビ観戦していたんですが、テレビを見る機会の少ない6年生のおにいちゃんと違って、4年生の下の子はしっかりとタイガースファンに育ってくれました。我が家も我が家の事情があるので、ここまで促成栽培で阪神ファンに育ってくれたのは父親としてうれしい限りです。

明日ももちろん、
がんばれタイガース!

これからお風呂に入って、長風呂を終えてからトラックバックを飛ばします。

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国際通貨基金 (IMF) の世界経済見通し改定版

今日も、朝からいいお天気で気温も上がって、蒸し暑かったです。しかし、午後には雨が降りました。明日はいいお天気との天気予報なので、梅雨明けかもしれません。なお、我が家の子供達の通う小学校は今日が終業式で、通知簿をもらって帰って来ました。明日からいよいよ夏休みです。

昨日7月17日付けで国際通貨基金 (IMF) から世界経済見通し改訂版 "World Economic Outlook Update" が発表されました。"Global slowdown and rising inflation"と題された PDF で6ページのリポートです。まず、少し長くなりますが、リポートの最初に置かれたサマリーを引用すると以下の通りです。

The global economy is in a tough spot, caught between sharply slowing demand in many advanced economies and rising inflation everywhere, notably in emerging and developing economies. Global growth is expected to decelerate significantly in the second half of 2008, before recovering gradually in 2009. At the same time, rising energy and commodity prices have boosted inflationary pressure, particularly in emerging and developing economies. Against this background, the top priority for policymakers is to head off rising inflationary pressure, while keeping sight of risks to growth. In many emerging economies, tighter monetary policy and greater fiscal restraint are required, combined in some cases with more flexible exchange rate management. In the major advanced economies, the case for monetary tightening is less compelling, given that inflation expectations and labor costs are projected to remain well anchored while growth weakens noticeably, but inflationary pressures need to be monitored carefully.

World Economic Outlook Update Projections

上の画像が今回の改定された世界経済見通しの総括表になっています。かなり大きくて少し縮小をかけてありますので、クリックすればオリジナルの大きさの画像が別画面で開くようになっています。リポートのタイトルが "Global slowdown and rising inflation" にしては、今年と来年の成長率見通しは4月時点から上方改定されていたりします。特に、年平均では先進国も新興国・途上国も今年から来年にかけて成長率が減速するように見えるんですが、右のカラムの第4四半期対比で見ると、逆に、来年の方が成長率が加速しており、私はこの第4四半期対比の方が実感に近いんではないかと考えています。特に、米国については、第1四半期のプラス成長に加えて、第2四半期でも減税などの効果で一定の程度の成長が見込まれますから、今年後半にマイナス成長になることが織り込まれていると私は受け止めています。日本についても同様で、第1四半期がうるう年効果も含めた高成長でしたから、4-6月期以降のいずれかの四半期でマイナス成長を記録する可能性を読み取るべきだと思います。

Core Inflation and Oil Price

成長率見通しは上方修正されているわけですから、改定のポイントはインフレということになります。特に、上のグラフで見る通り、コアインフレについては先進国よりも新興国・途上国の方が上昇が大きくなっています。ですから、この IMF のリポートを取り上げていた今朝の "Financial Times" の1面トップの見出しは "Emerging economies warned on inflation" と題されていました。従来通り、政策課題は "The policy challenge, especially for low- and middle-income countries, is therefore to find ways to feed the hungry without also feeding inflation or depleting foreign exchange reserves." ということになって、引き続き、"passing on the full price increases to consumers" が政策の基本になります、しかし、さすがに、何らかの "cushion""multilateral effort" でもって、 "social measures" を考慮すべきであると付け加えられています。
なお、金融市場の動向についても簡単に触れられていますが、"Global Financial Stability Report Market Update""late July" にリリースするので、ソチラでより突っ込んだ議論をするとのことです。

Selected Commodity Prices

今夜のエントリーではリポートにおける出現順で図表を配置しましたので、話が少し前後しますが、IMF が世界経済見通しを改定したのは、市場動向に合わせて、原油をはじめとする商品価格のベースラインを変更したからです。特に、石油価格については4月見通しからベースラインを30%改定した旨が明記されています。石油を含めて、その他のいくつかの商品価格の想定は上のグラフの通りです。先行きについても、商品価格は高止まりすると IMF は見ているようです。
ですから、今回の短いリポートの最後の2ページは "Annex. Surging Fuel and Food Prices: Origins, Prospects, and Risks" と題する分析がなされています。上のグラフもこの付論に置かれていたりします。まず、石油価格高騰の原因については、需要面から、"The rapid growth in emerging and developing economies in particular has catalyzed demand for commodities" であるとし、従って、"Thus, slowing growth in advanced economies has had less impact on commodity prices than in previous business cycles." であると分析しています。他方、金融面では、"Financial conditions have temporarily addeupward pressure on prices of oil and other commodities." としつつも、"Financial variables" の中では為替レートが主要な要因と分析しています。最近の米国連邦準備制度理事会 (FED) のバーナンキ議長の為替介入を容認する発言なんかも同じコンテキストで解釈すべきかもしれません。逆に、投機的な資金の動向については、"there is little evidence that the increasing investor interest in oil and other commodities as an asset class has affected price trends for oil and other commodities" と従来からの立場を堅持しています。我が国の「通商白書」なんかの論調と大きく違っているように見受けられます。次に、食料価格については、箇条書きで、"Unfavorable weather conditions""Rising biofuel production""The rise in oil prices and energy prices""The growing use of export restrictions" の4点を上げています。

今回のリポートでは、そんなに新しい論点が提出されているわけではありませんが、6ページとコンパクトにまとまった IMF の最新リポートですから、ご興味ある方は一読をオススメします。

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2008年7月17日 (木)

「インフレはいつでもどこでも貨幣的な現象」なのか?

今日も、朝からいいお天気でした。気温も上がって、蒸し暑かったです。明日は雨がちだとの天気予報ですが、関東近辺の梅雨明けも近いような気がします。

CPI, year over year米国のヘッドラインの消費者物価上昇率が急激に上がって来ています。左のグラフの通りです。"Wall Street Journal" のサイトから引用しています。6月には前月比で+1.1%の上昇を記録し、前年同月比ではとうとう+5%に達しました。"Wall Street Journal" でも "spike" と表現しています。しかし、他方で、徐々に上昇して来ているとはいうものの、コアインフレ率は前月比で+0.3%、前年同月比でも+2.4%に過ぎません。もちろん、このインフレ率でも、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) が物価安定と考えているであろう1.5-2%のレベルをかなり上回っていますし、中央銀行としての信任を維持する上からも、やや金融引締めに傾くバイアスを持っているだろうと思うんですが、それにしても、コアとヘッドラインの差が大きくなっている現時点で、景気とコアインフレの現状を勘案して、そんなに早い時期の金融引締めは予想されていません。
今月7月2日のエントリーで国際通貨基金 (IMF) のリポートとともに取り上げた国際決済銀行 (BIS) の年次報告では、コアインフレのヘッドラインに対する予測パフォーマンスの悪化を分析していましたが、これもエネルギーと食料の価格上昇が原因となっています。しかし、コアインフレに注目するのは、必ずしもヘッドラインの先行指標だからというわけではないと私は考えています。逆に、現在のようにエネルギーと食料の影響の大きいヘッドラインではなく、コアを注目すべきであるのは賃金や供給面との関係、さらにいえば、ホームメイドのインフレとの関係であろうと私は考えています。
今夜のエントリーに掲げたように、フリードマン教授の有名な言葉として、「インフレはいつでもどこでも貨幣的な現象である」というのがあります。これは根本では正しいと私は考えています。何らかの世界的な過剰なマネーがエネルギーや食料に向かっていて、これが商品市況の高騰につながっている部分があるからです。しかし、同時に、伝統的な経済学のツールである需要曲線と供給曲線を考えると、価格が上昇するのは需要曲線が右方シフトするか、供給曲線が左方シフトするか、あるいは、その両方の時ともいえます。米国が日本に比べて借金体質で消費支出が増加しやすく、需要が供給を超過しがちにあるという意味で、ややインフレ体質といえるかもしれませんが、他方で、欧州については供給面で労働市場の柔軟性に欠けるという意味で、やっぱり日本に比べてインフレになりやすい面があるような気がします。我が日本について考えると、昨今の構造改革の成果かどうかは意見の分かれるところですし、他の面も考え併せた評価はさらに分かれるところですが、少なくとも、インフレへの耐性という面では、労働市場が従来に比べて格段に柔軟化して来ており、さらに、需要面の圧力が小さいために、貨幣的な現象であるかどうかに関わりなく、米国や欧州と比べて日本ではインフレ圧力がかなり小さいんだろうと私は解釈しています。このような要因は別にしても、日本の物価上昇率が欧米よりも低いのは現実の統計データを見ても明らかだと思います。少なくとも我が国においては、エネルギー価格などの高騰に対して、政府に補助金を要求するがごとき意見が散見される一方で、ここ数ヶ月でパート労働法に伴う以上の賃金上昇の高まりは見られません。商品市況の高騰は割合と単純な資源国に対する所得移転、あるいは別の視点から、税金の増税のようなものと見なされていて、賃金の上昇からホームメードインフレにつながるルートは、控えめに言っても、現時点の日本では観察されないと私は考えています。ホンの少しだけでしょうが、欧州でこのルートが認識されつつあるので欧州中央銀行 (ECB) が利上げを実施したというところではないでしょうか。

繰返しになりますが、「インフレはいつでもどこでも貨幣的な現象である」というフリードマン教授の意見は現在でも十分に正しいと私は考えているんですが、新興国や途上国では現下のインフレに対する処方箋として、それぞれの国内の通貨政策だけでは十分ではないような気がします。私が7月4日付けのエントリーで主張したような日米欧の協調利上げの模索をはじめ、グローバルなコンテキストでのインフレに対する政策対応を少し考え直す時期に来ているのかもしれません。

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2008年7月16日 (水)

文化の話題 - 第139回芥川賞と将棋の第49期王位戦七番勝負第1局

今日も、少し雲が多かったものの、朝からいいお天気でした。気温も上がって、蒸し暑い気候が続いています。近畿・中国地方が梅雨明けしたようですが、まだ、関東近辺は梅雨明けしないんでしょうか?

