設備投資とGDP成長率の先行きを暗示する機械受注統計
本日、内閣府から昨年11月の機械受注統計調査報告が発表されました。事前の市場コンセンサスでも2ケタ近い減少を予想していましたが、コア機械受注と呼ばれる船舶と電力を除く民需の季節調整済み前月比で見て▲16.2%減と大幅な悪化を示しました。機械設備に対する需要の加速度的な減退が示されたことから、内閣府では基調判断を3か月ぶりに下方修正し、前月までの「減少している」から「大幅に減少している」と変更しました。いつものグラフは以下の通りです。左軸の単位は兆円です。
ついでながら、日経新聞や朝日新聞で取り上げられていた日本工作機械工業会のデータではなく、日本工作機械販売協会のデータなんですが、工作機械に限った受注は以下のグラフの通りです。この1年でほぼ半減といったところでしょうか。
特徴としては、要するに、最近の経済指標は押し並べてそうなんですが、すべての製造業が軒並み悪いということです。需要先別の季節調整済みの前月比で見て、一応、非製造業としては、通信の+23.9%増や金融保険の+42.2%増などが下支えとなってプラスを維持しているものの、製造業はほぼ全滅で、電気機械の▲18.8%減、自動車の▲33.6%減などの主力輸出セクターの加工組立て型産業に加えて、化学の▲54.7%減、石油石炭の▲54.7%減、鉄鋼の▲52.9%など、資源高に支えられて比較的堅調に推移して来た素材関連セクターも急減しています。
どうしてそうなったのかというと、輸出や国内需要の急速な減少により後ろ向きの意図せざる在庫が積み上がって来ていて、輸出向けをはじめとする国内の生産が大きく減少するとともに企業収益が急速に悪化していることから、日銀短観などでも示されている通り、設備の過剰感が急速に高まって来ているからです。雇用の過剰感については、年末から年始にかけて、派遣労働者や期間工の「派遣切り」や「雇い止め」といった言葉が報道にあふれて明らかになっていますが、機械設備の方でも同じ状況になっているわけです。
この結果、昨年7-9月期に続いて、10-12月期も機械受注は2四半期連続で2ケタ減となる公算が非常に高く、それどころか、今年1-3月期もさらに大きな2ケタ減が続くんではないかと私は考えています。ということは、機械受注はGDPコンポーネントの設備投資の先行指標ですから、私が従来から主張している通り、今年年央まで設備投資はマイナスが続き、GDP成長率も年央くらいまで、ひょっとしたら、5-6四半期連続でマイナス成長が続く可能性があります。しかも、この機械設備のストック調整はグローバルなレベルで見て、まだ始まったばかりであり、底は全く見えません。今年年央以降も設備投資のマイナスが続く可能性も排除できません。今年前半が景気の底の中でも最も暗い時期であると私は考えていましたが、ひょっとしたら、この先、もっと暗くなるのかもしれないと危惧しています。
最後に、経済の話題を離れて、本日夕刻の選考会において、芥川賞は津村記久子さんの「ポトスライムの舟」に、直木賞は天童荒太さんの『悼む人』と山本兼一さんの『利休にたずねよ』に、それぞれ授賞されることが決まったと報じられています。私が何となく心情的に応援していた恩田陸さんの『きのうの世界』は選に漏れたようです。ひょっとしたら、日を改めて週末にでも取り上げるかもしれません。
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