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2008年9月30日 (火)

鉱工業生産と労働統計に見る景気後退局面

本題に入る前に、すでに各種メディアで流れているように、米国の下院が金融安定化法案を否決し、昨日の NY 株式市場はダウ平均が前週末比▲777ドル68セント (▲6.98%) 安の10,365ドル45セントで取引を終え、史上最大の下落幅を記録しました。東証の日経平均も一時▲500円超の下げを記録した後、アジア市場の下げ幅が小さくなったために少し戻したとはいうものの、結局、終り値は昨日比▲483円75銭(▲4.12%)安の1万1259円86銭と大きく下げました。米国下院の金融安定化法案の否決というメガトン級のスーパーネガティブサプライズにより世界の金融市場はメチャクチャな大混乱です。この話題についてはもう少し情報を収集して、日を改めて取り上げたいと思います。

ということで、今日はエントリーのタイオルのように、経済産業省から鉱工業生産指数、総務省統計局から失業率などの労働力調査、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定統計が発表されました。まず、ヘッドラインの統計に関して、鉱工業生産と雇用統計に分けて、いつもの日経新聞から引用すると以下の通りです。

鉱工業生産
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は104.5となり、前月に比べて3.5%低下した。2カ月ぶりの低下で、現行の基準を採用した03年以降では最大の下げ幅となった。輸出用の自動車や国内外向け一般機械などの生産減少が響いた。国内外の景気は一段と不透明感が強まっており、7-9月期としても前期比で低下となる公算が大きい。
生産の低下幅は過去の基準を含めると、情報技術(IT)バブル崩壊後の01年1月以来の大きさ。出荷が前月比3.8%低下と大きく落ち込み、生産減につながった。在庫指数は0.2%低下。経産省は生産の基調判断を3カ月連続で「弱含みで推移している」で据え置いた。
雇用統計
日本の雇用情勢の悪化が鮮明になってきた。厚生労働省が30日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は0.86倍と前月を0.03ポイント下回り、2004年9月以来の水準まで低下した。総務省が同日発表した8月の完全失業率(同)は4.2%と前月より0.2ポイント上昇。厚労省は雇用情勢についての基調判断を「引き続き注意を要する」から「下降局面」へと4カ月ぶりに下方修正した。
有効求人倍率は公共職業安定所(ハローワーク)で職を求めている人1人あたりに何件の求人があるかを示す。8月は職探しをしている有効求職者数が1%増え、企業の求人数である有効求人が1.7%減り、倍率を押し下げた。1倍割れは9カ月連続となる。

鉱工業生産指数の推移

まず、鉱工業生産指数の推移です。青い折れ線が月次の統計で、赤が四半期です。いずれも季節調整済の系列です。今回の発表では製造工業だけながら10月までの予測指数が利用可能でしたので、9月の予測を当てはめて7-9月期の四半期データを計算してグラフにプロットしてあります。見れば明らかなんですが、今年に入って3四半期連続で前期比マイナスを記録することがかなり濃厚と言えます。景気後退の判断には2つの D が重視されます。すなわち、Duration =期間と Depth =深さです。上のグラフから明らかなように、2004年後半から2005年にかけて、いわゆる「景気の踊り場」だった時期には期間は十分なんですが、深さが景気後退と判断するには不足していました。これに対して、昨年10-12月期をピークとする現在の景気後退局面は期間も深さも十分だという気がします。期間は3四半期連続のマイナスが確定的な上に、4四半期以上になる可能性も十分ありますし、深さも引用した新聞記事にある通り、マイナス幅も大きくなっています。8月統計の▲3.5%減は市場の事前コンセンサスの▲2.4%を大きく上回りました。我が同業者から送られて来たニューズレターで出荷と在庫の循環図を描いているのを見かけたんですが、明らかに45度線を越えて景気後退局面を示唆するシェイプになっていたりしました。さらに、中身を詳しく見ると、ほぼすべてのセクターで悪化しているんですが、特に、資本財部門のマイナスが大きく、今後、来年年央から秋口にかけて GDP ベースの設備投資が弱含むとの私の予測をサポートしているように見受けられます。

失業率と有効求人倍率の推移

新規求人数の推移

次に、雇用関係の統計です。上の2枚のグラフのうち、上の方が失業率と有効求人倍率で、赤い折れ線が左目盛のパーセント表示の失業率、青が右目盛りの有効求人倍率です。有効求人倍率の単位は倍です。下のグラフは新規求人数のグラフで単位は人です。いずれも季節調整済の系列で、影を付けた部分は景気後退期です。直近は私の勝手な判断で、昨年10月がピークであったと考えて影を付けています。いつも、この3指標を取り上げているのは、雇用統計のうち、下のグラフの新規求人数が先行系列、上のグラフの有効求人倍率が一致系列、失業率が遅行系列として、それぞれ景気動向指数に採用されているからです。新規求人数は先行系列であるとはいうものの、2枚のグラフとも、私が暫定的に昨年10月を景気のピークとしたのが遅きに失しているくらい、早々に雇用統計は景気後退を示しています。特に、今年に入ってから雇用者数がジリジリと減少している中で、規模別に見ると、500人以上大企業は順調に雇用者が増加している一方、中堅から中小企業の雇用者数の減少が目立っています。産業別に見ると、少し前までの建設業での減少と情報通信業での増加の動きが年央くらいでほぼ止まり、最近時点ではサービス業で雇用を吸収しているように見受けられます。必ずしもいい形とは言えなくなってきているのかもしれません。また、勤め先都合により失業が増加しているのは、倒産が増加している最近の動向とも整合的です。

いずれにせよ、本日発表された鉱工業生産指数と雇用統計はかなり明瞭に日本が景気後退局面にあることを示していると私は考えています。加えて、もちろん、商品市況の動向と金融市場の混乱の度合いに大きく左右されますが、資本財出荷などを見ると、この景気後退局面がかなり長引く可能性も排除できないと覚悟すべきなのかもしれません。

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2008年9月29日 (月)

お詫びと訂正

阪神マジック 7

先ほどのエントリーで、最後の方に「次はドームで雨は関係ナシ」と書いてしまいましたが、明日も甲子園で中日とやるようです。誠に失礼しました。お詫びして訂正します。ややが心配です。明日は私は夜間の授業があるので応援できませんが、夜遅くに結果だけフォローしたいと思います。

何はともあれ、
がんばれタイガース!

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着々とマジックを減らすタイガース!

阪神マジック 7

  RHBE
広  島000002100 31040
阪  神01020002X 51020


  1. (中) 赤星

  2. (右) 平野

  3. (一) 新井

  4. (左) 金本

  5. (三) 今岡

  6. (遊) 鳥谷

  7. (二) 関本

  8. (捕) 矢野

  9. (投) 石川

いやあ、よろしなあ。やっぱり、このオーダーでっせ!
電停を降りて帰り道で夕食を食べたチャンポン屋さんを出る時、7時半少し前に NHK ニュースで 3-0 を確認します。アナウンサーさんは冷たく「阪神は今岡のホームランで先制しています」とのことで、家に帰ると安心して、この直前のノーベル賞に関するエントリーをサッサとコピペで仕上げてアップした後、8時過ぎにネットで確認すると、何と、3-3 に追いつかれています。スコアを確認すると、アッチソン投手、ウィリアムス投手がフォアボールで自滅したような形で広島打線に打たれたみたいです。今年限りで広島市民球場改修とのことで、広島カープもよくがんばっているようです。
しかし、8回オモテから藤川投手を早めに投入した時点で、勝手にタイガースの勝ちを私は確信して、お風呂を沸かし始めてしまいます。私には私の事情があります。期待にたがわず、新井内野手が今夜3本目のヒットで出塁した後、アニキ金本外野手が粘った末に見事なツーランで勝越しです。まさか、最終回は昔の名前の久保田投手がクローザーなんてことはないよネ?なんて、私の不安をかき消すように、最後まで藤川投手が締めてくれました。まあ、中盤にもっと点を取っておけばとか、終盤に中継ぎ投手が打たれて同点に追いつかれたとか、先発の石川投手に勝ち星を付けてあげられなかったとか、反省点はいくつもあって、いつも通りのヒヤヒヤの勝利ではありますが、勝てばそれでいいです。勝てば着実にマジックは減ります。それにしても、甲子園はは降ってなかったんでしょうか。長崎は1日中雨でした。

次はドームで雨は関係ナシ、
がんばれタイガース!

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今年のノーベル賞の行方やいかに?

毎年、この時期になるとトムソンサイエンティフィックが科学分野のノーベル賞の有力候補者を発表していたんですが、なぜか今年はまだ何の発表もありません。ちなみに、昨年は9月11日にプレスリリースされていました。もちろん、経済学は立派な社会科学ですから、トムソンサイエンティフィックから毎年のように有力候補者が発表されていました。私のこのブログでも発表から2日遅れの昨年9月13日のエントリーで取り上げた記憶があります。待ちくたびれたので、今夜のエントリーでは私独自のノーベル経済学賞の候補者を予想してみたいと思います。

Nomination Process of Nobel Prize Laureates in Economics

上の画像は、ノーベル財団のホームページの経済学賞のところから引用しています。ノーベル経済学賞の受賞者が選ばれるプロセスのようです。これによれば、すでに推薦リポートは出来上がっていて、最終的に10月に選ばれることになっていますが、本人にはすでに通知されているのかもしれません。というのは、1994年に受賞したナッシュ教授の半生を映画化してアカデミー賞にも選ばれた "A Beautiful Mind" なんかでは、調査員がナッシュ教授に事前に接触する場面が描かれたりしていたと私は記憶しているからです。それから、同じホームページからの出展で昨年までのノーベル経済学賞の受賞者リストは以下の通りです。コピペしたモトがそうですので、英国で爵位されたアーサー・ルイス卿以外は敬称略になっています。言うまでもなく、大先生ばかりなんですが、悪しからず。

  • 2007 - Leonid Hurwicz, Eric S. Maskin, Roger B. Myerson
  • 2006 - Edmund S. Phelps
  • 2005 - Robert J. Aumann, Thomas C. Schelling
  • 2004 - Finn E. Kydland, Edward C. Prescott
  • 2003 - Robert F. Engle III, Clive W.J. Granger
  • 2002 - Daniel Kahneman, Vernon L. Smith
  • 2001 - George A. Akerlof, A. Michael Spence, Joseph E. Stiglitz
  • 2000 - James J. Heckman, Daniel L. McFadden
  • 1999 - Robert A. Mundell
  • 1998 - Amartya Sen
  • 1997 - Robert C. Merton, Myron S. Scholes
  • 1996 - James A. Mirrlees, William Vickrey
  • 1995 - Robert E. Lucas Jr.
  • 1994 - John C. Harsanyi, John F. Nash Jr., Reinhard Selten
  • 1993 - Robert W. Fogel, Douglass C. North
  • 1992 - Gary S. Becker
  • 1991 - Ronald H. Coase
  • 1990 - Harry M. Markowitz, Merton H. Miller, William F. Sharpe
  • 1989 - Trygve Haavelmo
  • 1988 - Maurice Allais
  • 1987 - Robert M. Solow
  • 1986 - James M. Buchanan Jr.
  • 1985 - Franco Modigliani
  • 1984 - Richard Stone
  • 1983 - Gerard Debreu
  • 1982 - George J. Stigler
  • 1981 - James Tobin
  • 1980 - Lawrence R. Klein
  • 1979 - Theodore W. Schultz, Sir Arthur Lewis
  • 1978 - Herbert A. Simon
  • 1977 - Bertil Ohlin, James E. Meade
  • 1976 - Milton Friedman
  • 1975 - Leonid Vitaliyevich Kantorovich, Tjalling C. Koopmans
  • 1974 - Gunnar Myrdal, Friedrich August von Hayek
  • 1973 - Wassily Leontief
  • 1972 - John R. Hicks, Kenneth J. Arrow
  • 1971 - Simon Kuznets
  • 1970 - Paul A. Samuelson
  • 1969 - Ragnar Frisch, Jan Tinbergen

次々に引用を続けますが、ノーベル各賞の発表予定は以下の通りです。今年の6月3日の時点ですでにノーベル財団からプレスリリースが出されています。確認していないんですが、時刻はおそらくストックホルム時間だと思います。

  • 医学生理学賞=10月6日(月) 11:30 a.m.
  • 物理学賞=10月7日(火) 11:45 a.m.
  • 化学賞=10月8日(水) 11:45 a.m.
  • 平和賞=10月10日(金) 11:00 a.m.
  • 経済学賞=10月13日(月) 1:00 p.m.

経済学だけが少し他と違う週に発表されるのは、よく知られた通り、物理学賞や科学省などの後になって設けられ、名称もズバリの "Nobel Prize" ではなく、正式には "The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel" と呼ばれているように、やや区別されているからです。なお、The Sveriges Riksbank とはスウェーデンの中央銀行です。ですから、通常は「ノーベル経済学賞」と読んで何ら差し支えないんでしょうが、ホントに正しくは、「ノーベルを記念した経済学におけるスウェーデン中央銀行賞」なのかもしれません。
さて、前置きばかりになってしまいましたが、私の今年のノーベル経済学賞予想は以下の3分野の6人です。

  • 経済成長理論への貢献 - ジョルゲンソン教授、バロー教授
  • 国際貿易理論への貢献 - バグワティ教授、ディキシット教授
  • VAR プロセスなどの時系列分析への貢献 - シムズ教授、ストック教授

ノーベル賞候補者の予想ですから、大先生方ばかりなので詳細については書きません。なお、第2の国際貿易理論については、場合によっては、日本でも知名度の高いクルーグマン教授が入る可能性がありますし、3番目の時系列分析についても VAR を外せばヨハンセン教授が入ってもおかしくないと思います。まあ、当然ですが、私自身の専門分野に近いエコノミストばかりだったりします。要するに、昨年のメカニズム・デザインは言うに及ばず、たとえ同じように経済学と呼ばれていても、行動経済学やゲーム理論などの他の分野はよく知らないわけです。逆の方向から見て、専門性が高いんだと勝手に自分で評価しています。

最後に、今夜のタイトルをあえて経済学賞に限定しなかったのは日本人に関して考えていたからです。第1に、物理学の戸塚教授です。2002年のノーベル物理学賞を受賞した小柴教授の後継者でした。今年亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします。あと5年存命であれば、確実にノーベル賞を受賞していたと考えている関係者も多いだろうと私は想像しています。第2に、我が母校である京都大学の山中教授です。iPS 細胞に関する研究で大いに注目を集めていますが、まだ40代後半ですので、ノーベル賞受賞はもう少し先かもしれません。第3に、何といっても今年最大の注目は昨年に続いて、村上春樹さんの文学賞です。昨年、カフカ賞を受賞し、ノーベル文学賞の有力候補と目されていたんですが、今年はどうなるんでしょうか?

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2008年9月28日 (日)

単身赴任生活で猫舌になる?

今日も、まずまずのお天気で午後から下り坂との天気予報でしたので、食事と買い物のために路面電車に乗って出かけます。上のビデオは YouTube で見かけたんですが、先日、私がこのような運転席右後方の席に座ったので、ちょうどこんな感じの風景だったと思い出しつつ引用してみました。
さて、青山の家族と100キロ以上も離れた単身赴任生活もそろそろ2カ月になりました。当然ながら、女房の家事サービスは受けられず、洗濯や掃除なんかは自分でせねばなりませんし、親バカの私にはツラいところですが、子供達の顔は見られません。そして、健康管理上の問題として食事への配慮が欠かせないんですが、少し前までは生協やスーパーの弁当が中心で、大量のプラスティックトレーのごみを出したりしていました。やや涼しくなりつつある最近では、野菜を摂るようにしていろんなものを食べて試したりしています。結果として、暑い時期には敬遠していたんですが、このごろは長崎名物のチャンポンやお好み焼きなんかを食べるようになりました。私の宿舎の近所ではお好み焼きやたこ焼きのお店があったりします。キャベツなんかの葉物野菜が中心ですが、それなりに外食の中では野菜が入っているような気がしないでもありません。ただし、スーパーの生鮮食品の価格を見ると、長崎特有かもしれませんが、魚と野菜の相対価格が東京とかなり違うと感じないでもありません。かなり魚が安い気がします。
ということで、先週あたりから、チャンポンやお好み焼きを食べ始めて気付いたんですが、かなり猫舌になっているような気がします。弁当中心に大学の研究室や家で食べる食事から、すこしずつ街も分かりかけて来たので外食に移行しつつありますが、この間に、暑かったせいもあって冷えた食事を摂るのが習慣になってしまい、猫舌になったのかもしれません。昨日のチャンポンはかなり熱かったと感じて食べるのに時間がかかりましたし、今日の昼食も、喫茶店で食べ終えると食後のコーヒーをマスターが熱心に勧めてくれて、私はこういった勧誘に弱いので頼むと、これまた妙に熱く感じてなかなか手をつけずにマンガを読みふけっていたりしました。ひょっとしたら、夏の暑い時期に単身赴任生活を始めると猫舌になる傾向があるのかもしれません。

明日から大学の後期が始まり、学生と接する機会が出来るとともに生協も営業を再開します。私の食生活も徐々に正常化するのかもしれません。

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2008年9月27日 (土)

再び巨人に並ばれてマッチレース再開!

  RHBE
巨  人003300000 61460
阪  神001102000 4851

新井内野手が代打から守りにも入ってチームに復帰し、いよいよ優勝への確かな道のりが始まるかと思えば、前半の失点が響いて勝つには至りませんでした。再び巨人と同率首位のマッチレースが再開されます。両チームとも残り10試合を切って、負けられない試合が続きます。私のような作戦もよく分からなくて、野球もよく知らない阪神ファンは、ひたすら応援するだけです。確か、巨人とは残り1試合あるハズなんですが、大丈夫なのかと思わないでもありません。
それにしても、長崎ではテレビ中継もなく、ラジオ放送は10時で打ち切られて、9回ウラの阪神の攻撃はネットで情報収集するしかありませんでした。何とかならないものでしょうか?

残り9試合も、
がんばれタイガース!