日銀が金融政策決定会合を開催し、「展望リポート」の成長率見通しを引き下げて、物価上昇率見通しを引き上げたとか、米国の連邦準備制度理事会のバーナンキ議長の議会証言とか、資源や食糧の高騰の25-48%が実需以外とする『通商白書』の試算とか、予算のシーリングとその前提となる政府経済見通しとか、いろいろと経済に関する話題は盛りだくさんなんですが、今日のところは割愛します。
ということで、昨夜、第139回芥川賞が楊逸さんの「時が滲む朝」に授賞されることが決まりました。中国人の受賞や日本語を母語としない、いわゆる獲得言語の作家の受賞は初めてだそうです。まず、我が家で購読している朝日新聞のサイトから、直木賞とともに報じられた記事を引用すると以下の通りです。

第139回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に中国人の楊逸(ヤン・イー)さん(44)の「時が滲(にじ)む朝」(「文学界」6月号)が選ばれた。楊さんは22歳で来日してから日本語を学んでおり、日本語を母国語としない外国人の受賞は芥川賞73年の歴史で初めて。中国人の受賞も初めてとなる。
2度目の候補で賞を射止めた楊さんは「とても感激しています。この小説にはいろんな思いがあり、作品が評価されたことに感動しています」「九州に住む妹に電話で受賞を知らせたら、『勘違いじゃないの』と言われて、一瞬、そうかと思った」と笑顔を見せた。
直木賞は井上荒野(あれの)さん(47)の「切羽(きりは)へ」(新潮社)に決まった。父は作家の故井上光晴さん。
副賞は各100万円。授賞式は8月22日午後6時から、東京・丸の内の東京会館で開かれる。

受賞作のストーリーは、理想に燃える中国の大学生が民主化運動に加わり、1989年の天安門事件で挫折するまでと、その後の人生の哀歓を、漢詩や英語を交えた日本語の文章でみずみずしく描いた青春小説だそうです。選考委員の中には、自らの全共闘時代の思い出と重ね合わせた人もいたと報じられています。また、今回の選考委員会には石原慎太郎さんは欠席だったらしいです。
今回第139回の芥川賞と直木賞の選考に関しては、中国人の楊逸さんの受賞だけでなく、伊坂幸太郎さんが、長編小説『ゴールデンスランバー』(新潮社) について、直木賞の選考対象となることを事前に辞退していたりと、私のようなものでも知っているくらいの話題が多かったような気がします。また、賞の選考とは直接の関係はありませんが、10年前に『日蝕』で第120回芥川賞を受賞した平野啓一郎さんが、長編小説『決壊』(上・下巻、新潮社) を刊行して、ネット社会で壊れていく人々の心を見据えた挑戦的な力作と評価されていたりします。それから、さらに文学賞の話題から遠ざかるんですが、来週にはハリー・ポッターの最終巻『死の秘宝』の邦訳も発売されます。もうすぐ始まる夏休みに向けて、文学に関する話題で盛り上がる季節が来たのかもしれません。私もこの季節には昨年も経済書から小説にシフトしたような気がしないでもありません。

第49期王位戦七番勝負第1局

ついでで申し訳ありませんが、深浦康市王位に羽生善治名人が挑戦している将棋の第49期王位戦七番勝負第1局が、14日から15日にかけて北海道網走市のホテル「北天の丘あばしり湖鶴雅リゾート」で指し継がれ、昨日夕刻、97手までで先手番の羽生名人が勝ち、王位奪回に向けて好スタートを切りました。上の画像は投了図です。今回も、我が家の下の子が将棋を習っている天野貴元三段が記録係を務めています。

芥川賞に戻って、いつもの通り、私は8月発売の月刊『文藝春秋』で選評とともに芥川賞受賞作の「時が滲む朝」を読みたいと思っています。なお、今夜のエントリーは将棋の王位戦はついでの話題で芥川賞がメインで、文字通り、読書をした後の感想文ではないんですが、本邦文学界の話題ということで、「読書感想文の日記」に分類しておきます。

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2008年7月15日 (火)

Too big to fail!

今日も、少し雲が多かったものの、朝からいいお天気でした。気温も上がって、蒸し暑い日本の夏が続いています。夕立があるような天気予報だったんですが、少なくとも、私は雨には遭遇しませんでした。

日本のメディアの反応はやや鈍いんですが、サブプライム・ローン問題に端を発して米国の連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の経営が悪化し、救済策が米国の財務省と連ぽ準備制度理事会 (FED) で検討されています。まず、米国時間の日曜日に緊急で発表された財務省と FED のステートメントへのリンクは以下の通りです。

アメリカの住宅金融の仕組み

まず、米国の住宅金融の仕組みは上の図の通りです。読売新聞のサイトから引用しています。サブプライム・ローンを含めて民間金融機関が貸し出した住宅ローンを原債権として、ファニーメイやフレディマックが住宅ローン担保証券を組成して投資家に販売していました。ですから、原債権である住宅ローンの焦付きが発生すれば、単純に投資家だけでなく、ファニーメイやフレディマックの保有する資産も悪化し、経営難に陥ります。
Market Impactしかも、ファニーメイやフレディーマックが保有していたり、保証していたりする住宅ローン債権は巨額に上ります。左のグラフは "Wall Street Journal" のサイトから引用しているんですが、ここに見られる通り、米国の住宅ローン債権のほぼ半分になります。別の試算によれば過半に達するとするものもあります。しかも、ファニーメイとフレディマックには暗黙の米国政府の保証が付与されていると見なされて、これらの両政府機関 (GSE) の債券は格付けや信用度も高くて、広く世界中に売りさばかれています。例えば、読売新聞のサイトの報道によれば、2007年6月時点の米政府機関債(長期債)の海外保有残高は中国が3760億ドルと最多で、日本は2290億ドルと世界第2位の規模となっていて、メガバンク3行の保有する米政府機関債は2008年3月末時点で、ファニーメイとフレディマックの債券も含めて、三菱UFJフィナンシャル・グループが3.3兆円、みずほフィナンシャルグループが1.2兆円、三井住友フィナンシャルグループが2198億円と、約4.7兆円に上るようです。ファニーメイやフレディマックの債券は邦銀で保有していないところはないと言われるほど広く行き渡っており、これら米国の政府機関債の価格動向はメガバンクのみならず、広く日本の銀行業界全体にも何らかの影響を与える可能性が指摘されています。
暗黙の政府保証もさることながら、完全なる政府保証のある連邦抵当公庫(ジニーメイ)は別にして、ファニーメイやフレディマックはサブプライム・ローン問題で少し難アリ債券をムリして保証したり、買い取ったりしていましたので、ここに来て一気に経営が悪化したと解釈するのが妥当かと思いますが、両政府機関債などが世界中に余りにも広く出回っているため、これらを保有している民間金融機関によっては流動性に不足を来たす可能性もあり、場合によっては、世界的なシステミック・リスクに陥る可能性すら指摘する意見もあります。米国政府と中央銀行である連邦準備制度理事会の今後の対応、特に、資本注入の方法と規模や時期、あるいは、国有化されるのかどうか、などが注目されるところです。それにしても、3月のベア・スターンズ証券のケースといい、米国政府や連邦準備制度理事会の極めて迅速な対応には、日本政府に勤務する公務員として舌を巻きます。でも、しばらく、クレジット市場とこれに引きずられた株式市場も弱気が続くのかもしれません。

今回のファニーメイとフレディーマックについては、典型的に、"too big to fail" が適用されるケースだという気がします。私も含めて、誰の目から見ても、絶対に潰すわけにはいかないと思います。

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2008年7月14日 (月)

