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2008年7月28日 (月)

エコノミストの仕事とはどういうものか?

今日も、天気予報では雨が続くようなことを言っていたんですが、結局、雨は降らず、まあまあいいお天気で、毎日蒸し暑い日が続いています。

先日、学生の方からメールをいただき、エコノミストの仕事についてご質問を受けました。実は、2006年2月21日付けのエントリーでも軽く取り上げているんですが、夏の人事異動の季節でもありますので、また、大学生の就職活動も本格化しつつある時期かもしれませんので、官庁エコノミストの経験しかない私ですが、少し幅広くエコノミストの仕事などについて簡単に取り上げてみたいと思います。
まず、エコノミストという職業の中で、大きく分けると勤務先によって3種類のエコノミストがいます。大学教授や准教授と呼ばれるアカデミックな世界のエコノミスト、民間企業に勤務するエコノミスト、そして、私のような官公庁に勤務する官庁エコノミスト、の3種類です。なお、中央銀行である日銀については、今夜のエントリーでは官庁エコノミストに分類しておきます。さらに、もう少し細かく分けると、大学の教授や准教授はこれ以上の細かい分類はないように思いますが、民間企業のエコノミストは、証券会社などに勤務して顧客向けに株式などの金融資産売買の基礎情報となる経済指標を解説するタイプのエコノミストとシンクタンクに勤務してより幅広い層に詳細な経済見通しやいろんな経済事象の解説を行うタイプのエコノミストがいます。前者の場合は往々にして顧客向けのクローズな情報提供になっている場合もあります。後者の場合は、例えば、最近見かけた報道で東京新聞のサイトで見たんですが、「日本から中東産油国などへの2008年度の所得流出額が前年度と比べ約17兆円増える見通しであることが、日本総合研究所の推計で26日、分かった。」みたいに、新聞に取り上げられたりもします。それから、官庁エコノミストでは、独特の用語かもしれませんが、分析と研究に分けられます。前者は「ナントカ白書」なんかで直近1年くらいの経済を分析する仕事で、後者は各省に設置されている研究所に在籍して、大学のエコノミストに近いような計量的手法を用いてディスカッションペーパーなんかを書く仕事です。日銀の場合は割合と明瞭で、調査統計局が前者、金融研究所が後者です。一応、私は「ナントカ経済白書」の執筆もすれば、政府経済見通しの作成を担当した経験もあり、さらに、研究所で経済モデルをシミュレーションしてディスカッションペーパーを書いたりとか、いかにも官庁エコノミストらしいいくつかの仕事を経験して来ました。まとめると、エコノミストは勤務先により大きく3種類、細かく5種類に分けられると思います。
まず、簡単に触れた部分もありますが、仕事について独特の業務があるのは大学のエコノミストで、それは教育です。講義やゼミがあり、学生の習熟度を試験やリポートで確認します。私はやったことはありませんが、多くの方が学生時代にやられたことがあるでしょうから割愛します。この教育を別として、エコノミスト一般の仕事は一言でデータの分析と言えます。各種のエコノミストにより、その対象や手法が異なるわけです。大学のエコノミストや官庁エコノミストの中でも研究に従事している場合は、それ相応の長い期間のデータを相手に格闘し、分析や研究手法も高度なものを用います。例えば、私の場合は状態空間表現されたモデルをカルマン・フィルターで解いたり、VAR で表現された関係からグランジャー因果を検出したり、あるいは、マルコフ・レジーム・スイッチング・モデルを用いて各期の状態の遷移確率を計算したりといった、ほとんどエコノミストしか理解できない手法を使ったりします。もっとマーケットに近いエコノミストであれば、複雑な計量手法を用いずとも、例えば、グラフを書いてそのシェイプが似通っているとか、ピークとボトムが一致しているとか、といった手法で十分な場合があります。リポートを届ける対象によっては、複雑怪奇な手法を避けることが必要な場合も十分にあり得ます。先日、取り上げた『経済財政白書』などはその中間的な存在ですから、大いに参考になると思います。特に、金融機関、特に証券会社に勤務していてマーケットに近いエコノミストなどは、顧客に対して GDP 成長率や消費者物価、鉱工業生産や貿易統計などの経済指標の解説が中心になるような印象があります。