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ブランド総合研究所調査による長崎の魅力度

一昨日、9月25日にブランド総合研究所による「地域ブランド調査2008」の結果が発表されました。認知、魅力、情報接触、観光意欲、居住意欲などの63項目に関して、インターネットを通じた調査の結果です。有効回答数は35000人を超えていますし、地域的な偏りもないように調整されているようですから、信頼度は高いと私は考えています。結果は3年連続で札幌市がトップを占めました。この調査で、我が長崎市も観光都市ですからイメージよく14位を占めています。先に示したリンクには20位までの結果が収められているんですが、取りあえず、このブログでは長崎市が入る範囲の切りのいい数字ということで15位までのランキング表を示すと以下の通りです。

地域順位市区町村都道府県点数
2008(2007)
1(1)札幌市北海道59.5
2(4)函館市北海道55.9
3(2)京都市京都府55.1
4(3)横浜市神奈川県51.9
5(5)小樽市北海道49.2
6(6)神戸市兵庫県47.8
7(8)富良野市北海道46.5
8(7)鎌倉市神奈川県45.9
9(10)軽井沢町長野県41.4
10(9)金沢市石川県39.8
11-屋久島町鹿児島県39.5
12(11)那覇市沖縄県38.9
13(12)仙台市宮城県36.8
14(16)長崎市長崎県34.6
15(57)宮古島市沖縄県33.8

なぜか、北海道が多いような気がします。それから、割愛しましたが、この次の16位に福岡市が入っています。さらについでで、私の出身地である京都府宇治市も33位に名を連ねています。並みいる大都市・県庁所在市や鎌倉・軽井沢などのリゾートを向こうに回して大健闘という気がします。特に、宇治市の場合、昨年から今年にかけた魅力度の伸びが大きい市町村ランキングで9位に入っていますが、私が宇治市を離れてすでに二十数年がたっていますので、何が起こったのかは不明です。私が大学に通っていた京都市は4位ですが、トップテンは別格のような気がしないでもありません。昨年から今年にかけても、トップテン内での順位の変動はありましたが、トップテンと11位以下との入替えは見られませんでした。なお、東京については23区が個別に集計されていますので上位には現れませんが、例えば、「生活に便利・快適なまち」という調査項目では5位までに世田谷区以下4区が名を連ねていますし、我が港区も「IT・先端技術のまち」の項目で豊田市・つくば市・日立市などに後れて5位を占めています。なお、上の表で屋久島町が昨年ランクが表示されていないのは、市町村合併で新しく出来た町だからです。さらに詳しくは上の方のリンクから記者発表資料をご覧下さい。
長崎市に話を戻すと、最初に書いた認知、魅力、情報接触、観光意欲、居住意欲などの調査項目については、サマリーの記者発表では上位5位までしか上げられておらず、長崎市はどこにも入っていませんでしたので詳細は不明で、先の繰返しになるんですが、やっぱり、観光都市ということでイメージがいいんではないかと思います。そして、私が住んでみて、順法精神の高さも特筆すべきだという気がします。精神的なことなのでバッチリの統計はないんですが、傍証として、犯罪率の低さを上げることが出来ます。下のグラフはどちらも大分県庁のホームページにある全国の犯罪概況九州地区の犯罪概況から取っています。見ればわかるんですが、上の方の縦に長いグラフが平成19年昨年における全国の犯罪率を発生率の高い順でソートしてあり、下のグラフは九州地区の各県の犯罪率です。データは同じだと思います。大分県庁の資料ですので上の方のグラフで大分県だけ別色になっているのはご愛嬌とお考え下さい。

都道府県別犯罪発生率

九州各県の犯罪発生率

どのような尺度から考えても我が長崎県は犯罪発生率が低いといえます。大阪府の 1/3 以下ですし、九州地区でも福岡県の半分に満たない数字です。これも傍証ですが、私が街中を歩いていて、極端なくらいに信号を順守する人達を見かけます。私はリバタリアンに近い考えですので、他人に迷惑をかけない範囲での自由を主張しますから、車が来なければ信号無視して道を渡ることは、違法だと考える向きがあるかもしれませんが、控え目に言っても甚だしく悪いことだとは考えていません。まあ、ひょっとしたら習慣性になる可能性は否定しませんが、依存症になる確率はアルコールなどと比べてもグッと低いでしょうし、安全をしっかり確認すれば、誰に迷惑をかけているわけでも、自分の身を危険にさらしているわけでもありません。自己責任で信号無視することについては許容するというか、少なくとも咎め立てすることはありません。このような私の目から見ると、長崎の人の信号順守はやや異常とすら映る場合もあります。
他方、話がブランド総合研究所の「地域ブランド調査2008」からドンドン逸れて行くんですが、長崎の人はペナルティのある法律の順守精神が旺盛な一方で、ペナルティのないマナーはどうかなと疑問に思わないでもありません。例えば、電車に乗っていて、制服姿の中高生が高齢者に席を譲ることは稀です。そもそも、私は日本の高齢者は優遇され過ぎていると考えなくもありませんので、長崎の電車にあるのかどうか知りませんが、敬老パスのようなものは通勤や通学のラッシュにかからないように時間制限すべきとの主張ですし、長崎の中高生が強気に高齢者に席を譲らないのも一般通念上の衡平の観点からはアリなのかもしれないと思わないでもないものの、マナーの点からは疑問に感じなくもない気がします。別の点で、特に、長崎市内は小さな川のような、ドブのような水の流れが走っているんですが、やおら車から下りた人が自動車の灰皿に溜まった吸殻を捨てているのを見かけた時には愕然としました。もっとも、これはマナーを通り越して違法行為なのかもしれません。

長崎に好ましい話題から反対の方向に話が逸れた最後に、今日のテレビ番組表をチェックすると、甲子園では今シーズン最後の阪神 vs 巨人の優勝をかけた決戦も長崎ではテレビ中継なしです。このあたりも、何とかならないものかと、阪神ファンの勝手なつぶやきです。

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2008年9月26日 (金)

消費者物価は日銀の「物価安定の理解」を2か月連続で超えたが…

本日、総務省統計局から消費者物価指数が発表されました。8月全国のコア CPI が前年同月比上昇率で+2.4%と前月と変わりありませんでした。マーケットの事前予想にジャストミートしました。9月中旬東京都区部は同じく+1.7%でした。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

総務省が26日発表した8月の全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の激しい生鮮食品を除くベースで102.6と、前年同月に比べて2.4%上がった。上昇率は前月と同じで、消費税率の引き上げで物価がかさ上げされた1997年10月以来の高水準。ガソリンや食料品の価格が高止まりし、消費者心理の悪化を招いている。
CPIが前年同月を上回ったのは11カ月連続。消費増税の影響があった時期を除くと、7月と8月の上昇率は92年6月以来の高さだ。日銀が物価安定の目安とする「0-2%」も2カ月続けて上回った。

全国消費者物価上昇率と寄与度

上のグラフは全国のコア消費者物価の前年同月比上昇率を示しています。青い折れ線が生鮮食品を除く総合のコア CPI、赤が食料とエネルギーを除く欧米流のコアコア CPI、そして、積上げ棒グラフがコア CPI の前年同月比上昇率に対する寄与度で、緑色が食料、黄色がエネルギー、水色がその他です。黄色のエネルギーの寄与度がわずかながら、7月から8月にかけて少し低下したのが読み取れると思います。水色の食料とエネルギーを除くその他も寄与度を下げていて、これらを生鮮食品以外の食料がカバーしてしまった形で、8月の全国コア CPI 前年同月比上昇率は7月と同じ2.4%でした。レギュラーガソリンが7週連続で下げていることに表れているように、商品市況は下げつつあるんですが、かなり直に輸入価格が反映されるエネルギーと違って、いまだに加工食品などはラグを伴って上昇を続けているようです。特に、全国8月は菓子類と外食費が上昇しました。

全国と東京都区部のコア消費者物価上昇率

上のグラフは、先月から取り上げ始めた全国と東京都区部のコア CPI の前年同月比上昇率です。東京都区部では9月中旬の統計でコア CPI が8月に比べてやや上昇しました。このまま加速度的に上昇率を高めるとは誰も考えていないんですが、一応、東京都区部を詳しく見ると被服費の上昇が目立っています。季節もの衣料といわれています。これ以上の詳しい情報はないんですが、原油価格などの商品価格がいよいよ被服にまで波及したのか、それとも、何か突発的な要因が作用したのか、はたまた、季節ものの品目入替えによる統計上のイタズラなのか、いずれにせよ、教養娯楽費までいかないものの、被服費は食費よりは家計の中でも所得や価格に従って柔軟に調整できるため、価格に敏感だと私は考えていましたので、大きな謎であることは確かです。柔軟に対応できる項目だけに、少なくとも洋服などの価格転嫁がさらに進むとは私は考えてません。場合によっては、9-10月くらいまで全国でもコア CPI が高止まる可能性があるものの、もっとも単純には、商品価格が7月ピークの後、昨日取り上げた輸入物価が8月ピークで、消費者物価が9-10月ピークという蓋然性は相変わらず高いような気がします。ここまで単純でなくても、そろそろ消費者物価上昇率のピークが近いことは確かだろうと思います。

全国のコア CPI 2%超えがリポートされた先月は、日銀に「物価安定の理解」を超えたものですから、少しは私も我が国金融政策当局の動向に注目しないでもなかったんですが、先々週から始まった米国発の金融市場の大混乱の中で、またまた日銀が金利を引き上げるハードルが高くなったような気がします。

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2008年9月25日 (木)

やっぱり8月貿易収支は赤字に転落

本日、財務省から貿易統計が発表されました。ヘッドラインの貿易収支は▲3240億円の赤字となり、8月としては26年振りの赤字に転落しました。季節要因からお正月の1月に輸出が少なくて貿易収支が赤字になるのはめずらしいことではないんですが、8月は25年間黒字を続けてきたようです。市場のコンセンサスをやや上回る赤字で内容も悪く、米国向け輸出が減少しているだけでなく、欧州やアジア向けの輸出もプラスながら伸びが鈍化しています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

財務省が25日発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)では、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が3240億円の赤字となった。貿易赤字は正月の影響で輸出額が減る1月を除けば、1982年11月以来約26年ぶり。原油や石炭など資源価格が高騰し、輸入額が膨らんだことが主因。対米輸出が前年同月比21.8%もの大幅減となるなど、輸出額の停滞も響いた。
82年の貿易赤字は日米貿易摩擦による輸出減が背景。今回の場合、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の深刻化などを受けた世界経済の減速に伴う輸出のもたつきに、資源高が追い打ちをかける構図といえる。
輸出総額は7兆559億円となり、前年同月比0.3%増とほぼ横ばいだった。モノの動き全体を示す輸出数量指数は前年同月比3.1%減と2カ月ぶりに減少した。下げ幅は2005年2月以来の大きさを記録した。輸出総額の増加分は、価格の伸びに支えられている面が大きい。

輸出入と貿易収支の推移

ヘッドラインの輸出入と貿易収支のグラフは上の通りです。今までほぼ一貫して上にあった青い折れ線が輸出額、その下の赤い折れ線が輸入額、下の緑色の棒グラフが貿易収支です。単位はいずれも左軸で金額ベースの10億円です。季節調整がかかっていませんので、グラフがジグザグで季節要因は見られるんですが、今年に入って貿易収支が大きく減少して来ているのが見て取れると思います。

貿易指数の推移

最近1年間の輸出入を数量指数と価格指数に分けてリポートしたのが上の表です。まず、輸出については価格指数は大きな変動がなく、ややラグを伴いながら為替レートに沿った動きなんですが、数量指数は2月のうるう年効果で大きくジャンプしているのを除けば、今年に入ってからは傾向的に減少しています。先月7月のスパイクはアジア向け鉱物性燃料か何かの特殊要因があったと考えるべきです。今後、金融市場の混乱が続く米国経済の停滞がはっきりすると、我が国の輸出数量もマイナス基調になる可能性が高いと私は考えています。特に、8月の統計は米国向け輸出数量が前年同月比で▲19.1%減、同じベースで欧州向けが+3.3%増、アジア向けが+0.8%増と、軒並み大きく減速しています。最終需要地である米国や欧州の景気後退・減速を受けて、我が国からのアジア向け輸出も減少に転ずる可能性も大いにあります。というのは、産業別に見ても、今度は金額ベースの前年同月比で、一般機械が前年比▲2.9%減、電気機器が▲4.8%減、輸送用機械も▲6.1%減と、主力輸出産業が軒並み減少に転じました。要するに、仕向け地別で見ても、産業別で見ても、輸出は大きく減速ないし減少に転じつつあります。今後、世界経済の減速や後退とともにこの傾向は強まるものと考えるべきです。
他方、輸入は8月の価格指数が前年同月比でとうとう20%を超えましたが、着実に輸入数量は低下して来ていて、8月は前年同月比でマイナスになりました。景気後退の影響で国内需要が振るわないのに加えて、輸入価格が高騰したことの影響も現れ始めたと私は考えています。何らかの代替財にシフトしている可能性があり、この傾向は続くのではないかと見られます。

輸出入価格指数と交易条件の推移

上のグラフは最近12カ月の輸入価格指数=赤い折れ線グラフ、輸出価格指数=青い折れ線、そして、輸出価格指数を輸入価格指数で除した交易条件指数=緑色の折れ線を示しています。なぜか、今月の8月統計の発表分から従来の2000年基準ではなく、2005年基準に基準年が変更になりましたので、現時点では私はそれ以前の統計データとの接続ができていません。さすがに、同業者のエコノミストのリポートを拝見していると、何とか苦労して接続しているようですが、そんなにさかのぼらない最近12カ月のグラフを見ても、4-5月以降に急速に輸入価格が上昇し、交易条件がジリジリと悪化しているのが見て取れます。しかし、市場の相場動向からしても、輸入価格はこの8月データがピークの可能性が十分あります。よく知られている通り、輸出価格は fob ですから国内価格がほぼ直ちに反映されるのに対して、輸入価格は cif ですから、タンカーで中東から原油を運ぶとすれば1ヶ月くらいのラグがあり得ます。今後、資源価格が低下していけば、まず、輸入価格が低下し、全国の8月消費者物価は明日発表されますが、次に、国内物価も鎮静化に向かう可能性が大きいと考えられます。

8月の貿易統計は内外ともに景気が後退ないし減速している世界経済の現状をよく表していると私は考えています。先行きについても需要や数量面では決して楽観的にはなれません。アジアをはじめとする新興国向けの輸出が我が国景気をどこまで下支えするかが重要なポイントだったんですが、デカップリング論は成り立ちそうもありません。しかし、価格面から見ると、ピークは8月輸入価格だったという可能性は十分あり得ます。

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2008年9月24日 (水)

今夜は逃げ切って巨人とのマッチレース続く

  RHBE
横  浜100001000 2710
阪  神00220001X 51040

今日は大学の FD が少し長引いて、研究室にてネットでチェックすることもなく、7時半の少し前に帰宅すると、4回ウラの攻撃中でした。その前の3回ウラに今岡選手のツーランで逆転した直後だったみたいです。この時点で4-1と、やや安心できるスコアでした。その後、リーソップ投手を継いだ福原投手がソロホームランを浴びて、2点差まで詰め寄られましたが、8回ウラのダメ押し点が大きく、何とか後半の3枚、アッチソン投手とウィリアムス投手と藤川投手で逃げ切りました。ややウィリアムス投手が不安定そうに見えるので、アッチソン投手を7-8回の2イニングス投げさせて藤川投手で締めるのかと私は思いましたが、ウィリアムス投手にもがんばってもらわねばなりません。下柳投手を中2日で投げさせたり、福原投手を短い中盤の中継ぎで使ったりと、岡田監督も短期決戦向けの采配を勉強中なのかもしれません。それにしても打線がイマイチです。やや苦手にしている三浦投手から4点取ったのはいいんですが、後がなかなか続きません。今日も4-5番がノーヒットでした。せめて、金本外野手に当たりが戻れば、もう少し得点力がアップするような気がします。でも、8回ウラは赤星外野手のタイムリーによるダメ押し点が取れたので、今夜はよしとしましょう。
そのうち、巨人が落ちて来るだろうと私は思っていたんですが、今夜も負ける気配なく勝ち続けています。セリーグは完全に2強のマッチレースになりました。我が阪神も土曜日の甲子園決戦まで勝ち続けるしかありません。

ということで、ヒーローインタビューの聞けない私はお風呂に入りますが、明日も、
がんばれタイガース!

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シンガポール政府投資公社 (GIC) のリポート

何と、シンガポール政府投資公社 (Government of Singapore Investment Corporation, GIC) が、何を思ったか、リポートを公表しました。"Report on the Management of the Government's Portfolio for the Year 2007/08" というタイトルで、ごく大雑把にポートフォリオなどについて報告しています。GIC は Temasek とともにシンガポールを代表する Sovereign Wealth Fund (SWF) のひとつで、両社とも投資実態は謎につつまれていたんですが、事情はよく分からないものの、GIC は初めてリポートを公開しました。私は少し驚きを感じてしまいました。世界的な情報公開の流れに沿ったものと言えるかもしれません。

League of nations

上の表は "Economist" のサイトから引用しているんですが、これによれば、GIC はアラブ首長国連合のアブダビ投資庁とノルウェーの年金基金に次いで $330bil の資金を有する世界第3位の規模の SWF で、ついでながら、Temasek は世界第7位で約 $160bil となっています。なお、表の最後にあるように、出典は Morgan Stanley だったりします。

Geographical Distribution

Asset Mix

まず、注目の投資先ですが、リポートの出現順とは逆なんですが、上の表が地域別の投資先、下が資産別の投資先のいずれも比率となっています。どちらも pp.11 にあります。地域別では、米国が約 1/3 で、次いで我が日本が10%くらいとなっています。資産別では公開株式が約 1/3 で、債券も20%くらいです。シンガポール人のメンタリティを表していると思うのは不動産に10%つぎ込んでいるところです。なお、その前の pp.10 ではシンガポールドル建ての利回りがリポートされていて、これらを総合して2008年3月期に5.8%であったと報告されています。同時に数年の利回りがグラフで示されているんですが割愛しました。それから、資金規模については、ナナメ読みしかしていない私が見逃している可能性はありますが、詳細なリポートはなく、単に "investing well over US$100 billion in multiple asset classes in more than 40 countries"との記述があるだけです。まあ、Morgan Stanley が推計した $330bil は "well over US$100 billion" の範囲内、ということなのかもしれません。

Where They Come From

最後の表は職員構成です。リポートの pp.42 にあります。運用の専門家だけでなく、アドミなどの事務職員を含んでいるんでしょうから、シンガポール人がほぼ半数を占めていますが、よく外資系金融機関などで言われる多国籍軍とか、外人部隊と呼べるのかもしれません。政府機関では公務員の国籍条項に抵触するおそれがありますから、公社の形態で運営しているんだと解釈できます。なお、細かなことで私が注目したのは、国別投資先では Americas と中南米も含む複数形の表現になっていたのが、上の表では単数形で America としか表記していないことです。要するに米国出身者という意味なのかもしれません。なお、割愛したんですが同じページに上の表のすぐ下に勤続年数の表もあり、勤続5年未満の職員が過半の57%を占めています。逆に、10年以上は2割ほどです。

