« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

2009年3月31日 (火)

悪化を続ける労働統計と底割れしない家計調査、それに大きく下方修正したアジア開発銀行の経済見通し

本日、総務省統計局から今年2月の失業率が、また、厚生労働省から同じく2月の有効求人倍率が、それぞれ発表されました。統計のヘッドラインとなる失業率は季節調整済みの計数で4.4%、有効求人倍率は同じく季節調整済みで0.59倍と、1月の結果に比べて大幅に悪化しました。新規求人数も減少が止まりません。昨日発表された鉱工業生産指数に先行きの明るさが見られるのと対照的な結果となりました。失業率は遅行系列として景気動向指数に採用されていますが、有効求人倍率は一致系列、新規求人数は先行系列ですから、総じて見れば労働市場は引き続き厳しいことに変わりありません。まず、いつもの通り、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

厚生労働省が31日朝発表した2月の有効求人倍率(季節調整値)は0.59倍となり、前月比0.08ポイント低下した。2003年2月以来、6年ぶりの低水準。低下幅は1974年12月(0.09ポイント低下)以来、34年2カ月ぶりの大きさだった。有効求人は前月に比べ6.7%減、有効求職者は4.9%増だった。
新規求人は前年同月比で30.1%減少した。産業別にみると、減少が大きかったのは製造業(61.3%減)や情報通信業(38.8%減)など。飲食店・宿泊業(25.7%減)と医療・福祉(6.9%減)は増加から減少に転じた。
総務省が31日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は4.4%となり、前月に比べ0.3ポイント上昇した。完全失業者数は前年同月比33万人増の299万人となり、4カ月連続で増加した。また就業者数は6265万人となり、前年同月より27万人減少、13カ月連続の減少となった。

次に、いつものグラフは以下の通りです。すべて季節調整済みの月次系列で、上のパネルから失業率、有効求人倍率、新規求人数のグラフです。いつもの通り、影を付けた部分は景気後退期です。

労働統計の推移

グラフを見ての通りなんですが、2月の労働力調査では季節調整済み計数の前月差で見て、就業者数が▲22万人減、うち、非農林業就業者数は▲31万人減と大きく減少しました。結果として、雇用者数は▲17万人の減少、逆に、失業者数は+19万人増となり、失業率は前月の4.1%から4.4%に高まりました。失業者は引用した記事にもある通り、300万人近いんですが、雇用調整助成金制度を活用した休業者が2月時点で150万人近く存在し、うち 1/3 程度の約50万人は今年に入ってからの増加と言われていますから、この部分が失業していたとすれば失業率は軽く5%を上回っていたことになります。有効求人倍率は前月の0.67倍から0.59倍へと一気に悪化し、加えて、新規求人数は前月比2桁マイナスと激減しました。労働需要に回復の兆しは見えません。

産業別就業者数の増減

主要産業別に非農業就業者数の推移をプロットしたのが上のグラフです。原系列の前年同月差で、左軸の単位は万人です。従来から減少基調の建設業に加えて、2008年に入ってから製造業が大きくマイナスに転じ、2007年前半まで増加を示していた情報通信業もやや後退し、現在では医療・福祉が雇用を支えているのが実情です。非農業就業者数はマイナス基調を強めているように見えます。

家計調査の推移

この結果、家計消費も思わしくないんですが、最近の推移は上のグラフの通りです。消費水準指数、実質家計消費とも季節調整済みの2005年を100とする指数です。通常、注目されている家計消費は2月は前年同月比で▲3.5%減、上のグラフの季節調整済みで前月比+0.3%増となりました。私は統計としての信頼性にやや疑問があると考えていますので、家計調査をこのブログで取り上げるのは初めてかもしれません。しかし、いずれにせよ、現状では家計消費は何とか底割れしないで済んでいるのが実情で、労働需給が大きく緩和したままですから自律的な改善の兆しは見られません。定額給付金でどのような動きが出るのかを注視する必要があります。

Five-year average and forecasts of GDP growth, developing Asia

最後に、アジア開発銀行から「アジア開発見通し」 Asian Development Outlook 2009 が発表されました。副題は Rebalancing Asia's Growth となっており、経済見通しは上のグラフの通りです。リポートの pp.26 から引用しています。上のグラフをクリックすると、別画面で詳細な表が現れます。詳細表はリポートの pp.296 のTable A1 です。今回のリポートでは2009年のアジア途上国の実質成長率を3.4%と見込んでおり、昨年9月の 2008 update の見通し7.2%からわずか半年で半減を超える下方修正となっています。特に、中国が7%に、インドも5%に成長率を低下させると見込んでいます。また、過度の対外依存を回避するために、以下の5点の政策提言を行っています。ただし、英文で300ページを超えるリポートですから、私も全部を読もうとは思っていません。

  • Strengthening domestic consumption requires policies which transfer more corporate savings to households, as well as policies which reduce the precautionary motive for savings among households.
  • Governments should give priority to enhancing the investment climate rather than quantitative expansion of investment.
  • A more active fiscal policy can mitigate weak external demand in the short run as well as lay the foundation for a more robust domestic demand beyond the short run.
  • Supply-side policies which promote small- and medium-sized enterprises and services industries will increase the relative importance of production that caters to domestic demand.
  • Policies pertaining to financial development and exchange rate will ease the adjustment of both supply and demand toward a more balanced structure.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月30日 (月)

G20 に関する Financial Times の報道

4月2日にロンドンで始まる G20 会合について、Financial Times"G20 communiqué steers clear of protectionism"と題するコミュニケのドラフトを報じています。欧州諸国の抵抗があるため、財政出動の具体的な数値目標の提示は見送られる方向のようですが、世界の成長率を2%ポイント押し上げ、2000万人の雇用を創出するとの目標が掲げられるとの報道です。私が昨年来懸念している保護主義にも目配りし、自国通貨の切下げなどの政策を自粛する点でも一致することが盛り込まれるとともに、世界貿易機関 (WTO) に3か月ごとに保護主義的な動きを点検するよう求める項目も見られるようです。
また、同じ Financial Times の別のサイトでは "G20 Wishlist" として、以下のようなフラッシュを置いています。いつものように、直リンしています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

鉱工業生産は底打ちの兆しを示唆しているか?