夏休み子供向け映画のレビュー

今日も、朝からいいお天気でした。真夏の太陽で気温も上がり、蒸し暑かったです。

今週で小学校も終業式となり、来週から夏休みというのが多いんではないでしょうか。我が家の子供達の通う小学校はそうです。ということで、今夜のエントリーは恒例の夏休み子供向け映画のレビューです。例によって、Yahoo! 映画からのコピペですので、ネタバレはないと思います。
「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール ギラティナと氷空(そら)の花束 シェイミ」まずは何といっても、ポケモン映画です。「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール ギラティナと氷空(そら)の花束 シェイミ」というタイトルです。このタイトルですから、我がブログのURLに入っている「ポケモン」をキーワードに検索しても、ついつい漏れがあったりしました。今回の映画は、世界的な人気の“ピカチュウ・ザ・ムービー”の『劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』の第2弾で、前作のバトルが継続する今作では、美しくも不思議な“反転世界”を舞台に、前作のディアルガとパルキアの戦いで自らの世界を汚されたギラティナによる壮絶な反撃、物語の鍵を握るかんしゃポケモンのシェイミとサトシとピカチュウたちとの交流を描きます。監督は前作同様、湯山邦彦さん。深化した世界観や明かされる謎の数々のほか、山寺宏一、中村獅童、中川翔子、南明奈ら豪華ゲスト声優陣の声の共演にも注目、だそうです。
ストーリーは、世界の裏側にある鏡のような不思議な世界で、ギラティナのすむ特殊空間“反転世界”は、ディアルガとパルキアの戦いで時間と空間がゆがみ、黒い瘴気(しょうき)の雲に覆われてしまっており、自らの世界を汚されて怒ったギラティナは、その原因を作ったディアルガを探し出して美しくもおきて破りな反転世界へ引きずり込もうとするのだが……、ということのようです。
次に、スタジオ・ジブリ作品です。「崖の上のポニョ」です。この映画は、大ヒットを記録した前作「ハウルの動く城」以来4年ぶりに宮崎駿監督が手掛けた心温まるファンタジーで、アンデルセン原作の童話「人魚姫」を基に、人間になりたいと願うさかなの子と5歳の男の子の友情と冒険を生き生きと描きます。「風の谷のナウシカ」以来長年宮崎作品の音楽を担当してきた久石譲が今回も音楽を担当し、美しい音色で作品を盛り上げます。CG 映像全盛の今だからこそ、あくまで手描きアニメーションにこだわった驚異の映像は必見、だそうです。
ストーリーは、5歳の少年宗介は、海辺の小さな町のがけの上の一軒家で暮らしていました。市街地から外れた彼の家の周囲には何もさえぎるものはなく、ただただ青く美しい海と空が広がっています。仕事で留守になりがちな父親の不在を寂しく思っていた宗介でしたが、ある日、浜でさかなの子ポニョと出会うことでその寂しさも忘れ、やがて2人は強いきずなで結ばれていく、ということのようです。
以上の2作はこの土曜に7月19日公開なんですが、最後に、来週末7月26日公開の「カンフー・パンダ」です。我が家の契約している CATV にはしょっちゅうコマーシャルが流れたりします。この映画は、スティーヴン・スピルバーグ率いるドリームワークスが手掛けた、動物たちによるカンフー・アニメーション大作で、古くからの予言により、思いがけずにカンフーマスターを目指すことになったパンダの血と汗と涙の修行の日々をユーモアたっぷりに描き出します。声優陣もジャック・ブラック、アンジェリーナ・ジョリー、ジャッキー・チェンと東西のスターが勢ぞろいで、個性豊かな面々が繰り広げる華麗なカンフー技と友情の物語は必見、だそうです。
ストーリーは、中国の桃源郷“平和の谷”が、極悪非道なタイ・ランに襲われ、彼に対抗する勇者を選ぶことになり、選考試合ではマスター・モンキーらカンフーの達人たちがその技を競い合うが、彼らを差し置いて選出されたのは、体は大きいが小心者のパンダのポーだった、ということのようです。

「大決戦!超ウルトラ8兄弟」

夏休み公開ではないんですが、番外編として、9月半ばには「大決戦!超ウルトラ8兄弟」が公開されますので、下の子はパソコンの壁紙をポケモンから上の画像に交換して、大きな興味を示していたりします。夏休み映画ではないということでストーリーなどの詳細は割愛しますので、映画のホームページなどでご確認ください。ウルトラマンのシリーズは我が家の下の子のように、根強いファンがいますから、かなり話題になるかもしれないと思ったりしています。

先月6月22日のエントリーで取り上げたように、我が家ではすでにポケモン映画の前売り券を買ってあり、ポケモンセンターでレジギガスをゲットしたりしていて、ポケモン映画に決めています。ニンテンドーDSとポケモンのソフトを劇場に持って行けば、シェイミがもらえるそうなので、早めに行きたいと考えています。でも、久し振りの宮崎駿監督によるジブリの「崖の上のポニョ」にも私は少し興味があったりします。

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2008年7月13日 (日)

アッとびっくりの岡田采配でマジック復活?

いやあ、アッとびっくりの盗塁でした。まさか、金本外野手が回も詰まって8回ウラの攻撃で盗塁するとは思いもよりませんでした。もちろん、このランナー、とついでに敬遠の鳥谷内野手をホームに返したのは代打の葛城外野手の殊勲ですが、岡田監督の気迫の作戦だったように見ました。走られた広島の方の選手が一番びっくりな気がします。我が阪神の4番バッターと言えば、田淵選手の昔から盗塁なんて縁がないものと思っていました。
それにしても、視点を変えれば、広島の、特に投手陣が充実して来たような気がします。中日と巨人がコケる中で、ひょっとしたら、当面のライバルになる可能性も大アリな気がしないでもありません。

がんばれタイガース!

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チャーリー・フレッチャー『アイアンハンド』(理論社)を読む

今日も、朝からいいお天気でした。真夏の太陽で気温も上がり、梅雨明けも近いような気がします。でも、昨日も、ブログをアップしてから夕立がありましたので、今日も、これから雨が降る確率は小さくないような気もします。

『アイアンハンド』

もう10日後にはハリー・ポッターの最終巻『死の秘宝』の邦訳が発売されようかというタイミングで、まだ、この春先に発売された子供向けのファンタジーを読んでいたりします。フレッチャー著の『アイアンハンド』(理論社)です。邦訳は大嶌双恵さんです。パオリーニ著の『ドラゴンライダー』シリーズの翻訳者としても有名です。まず、あらすじについて、e-hon のサイトにあるのが私の実感に近かったので、引用すると以下の通りです。なお、今日のエントリーはネタバレがありますので、未読の方が読み進む際はご注意下さい。

「どうしてぼくたちが石の怪物におそわれるんだ?」「なにか悪いことをしたのよ」「へえ、きみには暗い秘密でもあるってわけ?」「あたし、父さんを殺したの…」裏ロンドンに迷いこんだジョージとイーディ。二人は“ストーンハート”の謎にたどりつけるのか?孤独な少年、異能の少女、狙撃兵の彫像―。響き合う3つの魂が暗黒のロンドンを駆け抜ける熱い「絆」のノンストップ・アドベンチャー。

上の表紙の画像に見られるように、この『アイアンハンド』は昨年のこの時期2007年7月5日のエントリーで取り上げた『ストーンハート』の続編で、『ストーンハート』3部作の第2巻に当たります。2007年7月5日のエントリーでは第2話は "Marble Head" というタイトルだと書いたんですが、その後、何らかの事情の変更があったようです。"Marble Head" のタイトルは第3話に回されたのかもしれません。これまた、前回1年前の『ストーハート』とまったく同じで、我が家のおにいちゃんは買った本を読んで、私は近くの区立図書館から借りて来た本を読みました。私もおにいちゃんも感想はよく似たもので、不可解の一言に尽きます。昨年は「今後に期待する」ということで締めくくってしまったんですが、今年の第2巻は3部作の中間に当たり、不可解さが増しているような気がします。
前作『ストーンハート』と同じで、スピットとタイントの対立に主人公のジョージとそのパートナーのグリントのイーディーが巻き込まれ、グリントを操っているウォーカーの出番が多くなっていたりします。まず、作者はウラワザを2つほど使っているように私には見えます。出現順とは逆なんですが、イーディーが生き返ります。ギリギリ死の淵から蘇ると言った方が正しいのかもしれませんし、子供向けのファンタジーではよくあることです。『デルトラクエスト』では命のユリの蜜でバルダが生き返りますし、『アルテミス・ファウル』のシリーズでも2巻か3巻か忘れましたが、バトラーが妖精の魔法によって助かります。『ハリー・ポッター』の第7巻最終巻でも、生き返るわけではありませんが、死んだダンブルドア校長先生とハリーが長々と会話を交わしたりします。もうひとつは、台座に戻らないと死んでしまうハズのスピットのガナーの代理を主人公のジョージが出来てしまうことです。もっとも、この代理のためにジョージが戦争を体験して決闘の代わりにもなっているので、このあたりのプロットは必然なのかもしれません。
昨年2007年7月5日のエントリーで書いたのと同じく、引き続き、ブラックフライヤーの役割は私にはわかりません。でも、最後の方で、グリントしたイーディーが「フライヤーは悪い人じゃない!信じちゃいけないのはリトルトラジディよ!」と叫ぶ場面があるので、きっと、その通りなんでしょう。第3巻ですべてが解明されると思います。ブラックフライヤーに続いて、ユーストン隊や赤毛の女王もスピットなので、ジョージの味方だと思うんですが、役割は判然としません。ユーストン隊の役割は、ガナーが台座に戻る代理をジョージが出来ると教えることと、将校が赤毛の女王とともにウォーカーとの戦いでジョージの味方をすることだと思うんですが、ハッキリとは分かりません。他方で、ウォーカーの目的はかなり分かって来た気がします。でも、何と表現すればいいのか不明ですが、何らかの意味でのウォーカーの上位者がいそうな気がしないでもありません。タイントを操っているウォーカーなんですが、そのウォーカーを操っている何らかの上位者がいそうな気がしないでもありません。第2話を読み終えたばかりの現時点では不明です。

このシリーズは私やおにいちゃんのように、発売されるごとに律儀に読むんではなく、全3巻が完結した時点で一気に読む方がいいのかもしれません。

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2008年7月12日 (土)