今回のリポートは GIC 自身が "GIC unveils first report on the Management of the Government's Portfolio" と誇らかに称している割には、先進各国でディスクロージャーといえるほどのレベルにはまったく達していませんし、来年以降も出るか出ないかは分からないんですが、今まで謎のベールにつつまれていた部分が多少なりとも明らかになったんですから、それなりの興味は湧きます。見方によれば、この程度の内容では市場関係者は関心を示さないかもしれませんが、もしも、政府部内で SWF について調査・研究をしているのであれば、ソチラでは大いに注目することだろうという気がしないでもありません。

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2008年9月23日 (火)

休日に考える金融と財政に関する雑感

先週は、米国のリーマン・ブラザーズ証券の破綻やメリル・リンチ証券に対するバンカメの救済合併から始まり、AIG への連邦準備制度理事会 (FED) からのつなぎ融資など怒涛のような金融市場の大混乱の1週間で、今週に入って、全米投資銀行のトップ2行であるゴールドマン・サックス証券とモルガン・スタンレー証券が FED に銀行持ち株会社への移行を申請して許可されたり、我が国トップの投資銀行である野村証券がリーマン・ブラザーズ証券の日本を含むアジア太平洋部門を買収することで基本合意に達したとか、三菱UFJ銀行がモルガン・スタンレー証券の第3者割当増資に応じ、最大20%、9000億円規模の出資をして筆頭株主になるとか、まだまだ金融業界再編の激震は続いています。昨年から今年年初にかけて勇名をはせた中東あたりの SWF の名は余り出てこないようです。金融技術の点で周回遅れと称されていた日本の金融機関が、逆に、米国の金融機関が大きく沈むことによりトップに出て来たのかもしれません。ひとつの見方として、私がこのブログで主張して来たように、個別の金融機関の経営危機に際して各個撃破的な対応のスキームしか持たない米国と、健全行であっても政府の判断で資本注入できる包括的な法制度を早くから整備した日本のアドバンテージと考えられなくもありません。まあ、長らく政府の中で官庁エコノミストを称して来た私の見方ですし、金融危機なんて因果は巡る輪の中でまたまた大逆転があったりして、次がどうなるか知れたものではありませんから、自慢話や愛国心を鼓舞するような意見は控えておきたいと思います。
財政に関しては昨夜のエントリーの続きなんですが、短期的な金融市場の売買の情報を提供する民間金融機関などのエコノミストと違って、私はいまだに基本的なメンタリティは官庁エコノミストですから、もう少し時間的な視野の長いイシューを考えてみる時期ではないかと思います。それは貯蓄と投資の、いわゆる IS バランスです。伝統的なマクロ経済学では、家計が貯蓄過剰で IS バランス上は黒字を積み上げ、逆に、企業は積極的な投資活動で貯蓄不足となって IS バランスでは赤字主体となり、政府と海外部門はチョボチョボのバランス状態と考えて来たんですが、歴史的には、四半世紀前のレーガノミックスによる双子の赤字から大きく様変わりして来ています。現在の日本では、高齢化の進展により家計の貯蓄率が低下しているのは確かなんですが、相変わらず、家計は貯蓄を積み上げていて、企業に目を向けると、3つの過剰を克服し終えたにもかかわらず、引き続き、家計と同じように貯蓄過剰主体となっています。見方を変えると、伝統的なマクロ経済学の視点からは日本企業は投資が不足しているわけです。その裏側で、政府が大きな財政赤字を出し、同じように海外部門も赤字、すなわち、反対側の日本から見ると経常収支が黒字になっています。ここに来て、明日の国会で首班指名される麻生総理大臣がさらに政府赤字を増加させるような財政運営をするのは、そもそも私には大きな疑問です。百歩譲って、短期的に政府赤字が拡大する政策を容認するとしても、その先で企業部門の投資拡大を促進するような政策が採用されるべきだと私は考えています。インフラ整備が不十分だった1970年代初頭くらいまでの時期には公共投資がこれに該当したのかもしれませんが、前世紀末の小渕内閣から今世紀初頭の森内閣にかけて壮大な社会実験をした結果、これがもう成り立たなくなったことは明白だと私は考えています。もちろん、金融政策的には低金利の維持は絶対条件です。もうひとつは家計貯蓄を低下させることで、昨夜のエントリーの続きになりますが、高齢者世帯の貯蓄取崩しを促進することです。手厚い社会保障を維持して、勤労時代の貯蓄を取り崩すことなく老後生活を送れてしまう現在の給付を削減するのも一案です。手厚い社会保障により大きな遺産を残せるシステムは格差拡大の助長にもつながりかねません。もちろん、その際に社会的なセーフティネットを整備することが重要なことは言うまでもありません。まあ、経済学の理論モデルであるライフサイクル仮説に現実社会を合致させるように、エコノミストが勝手に考え上げた我田引水的な考え方かもしれませんが、ひとつの選択肢ではないかと私は考えています。

大昔に読んだ本で、田原総一郎『頭のないクジラ』というのがありました。今でもあるんだろうと思います。その中で、カギカッコ付きの「悪」と称して、国民に不人気な政策でも断行する昔の大蔵省の存在をプレーアップしています。ケインズ卿の言うハーベイロード仮説の実践だったのかもしれません。

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2008年9月22日 (月)

麻生総理大臣の財政政策上のインプリケーションは何か?

今日、自民党の麻生幹事長が総裁に選出され、明後日の国会における首班指名で総理大臣に就任することが事実上決まりました。長崎に来て東京の事情も十分把握することが出来ない状態ですので、不完全ではありましょうが、今夜のエントリーでは財政政策における麻生総理大臣就任のインプリケーションを考えてみたいと思います。少し前まで、霞が関で国家公務員をしていた時には、やや怖くて手が出せなかったテーマかもしれませんが、地方に来て大学教授という比較的自由な立場から考えたいと思います。特に、今夜のエントリーではタイトルにあるように財政政策について考えます。
まず、総裁選の結果を見ると、仄聞するところ、2011年度の財政目標を放棄するような発言の続いた麻生幹事長がトップで、同じように2011年度財政目標堅持ながら、増税を柱とする候補が2位、歳出削減を中心に据える候補が3位でした。2011年度にプライマリーバランスの赤字を解消する財政目標を放棄することのインプリケーションを2点上げたいと思います。第1に、政府がカネを握るということです。おそらく、日本国内の経済主体の中で効率性や合理性に関しては決していい点数を取れない政府がカネを握るという意味は、あらゆる意味で好ましくないと私は考えています。まあ、マッサージチェアやカラオケセットを買いまくるとは思いませんが、麻生総裁の地元の九州あたりでは口を開けて待っている人たちがいそうな気がしないでもありません。そもそも、絶対王政の下で、放漫極まりない国王の支出をまかなう徴税をチェックする意味で議会が設置されたという歴史的な経緯がありますから、そう効率的とも考えられていない政府の経済活動をチェックすべき議会選挙を行うことなく、与党内で総理大臣ポストがたらい回しにされていることが大きな原因、との野党の主張にも一理あるのかもしれません。第2に、財政目標を先送りすれば、高齢者が逃げ切る確率が高まるということです。かねてより、このブログでも主張して来ましたが、日本の現在の社会保障制度は高齢者に偏っており、少子化の一因ともなっています。特に、今年前半に話題になった後期高齢者医療制度を見ていると、日本の高齢者はハッキリと負担の増加を拒否しているように私は受け止めています。手厚く保障された高齢者が負担の増加を拒否するのであれば給付を削減するか、別の方法での負担を求めるのが次善の策なんですが、このまま景気後退を主たる理由に、2位候補が主張したような負担増も、3位候補が求めた支出の削減もせずに財政目標を先送りすることは、単に負担を次の世代に先送りすることとほぼ同義となり、逆の見方をすれば、当然ながら平均余命の短い高齢者は負担増も給付減もなしに逃げ切ってしまうことにもなりかねません。

もちろん、日本のような大国の総理大臣ですから、財政政策上の観点からだけ選出されるわけではなく、いろんなミッションが待ち構えているんだと思います。今夜のエントリーではさまざまな総理大臣のミッションのうち、私の専門分野に使い財政政策という小さな一部分を取り上げてみました。

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2008年9月21日 (日)

まだ終わったわけではない!

  RHBE
阪  神010100012 5710
巨  人00008100X 9941

完膚なきまでに打ち負けました。このところ好調だったアッチソン投手までが打ち込まれました。打線もチマチマと1点ずつでは追いつくハズもありません。しかし、まだペナントレースは終わったわけではないと声を大にして言いたいと思います。クライマックスシリーズがあるし、まだまだ戦いは続きます。まあ、私は諦めの早い関西人なんですが、もう少し野球を楽しみたいと思います。昨年の阪神と同じで、巨人もそのうちに落ちて来ます。岡田監督も、もう少し短期決戦の戦い方を勉強しましょう。

がんばれタイガース!

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青山の家族から写真が送られて来る

青山の女房から最近の子供達の写真が送られて来ました。
最初は趣旨がやや不明なんですが、私の誕生会を青山の家でお祝いしたそうです。「主なしとて、誕生会忘れそ」といったところでしょうか。きっと、誕生会の大好きな下の子の発案ではないかと勝手に想像しています。

おとうさんのお誕生会

次に、昨日、下の子が「大決戦!超ウルトラ8兄弟」を見に行きました。おにいちゃんは興味がないといって行かなかったようです。パンフレットの向かって左側はダイゴ隊員がスパークレンスでウルトラマン・ティガに変身するところだと思います。

「大決戦!超ウルトラ8兄弟」を見た下の子

最後に、今日は、おにいちゃんが駒場東邦中学・高校の文化祭に行きました。昨年は一家4人で行って、このブログの9月16日付けにエントリーをアップした記憶があります。今日は下の子がカブ隊の活動でしたので、おにいちゃんだけが行ったようです。

駒場東邦文化祭にておにいちゃん

駒場東邦文化祭にておにいちゃん

青山の方でも楽しくやっているようで安心しました。なお、外出の写真が多いようなので、お出かけの日記に分類しておきます。私の方は阪神が先取点を取って、やや有利に試合を進めているので少し機嫌がいいです。3連敗だけは避けたいところです。

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ミシュラン騒動から見た京都の文化と歴史

昨年東京版が出たミシュランのガイドブックが話題になりました。私のこのブログでも昨年2007年11月20日付けのエントリーで紹介しました。この発表時に、東京版を皮切りに毎年アジアから1都市を選んで新版を出す予定とミシュランから公表されており、次のターゲットは京都であるとの説がもっぱらでした。まあ、当然といえば当然でしょう。失礼ながら、長崎がトップテンに入らないことは、長崎在住の私が保証します。それはさておき、昨年から今年の年初にかけて覆面調査員による調査は終えて、すでにお店と交渉に入っているらしいとのことで、私が最初に見た報道はローカルの京都新聞でしたが、3月半ばの記事に出ていました。最近、これが全国的にも注目されるようになり、先日の朝日新聞にも取り上げられていました。ミシュランに協力するしないで決して論争になっているわけではないと思いますが、それなりの騒動の雰囲気をメディアは醸し出そうとしているのかもしれません。まず、長くなるので引用はしませんが、出現順に京都新聞と朝日新聞のそれぞれの記事にリンクを張っておきます。

考えようによって、賛否は分かれるんでしょうが、ミシュランのガイドブックを離れて、私は京都の文化とは老舗の店主の人たちが言うような京都固有の古くからの文化だけではなく、好むと好まざるとにかかわらず、いろんなものを吸収してきた文化だととらえています。しかし、吸収した上で、水と油のように決して混じり合うことなく、京都固有の文化と外来の文化を併存両立させるのが近代京都の文化ではないかと考えています。ですから、結論を先に書くと、ミシュランの評価を受け入れるところと拒否するところと両方があっていいような気がします。その両方が併存するのが近代京都の文化だろうという気がします。
ただし、何度も「近代京都」と書きましたが、この吸収して混じり合わない京都の文化はせいぜいが最近100年くらい、大雑把に昭和初期以降のものだという気もしますから、平安京に遷都してからの1200年余りを見ると、外来のものを峻拒する文化も根強いことは言うまでもありません。武家の幕府を関東に追いやったのもひとつの拒絶の表れです。というと、室町幕府は京都にあったではないか、との反論がありそうですので先に答えておくと、室町幕府は鎌倉幕府や江戸幕府とはやや異質で、京都に位置しなければならない3つの要因があったと私は考えています。第1に、吉野に南朝があったことです。新幹線も飛行機もない時代で、京都と吉野の間の距離よりも遠い関東に幕府を開く選択肢はなかったように思います。第2に、南北朝が統一された第3代足利義満将軍の時代には義満自身が天皇になる野望を持っていたことです。これは歴史家の一致した見解ではないんですが、私はそう思っています。第3に、義満以降の時代には応仁の乱があって京都を離れられなくなってしまったことです。
話が大きく脱線しましたが、おそらく、明治維新期から昭和初期くらいまでが移行期・過渡期で、それ以前は武家をはじめとする外来のものを峻拒する傾向が京都にはあったんではないかと思いますが、この過渡期からこちらはさすがに外来の文化を受け入れて、決して混じり合うことなく共存並立する文化が育ったように私は考えています。特に戦後はそうだと思います。というのは、昭和9-11年ころまで経済規模としては関西圏が東京を中心とする首都圏を凌駕していたことは経済史家の間では定説になっていて、関ヶ原の戦いの1600年以降は江戸=東京が政治的にも経済的にも日本の中心であったは決して言えないからです。例えば、「くだらない」という表現がありますが、これは関東近郊の産物を指していて、関西=上方から下って来た物品ではないというのが語源になっています。上方から江戸に「くだってきた」ものはいいもので、関東近郊のものは「くだらない」ということを意味していました。
さすがに、近代化の過程とともに第2次世界大戦の国家総動員体制下で、昭和9-11年以降に東京が文字通りの日本の政治経済の中心になります。しかし、すぐに戦争で負けて、京都は近代京都独自の文化や経済を持つようになります。ニッチ産業ではありますが、任天堂やワコールは世界のエクセレント・カンパニーになりましたし、日本を代表する主力産業では立石電機のオムロン、村田製作所、堀場製作所などが興ります。文化的にも、京都古来の文化を残し、まさに、ミシュランが東京に次いでガイドブックの対象になりそうな食文化もあります。また、あらゆる方面で関西の地盤沈下が激しい中で、我が母校の京都大学はいろんな意味で東京大学に次ぐ日本のナンバーツーの大学の位置をいまだに占めていることは万人の認めるところで、これはノーベル賞受賞者数にも表れています。もちろん、前世紀初頭までに人口的にも経済的にもそれなりの集積がなされたスケール・メリットはありましたが、単に、昔からの固有の文化を汲々と守り続けているだけの古典芸能的な観光都市ではないことは確かだと思います。

最初の方で書いたように、古い文化と新しい文化が決して混じり合うことのない水と油のように併存両立しているのが近代における京都の文化ですから、ミシュランのガイドブックに協力するお店と拒否する老舗も併存できるのではないかと私は考えています。先にリンクを張った朝日新聞の記事にあるんですが、ある料理評論家が「東京版では和食の三ツ星は3店だったが、京都なら15店はいくだろう」と発言しています。果たして、ミシュランからガイドブックが出版された暁には何店掲載されるのか、そもそも、出版できるのか。とっても興味深いと思っています。

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2008年9月20日 (土)

長崎平和公園を訪ねる

九州では台風13号もすっかり遠のき、いいお天気でしたので今日は午後から平和公園を訪ねました。長崎の爆心地からやや北方の小高い丘の上に位置しています。広島の平和記念公園は川の中州のような場所に位置していたのを記憶していますから、かなり対照的といえなくもありません。長崎の平和公園は丘の上ですから、長い階段を上がるとまず平和の泉があります。

長崎平和公園・平和の泉

まあ、ハッキリいって、何の変哲もない単なる噴水なんですが、上の写真にもチラと見える通り、「のどが乾いてたまりませんでした」から始まる詩が石に刻まれており、原爆投下やその直後に悲惨な状況で亡くなった方々の水に対する思いが偲ばれます。

長崎平和公園・平和祈念像

次に、何といっても、平和祈念像です。長崎に住んでいながら、こんなことをいうのも気が退けますが、私なんかのように長崎に詳しくない人間が長崎と聞いてまっ先に思い浮かべるのがこの平和祈念像ではないでしょうか。1955年、原爆投下から10年たった長崎原爆の日の前日に除幕されたそうです。作は彫刻家の北村西望先生で、私は井の頭公園にある北村西望彫刻館を訪れたことがあり、20年以上も前の大昔ですので記憶は定かではありませんが、この平和祈念像の原型が展示されていたのを覚えています。

私はもちろん戦後生まれもいいところですし、それなりの規模の都市としては例外的に戦争被害の少なかった京都の片田舎に生まれ育ち、完全に戦後復興なった後の世界規模の大都会である東京で仕事をして来ましたので、長崎に来て改めて、戦争の悲惨さや平和の尊さを感じ取り、そして何よりも、原爆や核兵器の残虐性や非人道性といったものに触れることが出来たような気がします。

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2008年9月19日 (金)

基準地価に見る長崎の土地価格

昨日、国土交通省から今年の基準地価が発表されました。7月1日時点での調査結果です。全国の全用途平均で前年に比べて▲1.2%下落して、全国の基準地価のマイナスは17年連続となりました。全国の基準地価は2003年の▲5.6%下落を底に、昨年まで下げ幅が縮小していたんですが、今年は昨年2007年の▲0.5%下落から下げ幅を広げる結果となりました。昨年16年振りに上昇に転じた全国の商業地なんですが、今年は▲0.8%の下落となったほか、住宅地の下げ幅も5年振りに拡大しています。ただし、引き続き、東京、大阪、名古屋の3大都市圏では3年連続の上昇が続いており、地方圏との格差がみられます。ただし、3大都市圏でも上昇幅は縮小しています。昨夏のパリバ・ショックから続く金融市場の混乱と景気後退の影響です。少し前までミニバブルとさえいわれていた都心部でも下落地点が出るなど、地価の低迷が鮮明になって来ています。