本日、経済産業省から今年2月の鉱工業生産指数が発表されました。ヘッドラインの鉱工業生産指数の季節調整済み前月比は5か月連続のマイナスとなり、▲9.4%の低下とほぼ市場の事前コンセンサス通りでしたが、同時に公表されたた製造工業予測指数は3月+2.9%、4月+3.1%と2か月連続で前月比プラスに転ずるとの結果でした。まず、いつもの通り、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

経済産業省が30日発表した2月の鉱工業生産指数(速報値、2005年=100)は68.7となり、前月に比べて9.4%低下した。5カ月連続のマイナスで、1983年3月以来の低い水準に落ち込んだ。自動車などの輸送機械や一般機械の大幅減産が続いている。その一方で、在庫は2カ月連続で減少。同時に発表した3月と4月の生産予測指数はともに前月比プラスで、生産が底打ちする可能性も出てきた。
生産指数の前月比マイナス幅は1月の10.2%低下に比べると縮小したものの、過去3番目の大きさで厳しい情勢が続いている。5カ月連続の低下は、01年3月から11月にかけての9カ月連続以来の長さ。前年同月比は38.4%低下で、統計上さかのぼれる1954年以降で最大の落ち込みになった。経産省は生産の基調判断を4カ月連続で「急速に低下している」とした。

次に、いつものグラフは以下の通りです。季節調整済みの鉱工業生産の月次指数で、影を付けた部分は景気後退期です。

鉱工業生産指数の推移

少し詳しく業種別に生産と在庫の指数を見ると、引き続き、輸送機械が前月比▲23.2%減、一般機械も▲15.2%減、電気機械も▲10.4%減などと、主要輸出関連組立産業の大幅な減産が続いています。しかし、輸送機械では在庫が前月比▲20.3%減、在庫率指数も4か月振りに前月比3.1%低下し、先行きも3月4月と連続で増産する計画となっており、メディアで報道されているように主要自動車メーカーでは4-5月ごろまでに生産や在庫の調整を終了するという計画を着々と進めているようにも見受けられます。また、大きく在庫調整が遅れていた電子部品・デバイス工業でも在庫が前月比▲10.6%減と2か月連続で減少していますし、その川下である情報通信機械工業では、在庫は前月比▲13.2%減と4か月連続で減少、在庫率指数も2か月連続低下していますから、楽観的に見れば、最悪の時期を脱しつつあることが示唆されているのかもしれません。
しかし、問題は最終需要です。消費については定額給付金の支給が本格化するとしても、一時的な効果にとどまる可能性が高いでしょうし、設備投資を考えても、先行指標である資本財出荷は前月比▲8.9%減と5か月連続で低下していますし、例えば、一般機械の在庫は前月比▲1.2%減の小幅な低下にとどまっている一方で、在庫率は+18.6%増とまだ大幅な在庫の積上りが見られます。明後日の日銀短観で明確に示されると思いますが、設備投資環境がまだ好転するには時間がかかることを示唆していると受け止めるべきです。3月14日のエントリーで主張した通り、最終需要動向が弱いままで推移するのであれば、鉱工業生産動向に明るさの見える現状も W 字型の景気回復の最初の上昇局面にとどまり、再び景気が下降することも十分視野に入れておく必要があります。

最後に、3-4月の製造工業予測指数をそのまま当てはめると、GDPに2割強のシェアを有する鉱工業生産の寄与だけで1-3月期のGDPは▲4-5%のマイナス成長となります。実際にはマイナス寄与を示すセクターはもっとある可能性が高く、今から1-3月期のGDP成長率は少なくとも年率で2桁マイナスとなることは確実です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月29日 (日)

ゴールデンウィークの子供向け映画

今日は外は寒かったようですが、ゆったりと家の中で過ごします。陽射しは穏やかなように見受けられました。今週半ばに雨が降って、その後は気温も上がって春らしくなるような天気予報だったような気がします。我が家のおにいちゃんの中学や私が勤める大学の入学式などは来週に予定されています。今週半ばからはもう4月です。

ということで、やや気が早いんですが、ゴールデンウィークの子供向け映画を取り上げます。そろそろ前売り券を買わないと封切られてしまうからです。4月18日(土)に封切られる子供向けの2本を紹介します。Yahoo! 映画からのコピペですから、ネタバレはないと思います。

