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2008年11月 7日 (金)

先進各国は金融政策の量的緩和に進むのか?

世界経済、特に、先進国経済が不況色を強めて来ているのは、誰に言ってもらわなくても肌で感じられるところですが、とうとう、強気かつ楽観的な経済見通しで知られる国際通貨基金 (IMF) の改訂世界経済見通し "World Economic Outlook Update" でも先進国は来年はマイナス成長とのご託宣が下りました。わずか5ページの短いリポートのタイトルは "Rapidly Weakening Prospects Call for New Policy Stimulus" となっています。金融政策の緩和余地をさらに探るとともに、政策金利がゼロに近付いている現状では財政政策による景気浮揚策についても、十分に政策目標が厳選され、緩和的な金融政策に支持されていて、財政に余裕がある、との3条件を満たす場合は有効性を認めています。従来から少しスタンスを変更したような気がしないでもありません。なお、成長率見通しの概要は以下の通りです。概要表をクリックすると詳細表が別画面で表示されます。

Latest IMF projections

ということで、そんなことは各国の政策担当者には分かり切っていますから、先週、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会 (FED) や日銀が金利引下げを実施していますし、昨日は欧州中央銀行 (ECB) とイングランド銀行 (BOE) も政策金利を下げました。特に、英国は150ベーシスと極めて異例の大幅利下げでした。下のグラフの通りです。このグラフは朝日新聞のサイトから引用しています。なお、アジアでも、例えば、お隣の韓国では10月9日に25ベーシス、27日に75ベーシスの計100ベーシスの引下げを実施した後、昨日、11月7日にも50ベーシスの金利引下げを実施し、政策金利は4.0%に達しています。別に、麗々しく国際会議を開催して各国首脳が集まらなくても、着々と国際協調利下げが実行されているといえます。

政策金利の推移

私が注目すべきと考えているのは、英国が直近の5%を超えるインフレを無視して150ベーシスの金利引下げを実施したにもかかわらず、昨日段階で、市中金利、特に、ポンド建ての LIBOR の3か月物が10ベーシス強しか、また、ECB が50ベーシスの利下げを行ったにもかかわらず、ユーロ建て LIBOR に至っては10ベーシス弱しか下がらず、逆イールドの解消にはほど遠く、銀行間取引がまだ忌避されていることです。要するに、昨日の欧州と英国の利下げは失敗に終わりました。政策目的を達成できなかったといえます。もちろん、欧州と英国だけの事情ではなく、先週、10月30日付けのエントリーで指摘した通り、米国で準備預金に付利するのは銀行間取引が忌避されている結果ですし、米国や日本とも共通の現象といえます。現実に大規模なデフォルトを生じているわけではありませんが、銀行間取引においてカウンターパーティ・リスクプレミアムがここまで大きいと観察されるのは過去に例のないことかもしれません。政策金利を引き下げても銀行間取引が活発化せず、その政策金利も下限に近付きつつあるとすれば、金融政策で可能なのは量的緩和ということになります。これも10月30日付けのエントリーでアトランタ連銀のグラフを引用したように、米国では FED のバランスシートが急拡大して、暗黙の下に実質的な量的緩和の領域に踏み込んでいます。特に、米国では日本と比べものにならないくらいに MMF が決済手段として利用されているため、金利をゼロにすると元本割れを起こしそうになった MMF の取付け騒ぎを生ずるリスクが高まりますので、日銀がやったようなホントのゼロ金利は米国では不可能です。せいぜいが FF レート0.5%くらいが下限ではないかと私は見ています。ですから、量的緩和政策の採用も欧州に比べて早かった可能性があります。先週段階では気づきませんでしたが、FED が準備預金に付利して政策金利の下限を設けることは MMF 対策だったのかもしれないと考えるようになりました。もちろん、日本でも私が指摘しているように来年には量的緩和が視野に入ります。特に、欧州が明示的な量的緩和に入れば急激な円高が進む可能性がありますから、このあたりは一蓮托生のような気がします。ユーロ圏と英国についても、時期は特定できないものの、政策金利が1.5-2%を下回っても銀行間取引でカウンターパーティー・リスクプレミアムが依然として大きいと観察されるようであれば、少し前の日本のように明示的か現在の米国のように暗黙の下かは別として、量的緩和の模索に向かうものと私は考えています。早ければ年内かもしれません。

もうすぐ米国の雇用統計が発表されますが、その前に、簡単に先進各国の金融政策の動向について取りまとめておきます。

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