住宅地2007年上昇率2008年上昇率2008年地価
東京圏+4.8+1.61,580
福岡県▲2.4▲1.9243
長崎県▲3.5▲3.3167

上の表は、昨年と今年の基準地価のうち住宅地の地価の上昇・下落率を東京圏と九州の福岡県・長崎県で見たものです。単位は上昇率がパーセント、地価は平米あたり千円です。一番右の2008年地価は調査地点のうち、もっとも地価の高かった住宅地の地価です。東京圏では私の家族の住む港区のうちの青山地区から取っています。福岡県は福岡市中央区、長崎県は長崎市を対象に検索しました。
大学にいると景気実態が実感として感じられないんですが、やっぱり、長崎県は福岡県と比べても地価の下落率が大きくなっています。それから、そもそも地価を東京と比較すること自体に大きなムリがあると思いましたので、一応、中間地点的に福岡も並べてみました。さすがに、青山と長崎ではラクに1ケタ違うのが見て取れます。ただし、私の実感からすれば、地価をみる限り、福岡との差はそれほど大きくないと感じています。大雑把に青山とは10倍の開きですが、福岡とは1.5倍です。東京都心部と10倍なら、福岡とは3-5倍くらいの差があってもおかしくないというのが私の実感です。ひとつの要因として、長崎は山がちで平坦な土地の希少性が高いんだろうという気がします。傍証でしかないんですが、長崎市内には不動産屋さんがとっても多いと私は感じていて、それだけビジネスチャンスがあるということなのかもしれません。もっとも、散髪屋さんもとってもたくさんあり、これはよく分かりません。

大学を早々に出て、帰宅も早かったんですが、どうしても東京ドームの野球に目が行きがちになり、やや冴えない試合展開のため散漫なエントリーでした。

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2008年9月18日 (木)

北京オリンピックを振り返って

北京オリンピックはとっくに終わって、パラリンピックの方も昨日で閉幕しましたので、このところ、米国の金融危機を取り上げていたんですが、今夜は大きく方向を転換して、北京オリンピックを軽く振り返りたいと思います。まず、北京オリンピックにおける国別のメダル獲得状況については以下の通りです。なお、このデータは Yahoo! のサイトから取っています。そんなにデザインのセンスはよくないんですが、積上げ棒グラフの色で金銀銅のメダルの内訳を想像して下さい。金メダルの獲得数によってソートしてあります。

国別獲得メダル数トップ30

7月3日に「経済学で北京オリンピックのメダル獲得数を予想する」と大げさなタイトルで会計事務所の PricewaterhouseCoopers (PwC) とコロラド大学ジョンソン准教授の予想を取り上げましたが、大雑把に、金銀銅の別は考慮せずに、上のグラフの10位のフランスまでのメダル獲得数のみの相関係数を取ると、PwC が0.88で、ジョンソン准教授が0.83でした。ジョンソン准教授の予想については米国のメダル数が100を超えるとした点はフィットがよかったんですが、ロシアを過大評価し、豪州とドイツを過小評価している傾向がありました。その点で、PwC の予想は偏りなくフィットしていた印象があります。でも、どちらも大きく下に外したのは英国で、両者ともメダル数28を予想していたんですが、大健闘の結果、予想の倍を超える67のメダルを獲得したりしました。
さて、我が日本なんですが、両者の予測とも30を超えて、アテネ並みの検討を期待してくれていたんですが、結局、25のメダルに終わりました。私が応援していたオグシオはメダルなしに終わりましたし、野球もそうでした。柔道に至っては、ネット上では「東原亜希伝説」なんて怪しげな都市伝説めいた話まで飛び出し、谷選手が何とか銅メダルを取ったり、他の選手もいくつかメダルを取りましたが、アテネ大会と比べて大きくメダル数を減らしたことは事実です。
私は格闘技にはまったく興味がないので、柔道やレスリングには目が向かず、最も感動したのはソフトボールの金メダルで、次が水泳の北島選手、3番目に陸上の400メートルリレーといったところでした。フェンシングも注目を集めたんですが、格闘技かどうか微妙なところかもしれません。野球も毎夜のごとく熱心に観戦したんですが、結果がイマイチでしたので、感動の対象外かもしれません。オグシオは残念でした。世間的に見ても、例えば、アメーバニュースのサイトが「今年のオリンピックで感動した種目は?」というアンケートを実施したところ、(1) 水泳、(2) 柔道、(3) 陸上、(4) ソフトボール、(5) その他、となっていますので、大雑把に、こんなカンジかと思います。なお、アメーバニュースのアンケートは2万人超の人が回答していますから、もちろん、重複回答は大いにあり得ますが、統計的に見ても、日本国民の総意を十分有意に反映した結果だという気がします。

今日のニュースでもワコビアとモルガン・スタンレー証券が合併の交渉を始めたとの記事があって、昨日から今日のマーケットも NY、東京とも大きく株価を下げているんですが、今週は連夜のように米国発の金融危機を取り上げて来て、ハッキリいって、キリがありません。このブログで経済を評論するのは確かなんですが、私は官庁エコノミストであったり、大学教授であったりしますから、相場の話は詳しくもないし余りしたくないので、そろそろ話題を切り換えようと考えて、今夜のエントリーは少し軽い話題で北京オリンピックの総括を取り上げてみました。

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2008年9月17日 (水)

打撃戦でも中日に快勝♪

  RHBE
阪  神421200020 111270
中  日001320000 6831

米国の金融危機を取り上げたお堅いエントリーの後は、グッとくだけて阪神の勝利を祝います。今夜は打撃戦で打ち勝ったので、私は特にうれしいです。
6時半ころに大学を出る際に、研究室でチラリとネットを見て野球の途中経過をチェックします。まあ、厳密にはいけないことかもしれませんが、社会通念上、6時半近くの帰り際に、この程度のことは許されるという感じでしょうか。それはともかく、1回表にいきなり鳥谷遊撃手のグランドスラムが飛び出して、これは今夜は楽勝だと思って帰宅すると、私がネットでチェックし始めるとともに中継ぎ投手が打たれ出し、点差は一気に3点まで縮まってしまいました。打線は相変わらず尻すぼみかもしれないと心配していたんですが、6回ウラから登板のアッチソン投手の見事な火消しで三者凡退に抑えてくれます。その次の攻撃でアッチソン投手に打順が回りましたが、もちろん、代打を送る気配もなく、ついでに、アッチソン投手に打つ気なしとニッカンスポーツ新聞のサイトのリアルタイム速報に出ていました。6-7回をアッチソン投手が抑えると、5点差にもかかわらず、8回ウィリアムス投手、9回藤川投手を出すんですから万全です。
打線の方に目を転ずると、1回の鳥谷遊撃手のグランドスラムの後も、序盤で着実に加点しました。尻すぼみかと心配したんですが、8回にはアニキ金本外野手のツーランでダメ押し点を取って、久し振りの2ケタ得点でした。打線も奮起すれば、これくらいは出来るんです。我がタイガースの中継ぎと抑え投手からすれば、2ケタ得点すれば勝ちは間違いないところです。後は、サイクルヒットに向けてシングルを残すのみとなった鳥谷遊撃手の8回の最終打席に私は大いに注目したんですが、さすがに、金本外野手のツーランの直後で力が入ったのか、セカンドゴロに終わってしまいました。そうそうはない機会なので、とっても残念でした。それから、またしても関本内野手がデッドボールを食らったようなので心配したんですが、その後も元気に出場を続けていますのでひと安心です。
なお、今夜からエントリーの最初にスコアボードが登場しました。CLAP さんのサイトにあるのをマネッこして書いてみました。ソースを送りいたたき感謝しています。私の方で分かる範囲で少し手を加えてあります。

東京ドームではマジック復活目指して、
がんばれタイガース!

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世界の金融危機はまだ続くのか?

3月のベア・スターンズ証券、今月のファニーメイとフレディマックの GSE に続いて、私が第3波の金融機関の経営危機と呼んでいるリーマン・ブラザーズ証券、メリル・リンチ証券、保険の AIG (American International Group) の3社の経営危機については、すでにこのブログでも取り上げたように、リーマン・ブラザーズ証券は連邦破産法の第11条を申請し、メリル・リンチ証券はバンカメに吸収されて、最後に残っていた AIG は連邦準備制度理事会から850億ドルの融資を受けることにより、2年間の融資の期間内に政府の管理下で資産売却や事業の整理を行うことで決着しました。まず、AIG への融資に関する記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

米政府・連邦準備理事会(FRB)は16日、米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に最大850億ドル(約9兆円)のつなぎ融資を実施すると決めた。見返りとして同社の79.9%の株式を取得できる権利を政府が確保することにし、事実上、政府の管理下で再建にあたる。米国発の金融危機を防ぐ狙い。一方、FRBは同日、最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を現行の年2.0%のまま据え置くことを決めた。
AIGへのつなぎ融資は2年間で、AIGの全資産を担保にする。金利はロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の3カ月物に8.5%上乗せした水準。AIGはつなぎ融資で資金繰りをつけ、時間をかけて資産売却し融資を返済する。

LIBOR に850ベーシス上乗せした金利にも驚きましたが、これにより、巨大な保険会社だった AIG はかなりの程度に解体され、もうからない日本法人なんかは売却されたりするのかもしれません。投資銀行と商業銀行だけでなく、保険会社も巻き込んだ金融機関の大規模な再編が生じることは言うまでもありません。また、記事の引用はしませんが、リーマン・ブラザーズ証券についても、投資銀行業務の部門は英国バークレイズ銀行への売却の交渉が進んでいるような報道もあります。昨年8月のパリバ・ショックに端を発したサブプライム・ローン問題による米国金融機関の経営危機は、私の考えるように第4波がある可能性を残しつつも、やや収束に向かう可能性があります。
しかし、次に金融機関が経営危機に陥る可能性を2点指摘しておきたいと思います。第1は、同じくサブプライム・ローン問題を起点として欧州の金融機関が経営危機に見舞われる可能性です。最近ではディスクロージャーという方が分かりやすくなった情報開示の点で、欧州の金融機関は米国よりややクローズな点が指摘されていますので、本格的な不良債権処理の段階で、ひょっとしたら、びっくりするような情報が公開される可能性は排除できません。さらに、昨夜のエントリーでも投資銀行と商業銀行の違いについて指摘しましたが、実は、投資銀行と商業銀行に違いがあるのは英米と米国の占領下にあった日本くらいなもので、大陸欧州はいわゆるユニバーサル・バンキング制度を取っているので、投資銀行業務における不良債権のために経営がピンチになれば、即、商業銀行部門の決済業務に影響が及ぶ可能性もなしとしません。私は詳しくないものの、英米のように会社ごとにファイアーウォールを設けているほどではなくても、社内的にチャイニーズウォールを設けたりして、利益相反や決済業務への影響は最小限に食い止められるんではないかと思いますが、それにしても、ユニバーサル・バンキングの銀行だけに決済の観点からはリスクがあるような気がしてなりません。
第2に、サブプライム・ローン問題を起点とするのではなく、現在も進行中の商品市況の下落により金融機関の経営危機が発生するリスクも考慮すべきです。日本では原油価格の下落を歓迎する意見も聞かれますが、金融の観点から見ると、それほど単純な現象ではありません。日本の銀行における不良債権は土地が起点で、米国の不良債権は住宅が起点でしたが、次の不良債権は原油などの商品を起点とする可能性が十分あります。資産価格の下落という意味では同じです。原油などの商品の場合は、米国の住宅ローンほどの複雑な証券化の過程を経ていないように見受けられますので、コトは単純かもしれませんし、米国の住宅ローンから組成された証券市場ほどの規模があるわけではないんですが、ここ2-3年の商品市況の上昇はかなりの程度に需要にサポートされていたとはいえ異常でしたので、限界的に商品価格を決めて来た途上国や新興国が米国の景気後退に合わせて景気を減速させるとすれば、市場規模は小さいながらも上げ幅が米国の住宅とは比べ物になりませんから、巨大な損失を計上する金融機関が現れても私は不思議に思いません。

グローバル化が進んだ世界経済の中でも、金融市場はもっともグローバルに動く市場のひとつですし、金融市場の混乱から実物経済へのネガティブな波及も大きくなっているように見受けられます。ゴルディ・ロックス経済を支えて来た米国の資本と中国の労働力のうち、前者が大きくコケたんですから影響は甚大です。今夜のエントリーのタイトルへの回答は、「世界的な金融危機はまだ続く」ということなのかもしれません。

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2008年9月16日 (火)

米国の金融危機をどう考えるか?

第3波の米国金融機関の経営危機がリーマン・ブラザーズ証券とメリル・リンチ証券、AIG で生じて、結局、リーマン・ブラザーズ証券は連邦破産法第11条を申請し、メリル・リンチ証券はバンカメに救済合併されるに至りました。市場は売り一色で、昨日の NY 市場のダウ平均株価は▲504.48ポイント、▲4.4%の下落となり、東証の日経平均株価も前週末比▲605円4銭 (▲4.95%) 安の1万1609円72銭まで下落しました。日本についていえば、ほぼ2005年の郵政選挙前の水準に戻ったといえます。景気後退が拡大する懸念から原油はバレル100ドルを大きく割り込み、為替では米ドルが売られています。当然、予想された展開なんですが、今夜のエントリーでは少し論点を整理しておきたいと思います。
まず、かなり以前の2006年2月6日付けのエントリーで黒木亮『巨大投資銀行』を取り上げた際に強調したんですが、本来、投資銀行 (investment bank) と商業銀行 (marchant bank) ではリスクの取り方が違います。投資銀行は組成した金融商品を投資家である顧客に売却し、リスクは投資銀行ではなく顧客の投資家が負うのに対して、商業銀行は顧客から預金という形で資金を預かり、それを商業銀行のリスクで投資します。実は、この観点をアマゾンのレビューに投稿した直後に黒木さんご本人と話をする機会があり、実際の投資銀行業務では自己売買も多くて、リスクに関する私の批判は当たらないと指摘されたこともあったりしました。それはともかく、商業銀行には投資銀行にない特徴がもうひとつあります。ペイオフによる上限はあるとはいえ、商業銀行の顧客は基本的にノーリスクの預金を決済資金として使っているということです。ですから、投資銀行が破綻しても直ちにシステミックリスクを生ずることはありませんが、大手の商業銀行が破綻すると決済不能が連鎖することにより、システミックリスクの可能性が大いに生じます。細かい点を付け加えると、ペイオフ上限まではノーリスクと見なされている預金も決済対象でなくても保護する必要が生じます。
ですから、政府と中央銀行の金融当局からすれば、システミックリスクを回避する観点から、投資銀行が破綻した場合に、その投資銀行が販売したり保証したりした金融商品がどの程度まで決済不能が波及するか、商業銀行の場合は規模はともあれ決済が不能に陥ることは明白ですから、いずれにせよ、決済が出来なくなる規模の広がりを注視することになります。今回のリーマン・ブラザーズ証券の場合はデリバティブ取引の金融商品などの決済がアブナイと言われていますが、投資家が損失をこうむって終わりなのか、連鎖的に決済不能状態が市中銀行や事業会社などに広がるのかが焦点だと私は考えています。その意味で、比較的大規模な商業銀行に経営破綻が拡大するかどうかが注目点とも言えます。もちろん、システミックリスクのような大規模な危機は頻繁には生じませんから、金融機関の経営悪化による株価の下落、事業会社に対する資金供給が円滑に進まないことによる景気の悪化なども重要であることは言うまでもありません。
3月に米国第5位の投資銀行であるベア・スターンズ証券が事実上の破綻をした時、NY 連銀による300億ドルのノンリコースの特別融資枠を設定した上で、俗な言葉を使えば、お土産を付けた上で、JP モルガン・チェース銀行による救済が実現したんですが、今回、メリル・リンチ証券はバンカメに救済合併されたものの、リーマン・ブラザーズ証券は連邦破産法11条の適用を申請し、いずれも、ベア・スターンズ証券の時のように公的資金は投入されませんでした。現時点で、いろんな内部情報に接する機会がないこともあり、この違いがどこにあるのかが私には理解できません。第5位のベア・スターンズ証券が公的資金で救済されるのであれば、その上位行であるメリル・リンチ証券やリーマン・ブラザーズ証券も公的資金で救済されると考える向きも少なくなかったと私は想像しています。もちろん、メリル・リンチ証券については、救済する方のバンカメが公的資金は不要と考えたのかもしれませんし、各投資銀行によって資産構成に違いがあることから、ベア・スターンズ証券はシステミックリスクの危険があった一方で、リーマン・ブラザーズ証券は顧客の自己責任で済ませられる可能性が大きかったのかもしれません。言うまでもなく、金融機関のモラルハザードを助長しないという観点も含まれていたことと想像されます。さらに、ひょっとしたら、米国の大統領選挙が2ヶ月後に近付いているのも何らかの関係があるのかもしれません。いずれにせよ、今回の両社については "too big to fail" が適用されなかったわけで、何らかの意味で "big" ではないとの判断が下されたといえます。

商品価格の下落は原油などに資金を投入している金融機関からすれば経営危機の引き金ともなりかねず、ひょっとしたら、第4波の金融機関の経営危機が生ずる可能性を否定できない中で、9月9日のエントリーで取り上げた GSE に対する救済策や今回のような、individual かつ passive な救済策を各個撃破的に経営危機のつど策定するのではなく、9月9日のエントリーの結論の繰返しになりますが、商業銀行や保険会社も対象に含めた comprehensive かつ proactive な救済策スキームが模索されるべき時期が近付いていると私は考えています。

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2008年9月15日 (月)

やや打線が向上して中日にボロ勝ち♪

今夜は機嫌よく中日戦をネット観戦していたんですが、7時の NHK ニュースでリーマン・ブラザーズ証券が連邦破産法第11条を申請したと聞いて、ソチラの情報を収集している間に、私のひいきの今岡選手のホームランなんかでトントンと順調に中盤で加点して、まあまあ、ボロ勝ちとまで言わないにしても、順調な勝ちパターンに乗りました。打線が7点取れれば、現在のピッチングスタッフでは勝ってもらわないと困ります。
それにしても、ネットでスコアを見ているだけでは、やっぱり、詳細な展開は理解できないと限界を悟りました。中日の試合運びをあげつらうわけではありませんが、3回ウラの中日デラロサ選手のノーアウト1-2塁からの盗塁失敗とか、5回ウラの攻撃も李外野手の走塁死とかも、状況がサッパリ分からないので不可解極りありません。単に、相手チームのアホな走塁による拙攻で済ませておくしかありません。
何はともあれ、3点リードして8回にウィリアムス投手、9回に藤川投手をマウンドに送り込めば、遠くからネットで観戦している私も大いに安心です。今岡選手が2安打、うち1ホーマーならいい出来です。岩田投手にもう少し長く投げて欲しかった気もしますし、鳥谷遊撃手の調子が落ちて来ているようなのと、関本内野手がまだ出て来ないのが少し心配です。巨人が勝っているようですが、もはや関係ないと私は考えています。心はポストシーズンのゲームに飛んでいたりします。その意味で、この3連戦と次はドーム球場で天気も関係ありませんし、クライマックスシリーズで当たる可能性の高い中日や巨人をしっかり叩いておきたいところです。まあ、広島に負け越したのは忘れましょう。

ということで、ヒーローインタビューを聞けない私は勝ちを見届けて長風呂しますが、明日も、
がんばれタイガース!