『名探偵コナン 漆黒の追跡者 (チェイサー)』

まず、「名探偵コナン」のシリーズは劇場版第13弾です。『名探偵コナン 漆黒の追跡者 (チェイサー)』というタイトルで、コナンが宿敵 "黒づくめの男たち" と対決する今作では、高校生探偵・工藤新一が名探偵・江戸川コナンとなったシリーズの原点とリンクするバトル・サスペンスが展開されます。監督は『名探偵コナン 戦慄の楽譜 (フルスコア)』の山本泰一郎。シリーズ史上最大の危機に立ち向かうコナン因縁の対決に注目です。あらすじは、東京を中心に6件の広域連続殺人事件が発生したため、目暮警部を筆頭に、各県の刑事たちが捜査会議に参加していた時、コナンは会議を抜けた1人の刑事がスポーツカーに乗り込む瞬間を目撃したことから、宿敵 "黒づくめ" の1人が警察の捜査会議に参加して逃走を図ったことに気付き、危険を承知の上で単独捜査を開始し………、というものです。

『クレヨンしんちゃん オタケべ! カスカベ野生王国』

次に、「クレヨンしんちゃん」のシリーズは劇場版第17弾です。『クレヨンしんちゃん オタケべ! カスカベ野生王国』というタイトルで、野原一家が動物に変身して大活躍する今作は、環境問題とエコをテーマとして取り入れ、"人類動物化計画" の陰謀に立ち向かうしんのすけの試練が描かれます。監督は「ノンタンといっしょ」のしぎのあきら。ギャグの中にも過激なエコ組織など社会性を反映させ、母と子のきずなの尊さも扱うなど本格的なメッセージの数々に胸打たれる向きもあるようです。あらすじは、カスカベの街では地球に優しいエコロジー活動が盛んになり、しんのすけも地域のゴミ拾いをするようになったある日、おいしそうなドリンクを拾ったしんのすけは大切に家に持ち帰って冷蔵庫で冷やしていたが、のどが渇いていた両親が飲んでしまい、ドリンクを飲んだ両親はニワトリとヒョウの姿に変身してしまい………、というものです。

我が家はすでに「名探偵コナン」に決めて、前売り券も買ってあります。一昨年までは「クレヨンしんちゃん」一本やりだったんですが、昨年から「名探偵コナン」になり、チョッピリ子供達の成長を感じます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月28日 (土)

来週発表される日銀短観は過去最悪水準か?

来週水曜日4月1日に3月調査の日銀短観が発表されます。12月調査の結果はこのブログでも12月15日付けのエントリーで取り上げ、ヘッドラインの大企業製造業の業況判断DIが▲24、大企業非製造業が▲9でしたが、3月調査ではこれが大幅に悪化すると見込まれています。まず、日経新聞のサイトから日銀短観の予想に関する記事を引用すると以下の通りです。

民間エコノミストの間で企業の景況感や景気の先行きに厳しい見方が広がっている。日銀が4月1日に公表する3月の企業短期経済観測調査(短観)について日経グループのQUICKが民間予測を集計したところ、大企業製造業の業況判断指数(DI)予測の中心値はマイナス54と、第1次石油危機で景気が低迷した1975年5月以来の低水準に悪化する見通し。09年度の成長率予測は平均でマイナス4.3%と戦後最大の落ち込みが見込まれる。日本経済は回復のきっかけをつかみにくい状況が続きそうだ。
予測はQUICKが集計する「コンセンサス・マクロ」の一環で、日銀短観については25社の中心値を算出した。

この日銀短観について、GDP統計などでチェックしているシンクタンクや金融機関各社のリポートから下の表を取りまとめました。金融機関などでは顧客向けに出しているニューズレターでクローズに公表する形式の機関もありますし、私もメールなんかに添付してもらっているリポートもあるんですが、いつもの通り、ネットに PDF ファイルなどでオープンに公表している機関に限って取り上げています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。なお、詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールされてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
ヘッドライン
日本総研▲56
▲26
内外景気後退の深刻化を背景に、企業マインドが大幅に悪化
みずほ総研▲65
▲28
製造業の業況判断DIが過去最悪の水準に
三菱UFJ証券▲50
▲29
業況判断DIの大幅な悪化が続く。ただし、先行き見通しは改善に
第一生命経済研▲50
▲20
業況の大幅悪化が続く
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲63
▲27
過去最悪の水準まで悪化
ニッセイ基礎研▲53
▲23
今回短観は「景気が戦後最悪の状況」にあることを裏付ける
三菱総研▲50
▲25
製造業、非製造業ともに過去最大レベルの悪化幅
新光総研▲55
▲27
業況判断DIは急速な悪化が継続する見込み

ついでながら、同じような日銀短観の予想に関する表が朝日新聞のサイトにも見られます。このサイトには短観の簡単な解説もあります。何らご参考まで。
さて、この日銀短観について、ヘッドラインの現状判断DIの結果がもちろん興味を引くんですが、私はこのほか以下の4点に注目すべきだと考えています。第1に、3か月先の6月を想定した先行きDIの方向性です。私はかなりの開きが出るんではないかと考えています。例えば具体的な数字で示すと、3月の現状判断DIよりも6月の先行きDIの方が10ポイントを超えるくらい上向きの数字になると、企業マインドに明るさが見られる兆候と受け止めることが可能なような気がします。実際にロイター短観では16ポイントの改善を見込んでいます。第2に、2009年度の設備投資計画です。どの規模や業種を見ても2桁マイナスの計画であろうことは疑いありません。しかし、6月調査での修正方向も含めて注目であることは確かです。第3に、資金繰り判断DIなどの金融機関の貸出態度が昨年12月調査時点から、どのように変化しているかです。日銀の実施した企業金融支援策であるCPや社債の買取り、政府による信用保証枠の拡充などが効果を上げているのであれば、ひょっとしたら緩んでいるくらいではないかと予想するエコノミストがいても私は不思議に思いません。第4に、雇用判断DIに見られる雇用過剰感が大きくなっているかどうかです。そろそろ学生諸君の就職活動が始まる季節ですので、大学教授としては大いに気がかりなところです。

