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2008年10月 2日 (木)

長崎県における日銀短観のデータを考える

昨夜に続いて、日銀短観を取り上げます。というのは、私は全く知らなかったんですが、日銀は当然ながらアチコチに支店があって、長崎支店もありますから、日銀短観の長崎版が存在します。県別だけではなく、日銀福岡支店からブロック単位の九州・沖縄版も発表されていたりします。長らく東京で公務員をしていた私には知る由もなかったんですが、今朝の朝刊で日銀短観の九州・沖縄版を報道しているところを見かけました。ネットで探すと日経新聞が九州版のホームページを開設しており、そこにも記事がありました。記事の中では「九州・沖縄短観」と称されています。ということで、まず、日経新聞九州版のサイトから記事の最初のパラだけを引用すると以下の通りです。

日本銀行福岡支店が1日発表した9月の九州・沖縄企業短期経済観測調査(九州・沖縄短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は全産業でマイナス14と5.四半期連続で悪化し、4年9カ月ぶりの低水準となった。原材料価格の高騰が重しになり、設備投資の計画も減速。08年度の経常利益予測は全産業で23.7%減となっており、収益面の厳しさも増している。

「九州・沖縄短観」なる呼称に即して言えば、我が長崎県の日銀長崎支店が発表しているのは「長崎短観」ということになりそうです。日銀長崎支店のホームページ上で PDF ファイルのリポートも公表されています。リポートの発表文には細かい産業別の言及があるんですが、表になっているのは製造業と非製造業だけで、規模別の大企業・中堅企業・中小企業の分類もありません。対象企業133社に対して、製造業48社、非製造業83社から回答を得ているようです。日銀短観が一般にそうですが、長崎でも回答率は高いようです。長崎短観のヘッドラインの統計について、最近時点の表とグラフは以下の通りです。先にリンクを張ったリポートから引用しています。

日銀短観における長崎県の業況判断DIの推移

当然ながら、「長崎短観」もほぼ全国と歩調を合わせた動きになっていますが、今回9月調査では製造業の業況判断 DI が6月調査の+11ポントから▲10ポイントへと、▲21ポイントもスイングして大きくマイナスになったのが目を引きます。非製造業では下げ幅は▲5ポイントと全国と同じくらいなんですが、元のレベルがかなり低くて長崎経済全体の業況判断 DI も低水準になっています。図表としては取り上げませんでしたが、全国と比較して長崎に特徴的な点を直近のデータで3点、少し長い目で見たデータで1点、取り上げたいと思います。第1に、雇用人員判断 DI が、全国ではまだ不足感がある中で、長崎では6月調査の時点からプラスに転じており、雇用過剰感が広がっていることです。第2に、企業金融面で資金繰り判断 DI と金融機関の貸出態度判断 DI ともに、全国より九州、九州より長崎で金融面が苦しいと判断されていることです。第3に、金融面で苦しいにもかかわらず、設備投資計画が長崎県では大幅増で、製造業で2桁増、非製造業に至っては40%近い前年比増、全産業でも30%増の計画となっています。キャノンなどが新工場計画を進めていると私も聞いていますが、明らかに長崎県内の地場企業ではなく、キャノンや三菱重工・佐世保重工などを含めた広い意味で県外企業の設備投資と考えられます。さらに、非製造業の設備投資計画が増加なのは、これらの県外大企業に随伴して長崎に進出する企業ではないかと想像されます。最後の長い目で見た4番目の点は、上のグラフで見て取れますが、バブル崩壊くらいまでは長崎のピークとボトムは全国から1-2四半期くらい後にズレている一方で、関係あるかどうか不明ながら、前世紀後半からは長崎では景気の波がハッキリしなくなっていることです。長崎では三菱重工や佐世保重工などの造船業が経済の柱のひとつになってきましたが、前世紀の終わりごろから急速に産業構造に何らかの変化が起こり、詳しく見ていないので単なる仮説として、サービス業の比率が高まっていたりするのかもしれません。

今週から大学の後期の授業が開始され、私は日本経済論などを担当しますから、最初の授業で学生に対して、「日本経済について詳しいことは自信があるが、長崎経済について詳しくないことはもっと自信がある」とうそぶいたりしています。でも、実は、もう少し九州経済や長崎経済について勉強しなければならないことは私自身がもっとも痛切に感じていたりします。

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