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未曽有の金融危機の始まりか?

米国第4位の投資銀行であるリーマン・ブラザーズ証券が連邦破産法第11条の適用を申請しました。私には、Chapter 11 に file したという方がよく理解できます。米国財務省や連邦準備制度理事会も巻き込んだ救済策がまとまらず、法律による整理を選んだということです。同時に、メリル・リンチ証券もバンカメに身売りすることを発表しました。私は休日でボケッとしていて、7時の NHK ニュースで初めて知りました。
米国では破産法制が整備されているので、今回のリーマン・ブラザーズ証券の破産法適用は1997年の我が国の山一証券の破産・清算とは違う道を歩みそうな気もしますが、取りあえず、発表の直後に開いた欧州などのマーケットは売り一色になっているようです。当然です。我が国の金融庁も日本法人のリーマン・ブラザーズ証券に対して、金融商品取引法に基づく資産の国内保有命令を出したようです。日本法人の資産が米本国や海外に流出して、国内の債権者や顧客に損失を生じる可能性があるからです。

各新聞社のトップサイトも32ポイントの大見出しで報じているところが多いように見受けました。私がよく見ているサイトを整理すると以下の通りです。

私は先日9月9日のエントリーで、「年内にも、第3波の金融機関の経営危機が迫っている」と書きましたが、年内どころか、今月内の出来事だったようです。現時点では、今後の展開や影響度合いなどは判然としませんが、しばらく金融市場の混乱が続くことは明らかで、リスク資産から安全資産への資金シフトが生じることも確実と考えられます。また、明日の米国連邦準備制度理事会 (FED) による公開市場委員会 (FOMC) では、金利据置きが大勢の予想だったんですが、緊急の流動性供給とともに金利の引下げも選択肢としてあり得ると直感的に私は感じていたりします。

ひょっとしたら、未曾有の金融危機の始まりかもしれません。でも、今夜のところは、取りあえず、第一報でここまでとし、必要に応じて、続報をアップしたいと思います。

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伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』を読む

伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』思ったよりも時間がかかってしまいましたが、伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』を読み終えました。結論を先に書くと、ウーン、もうちょっと、期待したほどではなかったかもしれないということで、4つ星くらいの感じです。同じように、無実の30歳過ぎの男性が警察の追及から逃れるという物語で、先週、読書感想文の日記をアップした平野啓一郎『決壊』は文句ナシの5つ星だったと思うんですが、1つとはいえ星が欠けるのは、伏線を多く配置しているわりには構成が少し甘いという気がしないでもないからです。主人公の細かい癖、例えば、お茶碗にご飯粒を残すとか、エレベータのボタンを親指で押すとか、父親譲りの痴漢に対する嫌悪感とか、細かいディーテールにこだわっているのはよく分かるんですが、大きな構成がどうかな、という気がしないでもありません。すなわち、首相公選制が実現されているとか、セキュリティポッドによる監視体制が成立しているとか、近未来の SF っぽい舞台設定とはいうものの、少し現実味に欠けるくらいに主人公に有利にコトが運んでいるように感じられます。本の最後の謝辞に作者自身が「現実とはかけ離れた部分も多い」と書いているのは謙遜としても、主人公が逃げおおせることについては、確かに、「現実とはかけ離れた」有利な条件が設定されているのが、構成が甘いと感じた大きな原因だという気がしないでもありません。書下ろしなんですから、もう少し構成を考える余裕はあったんではないでしょうか。特に、ラストに物語のふくらみが感じられませんでした。大きなどんでん返しやターンオーバーを期待した私には、少し期待外れと映った可能性があります。でも、楊逸『時が滲む朝』の直後に、『決壊』を差し置いてこの本を先に読んでいたら、ひょっとしたら、5つ星と評価してたかもしれません。いうまでもなく水準以上の出来の作品で、十分読みごたえはあったんですが、私が読んだ順番という偶然の要素により『ゴールデンスランバー』には少し厳しい評価になってしまったのかもしれません。なお、いつもの通り、今日の読書感想文にもネタバレが出て来ますので、特に、未読の方が読み進む場合は自己責任でお願いします。
まず、何の物語かというと、思い切りネタバレから始めますが、首相公選制が実現された未来の日本において、仙台に地元入りした金田首相がパレードの最中にラジコンヘリに積まれた爆弾により暗殺され、その犯人と警察に特定された無実の青柳雅春が逃げる物語です。大学時代の友人の森田森吾、樋口晴子、小野カズ、あるいは、職場の先輩だった岩崎英二郎、連続刺殺犯のキルオこと三浦、裏社会の人間を自称する入院患者の保土ヶ谷康志、果ては、花火会社の轟煙火や暴漢に襲われたところを助けたアイドルまで総動員の協力を得て、最後は、整形外科で顔を変えて逃げおおせてしまいます。米国などではギャングなんかから逃げる物語は少なくなくて、私が印象に残っているのはジョン・グリシャム『ペリカン文書』などがあり、コチラは最後は FBI に助けてもらって、証人保護プログラムにより、過去の人生を断ち切って新しい顔と戸籍なんかを与えられて逃げ切るというものですが、『ゴールデンスランバー』では警察自身、あるいは、もっと大きな政府が青柳雅春を犯人に仕立て上げ、それも時間をかけて入念に仕立て上げたことが示唆されており、警察に助けを求めることすら出来ないという点が大きく違っています。余りにうがった見方かもしれませんが、日本と米国とで政府に対する信頼性に大きな違いが、ひょっとしたら、あるのかもしれないなどと国家公務員に戻った思考で考えてしまいました。
『決壊』については、デニス・ルヘイン『シャッターアイランド』のような正常と異常の狭間の大どんでん返しがあるかもしれないと考えてしまいましたが、この『ゴールデンスランバー』については、主人公の付き合っていた大学時代の友人の樋口晴子の旦那さんが何か曲者めいていて、ここを起点に大きな逆転ストーリーが始まるかと考えないでもなかったです。『決壊』ではこの緊張感が最後まで持続し、最後の最後に論理的に正しい結末を迎えたような気がしますが、この『ゴールデンスランバー』では途中でそれはないなと達観しました。このあたの緊張感が最後まで持続しないことが、構成が甘くて星ひとつ少ない小さな理由のひとつだったりします。それから、「事件から二十年後」を第三部に置いたのも疑問です。構成からして、メインとなる第四部「事件」の前に置くのは当然なんですが、私が編集者なら直前ではなく文句ナシに第一部に置くよう強く作者にオススメします。これまた、構成が甘いと考える小さな理由のひとつです。それから、青柳雅春の側の視点で書かれている小説なので仕方ないんですが、国家や政府の側の、森田森吾のいうところの「大きな陰謀」について、ヒントなりとも欲しかったような気がします。第三部の「事件から二十年後」で少し触れられてはいるんですが、物足りない気がするのは私だけでしょうか。もちろん、最後の第五部で、岩崎英二郎の妻に夫の浮気を告げ口に来たり、主人公の実家に書初めのような「痴漢は死ね」と書かれた毛筆が郵送されて来て、青柳雅春の母が息子が生きていることを察して満面の笑みから泣き崩れるところなんかは秀逸なんですが、もう少しふくらませて欲しい気もしないでもありません。主人公の青柳雅春の逃亡を直接間接に手助けした人の間で、何らかの意味で逃亡成功を喜ぶ心情を共有できるような連帯感みたいなものとか、あるいは、日本にも時効というものがありますから、もっと時間的に先の話で関係者に青柳雅春の逃亡成功と生存を知らしめるとか、何か手があったような気がしないでもありません。
最後に、「逃げる」とか、主人公の父親のいう「ちゃっちゃと逃げろ」とか、森田森吾が暗殺事件の直前に青柳正春にいった言葉の「無様な姿を晒してもいいから、とにかく逃げて、生きろ。人間、生きててなんぼだ。」に凝縮されている哲学について考えたいと思います。というのは、過去の人生を断ち切って新しい顔と戸籍でもって、新しい人生を歩むことにどれだけの価値があるのかが、私くらいの年齢まで人生を経て、家族もあれば親バカでもある人間には疑問に感じないでもないからです。究極の選択として、それまでの人生を捨てるのであれば、もちろん、自殺はもっと悪いんですが、必死になって何か別の方法を考えなくもないような気がします。『ペリカン文書』の主人公の大学院生やこの『ゴールデンスランバー』の主人公の30歳そこそこの年齢の人には新しい人生もアリかもしれませんが、年齢と人生観によりかなり違った結論が出るような気がしないでもありません。その意味で、青柳雅春の新しい人生を暗示した『ゴールデンスランバー』というタイトルを選んだ作者のセンスは秀逸だと思います。ジャズの好きな私が編集者なら、季節感が悪いんですが、「サマータイム」をオススメしていたかもしれません。でも、ネットで書評なんかをいくつか読む限り、ここまで深読みしている読者は少ないように感じています。

世間的には、これからが読書の秋本番なのかもしれませんが、私は私の事情があって、今週と来週はさ来週から始まる大学の後期に備えて、教科書なんかを読み返して講義やゼミのメモを作成したいと考えています。9月に入ってから3冊ほど読書感想文の日記をアップしましたが、短かった私の読書の秋はここで一区切りです。

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2008年9月14日 (日)

誕生日に青山の家族からプレゼントが届く

今日は私の誕生日です。もはや、めでたいという気もせず、すっかりいい歳になりました。でも、青山の家族から誕生日プレゼントが届きました。素直にうれしかったです。モノは阪神タイガースのタオルセットです。下の写真の通りです。球団ロゴの入ったシンプルなバスタオルなどですが、中にはスティッチが帽子を飛ばしてダイビングをしているのもあったりします。ボールを取りに行っているのか、ベースに滑り込んでいるのか、ハッキリしないんですが、一応、縦縞のタイガースのユニフォームを着ていたりします。実は、私はタイガースのバスタオルは独身時代から持っていて今も使っているんですが、当然ながら、かなりボロく擦り切れて来たりしていますので有り難い限りです。

誕生日プレゼントのタイガースのタオルセット

ついでに、今夜は十五夜です。夕食は月見バーガーを食べました。昨日からの雨は明け方までに上がったものの、日中から空には雲が広がり心配していたんですが、9時ころに空を見上げると、ほんのりと真ん丸のお月さんが現れていました。『太平記』より少しマシかなと思ってしまいました。明日から今週は雨がちのお天気の日が続くようです。

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2008年9月13日 (土)

子供達が海城祭に行く

今日は女房が子供達を海城祭に連れて行きました。2年前に私もいっしょに行った記憶があります。私の同僚の息子さんが案内してくれました。女房から何枚か今日の写真が送られて来ました。下のはそのうちの1枚です。おにいちゃんがパソコンを相手に、たぶん、ゲームをしているところだと思います。下の子はそれを見ています。相変わらず、仲のいい兄弟です。今日のエントリーでは写真がいっぱいになってしまいました。

海城祭にてパソコンゲームで遊ぶ子供達

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長崎の石橋を訪ねる

昨日から少しお天気が下り坂なので、3連休初日の今日は昼前から少し出かけます。長崎のややダウンタウン寄りの公会堂近くにある中島川に架かる石橋群を見に行きました。何といっても有名なのは眼鏡橋ですが、中島川には10余りの橋が架かっているそうで、なかなか見事な石橋群を形成しています。まず、石橋を見に行く際の電車の写真です。先週末のエントリーにも書きましたが、単身赴任中は手近に被写体の子供達がいないので電車で代用しています。

長崎の電車

まず、中島川の川沿いにある石橋群を紹介するプレートです。

中島川石橋群

最初の石橋は、何といっても全国的に有名な眼鏡橋です。今日は少し風があったので川面に波がありましたが、水面が静かだと橋が映って双円を描き眼鏡のように見えることから命名されたことはよく知られています。1960年に国から重要文化財として指定を受けています。1634(寛永11)年、興福寺二代住持であった唐僧・黙子如定(もくすにょじょう)の技術指導で架設され、日本最初のアーチ式石橋として、その石橋技術は全国の規範となったといわれています。何度かの大洪水により流失や半壊したこともあります。なお、アーチ状の丸い部分に置かれている石が輪石、その一番上のがいわゆる要石です。

眼鏡橋

次に、袋橋です。眼鏡橋からひとつ下流に架けられています。袋町に架かることから、袋町橋と呼ばれていましたが、明治初期に袋橋と命名されたそうです。

袋橋

3番目に、眼鏡橋のふたつ上流寄りに架かっている東新橋です。なお、この東新橋と眼鏡橋の間には普通の橋が架かっています。私は西新橋から虎の門や霞が関方面はよく知っているんですが、東京の新橋とは直接の関係はないように思います。1982年の長崎大水害により流失したため1986年に昭和の石橋として架設されたそうです。

東新橋

4番目に、芋原橋です。このあたりから読み方が難しくなって来て、「すすきわらばし」と読みます。上の東新橋の下にチラリと見えていたものです。この橋も1982年の長崎大水害により流失したため1986年に架設されたそうです。

芋原橋

最後に、中島川石橋群からは外れるんですが、中島川の支流である西山川に架かる拱橋です。「こまねきばし」と読みます。どうしてこの橋を番外編として取り上げたかというと、本学正門を入ってすぐの敷地内に架かっている石橋だからです。この橋を越えると関係者以外は立入禁止になっていたりするんですが、もちろん、私はバリバリの関係者ですから大学の敷地内に入っています。もっとも、私は正門よりも裏門を利用することの方が多いです。それはともかく、この拱橋は本学経済学部の前身である長崎高等商業学校創立2年前の明治36年の架橋とされています。「手を拱く」や「拱手傍観」などは少しネガティブな印象の熟語を成しているんですが、もともと、腕を組んで上に持ち上げるのは中国式の正式の挨拶ですし、その昔の長崎高商生が腕を組んで思索しながら、この拱橋を渡って教室に向かう姿を想像すると、現在、本学に奉職している私にも感慨深いものがあります。

拱橋

最初に書いたように、お天気が下り坂で、午後から少しパラパラと雨が落ちて来ましたので、少し遅い昼食を眼鏡橋近くのお店でチャンポンをいただいて、夕方前、早めに切り上げました。

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2008年9月12日 (金)

4-6月期GDP改定値(2次QE)は景気後退期の典型的な姿

本日、内閣府から4-6月期の実質GDP改定値が発表されました。エコノミストの業界で2次QEと呼ばれている統計です。先月発表された1次QEから下方改定され、前期比で▲0.6%減、前期比年率で▲2.4%減から、2次QEでは前期比▲0.7%減、前期比年率▲3.0%減となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトからヘッドラインの記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が12日朝発表した4-6月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.7%減となり、8月13日に発表した速報値(0.6%減)から下方修正された。年率換算では3.0%減と、速報値(2.4%減)から下方修正。名目GDPは0.8%減(速報値は0.7%減)、年率では3.3%減(同2.7%減)だった。
実質GDPを需要項目別でみると、民間設備投資が前期比0.5%減(速報値は0.2%減)、個人消費が0.5%減(同0.5%減)、住宅投資は3.5%減(同3.4%減)だった。
内需の寄与度はマイナス0.7%(速報値はマイナス0.6%)、輸出から輸入を差し引いた外需の寄与度はマイナス0.1%(同プラス0.0%)だった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比でマイナス1.5%(同マイナス1.6%)だった。

先週、内閣府から法人企業統計公表後に設備投資の推計方法の変更、すなわち、リース取引に関する会計基準の改正の影響を除去した系列を利用することが公表されましたが、2次QEではこの変更を織り込んでいるようには見受けられません。従って、1次QEからの変更は小幅で市場予想と大きな違いはありませんでした。まず、最近の四半期別実質GDPの前期比伸び率を見ると以下の表の通りです。基本は季節調整済み実質値の前期比伸び率なんですが、アスタリスクを付した民間在庫と外需は寄与度となっています。それから、GDPデフレータは前年同期比の伸び率です。なお、データは正確を期しているつもりですが、コピー&ペーストではなく html でテーブルを組んでいますから、思わぬタイプミスがあり得ますので完全性は保証しません。正確なデータについては、内閣府のホームページを参照ください。

需要項目2007/
4-6
2007/
7-9
2007/
10-12
2008/
1-3
2008/4-6
1次QE2次QE
国内総生産GDP▲0.3+0.2+0.6+0.7▲0.6▲0.7
   民間消費+0.3▲0.0+0.4+0.7▲0.5▲0.5
   民間住宅▲4.3▲7.3▲9.8+4.3▲3.4▲3.5
   民間設備▲1.9+0.4+1.0▲0.1▲0.2▲0.5
   民間在庫 *▲0.2+0.0+0.0▲0.2▲0.0▲0.0
   公的需要▲0.2▲0.4+0.8▲0.3▲0.9▲1.0
   外需 *+0.1+0.5+0.3+0.4+0.0▲0.1
国内総所得GDI▲0.6+0.0▲0.1+0.1▲1.0▲1.2
名目GDP▲0.4▲0.0▲0.1+0.2▲0.7▲0.8
雇用者所得+0.3+0.2▲0.1+0.4▲0.5▲0.4
GDPデフレータ▲0.5▲0.6▲1.3▲1.5▲1.6▲1.5

GDP前期比成長率への寄与度

次に、2005年1-3月期以降の前期比成長率と需要項目別の寄与度のグラフは上の通りです。青の折れ線グラフが実質GDPの前期比伸び率で、積上げ棒グラフが各需要項目の寄与度となっています。2007年1-3月期までほぼ順調な成長を続けて来たんですが、昨年9月のこの時期に発表された2007年4-6月期の成長率が大きく落ち込んでいるのが見て取れます。私も含めて、多くのエコノミストが景気が変調を来たしているのではないかと色めき立った理由がここにあります。その後、今年2008年の1-3月期にはうるう年効果もあって、消費の赤い棒グラフが大きく寄与して、外需の黒い棒グラフも引き続きプラスの寄与を示し、かなりの高成長を記録したんですが、「山高ければ、谷深し」の典型例で、4-6月期は大きなマイナス成長に落ち込みました。長らく景気拡大が続いて来たので、全ての需要項目がマイナスに転じたのは久し振りだという気がします。特に、4月にガソリンの暫定税率が切れたため、黄色の公的需要が大きなマイナスになっています。

