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2008年9月23日 (火)

休日に考える金融と財政に関する雑感

先週は、米国のリーマン・ブラザーズ証券の破綻やメリル・リンチ証券に対するバンカメの救済合併から始まり、AIG への連邦準備制度理事会 (FED) からのつなぎ融資など怒涛のような金融市場の大混乱の1週間で、今週に入って、全米投資銀行のトップ2行であるゴールドマン・サックス証券とモルガン・スタンレー証券が FED に銀行持ち株会社への移行を申請して許可されたり、我が国トップの投資銀行である野村証券がリーマン・ブラザーズ証券の日本を含むアジア太平洋部門を買収することで基本合意に達したとか、三菱UFJ銀行がモルガン・スタンレー証券の第3者割当増資に応じ、最大20%、9000億円規模の出資をして筆頭株主になるとか、まだまだ金融業界再編の激震は続いています。昨年から今年年初にかけて勇名をはせた中東あたりの SWF の名は余り出てこないようです。金融技術の点で周回遅れと称されていた日本の金融機関が、逆に、米国の金融機関が大きく沈むことによりトップに出て来たのかもしれません。ひとつの見方として、私がこのブログで主張して来たように、個別の金融機関の経営危機に際して各個撃破的な対応のスキームしか持たない米国と、健全行であっても政府の判断で資本注入できる包括的な法制度を早くから整備した日本のアドバンテージと考えられなくもありません。まあ、長らく政府の中で官庁エコノミストを称して来た私の見方ですし、金融危機なんて因果は巡る輪の中でまたまた大逆転があったりして、次がどうなるか知れたものではありませんから、自慢話や愛国心を鼓舞するような意見は控えておきたいと思います。
財政に関しては昨夜のエントリーの続きなんですが、短期的な金融市場の売買の情報を提供する民間金融機関などのエコノミストと違って、私はいまだに基本的なメンタリティは官庁エコノミストですから、もう少し時間的な視野の長いイシューを考えてみる時期ではないかと思います。それは貯蓄と投資の、いわゆる IS バランスです。伝統的なマクロ経済学では、家計が貯蓄過剰で IS バランス上は黒字を積み上げ、逆に、企業は積極的な投資活動で貯蓄不足となって IS バランスでは赤字主体となり、政府と海外部門はチョボチョボのバランス状態と考えて来たんですが、歴史的には、四半世紀前のレーガノミックスによる双子の赤字から大きく様変わりして来ています。現在の日本では、高齢化の進展により家計の貯蓄率が低下しているのは確かなんですが、相変わらず、家計は貯蓄を積み上げていて、企業に目を向けると、3つの過剰を克服し終えたにもかかわらず、引き続き、家計と同じように貯蓄過剰主体となっています。見方を変えると、伝統的なマクロ経済学の視点からは日本企業は投資が不足しているわけです。その裏側で、政府が大きな財政赤字を出し、同じように海外部門も赤字、すなわち、反対側の日本から見ると経常収支が黒字になっています。ここに来て、明日の国会で首班指名される麻生総理大臣がさらに政府赤字を増加させるような財政運営をするのは、そもそも私には大きな疑問です。百歩譲って、短期的に政府赤字が拡大する政策を容認するとしても、その先で企業部門の投資拡大を促進するような政策が採用されるべきだと私は考えています。インフラ整備が不十分だった1970年代初頭くらいまでの時期には公共投資がこれに該当したのかもしれませんが、前世紀末の小渕内閣から今世紀初頭の森内閣にかけて壮大な社会実験をした結果、これがもう成り立たなくなったことは明白だと私は考えています。もちろん、金融政策的には低金利の維持は絶対条件です。もうひとつは家計貯蓄を低下させることで、昨夜のエントリーの続きになりますが、高齢者世帯の貯蓄取崩しを促進することです。手厚い社会保障を維持して、勤労時代の貯蓄を取り崩すことなく老後生活を送れてしまう現在の給付を削減するのも一案です。手厚い社会保障により大きな遺産を残せるシステムは格差拡大の助長にもつながりかねません。もちろん、その際に社会的なセーフティネットを整備することが重要なことは言うまでもありません。まあ、経済学の理論モデルであるライフサイクル仮説に現実社会を合致させるように、エコノミストが勝手に考え上げた我田引水的な考え方かもしれませんが、ひとつの選択肢ではないかと私は考えています。

大昔に読んだ本で、田原総一郎『頭のないクジラ』というのがありました。今でもあるんだろうと思います。その中で、カギカッコ付きの「悪」と称して、国民に不人気な政策でも断行する昔の大蔵省の存在をプレーアップしています。ケインズ卿の言うハーベイロード仮説の実践だったのかもしれません。

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