北京オリンピックの話題

今日も、朝からいいお天気でした。ほぼ真夏の太陽が照りつけていた気がします。気温も上がって蒸し暑かったです。天気予報は見ていないんですが、ひょっとしたら、すでに梅雨明けが発表されているのかもしれませんし、少なくとも、この天気が続けば週明けにでも梅雨明けではないでしょうか。

北京オリンピックのメダル

今日は週末モードで、北京オリンピックの話題です。まず、メダルです。昨年3月の開会式まで500日のカウントダウンで発表されていたようなんですが、情報に疎い私は知りませんでした。私は "Wall Street Journal" のブログサイトのひとつである "China Journal" で見かけました。上の画像の通りです。中国内外の応募作品265点から選考したもので、メダルはいずれもいずれも直径7センチ、厚さ6ミリで、重さ約150グラムです。金メダルには6グラム以上の金を使用し、銀メダルは純銀製です。メダルの表面には、パナシナイコ・スタジアムに飾られたギリシャの勝利の女神ニケが浮き彫りにされ、裏面は北京オリピックの公式エンブレムの周囲にヒスイが埋め込んであります。留め金には左右から2匹の龍の模様が施されています。オリンピックのメダルにヒスイが使われたのは初めてだそうです。中国には金と玉は相性が良いとする「金玉良縁」という言葉があり、それに因んだデザインのようです。

北京オリンピックの記念紙幣

それから、最近では、日本の新聞でも盛んに報道されましたが、オリンピック記念紙幣が発行されました。10元 (日本円で約156円) の紙幣です。発行は600万枚だそうですが、人口が巨大なのでかなりの希少価値があるような気がします。北京オリンピックのメインスタジアムである「国家体育場 (National Stadium)」を表面のデザインに用いて、裏面は伝統的なオリンピックのデザインに見えます。表面のメインスタジアムは「鳥の巣 (Bird's Nest)」の愛称で呼ばれていることはご存じの通りかと思います。図柄に使用した10元紙幣、600万枚を発行する。私が知る限り、人民元紙幣のデザインはすべて故毛沢東首席の肖像画があしらわれていて、赤っぽい色調のものが多く、異なる図柄が使われるのは2000年にミレニアムを記念して龍がデザインされた100元紙幣が発行されたものぐらいしか知りません。当然ながら、中国では大人気のようで、実際の額面を大幅に超える額で取引されているようです。なお、私は中国語は全く知らないんですが、裏面の左端に縦書きで「奥林匹克」の4文字が見え、これが中国語表記の「オリンピック」なのかと勝手に想像しています。これだったら、意訳した我が国の「五輪」の方がセンスいいように思わないでもありません。

休日モードでゆったり過ごす土曜日に、来月に迫った北京オリンピックのメダルと記念紙幣の話題について取り上げました。メインのスポーツではなく、ホンのちょっぴり経済に近い分野ではないかと思わないでもありません。

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2008年7月11日 (金)

久し振りに「ESP フォーキャスト調査結果」を考える

今日も、朝からまずまずいいお天気でした。30度くらいまで気温も上がったようです。夜になって夕立があった地域もあるようですが、そろそろ梅雨明けが近かったりするんでしょうか?

実質GDP予測値総平均の推移

昨日、経済企画協会から「ESP フォーキャスト調査結果」が発表されました。日経新聞のサイトでは7-9月期のGDP成長率がマイナスと予想されていることに注目していて、毎日新聞のサイトでは景気転換点を過ぎたかどうかに興味があるようです。いずれにせよ、ものすごく久し振りに注目したような気がします。ヘッドラインの実質 GDP 成長率の予測は上のグラフの通りです。典型的に景気下降局面の特徴が出ていて、時がたつにつれて成長率予想が低下しています。なお、今夜のエントリーのグラフは、上も下も、第一生命経済研究所のリポートから拝借しています。

消費者物価(生鮮食品を除く総合)予測

上のグラフは消費者物価のコアの予想です。今夏から秋口にかけて、単月で2%を付ける月があってもおかしくないと私は考えているんですが、四半期の予想ですので、均してみれば2%には達しないとの結果になっています。成長率予想と同じで、というか、逆で、最近時点になるにつれて上方修正されているような気がします。この先も上方修正が続けば、四半期でも2%を超える期がある可能性も排除できません。

ESP フォーキャスト7月調査6月調査
転換点はすでに過ぎた16名 (44.4%)8名 (21.6%)
転換点はまだ過ぎていない20名 (55.6%)29名 (78.4%)
↓ 1年以内確率
平均41.3%42.5%
高位8人平均51.6%63.7%
低位8人平均31.7%23.7%

最後に、私の注目点は毎日新聞と同じで景気転換点に関する質問です。最近、私は「ESP フォーキャスト」を余りよく見ていなかったんですが、先月からこの景気転換点に関する質問が調査項目に入るようになったらしいです。上の表は先月調査と今月調査を並べています。要するに、回答エコノミストの8-9%が景気転換点を過ぎていないから過ぎたにシフトした結果となっています。この1ト月で景気転換したと考えているエコノミストもいるのかもしれませんが、私の勝手な想像ながら、考えを変えた人も多いのではないかと思います。これから先、さらにエコノミストのシフトが続くのかもしれません。私自身はまだ迷っているところですが、もしも、どちらかに決めろと言われれば、現時点では「まだ過ぎていない」と回答するような気がしないでもありません。でも、2-3か月すれば、「もう過ぎた」にシフトするような気もします。

今夜は少し遅くなったので、久し振りに見た「ESP フォーキャスト」の調査結果を取り上げてみました。よい週末をお過ごし下さい。

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2008年7月10日 (木)

そろそろブログは下火になるのか?

今日は、朝からまずまずいいお天気でした。陽射しもあって気温が上がりました。ランチでビールを飲んで役所に戻ったら大汗をかいてしまいました。

国内のブログ総数の推移

少しまえですが、7月2日に総務省情報通信政策研究所から「ブログの実態に関する調査研究」が発表されました。それによれば、すでに削除された物を含んで過去に開設されたブログ総数は2,243万、インターネット上に公開されているブログが1,690万、そのうち、月1回以上更新されているアクティブなブログが308万だそうです。上のグラフの通りです。もっとありそうな気もしないでもないんですが、こんなものかもしれません。青いラインがアクティブ・ブログですから、2006年以降は横ばっているような印象を受けます。なお、今夜のエントリーのグラフはすべて上にリンクを張ったリポートから引用しています。

毎月の新規記事数の推移

これが、毎月の新規記事数となると、上のグラフの通りで、横ばいよりもむしろ減少傾向にあることが分かります。2005年年央の5000万件から最近時点では4000万件に減少傾向とも読めなくもありません。実は、私が最初にブログを開設したのが2005年8月でしたから、新規記事の投稿数においてはピークのころだったかもしれません。その後は熱が冷めたのか、記事数としては減少傾向ですし、同じように、記事件数あたりの画像掲載数も減少して来ています。そろそろ、ブログもピークを過ぎて下火に向かうのかもしれません。

スパムブログの内容

この減少傾向のひとつの原因と考えられるのが、上のグラフの通り、スパムブログの存在です。2008年1月現在のアクティブ・ブログについて調査したところ、ブログ数では12%が スパムブログに該当するとの結果で、ブログが8つあればうち1つはスパムのトラックバック発信を目的とするブログのようです。上のグラフの通り、アダルトや出会い系から販売や収入を勧誘する方の割合が高いようです。私も経済評論の日記に分類するようなエントリーを書くと、いくつかスパムが送られて来たりしますので、適当に、キーワードでブロックをかけたりしています。

今夜は、何となく、ヒマにしていて、ネットで目についたブログの話題を取り上げて見ました。

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2008年7月 9日 (水)

地球環境保護にリバタリアンはどう答えるか?

今日も、朝から梅雨空でした。雨が降りそうな感じはしませんでしたが、雲が広がって陽射しはありませんでした。陽射しがないにしては、やっぱり蒸し暑いです。

CO2 emissions

北海道での洞爺湖サミットが終了しました。最重要の議題のひとつが地球環境問題であったことは衆目の一致するところかと思います。今までのメディアの論調では、夕刊トップに「合意できず」と見出しを付けたのは東京新聞くらいのもので、他の全国紙はまずまずの成果を上げたが、これからの実行が大切、といったところでしょうか。もっとも、私の知り合いの記者さんが、「今まで、メディアがサミットを失敗だったと評価したことはなく、一定の成功を認めて、今後の課題を上げる段で独自性を打ち出す」と言っていたのを聞いたこともあり、標準的な評価と報道だったのかもしれません。なお、上のグラフは今日の "Financial Times" から引用しています。
『最強の経済学者 ミルトン・フリードマン』地球環境問題の解決に関しては市場は失敗していると私が考えていることは、従来からこのブログでも表明して来ましたが、興味があるのはリバタリアンは地球環境問題をどのように解決しようとしているか、という点です。と言うのも、実は、最近、左の画像に示した『最強の経済学者 ミルトン・フリードマン』を読んだからです。どうでもいいことですが、丸の内オアゾにある丸善の丸の内本店で買った時にレシートを見て、この本は経済ではなくて文芸に分類されていることを知りました。丸善独自の分類なのか、それとも、ISBN 番号に基づく汎用的な分類なのかはよく知りませんが、ともかく、文芸に分類されていたことを記憶しています。フリードマン教授自身は2006年11月17日付けのエントリーで取り上げたように、2006年11月に亡くなっていますから、地球環境問題が現在のように大きく取り上げられる前だったような気がしないでもなく、私の不勉強のせいかもしれませんが、リバタリアンの代表選手とも言えるフリードマン教授が地球環境問題に関して人口に膾炙するような発言をしたような記憶はありません。もしも、フリードマン教授が存命であったなら、どのような発言が聞けるのか、とっても興味深いと私は考えています。私の勝手な推測では、6月20日付けのエントリーに書いたように、上のグラフにあるような過去の温室効果ガスの排出ストックは埋没原価 (sunk cost) ですから、先行きだけを見て中国などの新興国を含めて削減目標を設定し、同時に、排出権取引市場を整備するといった、現在考えられているのと大差ない枠組み作りになってしまうような気がしないでもありません。