国内総生産GDPと国内総所得GDI

上のグラフは先月の1次QEのときに作成したものをリバイスしました。交易利得の寄与度です。青い折れ線グラフが前期比で見たGDPの実質成長率で、赤いラインが同じく国内総所得GDI、緑色の棒グラフが交易利得の寄与度です。この交易利得の寄与度はほぼGDPとGDIの差に近似されます。最近3四半期位は緑色の棒グラフが下に大きく突き出ているのが見て取れます。GDPよりもGDIの方が国内の景気実感を正確に表現していると多くのエコノミストは考えています。ですから、昨年10-12月期や今年1-3月期においては、GDP成長率はそこそこ高かったんですが、GDI伸び率はほとんどゼロ近傍にあって、決して、統計数字ほどは景気が良かったわけではないことがうかがえます。2次QEは今日発表された4-6月期についても、GDP成長率よりもGDIの方がかなり大きくマイナスになっていて、GDP成長率で読み取れる年率▲3%よりも、景気実感や景気実態が悪いことを認識すべきでしょう。

実質雇用者報酬の前期比伸び率

最後に先行きとの関係で雇用者所得と民間消費の前期比をプロットしたものが上のグラフです。水色の棒グラフが雇用者所得で、赤が民間消費です。どちらも前期比ですから、最初の表にある計数を少しさかのぼって取って単にプロットしただけです。ここでもうるう年効果で今年の1-3月期がいずれもかなり高い伸びを示しているんですが、これまた「山高ければ、谷深し」で、1-3月期の反動もあって4-6月期にはかなりのマイナスになりました。それはともかく、注目すべきと私が考えているのは、最近1年から1年半くらいの間、雇用者所得の伸びを民間消費が上回っているパターンが多いように感じるからです。それに対して、この4-6月期はホンのわずかではありますが民間消費の伸びが雇用者所得を下回りました。要するに、ラチェット効果なんかもあるかもしれませんが、家計は所得に比べて少しムリをして消費に回して来たことがうかがわれる一方で、年央移行、その反動が表れる可能性が否定できない点を重視すべきと私は考えています。これまた、従来からの私の主張なんですが、北京オリンピックくらいまでは消費は維持される可能性が高いものの、年央から秋口以降の消費は極めて不透明との見方を裏付けている可能性があります。設備投資については、昨夜、機械受注を取り上げた際にも来年の年央から秋口くらいまでGDPベースの設備投資はマイナスを続けるとの見方を示したところですし、しばらくの間、1年強くらいは景気後退が続く可能性があるかもしれません。気の早い人では現在の景気後退局面は来年1-3月が底で、年度明け以降、日本経済は回復に向かうとの見方もありますが、私は景気後退局面がそこまで早く終わる根拠はまだ見出せていません。

現時点までの月次統計を見る限り、7-9月期には輸出や消費が少し持ち直すことから、GDP成長率は4-6月期の反動もあってプラスに転じる可能性が高いと考えられますが、1次QEの際に指摘したように、本格的な在庫調整が始まれば在庫のマイナスが輸出や消費のリバウンドを打ち消してしまう可能性も否定できません。その先の年度内から年度を超えるくらいのスパンの話になると、商品市況や海外経済の動向に依存する部分が大きいとはいうものの、来年年央から秋口まで現在の景気後退局面が続く可能性が十分あると私は見ています。

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2008年9月11日 (木)

今岡選手の復活弾と押出しでヤクルトに3連続サヨナラ勝ち

阪神タイガース今岡選手

5月25日に2軍に落とされてから、109日振りに今岡内野手が1軍に復帰しました。しかも、1回ウラに一時は同点に追いつくツーランをかっ飛ばしてくれました。もっとも、その後は冴えませんでしたが、最後の最後にサヨナラ押出しのフォアボールを選びました。メンタルな面でそんなに強くない選手かもしれませんが、ホームランが出て一安心、さらに、サヨナラ勝ちにつながったフォアボールで調子に乗ってほしいところです。私は今岡内野手を東洋大学のころから見ていて、確か、メジャーに渡った青山学院大学出身の井口選手と同級生くらいで、大学の全日本チームでは三遊間を組んでいた記憶があります。新井内野手が今シーズンは難しそうなので、右打者の今岡選手には早く本来の調子を取り戻して、ペナントレースの最終盤とポストシーズンに貢献してもらいたいものです。
今日の試合は、一塁手として連夜のスタメンに顔を連ねた安藤投手は別にして、いきなり今岡内野手を3番で使ったり、昨日からウワサになっていたリーソップ投手を先発させたりと、まあ、悪く言えば、捨てゲームとまでは言わないとしても、2試合勝ったんだから負けてもいいや的なオーダーというか、よく言えば、余裕を持っていろいろと試してみたスタメンだと思います。途中交代でも、能見投手を出してみて押出しを演じたり、まだ左腕の石川投手が投げているにもかかわらず林外野手を起用して、キッチリ併殺打に取られたりと、少し疑問の残る選手起用だった気がしないでもありません。でも、今岡選手はホームランを打ちましたし、ウィリアムス投手も9回をピシャリと3人で抑えました。特に、リーソップ投手は5回99球で2失点ですから、昨夜、拙攻しまくったヤクルト相手とはいえ、ローテーションの谷間で使えそうな気がしないでもありません。もちろん、フォアボールは多いし、ワイルドピッチもあって、荒れた投球の印象がありますが、適度の荒れ球は2回りくらいなら通用するように思わないでもありません。
それにしても珍妙な3連戦でした。3連続のサヨナラ勝ちで、しかも、そのうちの2試合は押出しのサヨナラです。不思議と1回と9回以外は音なしの構えで点が取れません。3連戦最後の今夜はいろいろと試した結果、それなりに収穫があったようにも感じます。林外野手は調子を落としているようですが、代わって、葛城選手が打棒を取り戻しつつあります。我がタイガースの選手層の厚さを実感します。ところで、昨夜、3つもデッドボールを食らった関本内野手はとうとう出ませんでしたが、やっぱり何かあったりするんでしょうか?


明日からの広島戦では2-8回も点が取れるように、
がんばれタイガース!

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機械受注統計をどう見るか?

本日、内閣府から7月の機械受注統計が発表されました。民需の船舶と電力を除くコア機械受注と呼ばれる指標は前月比▲3.9%減と、▲4%程度を見込んでいた市場の事前コンセンサスにジャストミートしました。内閣府では基調判断を「弱含んでいる」に据え置いています。3月からずっとこのままだという気がします。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインなどに関する記事の最初の2パラだけを引用すると以下の通りです。

内閣府が11日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比3.9%減の1兆428億円となり、2カ月連続で減少。このうち製造業は10.4%減、非製造業は2.4%減だった。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額は4.7%減だった。
7月の受注実績(民需)の内訳をみると、製造業では15業種中8業種が減少し、特に造船業(前月比67.0%減)や石油・石炭製品工業(23.2%減)などで落ち込みが目立った。一方、船舶・電力を含めた非製造業全体では7.4%減。8業種中4業種が減少しており、運輸業(43.8%減)や通信業(22.9%減)などが落ち込んだ。

いつものコア機械受注のグラフは以下の通りです。左軸の単位は兆円、青い折れ線が毎月の季節調整済系列で、赤が後方6カ月移動平均です。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近は私の勝手な判断で昨年2007円10月をピークとしています。

コア機械受注

今日の機械受注統計だけでなく、業界団体から発表されている最近の工作機械受注産業機械受注も含めて、マイナス傾向がはっきりしてきたように感じます。これらの統計データはいうまでもなく GDP の設備投資の先行指標ですから、私の直感では来年2009年年央から秋口くらいまでは設備投資の減少が続く可能性が高いように見受けられます。

機械受注のうち外需

上のグラフはコア機械受注で除かれている外需をプロットしたものです。コア機械受注と同じで、左軸の単位は兆円、青い折れ線が毎月の季節調整済系列で、赤が後方6カ月移動平均です。景気後退期の影の付け方も同じです。もちろん、輸出向けですから国内の設備投資の先行指標にはなりませんので、そんなに注目されないんですが、海外の経済動向を知る上で参考になりますし、コアに2四半期ほど先行する経験則もあります。まず、一見して分かるのは、コア機械受注が名目であるにもかかわらず、ここ2年間でほぼ1兆円の周辺で推移しているのに対して、外需は昨年までの景気拡大局面で以前の5000億円レベルから一気に倍増したことです。細かい仕向け地別は見ていませんが、新興国の力強い経済成長を反映している可能性を指摘しておきたいと思います。しかしながら、日米経済の景気後退局面入りと同時に、減少傾向がコア機械受注よりも鮮明になっています。繰返しになりますが、経験的に、機械受注の外需はコアに2四半期ほど先行しますので、GDP ベースの設備投資も来年年央から秋口くらいまでマイナスが続く可能性があります。
あえて明るい面を見出そうとすれば、ボリューム的には小さいんですが、、原動機や鉄道車両の受注が総じて好調を維持しています。商品市況の高騰の中でも相対的に影響の大きい原油価格上昇により、原子力発電や鉄道への需要シフトをもたらしつつある可能性が指摘できます。もちろん、ボリュームが小さいですから、原油高の影響をモロに受けている運輸や造船からの受注がほぼ半分近くに減少している今の段階では、設備投資の減少を押し止めるだけのパワーはないものと考えられますが、直接的なエネルギー代替需要だけでなくエネルギー効率の優れた機械への代替需要がこれから増加する可能性も十分あります。

フォーマルな分析なしにグラフのシェイプだけでモノを言うのは危険なことを承知しつつも、ついついやってしまうんですが、コア機械受注のグラフを見る限り、やっぱり、今回の景気後退は浅くて長い気がしています。

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2008年9月10日 (水)

連夜のサヨナラ勝ちを祝す

連日連夜でしんどい試合が続いています。盤石を誇っていた中継ぎ陣に少しほころびが見え始め、打線も湿りっ放しで先制しても追加点が奪えずに、中盤から終盤に追いつかれては、最後の最後に勝つのはいいんですが、阪神ファンとしては強かった前半戦を見ているだけに、ハラハラドキドキよりもスッキリと勝って欲しい気もします。
昨夜は矢野捕手のサヨナラ・ホームラン、今夜も葛城選手のサヨナラ押出しと、ややクリンナップを外れた脇役っぽい打者の活躍で勝っています。野球は得点が明確ですからいいようなものの、もしも、9回を同点で終わって判定に持ち込まれれば、ヤクルトの優勢勝ちだったかもしれません。一応、野球のルールに則って勝っているので、それはそれでいいんですが、投打ともにお疲れの様子ですので、残る7連戦が心配は心配だったりします。藤川投手に勝ち星がつくような試合ではなく、セーブがつく試合展開でお願いしたいと思います。
長崎でテレビが見られないので分からないんですが、今夜のヒーローインタビューは誰だったんでしょうか?葛城選手だとしたら、また、雄叫びやったんでしょうか?誰か教えて下さい。

残る7連戦も、
がんばれタイガース!

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景気動向指数から景気の現状を確認する

本日の午後、内閣府から7月の景気動向指数が発表されました。前月6月から大きな変化はない結果でした。基調判断にも変更はありません。従って、報道でもそんなに注目されなかったように思います。世間的には国際収支や企業物価の方が注目が高かったのかもしれません。まず、内閣府の発表から統計のヘッドラインと基調判断を引用すると以下の通りです。

① 7月のCI(速報値・平成17 年=100)は、先行指数:91.6、一致指数:103.3、遅行指数:100.9となった。
先行指数は、前月と比較して0.6 ポイント上昇した。3 ヶ月後方移動平均は0.27ポイント下降し、2ヶ月振りの下降、7ヶ月後方移動平均は0.31ポイント下降し、23ヶ月連続の下降となった。
一致指数は、前月と比較して0.9ポイント上昇した。3ヶ月後方移動平均は0.43ポイント上昇し、9ヶ月振りの上昇、7ヶ月後方移動平均は0.15ポイント下降し、5ヶ月連続の下降となった。
遅行指数は、前月と比較して0.2ポイント上昇した。3ヶ月後方移動平均は0.76ポイント下降し、
4ヶ月連続の下降、7ヶ月後方移動平均は0.52ポイント下降し、4ヶ月連続の下降となった。
② 一致指数の基調判断
「景気動向指数(CI一致指数)は、悪化を示している。」という前月の基調判断を変更する状況にはない。

景気動向指数

先行指数

一致指数

やや雑にグラフを3枚並べました。一番上が1980年からの長期の先行指数と一致指数です。最近時点で先に右下がりになっている赤の折れ線グラフが先行指数で、やや遅れて右下がりになった青が一致指数です。下の2枚は最近時点での推移を示したもので、真ん中のグラフが先行指数、一番下のグラフが一致指数です。それぞれ、青が原系列、赤が後方3カ月移動平均、緑が後方7カ月移動平均です。最近の推移の下2枚のグラフは縦軸と横軸のスケールを合わせていますので、特に、一番下の一致指数のグラフが平坦に見えるかもしれません。一番上のグラフの影は景気後退期です。最近時点では私が勝手に昨年10月がピークだったと考えて影を付けてあります。
7月の結果を見ると、単月では先行指数も一致指数も前月比プラスとなり、特に、一致指数は3カ月後方移動平均でも9カ月振りにプラスとなったのは引用にもある通りです。どうして7月がプラスになったのかというと、私は猛暑効果だろうと考えています。これを確かめるために、一致指数の前月差の寄与を見ると、もっとも大きいプラスの寄与を示したのが商業販売額(卸売業)で+0.36ポイント、次が大口電力使用量で+0.32ポイントとなっており、その次からは+0.2を下回っています。逆に、マイナス寄与が最大だったのが学卒を除く有効求人倍率で▲0.26ポイントでした。7月に続いて8月も猛暑でしたので、8月までこの傾向が続く可能性はありますが、猛暑だけで景気が回復するハズもありません。もしそうだったら、エコノミストよりも気象予報士に景気の先行きを尋ねることにもなりかねません。
少し前に DI から CI に切り換わってから、私が注目していたのは、バブル崩壊後の景気後退期と今回だけは、一致指数が先行指数の水準を追わないということです。比喩的に言うと、一致指数が先行指数をオーバーシュートしているように見えます。CI ですから、大雑把な計算として、前月比や前年同月比の累積とパラレルに動くハズなんですが、もちろん、採用系列が大きく違っていますから、CI とはいっても一致指数と先行指数で水準が一致しないことはあり得ます。もっとも、1990年代初めのバブル崩壊後のシェイプを見ると、先に下降を始めた先行指数の水準に向けて急速に一致指数が追いましたので、モメンタムとして大きな不況感があったことも確かです。従来から主張しているように、今回の景気後退期は浅くて長いと私は考えていて、場合によっては、長さはバブル崩壊後と同等としても、深さや不況感の強さはバブル崩壊後とは比較にならないくらいに軽くて済むと予想していたんですが、もちろん、原油などの商品市況次第とはいうものの、猛暑効果があるにもかからわず、少し心配が増して来ているのも事実です。ちょうど1年ほど前から景気ウォッチを強化し始めたんですが、もう少ししっかり見る必要があるのかもしれません。

最後に、景気ウォッチの一環でもないんですが、大学の研究室のホームページがほぼ完成しました。左のサイドにリンクを置いてあります。何らご参考まで。

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2008年9月 9日 (火)

米国 GSE の救済策に関する感想

今年はどうもテニスの話題を取り上げることが少なくて、グランドスラム大会では年初の全豪オープンでのシャラポワ選手の優勝をこのブログで書いた後、全仏も全英もパスしてしまい、とうとう、全米オープンも男女のシングルス決勝は終わってしまいました。全米オープンでは、女子はセリーナ・ウィリアムス選手が優勝し、男子はフェデラー選手が5連覇です。男子シングルスの5連覇は、かのビル・チルデン選手が1920-25年に達成した6連覇以来だそうです。
米国の話題を続けると、一昨日の日曜日に米国財務省からファニーメイとフレディマックの2社の GSE に関する救済策が発表されました。概要はさんざん報道されているのでごく簡単に済ませますが、要するに、ファニーとフレディ両社を政府の管理下に置き、必要に応じて各 GSE に対して1000億ドルを限度として買取り枠を設定し、優先株購入の形で公的資金による資本注入を進めるほか、公開市場で両 GSE から住宅ローン担保証券 (MBS) を購入することにより資金繰りを支援するというものです。直接的な融資もアリなようです。前者の資本注入に関しては、まず、公的資金の枠外で両 GSE から10億ドルずつの優先株を政府に無償譲渡し、優先株の利回りは10%に設定するとのことです。後者の資金繰り支援に関する MBS 購入については、今月中に50億ドル程度の購入を実施し、議会予算局 (CBO) によれば、トータルで250億ドル程度が必要との試算も出ています。もちろん、その際、経営者と株主の責任を明確化するため、経営トップが辞任するとともに株式に対する配当は無配となります。なお、両 GSE の規模を適正化するため、2010年から毎年10%程度の規模縮小に踏み切るようです。少なくとも、現時点では市場からは歓迎されており、昨日の東証平均株価も NY ダウも値上がりしました。加えて、共和党と民主党の両党の大統領候補であるマケイン上院議員もオバマ上院議員も賛成の意向を示しています。

New Leadership, Same Roles

上の図は"New York Times" のサイトから引用していますが、タイトルは "New Leadership, Same Roles" ということで、要するに、公的資金による資本注入と政府による MBS 買付けが新しいだけで、両 GSE は2010年から規模縮小が始まるというものの、基本的には、住宅ローンを担保として証券を発行し投資家に売却する現在の業務を継続するわけですから、金融システム的には何も変わらないとも言えます。従来から、完全な政府保証のあるジニーメイと違って、財務省も連邦準備制度理事会もファニーとフレディは政府保証のない民間企業である点を強調していましたが、結局は「暗黙の政府保証」と呼ばれていたものが明示的に政府の管理下に置かれるだけで、2010年から規模縮小が開始されるまで金融市場での役割は変わりありません。私のこのブログの7月15日付けのエントリーのタイトル通りに、"too big to fail" が実践されたと言えます。当然です。
分かりやすく、銀行の自己資本比率に例えれば、短期的には公的資金により資本注入して分子の資本を増強し、中期ないし長期的には両 GSE の事業規模を縮小し、分母の総資産を圧縮することにより経営の健全化を図るという、セオリー通りの救済策と言えます。日本の経験を基に、あえて疑問を呈する向きからは、米国住宅金融市場のほぼ半分に当たる総額5兆ドルをはるかに超える両 GSE の発行・保証証券に対して、十分な手当てが出来るかとの意見もあり得ますが、私はそういった量的な面よりも、むしろ、質的な面で3点ほど指摘しておきたいと思います。第1に、短期的かつ個別の救済策とはいえ、今回はあくまで GSE に対する passive な救済策であった点です。3月にベアスターンズ証券を救済した時と同じで個別救済に終始しており、現下の金融市場の混乱を考えると、市中銀行や投資銀行も広く対象に含めた包括的かつ proactive な救済策が模索されるべき時期を迎えているような気がしてなりません。第2に、GSE の債券に明示的な政府保証が付与されることによる金融市場の変質を考慮する必要があります。繰返しになりますが、ファニーとフレディの両 GSE が発行したり保証したりしている証券は5兆ドルをラクに超えます。他方で、米国債の outstanding な残高は約5.3兆ドルです。もちろん、GSE 証券と米国債の間のスプレッドが一気にゼロになることはあり得ませんが、何らかの影響が金融市場に及ぶ可能性があります。現状では、商品市場から債券市場に資金が還流しているといわれており、米国債価格が上昇して金利が低下していますが、GSE 証券が明示的な政府保証の下で米国債に近い存在となると、米国債および同等証券の供給過多から価格が下落して長期金利の上昇などの影響が出ないとも限りません。第3に、より中長期的な観点から、住宅価格の低下に歯止めをかけたり、上昇に転ずる救済策ではない点が気がかりです。米国の場合は日本と違って、資産価格や個人消費が景気循環の起点となることが往々にしてありますので、将来的にファニーとフレディの事業規模を縮小するのであれば、これに対する何らかの措置も必要だという気がします。いずれにせよ、バブル崩壊を経験した日本的な発想で規模として十分かという量的な側面よりも質的な面にも十分注目すべきと私は考えています。もちろん、現時点で両 GSE の救済策にそこまで盛り込むのはムリとの考えもあります。私も長らく行政官の経験がありますので理解はします。大統領選挙の直前に政治的に受けの悪い公的資金による資本注入をメインに据えた救済案をよく取りまとめたものだと思わないでもありません。まあ、それだけ事態が深刻だという見方も出来ます。景気循環の観点からは、住宅という実物資産価格ですから、金融資産と違って調整に時間がかかるのは当然です。私が早くから指摘しているように、今回の景気後退局面が浅くて長いことがさらに明瞭になりつつあると思います。