来週は月曜日に鉱工業生産指数、火曜日に失業率と有効求人倍率などの労働統計、水曜日にはこの日銀短観と、いろんな経済指標が目白押しです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月27日 (金)

貿易に関する見通しと最近の経済指標

今週は春休みと称して、WBC のテレビ観戦に釘付けになっていたほか、おにいちゃんの卒業式に出席したり、一家そろって春休み映画を見に行ったりと、ゆったり過ごしている間に、いくつか取り上げ損なっていた指標などがあり、今夜のエントリーでスポットを当てたいと思います。

貿易統計の推移

まず、一昨日の3月25日に財務省から今年2月の貿易統計が発表されています。グラフは上の通りです。上のパネルの単位は兆円、下は前年同月比パーセントです。いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインに関する記事を引用すると以下の通りです。

財務省が25日発表した2月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月に比べ49.4%減の3兆5255億円となった。自動車が落ち込んだことなどを背景に、減少率は4カ月続けて過去最悪を更新した。国内需要の低迷で輸入額も大きく減り、前年同月比43.0%減の3兆4431億円。こちらも減少率は過去最悪で、世界的な景気悪化によって輸出入ともに急ブレーキがかかっている。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は824億円の黒字となり、昨年9月以来、5カ月ぶりに黒字に転じた。今までは輸出の減り方が輸入の減り方を大きく上回り、貿易赤字が続いていたが、中国からの衣料品や東アジアからの半導体などの輸入が大きく減少し、かろうじて黒字となった。資源価格の落ち込みや円高も輸入額を押し下げた。

相変わらず、輸出は前年同月比でほぼ半減しており、貿易収支は引用した記事にあるように昨年9月以来5か月ぶりの黒字といっても、決して明るい話題ではありません。輸出の半減は昨年2月がうるう年であった影響があるとはいえ、例えば、自動車輸出は全世界向けでそもそも▲70%を越える減少を記録し、特に、米国向けが前年同月比▲76.6%減、同じくEU向けも▲74.7%減と、ほぼ 1/4 の落ち込んでいますから、うるう年の3-4%の調整の範囲をはるかに上回っていることは明らかです。もっとも、前々から私が指摘している通り、内外の景気局面の違いにより、早晩、遅くとも今年中には基調として貿易黒字を回復すると見込んでいます。ただし目先の話としては、来週発表される鉱工業生産指数は輸出の影響をかなり受けますので、2月統計も前月比で2桁前後の落ち込みを続けるんではないかと考えられます。なお、長崎ローカルで注目されている船舶について、2月の主要品目別輸出でプラスを記録したのは船舶だけといっても過言ではありません。前年同月比で+23.9%増となりました。しかし、機械受注統計などを見ると、この先2四半期くらいで船舶も前年割れする可能性があることを指摘しておきたいと思います。

Growth in the volume of world merchandise trade and GDP

次に、今週月曜日の3月23日にWTO の貿易見通しが発表され、世界的な景気後退の影響をモロに受けて、今年2009年の世界貿易は数量ベースで約9%の減少と見込まれています。我が国の輸出も年を通して2桁を上回る減少を記録する可能性が十分あると私は考えています。

消費者物価の推移

最後に、タイトルにした最近の経済指標に関して、総務省から本日発表された消費者物価指数のいつものグラフは上の通りです。今年に入ってから2か月連続で前年同月比横ばいとなり、原油がバレル50ドルに達したとはいえ、少なくとも商品市況高騰の影響による物価上昇懸念はほぼなくなりました。貿易と違って物価については、私は細かな品目別の価格の上昇や下落には大きな興味は持っておらず、いわゆる一般物価水準に注目しているんですが、現在の需要動向を考え合わせると供給過剰はしばらく続き、忍び寄るデフレの足音が聞こえて来そうです。食料とエネルギーを除く欧米タイプのコアコアCPIでは先月からマイナスに突っ込んでいます。これも日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

総務省が27日発表した2月の全国の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は、生鮮食品を除く総合が100.4と、前年同月比横ばいだった。横ばいは2カ月連続。生鮮食品を含む総合では100.4と、0.1%下落した。
生鮮食品を除く総合は、日経QUICKニュース社がまとめた市場予測平均値(0.1%下落)を上回った。
同時に発表した3月の東京都区部の消費者物価指数(中旬の速報値、2005年=100)は生鮮食品を除く総合で100.7と、前年同月比0.4%上昇した。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月26日 (木)