機械受注統計の推移

最後に、大きく話題が変わるんですが、本日、内閣府から今年5月の機械受注統計が発表されました。上のグラフの通りです。青い折れ線グラフがコアと呼ばれる電力と船舶を除いた民需で、赤いラインはその6ヶ月後方移動平均です。左軸の単位は兆円で、影を付けた部分は景気後退期です。コア機械受注の動向を見ると、4月前月比+5.5%増の後、5月は10.4%増の1兆1,146億円となりました。市場のコンセンサスはゼロ近傍でしたので、単月とは言え、かなり強い数字だと受け止められています。赤いラインのトレンドを見ても、2006年中に一度ピークを付けたように見えますが、その後、持ち直して来ており、さらに、最近時点の4-6月期は予測を含めてまた下がると言った、かなり複雑な動きを示しています。しかし、2次QEとともに先月の機械受注を取り上げた6月11日付けのエントリーの結論と変わりないんですが、基本的には、少なくとも今年度2008年度の設備投資はそれほど強くないように私は見通しています。

今夜は、少し毛色の違った話題を取り上げてみました。前半のリバタリンが地球環境問題をどう考えるかについて、ご見識をお持ちの方からのコメントを大いに歓迎します。

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2008年7月 8日 (火)

オールスターのファン投票結果に見る人気と実力

今日は、朝から梅雨空でした。時折、細かい雨が降るくらいで、報道されているような大雨には私は遭遇しませんでした。気温は昨日よりも下がったように感じましたが、やっぱり、出歩くと蒸し暑いです。

プロ野球オールスターのファン投票結果

昨日、プロ野球のオールスター戦のファン投票結果が発表されました。上の通りです。マツダオールスターゲーム 2008 MSN 公式サイトから引用しています。藤川投手が「勝負するなら、ホームランを打たれたいです」と珍目標を掲げた、なんてニッカンスポーツのサイトで報じられていたりします。
実は、阪神以外の他球団では知らない選手も入っていたりするんですが、まあ、基本的にはタイガースの選手を中心に見ておきたいと思います。まず、当然のように、久保田投手と藤川投手が中継ぎと抑えのピッチャーのトップです。順当というほかありません。キャッチャーでは矢野捕手が2位につけています。一塁の新井内野手、外野の金本選手なんかも順当なところかと思います。赤星外野手も外野3人枠の4位につけていますから、まずまず、このあたりかという気がします。入っていない方では、セカンドとサードに阪神選手が見当たらないのも、見方によれば順当なのかもしれません。
意外だったのがタイガースの先発ピッチャーの中で岩田投手が唯一10位以内の4位に入っていることで、安藤投手が腰痛で戦線離脱していたのもありますが、岩田投手の人気のほどが伺われます。また、ショートの鳥谷内野手が4位になっていることです。鳥谷内野手の打率は0.313で、遊撃手としてはヤクルトの宮本選手の後塵を拝しているとはいえ、ホームランなどの長打力や打点では宮本選手を上回っており、互角の勝負と見たんですが、打撃20傑にも入っていなくて、圧倒的に実力で下回るジャイアンツの坂本選手がトップとは不可解な限りです。プロ野球も一種のショービジネスですから、実力とともに人気も重要な要素であることは認識していますし、阪神球団はその面で少し不熱心なのかもしれませんが、それにしても、この結果では鳥谷内野手がかわいそうな気がします。
個別のポジションではなく全体として見て、投手が先発の他に中継ぎと抑えの3人制ですから11人のうち、球団別に見て、首位を独走する我がタイガースが4人は順当なところですが、何と、2位の中日が入っていません。最近時点で調子を落としている選手が多くて、その結果として、我がタイガースとの差が広がっているのかもしれません。ジャイアンツが阿部捕手だけの1人、東京ヤクルトも青木外野手だけの1人、横浜も村田内野手だけの1人、多いのが広島で、先発投手、セカンド、外野手と3人入っています。スポンサーのマツダのご威光が反映されているのかもしれないと思わないでもありません。

今夜も我が阪神は甲子園でジャイアンツ相手に順調に試合を進めているようです。先発投手部門で阪神トップだった岩田投手が、ポロポロ打たれながらも併殺で切り抜けて無得点に抑え、打線は先制・中押しと相変わらず活発に得点しているようです。しかし、なぜか、今夜もテレビ中継がありません。残念。平野選手の選手登録もなされたようで、さらに快進撃が続く予感がします。後は、私のごひいきの今岡内野手の復調を待つばかりです。
やっぱり、今夜も、
がんばれタイガース!

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2008年7月 7日 (月)

政府の規模と経済パフォーマンス

今日は、梅雨に逆戻りしたようで、朝からが降りました。昼前くらいから止んで、その後も、細かい雨が降ったり止んだりになりました。陽射しがなかったため気温は上がらなかったんですが、この季節ですから動くと汗をかいて蒸し暑かったです。

政府の規模と経済パフォーマンスについては、直感的に考えられなくもないんですが、キチンと計量的に処理すると、より正確な評価が可能になります。当然です。最近、私が見かけた中で、セントルイス連銀の "Review Part II""Inflation and the Size of Government" と題するペーパーが発表されています。米国の連邦準備制度理事会 (FED) のシニアエコノミストのハン博士とシカゴ大学のマリガン教授の共著となっています。英米のデータを中心に、18世紀からの超長期時系列データを用いて、Ramsey theory に基づくモデルが fail することを実証し、戦時にはともかく、"The authors find a weak positive peacetime timeseries correlation between inflation and the size of government and a negative cross-country correlation of inflation with non-defense spending." と結論付けています。要するに、平時における政府の規模とインフレの相関は、各国別で見ると正の相関ながら小さく、各国横断的に見ると負の相関になっているらしいです。もちろん、税制にも大きく依存しますが、これはこれでひとつの統計的なエビデンスだという気がします。

なお、我が日本では、政府の規模と経済成長率には負の相関があることがリポートされています。かなり前のペーパーですが、内閣府の経済社会総合研究所からディスカッション・ペーパーが出ていて、「政府の規模と経済成長-先進国パネル分析に見る負の相関の再検証-」において、茂呂君がOECD諸国を対象にしたパネルデータの回帰分析を行い、政府の規模と経済成長の間に統計的に有意な負の相関があることを実証しています。何となく、実感とも整合的であるような気がしないでもありません。

七夕の月曜日に、北海道で洞爺湖サミットが始まり、政府の中でも忙しくしている部局と、福田総理大臣が東京にいなくなって一気にヒマになった部局とがあるんではないかと、私ながらに想像していますが、最近、見かけたペーパーからの政府の規模と経済パフォーマンスに関する感想でした。官庁エコノミストとしては気にかかる分野だったりします。

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2008年7月 6日 (日)

ワッハッハで横浜も3タテして6連勝

私はまったく今日はテレビ中継を見ていないので皆目見当がつかないんですが、金本外野手の逆転ツーランで大逆転勝ちみたいですね。我が家のヒマ潰しの人生ゲームを終えて、8回ウラにウィリアムス投手が打ち込まれたようで、3点入れられたのをネットで確認した時は、さすがに負けを覚悟したんですが、我がタイガースの勢いは止まりません。

よくわけが分からないながらも、
がんばれタイガース!

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ヒマな日曜日の午後に人生ゲームで遊ぶ

私だけでなく、一家そろってヒマなものですから、結局、午後から人生ゲームで遊びます。久し振りに私がトップになりました。途中まで、下の子が快調に飛ばしていたんですが、職を失ってフリーターになったり、家を売ったりと、ホントの人生でも転落の転機になるような出来事が起こり、結局、3位で終わりました。本人も「転落人生」と呼んでいたリしました。大げさに言えば、人生のなんたるかを学び取って欲しい気がします。

人生ゲームをする子供達

我が家ではお正月だけでなく、月に1回くらい、かなりハイペースに人生ゲームです。

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週末のスポーツの軽い話題

今日も、朝からいいお天気で、気温も上がって蒸し暑いです。天気予報によれば、関東地方では週半ばまで雨が降りやすいものの、その後、今週中にも梅雨明けではないかとのことでした。