私も同業者のこういった指標解説のリポートを大量にちょうだいしていて、このブログで指標解説のマネゴトをしていたりします。消費者物価が上昇したのはどうしてで、今後の見通しはどうか、などです。もちろん、経済見通しの作成も含まれる場合が大いにあります。それから、会社によってなんでしょうが、営業活動のサポートも重要な仕事になっている場合があると聞いたこともあります。官庁エコノミストは営業活動のサポートはしませんから、私にはよく分かりません。役所や日銀は営業活動をしていないんですから当然です。でも、日銀には営業局という名称の組織がその昔にありました。これもよく分かりません。
出身学部は、一般には、大学の経済学部を卒業している場合が多く、私もそうですが、先日、著書を取り上げたみずほ証券の上野さんは文学部史学科のご出身ですし、法学部や理学部数学科の出身などのエコノミストもいます。大学で学ぶべきは英語と数学、さらに、統計学が重要だと私は考えているんですが、基礎が出来ていれば学部はそんなに重要ではないのかもしれません。エコノミスト業界に参入する場合、大学院に進学して学位を取得して大学教授を目指すルートは別にして、企業や官庁・日銀でエコノミストを目指す場合、日本では会社や役所に就職しますので、エコノミストのいる、あるいは、必要としている会社や官庁に就職することになります。後は、会社や官庁の中での人事異動ですから、一概には言えないと思います。ただし、官庁や多くのシンクタンクはこの通りなんですが、証券会社などではエコノミストがチームを組んでいる場合があります。例えば、嶋中雄二さんは独自の景気観をお持ちで、私の尊敬するエコノミストの一人なんですが、私の知り合いのエコノミストとともに三菱UFJリサーチ&コンサルティングからチームとして三菱証券に移籍したりしました。外資系の証券会社などでもチーフエコノミストを頂点として、シニアなエコノミストやジュニアのエコノミスト、さらに、日程管理などをする秘書的な役割の人まで、チーフエコノミストが採用してチームを組んでいる例をいくつか知っています。そういったチームにヘッドハンティングされると、即エコノミスト的な活動になるのかもしれません。
就職後のキャリアについても様々でしょうが、チーフエコノミストに採用されてチームに加わる場合は別として、一般的な企業や官庁・日銀のキャリアを踏むんだろうと思います。その中で、エコノミスト的な能力があって経済分析や研究の分野で重宝されれば、自然とエコノミストのセクションが長くなるんだろうと思います。海外留学でマスターを取得できるチャンスは逃すべきではありません。でも、留意すべきは、一般に終身雇用制がいまだに守られている官庁や日銀の世界でも、エコノミストの業界だけは転職が頻繁にあることです。私の知る限りでも、役所の先輩や後輩が何人か金融機関やシンクタンクに転職しています。ゼネラリストとして育てられている官庁や日銀の中でもエコノミストの仕事を続けたいと考える人も少なくなく、そういったエコノミストが転職しているように見受けられなくもありません。私の場合は、外務省に出向して海外の大使館勤務をしたり、まったくエコノミスト的ではない仕事もしましたが、もともとの役所が経済分野の官庁でしたので、何らかの意味で経済を相手にしていましたし、何よりも、ヘッドハンティングに遭遇するほどの能力に欠けていましたので、現時点まで長らく公務員生活を送っています。
最後にお給料ですが、少なくとも私のような公務員はエコノミストであってもなくても同じだということは容易に想像できることと思います。でも、外資系の証券会社などでびっくりするようなお給料をもらっているエコノミストも少なくありません。ですから、エコノミストの場合は所得を主たる眼目にして就職先を選ぶことも可能かもしれません。でも、所得を考えるのは就職の際というよりも、転職の際ではないかという気もしないでもありません。もしもチャンスがあれば、グッといいお給料のところに転職したいと私も思わないでもありません。

役所も人事異動の季節をほぼ終え、私も少し忙しくなっています。3年前に始めて、ほぼ毎日のように新しいエントリーをアップして来たんですが、このブログの更新頻度も落ちるかもしれません。しばらくの間、ご容赦下さい。

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