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2009年1月23日 (金)

日銀はデフレ・スパイラルを食い止められるか?

一昨日から開催されていた日銀の金融政策決定会合が昨日で終わり、昨日午後にその結果が発表されました。発表された文書のひとつに「当面の金融政策運営について」があり、その中で、いわゆる「展望リポート」の中間レビューとして、成長率と物価に関する日銀政策委員の大勢見通しが公表されています。上にリンクを張った文書の pp.3 にあり、以下の通りです。

日銀政策委員の大勢見通し

2009年度の政府経済見通しがゼロ成長である一方で、日銀政策委員の大勢は▲2%のマイナス成長を見込んでおり、ある意味で、非常に正直な見通しだという気がします。さらに、上でリンクを張ったのと同じ文書の pp.4 にはリスク・バランス・チャートも示されており、特に、成長率については下方リスクが高いような気がします。同時に、消費者物価についても、2009年度から2010年度にかけてマイナスを見込んでいます。会議後の白川総裁の記者会見では長々と会議結果について披露した後、最初の質問で「デフレ・スパイラル」について、インフレと成長に関する予想を上げつつ、インフレ予想については大きく変化していないと回答しています。でも、言及されなかった大きな問題は成長率です。
今後の景気展望については、かねてより、私は現在の2009年1-3月期ないし4-6月期くらいまでが景気後退局面の中でももっとも暗い闇で、ひょっとしたら、今年いっぱいくらいまでマイナスやゼロ近傍の成長が続く可能性があり、2009年ないし2009年度が終わるくらいの段階で、潜在成長率水準には達しないもののプラスの成長を記録し始め、そろそろ景気後退局面の終わりが見えて来る、あるいは、場合によっては、後付けの統計的な検証によれば、2010年前半くらいが景気の底となる、との標準的なシナリオを持っています。私にとっての標準シナリオであり、やや楽観的なバイアスは否定しません。しかし、少なくともデフレ・スパイラルについては、2010年年初から景気回復との標準シナリオが崩れて、2010年に入っても景気回復が視野に入らない場合、かなり現実味を帯びることになります。逆に言えば、私なんかよりも悲観的なバイアスを持つエコノミストのシナリオであれば、現実化する可能性が十分あるということです。それはともかく、デフレ・スパイラルが視野に入るのは、商品市況との関係で今年半ばと考えているエコノミストも少なくないようですが、私は2009年の終わりか、あるいは、2010年に入ってからが勝負だと考えています。すなわち、単純な物価の下落幅ということになれば今年半ばかもしれませんが、物価と成長のスパイラルとなれば今年終わりか来年初めで成長率がピックアップするかどうかが勝負です。白川総裁の記者会見では、取材する記者のレベルに合わせたんでしょうが、明確な回答は別にして、この点はハッキリと意識されていました。さらに、潜在成長率が、おそらく、1%台前半まで低下していることについても十分な認識が示されていると私は受け止めています。加えて、昨年末からの一連の措置により、よく、米国の連邦準備制度理事会 (FED) について比喩的に使われる用語を援用すれば、弾薬庫 (arsenal) には政策手段が豊富にそろっています。

思い返せば、2007年9月の段階で私レベルのエコノミストでも経済の変調に気づいていましたが、当時の福井総裁は「景気拡大が賃金を上昇させて、物価も上昇する」とのいわゆる「好循環メカニズム」を繰り返すだけで、ものすごく不安を感じたものです。でも、少なくとも、現在の日銀は景気局面が違うとはいえ、かなり的確に経済の現状を把握しているように総裁記者会見からは感じられます。日銀がデフレ・スパイラルの阻止に大きな役割を果たすことが期待できると私は受け止めています。

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