今日の日曜日はゆったり過ごします。CATVのチャンネルの関係でプロ野球中継が見られないのが残念ですが、軽くスポーツの話題です。ウィンブルドン女子シングルス決勝ではウィリアムス姉妹対決を姉のビーナス・ウィリアムス選手が制して2年連続5度目の芝の女王です。男子シングルスの決勝はこれからです、いつもの常連みたいになってしまいましたが、フェデラー選手ととナダル選手の対決です。でも、日本に限らず、世界で注目を集めたのは世界ランク133位の中国の鄭潔選手の活躍ではないでしょうか。3回戦で第1シードで全仏の覇者イバノビッチ選手を破る番狂わせを演じてから、セミファイナルまで勝ち進みました。セリーナ・ウィリアムス選手に敗れはしましたが、第2セットはタイブレークにもつれ込みましたし、アジア女子でグランドスラム大会シングルスでのセミファイナル進出は、1996年ウィンブルドン選手権の伊達選手以来だそうで、かなりの快挙だと思います。よく知らないんですが、中国人選手では初めてではないんでしょうか。まったく関係ないことで、私の知り合いで、鄭潔選手のコーチがご主人だと聞いて結婚していることを知り、とっても残念がっている人がいましたが、私はそれほどとは思いません。
次はやっぱり、タイガースです。甲子園で中日に3連勝してから、この週末は少し息切れするんではないかと私は思わないでもなかったんですが、相手が相手ですし、横浜スタジアムでも快調に連勝を伸ばしています。私はよく知らなかったんですが、日本ハムから移籍した金村投手も中日戦でいい出来でしたし、腰痛から復帰した安藤投手なんか、横浜戦の登板なんて、ある意味で、お気楽な場面ではなかったかとすら思えるほどです。ボロ勝ちの続いた一昨日と昨日の横浜戦では JFK を投入するまでもありませんでした。余り熱心なファンではない私のよく知らないピッチャーが最後の方を投げていた気がします。打線は連日の先制打の矢野捕手を中心に打ち出し始めていて、毎日のように2桁安打を続けていますし、林外野手が5番に定着してガンガン打っています。引き続き、新井内野手や金本外野手は言うに及ばず、鳥谷遊撃手を含めた中軸は好調を維持していますし、昨日は関本内野手も長打を放ちました。昨日なんか赤星選手をスタメンから外して少し休ませる余裕すらあります。2位中日に10.5ゲーム差ですから、マジックが点灯するのも間近かという気がしないでもありません。来月は北京オリンピックに何人か送り出して、高校野球の間の死のロードもありますから、現在の好調を維持しているうちに勝てるだけ勝っておくのもひとつの考え方です。しかも、横浜戦では JFK の投入なしにこれが出来そうなんですから、やっぱり、お気楽そうな気がしないでもありません。でも、今岡選手には早く復帰して欲しいです。

ウィンブルドンの全英オープンの話題も取り上げましたが、一応、このエントリーは阪神タイガースの日記に分類しておきます。
1時半の試合開始ですから、まだ始まっていませんが、今日の先発は昨年の新人王の上園投手だそうです。テレビで見られませんからネットで試合情報をフォローします。今日の横浜戦も、
がんばれタイガース!

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2008年7月 5日 (土)

「“PHOTO IS”10,000人の写真展2008」に行く

今日も、朝からいいお天気で、気温も上がって蒸し暑かったです。昨日のエントリーまでは「梅雨の中休み」との表現を取っていたんですが、四国では梅雨明けだそうですし、そろそろ、本格的な夏に向かうのかもしれません。

“PHOTO IS”10,000人の写真展2008今日は、午後から東京ミッドタウンで開催されている「“PHOTO IS”10,000人の写真展2008」に行きました。去年か一昨年かは忘れましたが、同じような時期に恵比寿ガーデンプレイスで開催していたような気がします。私は今年も参加しませんでした。応募者全員の写真が展示されるのは魅力的な気もするんですが、基本的には、銀塩写真のよさを見直そうというコンセプトに立脚し、フジフィルムのプリント店で参加用の台紙を購入した上で、四つ切や六つ切りの大きなサイズにプリントしなければならないので、我が家のデジカメの解像度ではムリだろうと思ったからです。
さて、東京ミッドタウンのいつものフジフィルムのコーナーに行くと、この写真展は東京ミッドタウン地下のホールで開催されていると言われてしまい、一度外に出なければなりませんでした。私が時々使っている地下のセブン・イレブンの少し先でした。入場は無料でした。東京ミッドタウンで始まって、全国何か所かで持回り開催されるそうです。左上のロゴ画像がリンクになっていますので、ホームページで開催地が確認できます。まず、入口で展示を見て回る順路の入ったホールの見取り図をくれます。東京から始まって首都圏の出展者の写真が都道府県ごとに氏名の50音順に展示されています。私の印象では書道展と同じ方式で、「10,000人」と銘打っているくらいですから、全部を見ようとすれば1日では終わらない可能性もあり、自分の作品、あるいは、自分の知っている人の作品だけを集中的に鑑賞する方式が適当な気がします。
一般参加者の作品の他に、著名人の作品もあります。フジフィルムのコマーシャルに出演している人が中心だったりします。そういう意味で、堀北真希さんの "memories of my life" と題した青空の写真、蛯原友里さんの「世界遺産」と題したロンドン・グリニッジのペインテッドホールなんかが私の目に付きました。また、写真家協会から小学校に撮影指導に行ったようで、その際に小学生が撮った写真もほのぼのとした感慨がありました。中でも、与論島の与論小学校なんて地の利を生かして、そのあたりの風景を写真に撮るだけで、かなり絵になるような気がするんですが、そういった安直な写真は少なかったような気がします。

帰りがけに、写真館の団体がアンケートを取っていて、「写真館で写真を撮ったことがあるか?」とか、「どんな機会に写真館で写真を撮りたいか?」などの設問に回答するとくじ引きで商品がもらえます。私はハズレだったので、ラムネ菓子をもらいました。

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2008年7月 4日 (金)

海外経済の動向 - 欧州中央銀行の利上げと米国の雇用統計

今日も、梅雨の中休みで、朝からいいお天気で、気温も上がって蒸し暑かったです。今日はおにいちゃんか、下の子か、どちらか忘れましたが、小学校でプールだったように思います。

日米欧の政策金利の推移

まず、欧州中央銀行 (ECB) が利上げしました。4.0%の政策金利を25ベーシス引き上げて4.25%とし来週7月9日からの実施です。上のグラフの通り、日米との金利差が広がりました。なお、上のグラフは朝日新聞のサイトから引用しています。
評価の難しい利上げだという気がします。各国政策当局は常に国内経済情勢に責任を持つという観点からは理解できますが、私の印象からすれば、少し部分均衡志向だという気がしないでもありません。ユーロ金利の引上げですから、金利差を考えれば、ユーロ高とドル安・円安となることは容易に予想されます。ドル建てでマーケットが立っている原油市況はこれに反応して、さらに価格上昇を強めることも明らかです。実際、NY の原油市況はバレル当たり145ドルに乗せました。そこを為替でシャットアウトするとの意向なのかもしれませんが、私の目から見て効果は疑問です。域内景気への悪影響も考えられます。これらの事情を総合してなんでしょうが、記者会見でトリシエ総裁は次回の利上げについて、"I have bo bias." として言及しませんでした。
日米の経済環境からすれば、もう少し先、おそらく、年末から来年くらいにかけてかもしれませんが、商品市況の上昇抑制のために、今回の ECB のような単独利上げよりも、日米欧での協調利上げが模索されてもいい時期が来るかもしれないと私は考えています。少なくとも、現在の商品市況への政策割当ては、備蓄とかの実物的な対応よりも、金融面での対応の方が効果的であろうと私は考えています。もしも、私の考えが正しければ、各国の景気状況を判断しながら、日米欧が商品市況の抑制のために協調利上げを行う可能性は、控えめに言っても、ゼロではないと思います。米国では大統領選挙と新しい大統領の就任式が控えていますが、中央銀行の独立性を発揮する場面かもしれません。

The Labor Picture in June

次に、米国の6月の雇用統計が昨夜発表されました。いつもは金曜日なんですが、今日の7月4日が倍国の独立記念日のお休みですから、日本時間の昨夜に発表されました。米国の独立記念日は大きなお祭りみたいなもので、前日の7月3日を半ドンにする企業や個人もめずらしくなく、全国各地で大騒ぎします。さて、本題に戻って、6月の非農業雇用者数は▲6.2万人減、失業率は5月と変わらずで5.5%でした。雇用者数は6カ月連続の減少となります。上の画像はいつもの "New York Times" の "The Labor Picture in June" です。

米国非農業雇用者数と失業率の推移

一応、非農業雇用者数と失業率の推移を上のグラフに示します。すべて季節調整値で、赤い折れ線グラフが左目盛りの千人単位の非農業雇用者の前月差増減数、青いラインが右目盛りのパーセント単位の失業率です。影を付けた部分は景気後退期です。実は、市場の事前コンセンサスでは雇用者の減少は▲5.5万人減から▲6.0万人減くらいで、失業率は0.1%ポイント改善するんではないかと見られていましたので、予想のレンジ内とはいえ、やや下限に近かった気がします。しかし、一昨日は、「この市場コンセンサスよりも、もっと悪いんではないか」との懸念からNYダウ平均株価が下げましたので、昨日は統計結果が悪かったにもかかわらず株価が上昇するという現象が起きました。しかし、余談ながら、我が国の東証の日経平均株価は今日も下げて、12日続落となりました。いったい、何年振りなのか私はよく知らなかったんですが、日経新聞のサイトで見かけたところによると、15日続落した1954年4月2-5月18日以来、54年振りだそうです。私が生まれるはるか前の世界だったりします。
米国の景気については、足元ですでに景気後退局面に入っていることがほぼ確実だと私は考えていますが、いまだに NBER からは何の発表もありません。いくら情報に疎い私でも、NBER が景気後退を認定すれば何らかの方法で知るハズです。4月7日付けのエントリーで書いた通り、NBER の所長 (President) には既に MIT のポテルバ教授が就任していて、少なくとも、前の所長だったフェスドスタイン教授はリセッションの可能性を何回か強く示唆していましたが、新しい所長の下で方針が変更されたとも思えません。マコトしやかに、GDP 統計がマイナスを付けるのを待っていると解説している人もいるそうですが、私には疑問です。先日、発表された ISM 製造業 PMI が50を上回ったこともあり、判断が慎重になっている可能性があることは考えられます。上のグラフに見られる通り、雇用者数の減少幅も過去のリセッションに比べてまだ大きくなっていません。繰返しになりますが、3月25日付けのエントリーで紹介した CFNAI は2月以降も▲1.0を下回り続けていますので、米国が足元で景気後退に入っているのはほぼ私は確実だと考えていますが、5月の CFNAI が少し改善したことも事実で、NBER の公式の認定には今少し時間がかかるのかもしれません。

可能性の問題ではあるものの、私はすでに米国は足元で景気後退局面に入っている一方で、日本は景気後退局面を回避できる可能性がまだ残されていると考えていましたが、米国も景気後退を回避できる可能性が残されているのかもしれません。

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2008年7月 3日 (木)

甲子園で中日を3タテして、いよいよ独走態勢へ!

