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2008年12月 1日 (月)

中小企業の景況感から今回の景気後退を考える

先週、中小企業金融に関係する商工中金と日本政策金融公庫から相次いで中小企業の景況に関する調査リポートが発表されました。東京で官庁エコノミストをしていた時には、少し前までの景気拡大局面がグローバル化された製造業大企業にリードされていたこともあり、中小企業の情報には関心が高くなかったんですが、長崎に来て中小企業の占めるウェイトが少なくないのを目の当たりにして、私の関心も少し違って来たりしています。まず、調査結果のページは以下の通りで、PDF ファイルのリポートへのリンクもあります。

繰返しになりますが、少し前までの景気拡大局面の特徴は、グローバル市場を最大限活用した大企業製造業がリードしていて、見方を変えれば、輸出に大きな比重があった外需依存型の成長であったとも言えます。そして、現在の景気後退局面の特徴はこれの裏返しで、グローバル市場の縮小に対応したものであることに加えて、金融市場のひっ迫からの資金調達の困難が加わっています。すなわち、輸出の比率が高くて、高額の商品でローンを組む必要があるもの、典型的には自動車などの売行きが他の商品に比べて大きく落ち込んでいるわけです。従って、少なくとも現時点で、比率は不明ながら、小売サービスなど大企業の下請けではないという意味で独立系かつ非製造業の中小企業よりも、大企業製造業の下請けとなっている製造業系の中小企業の景況感がより悪化しているんではないかと私は想像していました。
といった私の基本的な認識を基に、まず、商工中金のリポートを見ると、景況判断指数は下のグラフの通りです。太くて黒い折れ線が製造業、紺色で細いのが非製造業です。グラフにも明示してあるように、11月調査で製造業が32.2、非製造業が37.5、全体で35.1となっていて、おおむね、私の考えをサポートしているように見受けられますが、それにしても、非製造業の景況判断もかなり悪くなっていることが見て取れます。

景況判断指数 (商工中金)

そして、景気後退が小売業などの非製造業などに幅広く波及するかどうかは雇用にかなり依存します。9月調査の日銀短観の時点では、調査票記入の一部がリーマン・ショックの前だったこともあり、雇用不足感が残っていましたが、中小企業に目を転ずると、商工中金の調査では11月調査から、政策金融公庫の調査では9月調査から雇用の過剰感が現れ始めています。まず、商工中金の雇用状況 DI のグラフは以下の通りです。

雇用状況 DI (商工中金)

次に、政策金融公庫の従業員判断 DI も以下の通りです。いずれも、影を付けた部分は景気後退期ですが、私が書いたグラフだけは直近のピークを昨年10月と仮置きしています。いつもと同じです。

従業員判断 DI (日本政策金融公庫)

従来からの私の主張である「今回の景気後退局面は浅くて長い」は、震源地が米国の住宅価格という実物資産である以上、価格調整に長期間を要する一方で、日本企業の体力が相当に回復し、ヒト・モノ・カネのムダをなくした筋肉質の効率的な経営になっている、すなわち、雇用や設備の過剰感が払拭され、有利子負債が大幅に減少していることから浅くて済むことを、ひとつの大きな根拠にしていたんですが、後者はかなり怪しくなりそうです。特に、ローンを組む大型商品でグローバル市場での売上げを伸ばして来た自動車などで、非正規雇用のかなりの削減を進めているとの報道もありますし、下請けの中小企業も同じような経営上の困難に直面しているのであれば、この先、雇用が悪化して所得が伸びず、景気後退の波が小売りサービスなどの非製造業に及ぶようになれば、今回の景気後退は長い上に深くなる可能性を排除できません。我が国の雇用を考える上で、中小企業の占める比率は大きなものがあることは言うまでもありません。

雇用の質的な面とも考え得る賃金については、もはや、賃金が上がらなくなったのには慣れてしまいましたが、量的な雇用の動向は製造業での減産がどれくらいまで続くのかにも大きく依存しますが、企業経営の先行き見通しが最大のポイントです。その意味で、今月中旬に公表される12月調査の日銀短観に現れる企業マインドに注目したいと思います。日銀短観を見た上で、私も「今回の景気後退局面は浅くて長い」としている考えを大きく変えるかもしれません。

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