最後に、前のパラで指摘した1点目の包括的な救済策の観点から、商品市況で原油がジリジリと値を下げており、同時に、リーマン・ブラザーズ証券の株価も落ちて来ている中で、これも従来から指摘している通り、商品市況が大きく崩れるようなことになると、リーマン・ブラザーズ証券かどうかは知りませんが、商品に資金を投入している投資銀行などで経営が怪しくなるところが出て来る可能性も大いにあり得ます。3月のベアスターンズ証券、今回のファニーとフィレディの両 GSE に続いて、ひょっとしたら年内にも、第3波の金融機関の経営危機が迫っている可能性を忘れてはならないという気がします。まだまだ先は長そうです。

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長崎にて新聞デビューを果たす♪

官界を離れて学界に身を投じてから、大学教授としての自由な立場で、いろいろと発言しようと思っていましたが、このたび、西日本新聞のインタビューを受けて、本日9月9日付けの紙面で新聞デビューを果たしました。長崎の県庁舎移転という全国的にはまったく認知されていない話題ではありますが、やや批判的な論調で掲載されています。
二十数年前に公務員になってしばらくして、1987-88年ころの豊田商事事件に関連して当時の上司の局長の随行として国会内で居眠りしている姿をテレビで放送されたり、大使館の書記官をしていたチリでは日本がチリの輸出先のトップになった関係でテレビや新聞に出まくった時期もありましたが、長崎ではメディアに登場するのは初めてです。

地域によっては目にする機会のほとんどない新聞だという気もしないでもありませんが、自分で勝手にめでたいことだと喜んでいたりしますので、昼休みにパパッと記事をまとめ上げてアップし、記念日の日記に分類しておきます。

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2008年9月 8日 (月)

平野啓一郎『決壊』を読む

平野啓一郎さんの『決壊』を読みました。ひたすらスゴい小説でした。どうして読む気になったのかと言うと、先週月曜日のエントリーで芥川賞受賞作として取り上げた『時が滲む朝』がとっても気に入らなくて、薄いスープと表現しましたが、もっと濃厚な小説を読んでみたくなったからです。この作者の小説は、やっぱり芥川賞を受賞した『日蝕』以来です。「三島由紀夫の再来とでも言うべき神童」ともてはやされた受賞は1999年と記憶していますのでほぼ10年振りです。初期のロマンティックな作風から、私がジャカルタより帰国した当時は、『高瀬川』、『滴り落ちる時計たちの波紋』、『あなたが、いなかった、あなた』などの短編集が出ていたので、本格的な長編まで待ったと言えば語弊がありますが、「新潮」に連載されていた当時から話題になっていたこともあって、この『決壊』はぜひとも読みたいと考えていました。第1部と第2部に分かれた『葬送』以来の長編だという気がします。なお、今夜のエントリーにはネタバレがいっぱいあります、ネタバレなしには読書感想文を書けない私ですので、未読の方が読み進む場合は十分注意して自己責任でお願いします。

平野啓一郎『決壊』

まず、『日蝕』でも感じたんですが、この『決壊』もよく取材や下調べが行き届いている気がします。下巻の最後の15冊ほどの参考文献が上げられていますし、地方の方言指導についても記載がります。このあたりが薄っぺらに感じた『時が滲む朝』との差を生じせしめている一因ではないかと思います。私なんかが論文を書く時にも、20ページほどの分量でも20くらいの参考文献を上げます。現在の日銀白川総裁の『現代の金融政策』を読んだ際にも、前の職場の同僚から最後の参考文献が多いと聞いたんですが、私はさほどの量ではないし、引用元が偏っていると評したことがあります。まあ、エコノミストのペーパーと小説を比較してもしょうがないことではあります。
本題なんですが、主人公である沢野崇の弟の良介のバラバラ遺体が京都の三条大橋で発見され、被害者の妻である佳枝の思い込みから崇が容疑者として警察に取り調べられたり、鳥取で中学生が同級生を殺害したり、果ては、良介殺害の犯人である悪魔と名乗る篠原という男が、こともあろうにクリスマスイブにお台場のフジテレビで自爆自殺をしたり、渋谷のデパートで爆弾を爆発させたりと、いろいろ展開します。そこに、良介が殺害されるきっかけとなったインターネットの掲示板が複雑に絡んで来ます。最後の最後に、ここを私は読み進む勇気がなかったんですが、主人公の崇が電車に飛込み自殺を遂げて小説は終わります。
良介が殺されるのはネットに開設した「すぅのつぶやき」なる掲示板で知り合った悪魔こと篠原と、やっぱり、ネットで篠原がリクルートした鳥取の中学生の北崎友哉が共犯となり、殺害現場を克明に録画した DVD が所轄の警察と沢野崇に送られて来たりします。ネットでしか明らかに出来ない「心の闇」がクローズアップされ、我々もよく見かけるようなテレビのワイドショーもかなり批判的な視点から登場します。警察では崇が犯人と考えて、かなり強引な捜査が行われるんですが、警察や操作に対する批判にはなっていません。もちろん、その間で揺れ動く崇自身や周囲の人々の心理描写がすごいです。関西弁で言うとエゲツナイ気もします。結局、崇と良介の父親は崇の取調べ中に自殺しますし、母親は精神に変調を来たして、良介の骨壷を腹に抱いたまま少しおかしくなります。最後の最後の自殺の瞬間まで冷静沈着なスーパーヒーローは崇だけです。
最後の方を私が読み進む勇気がなかったのは、すでに、最後がハッピーエンドではないことを知っていたこともあって、下巻に入ったころからオチはデニス・ルヘイン『シャッターアイランド』と同じではないかと思うようになったためです。この小説は一人称で書かれているわけではありませんが、今の今まで正常と思わされていたスーパーヒーローの崇自身が実は異常で、ホントは警察の見方が正しくて崇が犯人だった、といういオチのような気がしてならなかったからです。でも、そうではなく、崇は被害者の遺族でしかありませんでした。自殺する直前には良介の妻だった佳枝に遺品を届けることまでしています。一瞬、私は崇が駅で通り魔殺人に遭遇するというオチもアリではないかと考えなくもなかったですが、そうすると、崇は最後までスーパーヒーローで終わってしまい、作者の意図はそうではないと思い当りました。自殺は必然の結末だったといえます。
2006年に連載が始まったこの小説を、作者が2002年に設定したのも興味深い点です。秋に北朝鮮から拉致被害者の帰国があり、その点も小説の中で触れられていますが、私が指摘しておきたい一番大きな要因は、当時のネットでの交流の大きなツールが、まさに「すぅのつぶやき」のような掲示板の日記サイトであって、現在の主流を成しているブログではないことです。私自身がこのブログを始めたのは2005年ですが、おそらく、2004年にはブログが主流になっていたと想像されますので、このタイミングの設定は絶妙と言えます。もちろん、現在でも2ちゃんねるのような巨大掲示板が存在して、大いに話題を集めていますが、顔見知りからのコメント投稿も多いブログに対して、篠原のような悪魔が忍び込みやすいのはブログではなく、掲示板であるとの作者の暗黙のメッセージを読み取るのは私だけでしょうか。秋葉原の事件を起こした犯人も書込みをしていたのはブログではなく掲示板の日記サイトだったような記憶があります。なお、言うまでもないことですが、私はブログが健全で、掲示板の日記サイトがアブナイと主張するつもりは毛頭ありません。
最後に、私は従来から自分を含めた京都人には裏表があると考えて来ましたが、この本を読んで気付いたことがあります。主人公の沢野崇が任意同行での取調べの最終盤、酒気帯び運転での別件逮捕の直前に、女友達にうそぶいた言葉なんですが、崇は相手によって情報をコントロールし、相手に従ってオーダー・メイドの自分を作り分けることが出来るといったようなことを独白します。これが弟である良介には全く出来なかったとも付け加えています。私の考えていた京都人のオモテの建前とウラの本音はこれなんだろうという気がします。アウター・サークルに対する建前とインナー・サークルに対する本音というディコトミーを取れば表裏となりますが、相手の数だけのオーダー・メイドの自分を出すべく情報コントロール出来るというのに拡張することも可能なんだろうと思います。私の考えていた単純なディコトミーの京都人の認識が膨らんだ気がします。いずれにせよ、私はネット上であろうとどこであろうと、私が発する情報にアウター・サークルの人が接する可能性があれば、ウラの自分を出さないようにコントロールするだけの自信めいたものはあります。自分でも少し怖いと感じる時がありますが、それが京都の人間の本質や本能の一部を成す要素だと思っています。それが出来ない場合、カギカッコ付きの「素朴」とか「要領が悪い」などの形容詞を付けるような気がしてなりません。

久し振りに、濃厚かつ重厚な「大きい物語」の小説を読んだ気がします。私はこの小説が映画化されるんではないかと予感しています。というよりも、映画化を望んでいるという方が正しいかもしれません。その際、KATSUZO の役は誰が演じるのかがとっても興味があります。

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2008年9月 7日 (日)

やっぱり電車に乗って本屋さんに出かける

今日の日曜日は電車で出かけます。長崎にも大きな本屋さんがいくつかあるんですが、そのうちのひとつに行きました。私が乗ったのではなく、向かいのホームにいたのを写したんですが、下の写真はこのブログに初登場の長崎の路面電車です。いつもは私のデジカメの被写体は我が家の子供達なんですが、手近にいませんので、便利に使わせてもらっている電車で代用しておきます。

長崎の電車

なお、デジカメの設定が狂っていて、exif にある時刻は2時間ほどズレを生じています。先ほど修正しました。ご容赦ください。ついでに、YouTube のサイトで見かけた長崎の路面電車の詰合せパックです。タイトルは「速いぞ長崎のチンチン電車」になっています。最新式の低床ノンステップの電車はありませんが、いくつかの特徴ある電車が収録されています。なかなか楽しめます。

さらに、ついでに、本屋さんのすぐ近くが長崎港のフェリーの船着場でしたので、これも写真に収めました。下の通りです。よくよく見ると、水平線がひどく右上がりになっていたりします。これまた、ご愛嬌ということで、ご容赦ください。港の向こう岸に見えるのが三菱重工の長崎造船所です。長崎経済を支える柱のひとつと見なす人も少なくないような気がします。なお、写真の中心にある錨は1.5トンあるそうです。長崎港のシンボルなのかもしれません。

長崎港

話を元に戻して、どうして本屋さんに行ったか、何を買ったか、というと、実は、東京で平野啓一郎さんの『決壊』を買って読んでいたんですが、どうしても、最後の20-30ページを読み進む勇気がなくて、何と、伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』を買いに出かけてしまいました。実は、長崎の本屋さんで本を買うのは初めてだったりします。もっとも、経済書は大学の生協で大量に買っていたりします。当然です。おそらく、今日中には『決壊』を読み終えると思いますので、思わせ振りなことで誠に申し訳ありませんが、明日にでもこの経緯を含めて『決壊』に関する読書感想文を書きたいと思います。
『ゴールデンスランバー』を買った後、近くの喫茶店に入って休憩していて、地元のローカル新聞に目を通していると、日曜日ですので書評欄があり、その隣に長崎の4書店でのベストセラーがピックアップしてありました。長崎市内が3書店と佐世保の1書店でした。すべての書店で「自分の説明書」シリーズの『O型自分の説明書』がトップでした。もっとも、家に帰ってネットで調べると、紀伊国屋書店の BookWeb でも先週のトップでしたし、毎時間更新されるアマゾンのサイトでも6位でしたから、長崎に限らず全国的に売れているんだと思います。なお、私が『ゴールデンスランバー』を買った本屋さんのランキングも出ていて、4書店の中では唯一『ハリー・ポッターと死の秘宝』が4位にランクインしていました。少し安心しました。

ゆったりと過ごす天気のいい日曜日にヒマネタのブログでした。これから勇気を持って『決壊』を読み終えたいと思います。本の話題よりも電車を取り上げたつもりですので、お出かけの日記に分類しておきます。

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2008年9月 6日 (土)

鳥谷選手のタイムリーで連敗脱出

5連敗中で元気のなかった阪神ですが、ようやく、延長12回の末に広島を下して勝ちました。最後は鳥谷遊撃手のタイムリーでした。それにしても打線が打てません。この5連敗の8割方の責任は打線が打てないことにあると私は考えていましたが、今日の試合も打線が波に乗れずに、ジリジリする嫌なムードでした。終盤からは金本外野手が敬遠されまくって、それも作戦のうちですからしょうがないんですが、やっぱり、キーポイントは金本選手の後を打つ5番だということが明確になりました。今日の試合でも10回表の攻撃がこれに近かった印象です。でも、最後の最後に鳥谷選手が打って結果を出してくれました。
しかし、私の勝手な想像かもしれませんが、鳥谷選手はやっぱり5番タイプではなく、3番タイプだという気がします。不熱心な阪神ファンですから、ケガでもしているんでしょうか、どうして林選手がスタメンに入っていないのか、よく知らなかったりするんですが、5番に得点圏打率の高い選手、出来れば右の強打者を入れたいところです。やっぱり、ここは完全な状態でなくても、今岡内野手しかいないんではないでしょうか。桜井外野手の3番がイカンとは言いませんが、新井内野手の今シーズンの出場が厳しいとなれば、現有戦力では3番鳥谷・4番金本・5番今岡のクリンナップを見てみたい気がします。今岡ファンである私の勝手な思い込みでしょうが、実現したいものです。

それはともかく、明日も、
がんばれタイガース!

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米国雇用統計から景気後退を考える

昨日、米国労働省から8月の雇用統計が発表されました。すべて季節調整済み系列で、失業率が7月の5.7%から6.1%にジャンプし、非農業部門の雇用者数も前月に比べて▲8万4000人減少して、8ヶ月連続のマイナスを記録しました。事前の市場予測のコンセンサスは失業率が前月と同じ5.7%、雇用者数が▲7万5000人の減少でしたので、これよりもかなり悪い内容と受け止められています。まず、"Wall Street Journal" のサイトから記事を最初の3パラだけ引用すると以下の通りです。なお、いつもの通り、"Wall Street Journal" のサイトはすでに Free Preview になっていて、購読者でなければ全文を見られない可能性があります。ご容赦ください。

A jump in the unemployment rate to 6.1% in August, the highest in nearly five years, underscored the economy's fragility and deepened political debate over whether a second stimulus package is needed.
The jobless-rate jump, from 5.7% in July, was larger than anticipated, reflecting how energy prices and problems in the housing and financial sectors have radiated outward to slow overall economic activity.
Nonfarm employers shed some 84,000 jobs, after revised net declines of 60,000 in July and 100,000 in June, according to a Labor Department survey. That brought net job losses so far in 2008 to more than 600,000.