ワーッハッハで中日を3タテです。
今夜は7時からの「ポケモン」の放送が1時間スペシャルで、8時近くまでチャンネル権を確保できず、8時からちょっとだけテレビ観戦の後、すぐに長風呂となります。8時45分ころにお風呂から上がって、下の子にせがまれて将棋の相手をします。それにしても、親バカのひいき目ではありますが、下の子は将棋が強くなりました。少し前までは、私が負けていたのに変わりはないものの、私が飛車角の2枚落ちで、30分以上も勝負に時間を費やしていましたが、今では、飛車だけの1枚落ちなのに15分ほどで負けてしまいます。それはともかく、下の子と将棋を指している間に、よく事情は分からないものの、8回ウラの攻撃で塁が埋まって矢野選手の勝越しタイムリーでした。ついでに、よく観察しなかったんですが、投手のボークもあったようで、アッという間の3点差です。9回は藤川投手が出て来れば文句なしの勝ちパターンです。ツーアウトからの2本のヒットはサービス以外の何物でもありません。
私の目から見ると、昨夜、年甲斐もなく興奮して虎ブロをアップしましたが、昨日のゲームの葛城選手の勢いがそのまま続いているような気がします。確か、7月は中日と3連戦が3回、計9戦組まれていたと記憶しているんですが、いきなりの甲子園での3連戦3連勝ですから、このまま独走態勢に入りそうな勢いです。さきほどのエントリーではないんですが、これで、北京オリンピック組を安心して送り出せるような気がします。

何はともあれ、
がんばれタイガース!

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経済学で北京オリンピックのメダル獲得数を予想する

今日も、梅雨の中休みで、朝からが多かったものの、雨は降りませんでした。気温は昨日ほど上がりませんでしたが、蒸し暑いことに変わりありません。でも、今週からオフィスにエアコンが入ったので執務環境は格段に向上したように思います。

さて、昨夜のエントリーでは商品市況高騰の影響について取り上げましたが、今夜のエントリーはグッとくだけた話題で、今夏の北京オリンピックの国別メダル獲得に関する予想です。もっとも、私が予想しているわけではなく、予想しているリポートのご紹介です。ただし、タイトルにしたように、経済学というよりは、実は、統計学なんでしょうが、まあ、官庁エコノミストを自称する管理者のブログですから、やや我田引水的に大げさな表現にしてあります。もちろん、私だけの勝手な思い込みではなく、今夜取り上げたリポートどちらにも「経済モデル」に基づく予想であることが強調されている事実も指摘しておきたいと思います。従って、今夜のエントリーは「経済評論の日記」に分類しています。まあ、趣味の問題だったりします。

Model estimates of Beijing 2008 Olympics

まず、会計事務所の PricewaterhouseCoopers から国別のメダル獲得数だけで、金銀銅の別などの詳細は分かりませんが、6月23日に "Economic Briefing Paper: Modelling Olympic Performance" と称するリポートが発表されています。上の表の通りです。タイトルとともに、リポートの左上には麗々しく "Economics" と銘打ってあります。私が今夜のエントリーのタイトルを決めたゆえんでもあります。このリポートによれば、獲得メダル数をモデル化した要素として、以下の5点が上げられています。

  • population
  • average income levels (measured by GDP per capita at PPP exchange rates)
  • whether the country was previously part of the former Soviet/communist bloc (including Cuba and China)
  • whether the country is the host nation
  • medal shares in the previous Olympic Games

モデルの中身は当然のようにブラックボックスになっているんですが、5番目に開催国要因が加えられているように、今回の北京オリンピックでは主催国の地の利を活かして中国がメダル獲得数を25増やして、逆に、16減らす米国を抜いてトップに躍り出るとの予想になっています。我が日本は前回のアテネから3減らして34との結果を予想しています。

Beijing 2008 Johnson-Ali predictions

次に、コロラド大学のジョンソン准教授の予想もネットにアップされています。"Predictions for medal counts at Beijing Olympics, based on economic model" と題するリポートです。上の表の通りです。総メダル獲得数だけでなく、金メダルの獲得数予想もあったりします。コチラも麗々しく "based on economic model" との表現がタイトルに踊っています。なお、ジョンソン准教授のオリンピック関連サイトには詳細なデータを含む Excel ファイルがアップされています。過去の実績もこのサイトにあり、トリノの冬季オリンピックの相関は0.93、前回のアテネの夏期オリンピックの相関は0.94と報告されています。上の表の通り、ジョンソン准教授の予想はメダル数で米国がトップをキープし、総獲得メダルが103、うち、金メダルが33との予想です。開催国の中国は総メダル数で89、うち、金メダルが44と、金メダルではトップなんですが、総獲得メダル数では米国とロシアの後塵を拝するとの結果になっています。我が日本は総メダル数37、うち、金メダル16とアテネとまったく同じ結果が予想されています。

さて、来月からの北京オリンピックの結果はどうなりますことやら。
何はともあれ、
がんばれニッポン!

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2008年7月 2日 (水)

サヨナラ勝ちで久し振りに虎ブロ!

とってもいいサヨナラ勝ちでした。とっても久し振りの虎ブロです。
ヒーロー・インタビューの最初の葛城選手の雄叫びを聞いてから入浴してしまいましたので、いつもの長風呂の後のアップになって遅くなりました。
まあ、いい試合でした。先発の岩田投手は昨年みたいな不安定な調子で、どうもピリッとしませんでしたが、5回まで2失点ですから、まずまず先発投手としては合格と言えます。もっとも、少し攻撃陣がリズムに乗りづらいピッチングだったかもしれません。6回に登板した江草投手がホームランを食らって同点にされたわけですが、ホームランのたった一球を除けば、かなりいい球が来ていた気がします。防御率もまだまだ1点台ですし、今日の一発を見ても、まだまだ、岩田投手のピッチングよりも私は高く評価しています。久保田投手とウィリアムス投手も結果的には昨夜も今夜も無失点ですから、調子を上げて来ているように見受けられます。中盤から終盤にかけては、かなり拮抗した試合展開で、お互いにランナーを出し合って、我々のような阪神ファンからすればタイガースが押しているように見え、逆の立場ならドラゴンズが押しているように見えるんではないかと思ってしまいました。
私の見立てでは、最後に雌雄を決したのは、第1に、監督の采配ではないかと思います。延長も頭に入れて、岩瀬投手を温存した中日の落合監督に対して、9回表に藤川投手まで使い切った上に、9回ウラの攻撃では岩瀬投手が出てくる前に次々と左打者を代打に起用したことに見られるように、ケレン味のない岡田監督の采配が上手を行ったような気がしないでもありません。葛城選手の前の代打の桧山選手の当たりも、打った瞬間はホームランに見えなくもありませんでした。もちろん、期待に応えて最後を締めた葛城選手はヒーローとしての資格十分であることは言うまでもありません。ツーアウトのカウント2-3で1塁ランナーはスタートを切っていますし、外野手の頭を越せば文句なくサヨナラです。第2に、エラーでしょうか。3回ウラの阪神の攻撃なんか、8番打者を敬遠して注文通りピッチャーに内野ゴロを打たせたのにエラーされたんでは、やや年配の部に属する山本投手には気の毒だったように見受けられました。9回もランナーが入れ替わりはしましたが、サヨナラのホームに帰って来たのは内野ゴロのエラーのランナーでした。直接・間接に中日のエラーが阪神の全4得点のうちの2得点に結びついたんですから、今夜のような競った試合を落とすのは当然のような気がします。

それにしても、交流戦は2連戦の飛び飛びの日程で、どうも、私がブログを書くのとタイミングが合わなくて、冒頭の繰返しになりますが、とっても久し振りの虎ブロでした。

もちろん、明日も、
がんばれタイガース!