一家で超劇場版ケロロ軍曹の映画を見に行く

「超劇場版 ケロロ軍曹 撃侵 ドラゴンウォリアーズ であります!」

今日は一家で映画を見に出かけます。先月、2月20日付けのエントリーで取り上げた「超劇場版 ケロロ軍曹 撃侵 ドラゴンウォリアーズ であります!」を見に新宿三丁目の角川シネマ新宿まで行きました。席数は50余りのように見受けられ、我が家は上映開始直前に映画館に入りましたので、最前列の席しか空いていませんでした。大きく上を向きながら映画を鑑賞します。なお、オマケは「回れ!ケロン星」なるコマのようなおもちゃでした。その昔に流行ったベイブレードのようにギザギザのバーで回す方式です。
我が家はコミック本も毎週土曜日のアニメも「ケロロ軍曹」は熱心に見ており、劇場版映画は4年目になりますが、コチラも欠かさず見ています。でも、コミックとテレビは別としても、映画の方は質が落ちて来たような気がします。「ケロロ軍曹」は言うまでもなくギャグマンガなんですが、コミックやテレビをそのまま映画化するんではなく、いわば書下ろしの作品を映画にしています。同じギャグマンガの「クレヨンしんちゃん」の方式を踏襲しているといえます。しかし、「クレヨンしんちゃん」の映画が非日常の世界を見事に描き出しているのに対して、特に今年の「ケロロ軍曹」の映画はイマイチです。映画にだけ出て来るキャラもイマイチですし、構成に至ってはさみしい限りです。私は映画は2本立てから1本立てに成長し、小さな映画館からマリオンにランクアップされるものだと考えていますが、この「ケロロ軍曹」の映画は営業的に成功するとは考えがたく、「ポケモン」や「ドラえもん」に比べれば、作品としても営業成績としてもかなり落ちます。我が家も来年の春休み映画は「ケロロ軍曹」以外の映画を見る可能性が高くなった気がしないでもありません。「ドラえもん」に回帰するかもしれません。
我が家の子供達の年齢も関係しそうな気がします。幼稚園から小学校も低学年であれば、単なるギャグマンガでOKなんでしょうが、もう少し映像やサウンド、あるいは、プロットに感心するような場面が欲しいところですし、そうでなければ、あくまでギャグマンガで押し通すのも一案です。昨年も同じ感想だったような気がしますが、劇場版ということでかなり構えてシリアスに作ろうとしている分、かえって物足りなさを感じさせます。また、この「ケロロ軍曹」はいわゆる典故を多く用いていて、「ドラえもん」や「ガンダム」からのパロディがたくさん含まれています。我が家の子供達がもう少し高い年齢層であれば、このパロディに気づいて、それはそれで楽しめる可能性がありますが、それには年齢が足りないような気がしないでもありません。
いずれにせよ、我が家の子供達の評価も低かったですし、来年は「ケロロ軍曹」の映画はパスしそうな気がします。下の写真は映画を見終えた子供達です。やや表情が冴えません。

ケロロ軍曹の映画を見終えた子供達

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月25日 (水)

おにいちゃんの小学校卒業式

校長先生から卒業証書を受け取るおにいちゃん

卒業式を終えて親子で記念写真

今日は我が家のおにいちゃんの小学校の卒業式でした。我が家は夫婦そろって親バカですので、2人で卒業式に出席します。校長先生から児童1人1人に卒業証書が手渡されます。上の写真は、我が家のおにいちゃんが校長先生から卒業証書をもらったところです。小学6年生にもなれば女性の校長先生よりも背の高い子がいても不思議ではありません。正確な計測は困難ですが、我が家のおにいちゃんは校長先生とほぼ同じ身長に見えました。下の写真は卒業式を終えて親子そろって記念写真です。男の子はほとんどネクタイを着用し、我が家のおにいちゃんもネクタイ姿です。私自身は普段からプレーンノットで結ぶんですが、おにいちゃんが私のネクタイを借りてプレーンノットにすると長過ぎるので、結局、ウィンザーノットにしました。来月からは詰襟の中学生らしい格好で通学です。「冠婚葬祭」とはよく言ったもので、我が子が一段ずつ着実に人生の階段を上がっていくのは親として大きな喜びです。
なお、卒業証書をもらう順番なんですが、「親の因果が子に報い」ということで、我が家の場合はいかんともしがたく、こういった場合は後の順番になります。日本語で50音順に並べても、アルファベットで ABC 順でも、どちらでも後の方になってしまいます。親としてもこればかりはどうしようもありませんし、前の方がいいとも限りません。苗字の方はしょうがないので、名前の方に興味を移します。卒業式次第に卒業生の名簿が印刷してあり、担任の先生が児童の名前を読み上げますので、女房と私語を交わしながら名前の読み方を検討したりします。我が家のおにいちゃんの場合、画数の少ない漢字を使って、しかも、標準的な読み方の名前にしたつもりですが、時折、とてつもなく凝った名前が出て来て面食らったりしました。それから、卒業証書の話題を続けると、私なんかの世代では、小学校から大学まで卒業証書は丸めて筒のような入れ物に入れるものと相場が決まっていましたが、我が家のおにいちゃんの小学校の卒業証書入れは2ツ折りのバインダーのようなものでした。時代の流れなのかもしれません。

何はともあれ、
誠にめでたい限りです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月24日 (火)

侍ジャパンの WBC 連覇を祝す!

WBC logo

  RHBE
日  本0010001102 51560
韓  国0000100110 3551

いやあ、手に汗握る大決戦でした。上のスコアボードの通り、最後の決勝戦にふさわしい僅差の好試合だと思いますし、何よりも侍ジャパンが優勝したので感激しました。私も韓国戦は飽きたと言いつつ、また、そんなに愛国心が強いわけではないにもかかわらず、しっかりと最後までテレビ観戦してしまいました。押しに押して押しまくって、最後の最後でイチロー外野手が勝越しのタイムリーを放ち、韓国に一度もリードを許さず侍ジャパンが逃げ切り、前回に続いて WBC 連覇です。誠におめでとうございます。ついでながら、MVP は前回に引き続いて松坂投手だったそうです。こちらもおめでとうございます。岩隈投手もよかったと思うんですが、いずれにせよ、優勝の日本チームからは選ぶのであれば、どちらかの投手が MVP を受賞するのは衆目の一致するところだと思います。韓国もよく戦ったと言えます。過去の歴史的な経緯から何だかんだと言う人もいますが、少なくとも、野球に関しては好敵手と言えるんではないかと思います。以下は今回の'09 WBC の組合せと結果を予選ラウンドから決勝トーナメントまで一覧したものです。読売新聞のサイトから引用しています。

