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2008年9月 6日 (土)

米国雇用統計から景気後退を考える

昨日、米国労働省から8月の雇用統計が発表されました。すべて季節調整済み系列で、失業率が7月の5.7%から6.1%にジャンプし、非農業部門の雇用者数も前月に比べて▲8万4000人減少して、8ヶ月連続のマイナスを記録しました。事前の市場予測のコンセンサスは失業率が前月と同じ5.7%、雇用者数が▲7万5000人の減少でしたので、これよりもかなり悪い内容と受け止められています。まず、"Wall Street Journal" のサイトから記事を最初の3パラだけ引用すると以下の通りです。なお、いつもの通り、"Wall Street Journal" のサイトはすでに Free Preview になっていて、購読者でなければ全文を見られない可能性があります。ご容赦ください。

A jump in the unemployment rate to 6.1% in August, the highest in nearly five years, underscored the economy's fragility and deepened political debate over whether a second stimulus package is needed.
The jobless-rate jump, from 5.7% in July, was larger than anticipated, reflecting how energy prices and problems in the housing and financial sectors have radiated outward to slow overall economic activity.
Nonfarm employers shed some 84,000 jobs, after revised net declines of 60,000 in July and 100,000 in June, according to a Labor Department survey. That brought net job losses so far in 2008 to more than 600,000.

The Labor Picture in August

いつもの "New York Times" の "The Labor Picture in August" は上の通りです。失業率がここ1年で1.5%ポイントほど上昇し、特に、先月のジャンプが大きいことが分かります。失業率は5年来の水準に達しています。黒人やヒスパニックの失業率が高くなっており、黒人の失業率はとうとう10%を超えました。平均的に、失業期間も長くなっています。非農業部門の雇用者数も今年に入って8ヶ月連続で減少し、引用にもある通り、累計で60万人に達しています。したがって、これも引用にある通り、大統領選挙を控えて、追加的な景気浮揚策が必要かどうかの議論がなされる可能性が大きいと感じています。我が国の自民党総裁選と同じで、米国大統領選も経済政策がひとつの焦点になるのかもしれません。少なくとも、物価との関係で利下げ局面を終了し、利上げの機会を模索している連邦準備制度理事会 (FED) の動きを、1ヶ月間なりともストップさせるに十分な内容だという気がします。

米国雇用統計

次に、景気局面との関係で少し長めに米国の雇用統計をプロットしたのが上のグラフです。赤い折れ線が非農業部門の雇用者数の前月比増減で、青が失業率です。どちらも季節調整済み系列です。影を付けた部分は景気後退局面ですが、現在の足元は暫定的に私の独断で昨年10月がピークだったとして影を付けています。先日、8月19日付けのエントリーでリーマー教授のペーパーを取り上げ、米国が景気後退局面には入っていないとする説を紹介しましたが、こう見ると確かに、以前の2回の景気後退局面では非農業部門の雇用者数の前月比が軽く30万人に達しているのに比べて、今回は先月7月の10万止まりですし、景気後退局面の長さもやや異様に長い印象があります。しかし、「景気後退局面」なるものの定義次第ではありますが、直感的には、もしも、現在の米国経済が景気後退局面にあるとすれば、私の従来からの説である浅くて長いをサポートしているような気もしないでもありません。

3月か、4月の議会証言の質疑応答だか、どこかでの講演だかで、FED のバーナンキ議長が景気後退については NBER が判断することであると発言した記憶があります。一応、FED のホームページを探したんですが、見当たりませんでしたので私の記憶違いかもしれません。どうでもいいことながら、市役所の窓口職員が「ソレはアチラの仕事」なんて発言しようものなら市民の反発を受けそうな気もしますが、バーナンキ議長クラスの発言だとすると立派なプロフェッショナリズムということになるのかもしれないと、勝手な印象を受けた記憶があります。いずれにせよ、FED は FED として NBER の景気局面の定義とは関係なしに経済状態を見極めて金融政策を進める決意との一般的な受止めだったと思うんですが、少なくとも米国では大統領選との関係もあって、科学的な景気局面に関する議論とは切り離した経済政策論議が進んでいるのかもしれません。

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