« 今夜は快勝して首位キープ! | トップページ | 米欧における金融危機の日本経済への影響をどう考えるか? »

2008年10月 6日 (月)

米国雇用統計の先行きをどう考えるか?

先週金曜日に9月の米国の雇用統計が発表されました。ヘッドラインの非農業部門雇用者数は季節調整済みの前月差で▲159千人減、失業率は同じく季節調整済みの系列で前月と変わらず6.1%でした。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

米労働省が3日発表した9月の雇用統計(季節調整済み)によると、非農業部門の雇用者数は15万9000人減少し、9カ月連続で悪化した。2003年3月の21万2000人減以来、5年半ぶりの大幅な落ち込みとなった。失業率(軍人を除く)は前月と同じ6.1%だった。金融危機は実体経済に波及し、雇用にも悪影響が及び始めている。
市場予測の平均は雇用者数が10万1000人減、失業率が6.1%だった。米雇用情勢の悪化は、内需低迷に加え貸し渋りが深刻化するなかで企業の雇用調整が加速していることを示しており、景気後退懸念が強まりそうだ。

次に、これまた、いつもの "New York Times" の "The Labor Picture in September" は以下の通りです。出典は上のリンクの通りですが、画像には少し縮小をかけてあります。

The Labor Picture in September

それから、私の方で描いたグラフは以下の通りです。従来は1990年から描いていたんですが、今回から2000年以降にしました。いずれも季節調整済みの系列で、赤い折れ線が非農業部門雇用者数の前月差、青が失業率です。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近は日本と同じように昨年10月がピークだったと私の方で仮定して影を付けてあります。

米国雇用統計の推移

9月の雇用者減の▲159千人減をどう考えるかなんですが、当然のことながら、ファニーメイやフレディマックなどの GSE の破綻やリーマン・ブラザーズ証券の破綻、AIG の救済合併などが起こった月ですから、これらの金融危機が雇用に及ぼした影響は否定できません。市場の事前コンセンサスは引用した記事にもある通り▲100千人減を少し超えるあたりでしたから、やや大きな雇用減だと受け止められています。メディアの報道などで、リーマン・ブラザーズ証券の破綻の夜にカートン・ボックスに入れた私物を持ち出す職員の写真などを見かけた人も多いと思いますが、日本と違って米国ではかなり雇用調整が早いのが特徴ですから、もちろん、破綻した金融機関での雇用減はそれなりにある可能性が高いとはいうものの、9月時点ではまだ大きくはないと考えるのが常識的だろうと思います。産業別の雇用者数の詳しい統計をチェックしても、金融サービス業は8月に▲5千人減を記録した後、9月は▲17千人減となっている程度です。もちろん、失業率も大きくハネ上がったわけではありません。金融期間の経営危機以外に、アイクと名付けられたハリケーンの影響やボーイング社のストライキも9月の特殊要因ではありますが、前者については米国労働省は "it is unlikely the storm had substantial effects on the national employment estimates" としていますし、後者については統計調査の対象期間に含まれていないようです。要するに、私の見立てによれば、金融危機や信用不安から景気後退の度合いが悪化して雇用全般に下押し圧力が加わったと考えるべきです。
最初にリンクを張っておいた米国労働省のプレスリリースにおいて、特に、産業別に取り上げられているのは、製造業▲51千人減、建設業▲35千人減、小売サービス▲40千人減、運輸・倉庫サービス▲16千人減、金融サービス▲17千人減、専門・企業サービス▲27千人、ヘルスケア・サービス+17千人増です。ただし、ヘルスケア・サービスは統計表では「ヘルスケア・教育サービス」に分類されていて、合計で+25千人増と表示されていますが、この産業では今年に入ってからも8月まではほぼ一貫して毎月+50千人くらいの増加を示していましたので、増加のテンポがかなり鈍化したことは確かだろうと思います。また、今月のデータからベンチマークが変更されましたが、ほぼ無視して差し支えないレベルでした。
今後の見通しについて、私のブログでは先週土曜日のエントリーで雇用面からはマイルドな景気後退かもしれないと呑気なことを書いてしまったんですが、やっぱり、金融危機の深まりや広がりなどを考慮すると、多くのエコノミストは9月の雇用統計を見て、「こんなもんではない」と考え始めているようです。典型的には、"Wall Street Journal" のブログサイトのひとつである "Real Time Economics" で統計発表直後の雰囲気をよく伝えるエントリーがあります。"Economists React: More 'Awful' Jobs Reports to Come" とのタイトルで、数人のエコノミストの見方が取り上げられています。詳しくは上のリンクから確かめられますが、取り上げられているエコノミストごとに、ポイントであると私が考えた1センテンスだけを示すと以下の通りです。

  • The economy was on the way down even before the latest tightening in the credit crunch.
  • The U.S. economy is shrinking, and there will be many more awful reports like this.
  • Job losses were widespread, and weakness in retail (-40,000) and leisure & hospitality (-17,000) speak directly to pressures on consumer spending.
  • Some of the job losses that resulted from the hurricanes are likely to reappear in October, but this effect is likely to be more than offset by the fallout tied to the Boeing strike and further underlying deterioration in labor market conditions.
  • Financial sector job losses meanwhile sunk to -17,000, though we remain concerned that many of the layoffs aren't being captured in these numbers - the data simply do not match the headlines.
  • The collateral effects of the recent turmoil in the credit markets will likely make the job losses even larger next month.
  • The augmented unemployment rate, which adjusts for marginally attached workers (i.e. those who would like a job but are not actively looking) rose to 9.1% from 8.9%.
  • Over the nine months that total employment has declined, the total job losses add up to 760,000.

現時点で、NBER はまだリセッションの認定をしていませんが、私の目から見て米国が昨年10-12月期をピークに景気後退局面にある可能性は極めて高く、さらに、先月からの金融危機を発端とする信用不安が続けば、この景気後退局面はさらに長くて深いものになる可能性も排除できません。米国の景気循環は家計が起点となるだけに、雇用統計の今後の推移が注目されるところです。

|

« 今夜は快勝して首位キープ! | トップページ | 米欧における金融危機の日本経済への影響をどう考えるか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/20840/24313558

この記事へのトラックバック一覧です: 米国雇用統計の先行きをどう考えるか?:

« 今夜は快勝して首位キープ! | トップページ | 米欧における金融危機の日本経済への影響をどう考えるか? »