The Labor Picture in August

いつもの "New York Times" の "The Labor Picture in August" は上の通りです。失業率がここ1年で1.5%ポイントほど上昇し、特に、先月のジャンプが大きいことが分かります。失業率は5年来の水準に達しています。黒人やヒスパニックの失業率が高くなっており、黒人の失業率はとうとう10%を超えました。平均的に、失業期間も長くなっています。非農業部門の雇用者数も今年に入って8ヶ月連続で減少し、引用にもある通り、累計で60万人に達しています。したがって、これも引用にある通り、大統領選挙を控えて、追加的な景気浮揚策が必要かどうかの議論がなされる可能性が大きいと感じています。我が国の自民党総裁選と同じで、米国大統領選も経済政策がひとつの焦点になるのかもしれません。少なくとも、物価との関係で利下げ局面を終了し、利上げの機会を模索している連邦準備制度理事会 (FED) の動きを、1ヶ月間なりともストップさせるに十分な内容だという気がします。

米国雇用統計

次に、景気局面との関係で少し長めに米国の雇用統計をプロットしたのが上のグラフです。赤い折れ線が非農業部門の雇用者数の前月比増減で、青が失業率です。どちらも季節調整済み系列です。影を付けた部分は景気後退局面ですが、現在の足元は暫定的に私の独断で昨年10月がピークだったとして影を付けています。先日、8月19日付けのエントリーでリーマー教授のペーパーを取り上げ、米国が景気後退局面には入っていないとする説を紹介しましたが、こう見ると確かに、以前の2回の景気後退局面では非農業部門の雇用者数の前月比が軽く30万人に達しているのに比べて、今回は先月7月の10万止まりですし、景気後退局面の長さもやや異様に長い印象があります。しかし、「景気後退局面」なるものの定義次第ではありますが、直感的には、もしも、現在の米国経済が景気後退局面にあるとすれば、私の従来からの説である浅くて長いをサポートしているような気もしないでもありません。

3月か、4月の議会証言の質疑応答だか、どこかでの講演だかで、FED のバーナンキ議長が景気後退については NBER が判断することであると発言した記憶があります。一応、FED のホームページを探したんですが、見当たりませんでしたので私の記憶違いかもしれません。どうでもいいことながら、市役所の窓口職員が「ソレはアチラの仕事」なんて発言しようものなら市民の反発を受けそうな気もしますが、バーナンキ議長クラスの発言だとすると立派なプロフェッショナリズムということになるのかもしれないと、勝手な印象を受けた記憶があります。いずれにせよ、FED は FED として NBER の景気局面の定義とは関係なしに経済状態を見極めて金融政策を進める決意との一般的な受止めだったと思うんですが、少なくとも米国では大統領選との関係もあって、科学的な景気局面に関する議論とは切り離した経済政策論議が進んでいるのかもしれません。

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2008年9月 5日 (金)

セキュリティソフトをインストールする

本題のセキュリティソフトに入る前に軽く経済の話題をひとつ。本日、財務省から今年4-6月期の法人企業統計が発表されました。減収減益が続いており、設備投資も減少しました。経常利益は前年比▲5.2%減となり1-3月期の2桁マイナスからは回復しました。売上高が微減ですから、経費節減が大きな要因です。経費のついでに不要不急の設備投資も後回しにされ、設備投資も▲6.5%減と減少したというのが真相に近いと私は考えています。背景には日本だけでなく、欧米も含めて先進各国が景気後退局面に入ったり、近づいたりして、先行きの期待成長率が不況期らしく下方にシフトしたためであるとみられます。それでも、この程度で済めば、浅くて長いとの私の結論をサポートしているような気がします。なお、この法人企業統計やその他の統計データの結果を受けて、来週12日の金曜日に発表される予定の2次QEは、前期比▲0.6%減だった1次QEよりもさらにマイナス幅を広げそうです。単純に考えても、前期比年率で軽く▲3%に達しそうです。加えて、もう少しすれば米国の雇用統計が発表されるんですが、明日にでも取り上げたいと思います。

さて、週末前の金曜日らしく、少し軽めの話題ということで、パソコンのセキュリティソフトについて少し考える機会がありました。昨夜に続いて、トリビアな日記です。というのは、大学のパソコンが古くて動作が遅く、私が使うような計量ソフトを走らせるには苦しいと考え、新しいパソコンを購入し、実は、少し前に生協から納入され、先週からセットアップを始めていましたが、当然、LAN からインターネットに接続するので、大学の方でボリューム契約しているセキュリティソフトを、ようやく、昨日になってインストールしました。さらに、先週末に青山に帰宅する前に、長崎の宿舎のパソコンと、帰宅した後に青山のパソコンのセキュリティソフトも1年間の更新期限が来ていたので、新しいバージョンをインストールして来たところです。ここ1週間ほどで、青山と長崎それぞれ2台ずつ計4台のパソコンにセキュリティソフトをインストールしたことになります。
Norton 360 V2.0我が家では以前からセキュリティソフトやシステムのチューンナップソフトはシマンテック社の Norton シリーズを使っています。昨年6月に Vista パソコンを購入し、しばらくは90日間使えるプリインストールの Norton Internet Security を使った後、昨年の9月初めに Norton 360 をインストールしました。1年の更新期限が来ましたので、先に購入してあった V2.0 をインストールしました。インストラクションによれば、上書きインストールとなっていたんですが、プロセスをじっくりと拝見すると、まず、古いバージョンをアンインストールしてから新たしい V2.0 をインストールしており、おかげで、ウィルス定義とかは全然最初から更新する必要があったりしました。インストール・ガイドに少し不親切で誤解を招きかねない表現があったような気がしないでもありません。大学のパソコンはサーバからのインストールかと想像していたんですが、経済学部の詳しい人に尋ねると事務室でボリューム購入しているので、そのディスクを借りてインストールするのだと教わりました。いろんなソフトをインストールした最後にセキュリティソフトをインストールしたつもりだったんですが、今日になっても忘れていた細々としたソフトがあり、その後もパソコンのセットアップを続けています。大学のセキュリティソフトは Norton ではないんですが、インストールする際の最初のオプションで、通常の保護と最高の保護があり、後者を選ぶと、通常のインストールすら支障を来たすおそれがある旨の警告が出たので、通常の保護でインストールしました。幸いにして、その後のインストールも順調でした。
我が家がどうして Norton を使っているかというと、要するに、10年ほど前にパソコンでインターネットに接続するようになった際に、経緯は忘れましたが、最初に買い求めたのが Norton だったというだけです。私はアフィリエイトも置いていませんし、そんなに強くオススメするつもりはありません。100%自己責任の世界です。我が家がジャカルタにいた5-6年前まではウィルス対策ソフトのことをワクチンソフトと呼んでいたりして、私は少し違うと感じていたんですが、それはともかく、日本ですらパソコンのセキュリティには十分な注意を払わなかったんですから、インドネシアなんかはもっとでした。ウィルス先進国というか、アンチウィルス後進国というか、後者だと思うんですが、ともかく、ジャカルタではウィルスメールを大量に受信していた記憶があります。我が家は前世紀までは Norton の AntiVirus と Norton Utility の組合せで、今世紀に入ると、これらを統合した Norton SystemWorks と呼ばれたソフトが出ましたので、これを使っていました。その後、Internet Security などをへて、昨年から Norton 360 にしました。
ジャカルタ在住だったころ、ほぼ毎月ウィルスメールが来ていましたので、3年で30-40くらいを受信していた気がします。我が家のパソコンはガッチリとガードされていたので平気なんですが、そのうち、発信者に面識があったのが10くらいあり、私は親切心と好奇心からウィルスメールを発信している旨を警告していました。しかし、ほとんどが無視ないし否定的な反応でした。まあ、「失礼なことを言うな、私のパソコンはウィルスに感染していない」といったカンジです。例外は2人だけで、どちらも日本人でした。うち、1人は私の父親だったりしました。日本に帰国してからは、一時、メールに添付されているウィルスをフロッピーに収集したりしていた時期もありました。「アブナイ趣味」だと言われていました。

アンチウィルスからファイアウォール、さらに、最近ではスパイウェア対策まで、この種のセキュリティソフトも進化して来ました。でも、セキュリティというよりも、ウィルスでもスパイウェアでもないんですが、あまりに無意味なスパムメールが多過ぎるような気がします。WEB サイトは自分からサーバに見に行くからいいんですが、メールは勝手にサーバに送り込まれるので、何とかして欲しい気もします。

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2008年9月 4日 (木)

Google のブラウザにどこまで期待できるか?

自民党の総裁選挙に、すでに事実上の出馬表明を行っている麻生太郎幹事長に続いて、与謝野馨経済財政担当相と石原伸晃元政調会長が新たに立候補の意向を固めたとのことで、出馬に大きな意欲を示している小池百合子元防衛相と合わせて4候補で争う方向になりつつあるようです。経済財政政策が争点になるとの予想もあります。なお、NPO法人ドットジェイピーが学生向けに実施したアンケート調査によれば、麻生幹事長が圧倒的人気だとの報道を毎日新聞のサイトで見かけましたが、当の法人のホームページには何もありませんでした。本学の学生もそうなんだろうかと考えてしまいました。いろいろと興味深いんですが、今夜はここまでにします。
Web Warsということで、大きく話題を転換すると、とうとう Google が Microsoft の Internet Explorer に対抗して、独自のブラウザを公開することになったようです。Chrome というそうです。ネットはいうまでもなく、新聞も含めてアチコチのメディアで取り上げられているので記事の引用はしませんが、一応、左のグラフは"Wall Street Journal" のサイトから借用しています。見ての通りで、ブラウザのシェアを円グラフにしています。Microsoft の Internet Explorer が70%を超えるシェアで、Mozilla の Firefox が約20%、あとは数えるほど、というカンジでしょうか。その昔の NetScape は Firefox に後を譲ったと言えるんでしょうが、もっと昔の Mosaic なんかは跡形もなく消滅してしまったもかもしれません。私もブログのほかに、いくつかホームページを運営していますが、やっぱり、Internet Explorer での表示を最適化していたりします。なお、ちょっと別の話ですが、左上のグラフを拝借した記事は "Wall Street Journal" ではすでに Free Preview になっていますので、購読者コードがないと見られないかもしれません。
実は、私はそれほどの Google フリークではないんですが、やっぱり、WEB 検索では Google を最もよく使いますし、一応、先日はストリートビューをこのブログでも取り上げたりしています。ブランドは何でもいいので、便利で使いやすいのがあれば何でも使うというスタンスだったりします。一応、ソフトの使いこなしにはそれ相応の自信があります。現在は Internet Explorer をベースにしたフリーのタブブラウザを使っていますが、Google の Chrome が世に出回れば試してみたいと考えています。でも、経済学的に言うと、典型的に規模の経済が働きますから、ある程度のシェアを取らないとモノにはならないような気がしないでもありません。

久々に、今夜のエントリーはパソコンやソフトウェアに関するトリビアな日記でした。

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2008年9月 3日 (水)

経済開発協力機構 (OECD) の経済見通し中間見直し

昨日9月2日、経済開発協力機構 (OECD) から経済見通しの中間見直し "An interim assessment" が発表されました。もっとも、中間見直しの対象国は G7 だけで、OECD 加盟国全部ではありません。その上、今年2008年だけの見直しです。まず、私が見かけた毎日新聞のサイトから記事を最初のパラだけ引用すると以下の通りです。

経済協力開発機構(OECD)は2日、日米欧などの08年の経済成長見通しを発表した。日本は「08年4-6月期の国内総生産(GDP)のマイナス成長からの回復は限定的となる」として、08年の実質経済成長率を前回6月の年1.7%から同1.2%に下方修正した。一方、米国は上方修正し、対照的な見通しとなった。

GDP growth in the G7 economies

縮小してしまったので少し見づらいんですが、上の表が総括表です。リポートの pp.4 に掲載されています。要するに、結論は "Financial market turmoil, housing market downturns and high commodity prices continue to bear down on global growth" すなわち、金融市場の混乱、住宅価格の低下、商品市況の高騰が世界経済の成長の重しになっているということで、日本の成長率もかなり低めに予測されています。前回6月の予測よりも低くなっています。上の表の右の欄で示されています。引用にもある通り、2008年の成長率について、前回の経済見通しと今回の中間見直しで対比すると、米国が+1.2%から+1.8%に上方改定された以外は、日本は+1.7%から+1.2%に、ユーロ圏も+1.7%から+1.3%に、英国も1.8%から+1.2%と軒並み下方改定されています。特に、日本ではマイナス成長を記録した4-6月期からの回復が限定的であるとしています。米国の2008年成長率を上方改定したのは回復が予想より早いピッチで進むというより、明記してはいませんが、今年前半の財政政策の効果による部分が大きいと考えられます。
繰返しになりますが、金融市場の混乱、住宅価格の低下、商品市況の高騰が経済成長にマイナスの影響を与えているんですが、もちろん、世界各国によって経済状況が違いますから政策対応が異なることは言うまでもありません。日本についてはインフレの高進が欧米諸国ほどではなく、消費者や企業のマインドが特に悪化しているので、インフレの進行に伴って金融引き締めが必要な諸国と異なり、"keeping monetary policy on hold" 金融政策は現状維持が適当とのご意見のようです。

当たり前のことを当たり前に書いてあるだけのリポートですが、本文はフランス語1ページ、英語も1ページで、図表が豊富に添付されていますので、学生の教材に適当かもしれないと思って取り上げてみました。

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2008年9月 2日 (火)

福田総理大臣の辞任表明に関する第一印象

昨夜9時半からの記者会見で福田総理大臣が辞職を表明しました。突然の辞任と受け止められています。私が見た範囲でも、"Wall Street Journal" も "Financial Times" も "abruptly" と表現していたりしました。いろんなメディアで報道されているので、特に引用などはしませんが、日経新聞が pdf ファイルで号外を出していましたので、直リンを張っておきます。

まあ、日本のような大国の総理大臣その人が辞任表明したんですから、それなりの覚悟をもって辞職されるんだろうと思います。でも、国民としては、総理大臣に就任した1年前の覚悟はどうだったのかと問いかけたくなるのも分かります。エコノミストとしても、経済対策の最後の詰めはまだですし、消費者庁の設置構想は実現されるのかどうか、概算要求を締め切ったばかりの予算編成作業はどうなるのか、といった疑問が残ります。普通には、インド洋の給油法案や解散・総選挙なども気にかかります。それにしても、1年前の安倍前総理大臣の辞任劇の再現を見るような気分の国民も多いんではないでしょうか。8月に内閣改造をして、早速、農水大臣に疑惑が発覚して、9月に臨時国会が召集されたり本格論戦が始まったりする直前の辞任です。これまた、昨年と同じように、当初の次期自民党総裁・総理大臣候補は麻生幹事長だったりします。昨年は現在の福田総理大臣にひっくり返されましたが、今年はどうなんでしょうか?
私の場合は昨年9月の時点とは地理的な位置も職業上の関係も大きく異なっていますので、何となく、昨夜の総理大臣記者会見で最後に記者が質問した「ひとごと」の趣だったりします。昨年9月は国家公務員の本省の参事官として、まあ、地理的にもプロ野球の強肩外野手ではムリかもしれませんが、プロゴルファーなら楽勝でツーオンしそうな距離で仕事していましたが、今では、その福田総理大臣名で辞職を承認する辞令をいただいて、1000キロ離れた長崎の地で大学教授をしていたりします。もっとも、現在は「ひとごと」ながら、そのうち近い将来に大学での任期を終えれば国家公務員として役所に戻ることとなり、総理大臣は国家公務員からすれば究極のボスですから、エコノミストとしての分析結果や信念は別にして、軽率な政治的発言は控えたいと思います。
小島祥一『なぜ日本の政治経済は混迷するのか』そこで思い出したのが、小島祥一『なぜ日本の政治経済は混迷するのか』(岩波書店)という本です。昨年、1年半ほど前に読んだ記憶があります。日米経済摩擦やバブル崩壊とその後の長期低迷などについて「同じことの繰り返し」をキーワードに、第1章と第2章のタイトルである「循環する政治経済ゲーム」について論じています。もちろん、書籍メディアですから、昨年や今回の総理大臣辞任劇を取り上げているわけではありませんし、すべての国民にスンナリと理解できる種類の本ではないでしょうから特にオススメの本だとも思いませんが、争点を微妙にズラしつつ与党の支配が続くメカニズムや総論賛成と各論反対で決定・実行が困難になる民主主義システムについて独自の観点からの論考が、何らかの意味で参考になるかもしれません。

これから様々な情報が明らかにされるのかもしれませんが、東京の行政の中枢から遠く離れて長崎に単身赴任し「ひとごと」になりながらも、主権を有するという意味で責任ある国民として、いろいろな疑問の残る福田総理大臣の辞任表明の第一印象をアップしておきます。

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2008年9月 1日 (月)

楊逸『時が滲む朝』は薄いスープみたいな味わい

楊逸『時が滲む朝』いつものペースよりかなり遅くなり、9月のアップになってしまいましたが、ようやく、第139回芥川賞受賞作の楊逸さんの『時が滲む朝』を先月8月10日発売の「文藝春秋」9月号で選考委員の選評とともに読みました。前回、第138回の川上未映子さんの「乳と卵」が受賞した時から始まったように記憶しているんですが、今回も選評と授賞作の間に作者に対するインタビューが掲載されていました。なお、この作品は「文學界」2008年6月号に収録されたんですが、左の写真は単行本から取っています。また、今夜のエントリーはそれと特に意識せずにネタバレがあると思われますので、未読の方が読み進む場合は自己責任でご注意下さい。
まず、今回受賞した『時が滲む朝』はある程度の長さのある中編といえます。また、作品が対象としている期間も、天安門事件前後から始まって、香港の中国返還反対運動やオリンピック北京招致反対運動などを取り上げていて、約10年間とかなり長いです。「乳と卵」のように数日で終わっているわけではありません。しかし、その期間の長さや対象とした天安門事件以降の中国民主化運動といったテーマの重さに比べて、あるいは、村上龍さんのいう「大きな物語」であるにもかかわらず、いかにも表面をなぞっただけで、薄いスープのような印象でした。私は天安門事件などの中国民主化運動は全くの専門外でサッパリ分かりませんが、少なくとも、選評で村上龍さんは自分で天安門事件を調べたことがあると明言した上で、低い評価を下していたりしました。対比を申し上げると、今年2008年2月1日のこのブログのエントリーで磯﨑憲一郎さんの『肝心の子供』を取り上げたんですが、この作品は『時が滲む朝』よりもずっと長い期間を対象に書かれているにもかかわらず、凝縮という評価が当てはまるような気がする一方で、『時が滲む朝』は間引いた気がします。なお、ついでながら、今回第139回の芥川賞でも磯﨑憲一郎さんは『眼と太陽』で候補になっています。
どうして薄っぺらに感じるのかといえば、ストーリが飛んでいることと、おそらく、作者の実体験でないと強く感じられるため、また、登場人物の内面描写がほとんどないために、感情移入が難しくなっているからだと思います。章のタイトルはないものの、全部で10章から成っており、詳細は忘れましたが、前半の半分くらいの章が天安門事件まで、その後が香港の中国返還反対運動やオリンピック北京招致反対運動などに充てられています。前半と後半とで物語が飛ぶのは致し方ないにしても、前半部分では2人の二狼と呼ばれる大学生の心理描写は極めて少ないですし、天安門事件にしてもすぐに装甲車が入って来ます。後半では、章の中のパラグラフの終わりを示す1行空けでさっさとエピソードが終わったり、1人目の子どもが主人公の妻のお腹の中にいたのですが、次のパラで後に「民生・たみお」と名付けられる2人目の子を妻が妊娠していたりしました。後半は特に物語の拡散がひどい気がします。繰返しになりますが、ストーリーとしては間引いた感じがあります。
私がいつも参考にしている文学賞メッタ斬りのサイトでも、大森望さんも豊崎由美さんも、なぜか、『時が滲む朝』の作品評価は決して高くないのに、特に大森望さんは最低の評価だったにもかかわらず、当落予想の本命にこの作品を推しています。直木賞の方は伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』にアクシデントがあったので仕方ないにしても、芥川賞という新人の登竜門として権威ある賞にしてはやや不可解な気もします。選考会終了後に、大森さんは「文壇からも北京オリンピックを盛り立てようではありませんか!」と書き、豊崎さんは何人かの選考委員の名を上げて「身を挺して授賞を阻止してほしかった」とうそぶいていました。私はほかの候補作を読んでいないので何とも言えませんが、分かるような気がします。

ここ数年、ほぼ毎回のように芥川賞は読んでいますが、3年前の第133回芥川賞の中村文則さんの『土の中の子供』以下の作品だったと私は考えています。選考委員の中にはこのテーマであれば長編を期待するような選評もありましたが、この作者の筆力では長編はムリそうな気がしないでもありません。ひょっとしたら、私の読解能力が低いためではないかとも考えましたが、次の芥川賞は読解能力が低い可能性のある私でも感動するような作品を期待しています。

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