WBC 組合せと結果

ただし、勝ったからいいようなものの、原監督の選手起用には不満も残ります。4番に起用した城島捕手が大ブレーキになったのは結果論ですが、最後の締めくくりの投手起用については大きな疑問を感じた阪神ファンも多かったのではないでしょうか。確かにダルビッシュ投手が日本一のピッチャーであり、最高のスターターであることは同意しますが、僅差の最終回を逃げ切るクローザーの日本一は我が阪神の藤川投手であることは明らかです。9回ウラに同点に追いつかれた場面や10回ウラに先頭打者をフォアボールで出した場面など、ここは藤川やろっ!と叫んだ阪神ファンが私以外にもいたような気がします。昨日の私のブログを原監督には読んでいただけていなかったようで、誠に残念です。1週間あまりでプロ野球もシーズンインですから、藤川投手には実戦の場で日本一のクローザーを証明してほしいと思います。

がんばれ侍ジャパン!

何はともあれ、
おめでとう侍ジャパン!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月23日 (月)

侍ジャパンの WBC 連覇を応援する!

WBC logo

  RHBE
米  国101000020 4953
日  本01050003x 91021

いよいよロサンゼルスでの WBC 決勝トーナメントが始まりました。と言っても、我が日本チームは日本時間で今日と明日の2試合だけなんですが、野球発祥の米国を準決勝で下して、明日は何と WBC に入ってから5度目の対戦の韓国との決勝戦です。私個人の感性からすれば、もう飽きたんですが、ほかの大多数の野球ファンやメディアは許してくれないでしょうし、なんと言っても、トーナメントは最後まで勝たねば意味がないとの有力な見解もありますから、明日もがんばってほしいと思います。
今日の試合は下馬評通り、まずまずの点の取合いになりました。私はこれくらい点が入らないと野球は面白くないと思っていますから、その意味では、いい試合だったような気もします。日本打線が米国投手陣を上回ったという結果なんでしょう。打点を上げたとはいえ、イチロー選手がこれだけ不振を極めている中で、9点を取ったんですから日本打線は好調といえます。今日は、2回と5回の攻撃が象徴的なんですが、4番と5番がチャンスメイクしたのを下位打線や1-2番が返すという展開になりました。8回もよく似たもので、6番の福留外野手が出たのを下位打線が名手ジーター内野手のエラーを誘い、1-2番が打点を上げる展開でした。大砲はいない代わりに、細かくつないで走る日本スタイルの野球が出来ている証拠だと思いますので、私は大いに評価しています。投手陣は先発の松坂投手が100球近く投げてソロホームランと長打での2点だけはまずまずの結果で、杉内投手をもっと投げさせる考えはなかったんでしょうか。WBC は球数制限なんかがあって、私は詳しくないんですが、明日の決勝戦も視野に入れての早めの降板だったのかもしれません。私は得点シーンは逃さず見たんですが、このあたりはテレビから離れていたりしましたので少し不明です。投手陣唯一の不安はセットアッパーの馬原投手です。それでも点差があったので、無理やり1回を投げ切らせたのは、原監督の余裕の采配だった気がします。最後に、我が阪神の藤川投手ではなく、ダルビッシュ投手をクローザーに起用したのは明日の韓国戦の先発が岩隈投手だとバレバレなので、逆に、藤川投手を温存したと私は考えています。明日はセットアッパーにダルビッシュ投手、クローザーに藤川投手の豪華リレーを見てみたい気がします。

がんばれ侍ジャパン!

何はともあれ、明日が最後ですから、
がんばれ侍ジャパン!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月22日 (日)

ゆったり過ごす休日に下の子と将棋を指して野球観戦する

下の子と将棋を指す

お天気もよくないので、今日は1日のんびりと家で過ごします。午前中は下の子と将棋を指しました。一昨日は将棋教室でしたし、昨日も将棋に関する本を取り上げましたので、このところ、熱心に将棋に関して語っているような気もします。しかし、私が長崎に赴任する直前くらいは下の子もずいぶんと腕前を上げて、平手でも私は歯が立たないくらいの水準に達していたんですが、今日は下の子が疑問手を連発して、私の方が序盤から中盤をリードします。このまま私が勝つと不機嫌を募らせるような気がしたからと言うわけでもないんですが、終盤はかなり私が無理押しして詰まない局面を強引に攻めて下の子に受けを勉強させ、結局、しのぎ切った下の子が勝ちました。私クラスを相手にしているのであれば、もう少しスンナリと勝って欲しいような気がします。

  RHBE
阪  神001020000 3810
広  島000003000 3450

午後からはとっても久し振りにタイガースの野球をテレビ観戦します。広島市民球場での最後のゲームだったそうです。広島ナインもそれなりに気合の入った試合だったんでしょうから、私は 3-3 の引分けなら評価すべきだと思っています。相変わらず打線は打てませんが、なぜか、新井内野手や金本外野手の広島出身者が抜けていましたし、石川投手が6回に嶋選手に打たれたホームランについても、フォアボールで走者を出して打たれたんですから、決して評価は出来ないものの、甲子園なら文句なくレフトフライの平凡な当たりだと思います。ピッチャーの仕上がりは決して悪くないような気がしました。ただひとつ気がかりなのは、今日だけかもしれませんが、4番 DH に入ったメンチ選手が扇風機のようにクルクル回っていた印象があります。ここ2年ほどタイガースは助っ人外国人選手を外しているような気がしますので、今年こそはと期待していたんですが、いかがなもんでしょうか?