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国際決済銀行 (BIS) と国際通貨基金 (IMF) のリポートから

今日も、梅雨の中休みで、朝からいいお天気でした。昨日は午後から気温が上がったんですが、今日は朝から蒸し暑かったような気がします。

今週になって、国際決済銀行 (BIS) と国際通貨基金 (IMF) から国際的な商品市況の高騰に関するリポートが出ました。もっとも、BIS の方は年次報告ですので包括的なリポートなんですが、石油や食料価格についての分析も豊富に含まれているといったところで、IMF の方はモロに正面から取り組んでいる印象があります。まず、BIS と IMF のリポートへのリンクを張っておきます。リポートの PDF ファイルへのリンクもこちらに示されています。もちろん、すべて英語のサイトですので念のため。

Global macroeconomic situation

アルファベット順に従ったというわけでもないんですが、まず、国際決済銀行 (BIS) の年次報告の第2章 "The global economy" を取り上げると、先進国の今年の経済見通しは上のグラフの通りです。米国や世界経済全体とともに、新興諸国の成長率も2008年には下がる見通しとなっています。ヘッドラインのインフレはかなり急激に上昇するものの、食料とエネルギーを除けば、まずまず安定圏内で推移するように見えます。ヘッドラインのインフレの上昇もあって、実質金利はかなり下がり、特に、米国ではマイナスに突入する可能性が示唆されています。
BIS リポートはインフレの分析について、興味深い見方を示しています。まず、かつては、食料やエネルギーの供給ショックが短期間で終わっていたことから、ヘッドラインのインフレはむしろコアインフレに遅れるケースが目立ったんですが、現在の商品市況の高騰はこの関係を弱めており、コアインフレの予測パフォーマンスは悪化していることが12ヶ月の外挿シミュレーションの RMSE で示されています。加盟各国の中央銀行に対して、コアインフレとともにヘッドラインのインフレを警戒するように示唆しているように私には読めました。しかし、日本だけは予測誤差が小さいままで例外的な存在としていますが、これは、日本のコアインフレがエネルギーを含んでいるためであると結論しています。当然です。

Inflation pass-through

続いて、商品価格から輸入物価、そして、輸入物価から国内のコアインフレに対するパススルーが1970-80年代と1990年以降に期間を分割して計測されています。上の表の通りです。商品価格から輸入物価へのパススルーは統計的に有意ですが、パススルーの比率は大きくなく、特に、最近時点になって低下しています。さらに、輸入物価からコアインフレへのパススルーは1980-70年代では統計的に有意だったものが、1990年以降では統計的な有意性を失っていますし、係数も小さくなっていることが読み取れます。これについて、BIS のリポートでは、海外の輸出業者の方で輸出先の国内通貨建てで価格を固定したり、あるいは、利益を圧縮したりする動きが見られることに加えて、生産性の上昇などを要因として上げています。これは私には興味深い分析だったと思います。

Shares of Food, Bevarages, and Fuel in Household Expenditure, 2007

次に、国際通貨基金 (IMF) から "Food and Fuel Prices - Recent Developments, Macroeconomic Impact, and Policy Responses" というタイトルで、正面から最近の商品価格高騰に取り組んだリポートが公表されています。かつて、私がこのブログで主張した「広義エンゲル係数」に沿って、食料・飲料・燃料が家計支出に占める比率の地図を公表してくれています。上の図の通りです。 IMF に私のブログを見てくれているエコノミストがいるのかもしれません。冗談は別にして、IMF らしく、外貨準備への影響を分析したりしている一方で、いくつか、マクロ経済政策の方向性を示す分析もあります。基本的には商品市況の動向を受け入れるというラインではないかと私は考えています。やや恣意的になるかもしれませんが、財政政策と金融政策について結論めいた部分をリポートから引用すると以下の通りです。かなり長くて申し訳ありません。

The Nature and Cost of Fiscal Responses to Higher Food and Fuel Prices
Increasing world prices for fuel and food products present a difficult policy challenge for governments. Passing these price increases on to consumers results in a decrease in real incomes for households, especially poor households. On the other hand, passing through the higher prices encourages producers to increase supply and consumers to decrease demand, thus either reducing the adverse impact on the current account balance of net importing countries or increasing the gains to net exporting countries. Without the increases in supply and reductions in demand engendered by full pass-through of world prices, the upward pressure on world prices will be exacerbated.
Monetary and Exchange Rate Policy
In many, but far from all, countries, monetary policy has responded to the risks of rising inflation. The main concern is that the first-round effects of higher food and fuel prices on inflation should not be allowed to spill over to higher prices of other goods and services (second-round effects). Such risks are particularly elevated for countries where domestic demand has been growing strongly because of loose financial policies. In light of this, recent actions to tighten monetary policy in several countries which already had elevated levels of inflation before the recent acceleration of international food and fuel prices (e.g., Ghana, Egypt, Pakistan, and Sri Lanka) represent attempts to bolster the credibility of the monetary authorities and prevent higher inflation from becoming entrenched. In several cases, monetary policy should be tightened further.
赤の大きなフォントにしたところがポイントだと私は考えています。なお、国際商品市況の価格をパススルーなんて、日本なんかでは当たり前ではないかと考えられるんですが、財政政策の引用には前段があり、アジアの新興国なんかが当てはまっていて、エネルギーや食料に補助金を出している国が少なくありません。そういった補助金で財政的に国内価格を操作するんではなく、国際商品市況で決まった価格を full pass-through して、価格上昇を受け入れることが、ひいては、国内供給の増加や需要の低減につながる、との見解です。もちろん、最初に書いている通り、a difficult policy challenge であることは IMF も認識しているようです。金融政策については単純明快で、要するに引締め策が必要との立場のようです。

このブログでも書きましたが、国際商品市況が先行き経済動向の重要な部分を占めるようになり、経済見通しはエコノミストよりも商品アナリストに聞くような経済状況になっています。私も不慣れな分野ながら、もう少し勉強したいと思います。

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2008年7月 1日 (火)

日銀短観から何を読み取るか?

今日も、梅雨の中休みで、この季節にしては、まずまずいいお天気でした。朝のうちは雲が多かったんですが、午後からは陽射しもあって蒸し暑かったです。

日銀短観の景況判断DI

さて、少し帰宅が遅くなった昨夜のいい加減なエントリーから、今日は経済評論の日記に戻ります。本日、日銀から6月調査の短観が発表されました。ヘッドラインを含む記事をいつもの日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す景況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス5と、3月の前回調査から6ポイント低下した。原油などエネルギー・原材料価格の高騰が響き、3四半期連続で悪化した。大企業製造業は今年度の経常利益が7年ぶりの減益になると見込んでいる。設備投資計画は伸びが鈍化し、景気の足取りはいっそう弱まっている。
企業の業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。景気への影響が大きい大企業製造業のDIは、2003年9月調査以来、4年9カ月ぶりの低水準となった。
大企業製造業で景況感が悪化したのは全15業種のうち10業種。自動車や石油・石炭製品、鉄鋼、造船・重機等の4業種は、世界的な原材料価格の高騰が響き、業況判断DIが前回調査より10ポイント以上、低下した。3カ月先の見通しでは自動車や石油・石炭製品、一般機械など8業種が悪化を予想、大企業製造業全体のDIは今回より1ポイント低下する。

引用した記事にある通り、ヘッドラインの大企業製造業の業況判断DIは3月調査から▲6ポイント低下して+5となりました。引用した記事にある通り、3四半期連続の悪化となります。しかし、市場の事前コンセンサスの上限から少し上回る程度でしたし、先行きも▲1ポイントの低下にとどまりますから、底堅いと評価する向きもあります。ほかにポジティブな評価を探すと、この業況判断DIとともに、設備投資も、土地を除きソフトウェアを含むベースで2008年度計画で+3.5%増と、3月調査から+3.9%ポイント上方修正されプラスとなりました。しかし、他方で、ネガティブな評価を受けそうな項目を上げると、国内需給判断DIはマイナス圏内で横ばいを続けていますし、価格判断DIでは仕入価格が販売価格に比べて大幅に上昇となっています。特に、中堅企業や中小企業に比べて水準は高いものの、大企業では経常利益率の低下幅が大きくなっています。要するに、かなり強弱マチマチの入り乱れた結果と私には見受けられました。
別の指標では、生産要素の設備と雇用に関して、生産・営業用設備判断DIが大企業でもゼロになりました。来期は▲1と不足感は根強いものの、不足を表すマイナスからゼロになったのは象徴的な意味がると受け止める向きもあるかもしれません。また、雇用判断DIもまだ人手不足を示すマイナスが続いているものの、マイナス幅はかなり縮小して来ており、経常収益率の低下のしわ寄せが雇用に及ぶ可能性も排除できませんし、先日、このブログでも取り上げた新規求人数の減少傾向と考え合わせると、やや労働指標は弱含み傾向にあると考えられなくもありません。
今回の日銀短観では市場に大きなサプライズはなかったんですが、私のサプライズは事業計画の前提となっている想定為替レートが大きく円高に振れたことです。3月調査では対ドルレートが109.21円だったんですが、6月調査では102.74円になりました。大企業製造業だけを対象にした調査ですから、一定の信頼性を保っていると考えられますが、商品市況が高騰して原材料高が続いているだけに、輸出採算に対して厳しめに見ているつもりが、逆に、原材料価格には甘めになっている可能性もあり、今後の動向が注目されます。

業況判断DIが3四半期連続で悪化したことをトップに据えたメディアの報道は弱気一色なんですが、私を含めた多くのエコノミストの見方は報道ほど弱くはないような気がしないでもありません。でも、「もはや景気拡大局面にはない」と題するリポートを送って来た同業者エコノミストもいましたし、エコノミスト各個人の持つバイアスが今回の日銀短観の評価に現れたような気もしないでもありません。

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