第3次産業活動指数に見る企業活動のピークオフ
本日、経済産業省は8月の第3次産業活動指数を発表しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。
経済産業省が17日発表した8月の第3次産業活動指数(速報、2000年=100、季節調整値)は109.1と、前月に比べ1.4%低下し2カ月ぶりにマイナスとなった。指数の水準としては5カ月ぶりの低さ。国内建築需要の低迷で建築材料卸売業が振るわなかった。8月は原油価格が高止まりし、石油製品の需要も減少。鉱物・金属材料卸売業も低調で、卸売業全体では3.7%低下した。経産省は「輸出の鈍化など世界的な景気減速を映している業種もあり、動向を注視したい」としている。
私の記憶が正しければ、このブログで第3次産業活動指数を取り上げたことはありません。そもそも、昔は統計としての精度に疑問があったりしたからです。でも、金融危機が取りあえず一段落し、金融機関にそれなりの制度的なシステミックリスク対策が取られたので、金融だけでなくもう少し広い意味での産業について、鉱工業に加えて第3次産業にも視野を広げようと考えています。まず、グラフは以下の通りです。月次の季節調整済系列で、引用した記事にもある通り、2000年を100とする指数です。上の青い折れ線が第3次産業総合で、下の赤い線が小売業だけを取り出したものです。影を付けた部分は景気後退局面で、直近はいつもの通り昨年10月がピークだったと仮定しています。
まず、統計のヘッドラインは引用した記事にもあるように、8月指数は前月比▲1.4%減でした。7月が+1.2%増でしたので反落と見ることもできますが、市場の事前コンセンサスはマイナスはマイナスでも▲1%に達しないと見ていましたので、やや大きな下げだと見る向きが多かったような気がします。マーケットでは7月の猛暑効果が剥落したとする意見も聞かれましたが、私が長崎に赴任した8月も猛暑だったように感じていますので、少なくとも私には説得力がないように受け止めています。特に、上のグラフに見られるように、総合から離れて指数のレベルとしては低水準ながら、小売業は8月に前月比プラスとなっているのが読み取れます。8月は前月比+0.7%増と7月に続いて2か月連続でプラスとなっていますから、ここに猛暑効果を読み取れると私は考えています。小売業にとどまらず、消費関連ということで、もう少し詳しく見ると、サービス消費が悪化しているように見受けられます。特に、裁量的な消費を担うセクターがマイナスを記録しており、飲食や宿泊が前月比▲1.3%減、娯楽も▲5.8%減、学習支援は▲1.0%減にとどまっているものの、理容・美容にいたっては▲10.5%減となるなど、8月は軒並み急落しました。家計の最適化行動の中で、これらの裁量的なサービス支出が抑えられている可能性がうかがえます。NY 市場の原油先物はバレルあたり70ドルを切る水準まで低下しており、穀物もあわせて、食料とエネルギーの価格上昇はピークオフしたと私は考えていますので、これからラグを伴いつつ徐々に物価は鎮静化ないし下落に向かう可能性が高いんですが、金融危機による将来不安と労働市場の悪化に伴う所得面のマイナス効果が物価のメリットを打ち消している格好です。
経験的に、第2次産業の場合は2次産業よりも景気循環の波が小さく、上のグラフでも今世紀初頭の IT バブル崩壊後の景気後退期にも大きく下向きになっていないことに見て取れます。今回も鉱工業生産指数ほど明確な形でピークオフしたわけではありませんが、すでに公表されている8月の鉱工業生産指数は前月比▲3.5%減でしたし、これから先、第3次産業の分野でも企業活動の鈍化が明らかになるものと私は考えています。
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