法人企業統計は典型的な景気後退期における企業の姿を示す
本日、財務省から7-9月期の法人企業統計調査の結果が発表されました。3期連続の減収減益で設備投資もふるわず、典型的な景気後退期の企業の姿を見せていると私は考えています。まず、統計のヘッドラインなどに関して日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
財務省が4日発表した2008年7-9月期の法人企業統計によると、企業の経常利益は前年同期に比べ22.5%減り、10兆3034億円になった。減益幅は約7年ぶりの大きさ。世界的な景気減速による売り上げの減少や原材料高が企業収益を圧迫した。設備投資も13.0%減と大幅に悪化。資源高と世界経済の落ち込みで、景気のけん引役だった企業部門が腰折れ状態にある。
売上高は前年同期比0.2%減で、3期連続の減収減益となった。財務省は「世界経済の減速を背景に我が国経済も弱まっている」としている。
まず、設備投資の推移を見ると以下の通りです。引用した記事にもある通り、前年同期比で▲13.0%減と2桁減少を記録しています。しかも、私はこの先さらに設備投資が減少する可能性が十分あると考えています。と言うのは、すでに資源高は終了したにもかかわらず、素材関連産業がまだ設備投資を増加させているからです。特に、石油石炭は+54.8%増、金属製品は+16.3%増、化でも+11.4%増を記録しています。単純に、ラグがあると見るべきなのだと受け止めていますが、これらの素材関連産業が資源高の終了に伴って生産や設備を調整すれば、設備投資はさらに減少する余地があると言えます。全体として、デフレータ次第なんですが、来週の12月9日に公表されるGDP改定値、いわゆる2次QEの設備投資はわずかに下方改定されるかどうか、下方改定されるとしてもごくわずかな小幅改定になると私は見込んでいます。なお、下のグラフは法人企業統計で集計されたソフトウェアを除く設備投資額、単位は兆円です。
次に、企業活動の結果としての売上と利益について典型的な景気後退期の企業の姿を見ることが出来ます。下のグラフの通りです。いずれも前年同期比の伸び率、左軸の単位はパーセントで、水色の折れ線が売上、赤が営業利益、緑が経常利益です。影を付けた部分は景気後退期で、直近はいつもの通り昨年10月をピークと仮置きしています。最初に書いた通り、売上、営業利益・経常利益とも3期連続の減収減益を記録しました。法人企業統計は資本金1000万円以上という、それ相応の規模の企業の集計結果ですから、法人化されてもいない家族経営の零細企業の状況はもっと厳しいんだろうと考えられます。
最後に、まったくついでながら、労働分配率の推移です。下の赤い折れ線グラフの通りです。単位はもちろんパーセントです。1980年以降のかなり長い期間を取っていますが、季節調整をかけてありませんので、ラインがジグザグしています。影を付けた部分は上のグラフとおなじ景気後退期です。直近の仮置きも上と同じです。少し長めに取ったのは、今までの景気拡大局面で、しかも、その最終盤で労働分配率が上昇したのはバブル景気の時だけだったということを確かめたかったからです。昨年までの景気拡大期は、結局、労働分配率を高めることなく終了してしまいましたが、バブル景気以外はおおむねそうだった気がします。バブル景気の際は景気拡大期の最終盤で労働分配率が上昇したものですから、バブル崩壊直後の景気後退期には75%を超える水準まで達してしまい、その後も長く雇用過剰感が払しょくされませんでした。今回も、景気後退局面が長期化すれば、労働分配率の上昇を背景にリストラ圧力が高まる可能性に注意することが必要だと私は考えています。労働分配率の上昇はよほど力強い景気拡大のバックアップを得ていない限り、実は、雇用者には好ましくないことであることを理解してほしいと思います。
いずれにせよ、繰返しになりますが、本日発表された法人企業統計調査の結果はいかなる観点から見ても、典型的に景気後退期に見られる法人企業の姿だという気がします。
| 固定リンク
コメント