何はともあれ、
がんばれタイガース!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月21日 (土)

大崎善生『聖の青春』(講談社) を読む

大崎善生『聖の青春』(講談社)大崎善生さんの『聖の青春』(講談社) を読みました。鬼才・怪童の名をほしいままにした将棋界の天才であり、10年余り前に29歳で夭折した村山聖九段の生涯を取り上げたドキュメンタリー、ノンフィクションの作品です。作者は将棋雑誌の編集者を長らく務めたジャーナリストで、村山九段やその師匠の森信雄七段とも親交があるそうです。先日、3月15日付けのエントリーで取り上げたように、同じ森信雄七段門下の大石三段と沢田三段がこの4月から四段としてプロになる報道に接して、彼らの兄弟子の村山九段について久し振りに思いを馳せ、大学にほど近い長崎県立図書館で借りて読み始めました。なお、村山九段が亡くなったのは1998年8月8日ですが、訃報はしばらく伏せられ、私が新聞で知ったのは8月11日でした。この当時、私は役所から外郭団体に出向していて、その夜は偶然にもたった1人で国会待機をしていました。報道自体は8月10日だったのか、11日だったのかは忘れましたが、私が記事を読んだのは国会待機をしている8月11日の夜で、新聞を鷲づかみにしながらさめざめと1人で泣いた記憶があります。村山九段の亡くなる少し前の1996年には羽生名人が谷川王将を倒して七冠を達成していましたが、村山九段が健康な体で将棋を指せていれば、控えめに言っても、羽生名人の七冠達成はより困難なことだっただろうと私は考えてしまいました。また、村山九段の師匠である森信雄七段は、ブログを含めていくつかのサイトを開設しています。大石新四段と沢田新四段の昇段を祝うブログ記事や貴重な村山九段の写真も見かけました。ご興味ある方はネット検索してみると見つかるかもしれません。
小さいころにネフローゼに罹患し、その短い生涯を病魔と闘いつつ、それでも広い日本にわずか10人しかいないA級棋士のまま、最後は進行性の膀胱ガンで死んだ村山九段の生涯について、事実そのままでも文句なく大きな感動なんですが、非常に美しい文章で綴られています。ジャーナリストらしく綿密な取材に基づいていることも言うまでもありません。白眉は「犬の親子のよう」だと表現され、村山九段自身の言葉でも「親子以上」と言わしめている森信雄七段との師弟関係です。もちろん、師匠とともに親や周囲の人との暖かい人間関係、村山九段が目標とした当時の谷川名人や現在の羽生名人などと繰り広げた勝負、そこに微妙な病気との闘いが影を落として、村山九段独特の人生観を醸し出しています。同じ年代の羽生名人や森内九段などが優等生タイプであるのに対して、村山九段はいかにも勝負師らしく野性味あふれる気性の激しい性格で、同世代のチャイルドブランド棋士たちとも少し違った面があることについても的確な描写で迫っています。何よりも、物語の事実そのものが感動的ですから、そんなに感受性豊かでもない中年のオッサンの私ですが、読み進むと特に後半は涙が止まりませんでした。

私は以前に青い鳥文庫で読み、今回、図書館で借りて単行本を読みました。文庫本でも出ているようですが、青い鳥文庫ではいくつかのエピソードが抜けている分、ほとんどすべての漢字にルビがあり、「揺籃期」などの難しい用語にはカッコ書きで意味が記されていたりします。お子さんの年齢により、どちらでもいいと思いますが、私は我が家の子供達には単行本を読ませています。村山九段は文句なしの天才ですから、私のような凡庸な親の下に生まれ育った我が家の子供達に対して、村山九段と同じことを要求するのはムリがありますが、せめて、この本を読んで村山九段に恥じない努力をするように助言してあります。長崎市立図書館・県立図書館は言うに及ばず、港区の区立図書館にもありましたし、かなり多くの公立図書館には所蔵されているんではないかと想像します。大人だけでなく、ぜひ、多くのお子さんが手に取って読むことを願って止みません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月20日 (金)

青山に戻って下の子と将棋教室に行く

昨日で今年度最後の教授会を終え、ようやく今日から本格的な春休み体制に入りました。年が明けると授業こそ早々に終わるんですが、学生相手の期末試験のほか、大学と大学院を合わせて各種入学試験が目白押しですし、学生や院生の学位認定・卒業認定などで教授会も延々と長時間に及ぶことがあり、大学教授の本格的な春休みは学生諸君に比べると大幅に遅れます。もっとも、我が家の小学生よりはチョッピリ早くから休みに入れます。ということで、午前中から機上の人となり、飛行機に搭乗している間はテレビもラジオも電波が届きませんから、WBC の途中経過がどうなっているのかはまったく不明でした。東京に着いてから結果を知りました。いずれにせよ、昨日のエントリーで表明した通り、今日の試合は消化試合だと私は考えていて、まったく注目していませんでした。ヒマ潰しに長崎空港待合室の大画面テレビを少し見ただけで、内川選手の同点ホームランと失礼ながら冴えない当たりの片岡選手の逆転タイムリーは承知しています。それだけです。

将棋教室で天野三段から指導を受ける下の子

青山の家に帰り着いて、午後から下の子と将棋教室に行きます。千駄ヶ谷にある将棋会館道場のビギナーズセミナーの講師をしている天野三段の教室です。いつもの会議室を借りて車座になった将棋教室ではなく、今日は六本木ヒルズ近くの西麻布のバーでカウンター越しの指導場面です。今日は暖かかったので、天野三段は半袖姿でした。いつもの通り、飛車角に桂馬と香車の6枚落ちでウチの子が勝ちました。最後は、正確には9手詰めだったんですが、それでは難し過ぎるので、最初の2手を教えてもらっての5手詰めでした。

非常勤の研究員をしている東京の研究所にも少し出勤しますが、この3連休は言うに及ばず、新学年に向けて来週いっぱいは春休みで英気を養います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月19日 (木)

侍ジャパン WBC 決勝トーナメント進出おめでとう!

WBC logo

  RHBE
日  本000210101 5870
キューバ000000000 0511

昨日の韓国戦に完敗して、私自身は少し意気消沈していたんですが、今日のキューバ戦を完勝で制して、侍ジャパンはロサンゼルスでの WBC 決勝トーナメント進出です。誠におめでとうございます。ペトコ・パークのスタジアムは試合開始当初かなり霧が深く、霧の向こうのバックネット下に日本語の広告が見えるのもやや不気味に感じてしまいました。かなりの割合で日本語の広告だったような気がします。それから、テレビのアナウンサーさんははかなりイチロー選手に偏重していたような気がしますが、野球はチームプレーなんですから、これまた、少し不気味に思わないでもありませんでした。
昨日今日と WBC の韓国戦・キューバ戦を見ていて、やっぱり、野球は先取点が大きいと感じました。相手チームのエラーであろうと何であろうと、先取点を取れば勢いもつきますし、投手の継投にしろ攻撃陣の攻め方にせよ、いろんな意味で余裕が出ます。特に、キューバのようなラテンのチームを相手にすると、画面で見る限りにおいても相手側が精神的にガタガタになったように見受けました。私はスペイン語が分からなくもないので、キューバのキャッチャーが何を言っているのか、聞いてみたい気もしました。もっとも、先取点を取るためのチーム作りには各論あるところで、点を取るまでゼロに抑える投手や守りを重視する考え方が成り立ちもすれば、逆に、ともかく打って点を取る打線を重視する考え方も、どちらもアリだという気がします。我が阪神に即して言えば、1985年に日本一に輝いた時には、意図してかどうかはともかく、後者だったような気がする一方で、現在の真弓監督の下でのタイガースや最近の多くのプロ野球チームは前者のようにも見受けられます。
最後に、別の組からどの国が勝ち上がっているのかよく知らないんですが、明日の韓国戦はお休みでいかがでしょうか。どこかのメディアでは「リベンジ」とか、「打倒韓国」なんて威勢のいい言葉も出ていましたが、かつてのヤクルトや西武の広岡監督流に「捨て試合」もアリなんではないかと私は考えています。イチロー選手を休めて、岩田投手にでも先発させて、思いっきり手を抜いて対戦するのも一案かと思いますが、またマウンドに旗を立てられたりすると、日本のメディアやファンは許してくれなさそうな気もします。

がんばれ侍ジャパン!

がんばれ侍ジャパン!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月18日 (水)

日銀金融政策決定会合の感想

昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合が終了し、午後に「当面の金融政策運営について」と題するステートメントが発表されるとともに白川総裁の記者会見がありました。現行0.1%の政策金利が据え置かれた一方で、長期国債買切りオペを月間1.4兆円から1.8兆円に増額するとともに、国際基準行への総額1兆円の劣後ローンの貸付けが発表されています。国債買切りオペの増額は前々から私が主張していたところであり、日銀スタッフにもこのブログをお読みいただいているのかもしれません。冗談はさて置き、もうひとつの劣後ローンについては、国際基準行としては、政府の公的資金の他に日銀ローンの活用も可能となったわけで、市場から無理に調達して逆に資金ひっ迫を生ずるリスクは軽減されたといえます。
ただし、現状では金融システム安定化のための金融機関の資本増強が政府・日銀とも最優先課題とされていて、本格的に産業資金を供給するためには、政府では政策投資銀行や政策金融公庫などを活用した直接的なローンの供給、日銀ではさらにバランスシートの拡大による資金供給が必要となります。前者は国会での審議を経た予算措置の裏付けが必要となる場合がりますが、後者はすぐにでも実施できます。以前にも示したグラフですが、日米中央銀行のバランスシート拡大に、特に昨年9月のリーマン・ショック以降に大きな差が見られます。一番上のパネルが日銀の、真ん中のパネルが米国の連邦準備制度 (FED) のバランスシートです。量的緩和に大きな差がついているのが見て取れます。

日米中央銀行のバランスシートと TIBOR

ただし、日本でもかなり流動性供給は進んでいて、一番下のパネルで取り上げてある TIBOR ユーロ円レート3か月物の水準はかなり落ち着いて来ました。昨年10月末の日銀金融政策決定会合の直前の時点では、10月30日付けのエントリーで示したように、今後の流動性拡大が焦点だったんですが、昨年12月11日付けのエントリーで示した通り、TIBOR は市場の資金ひっ迫の程度が安定化しつつあることを示唆していると思います。私はそれなりに評価しています。

私の知り合いのエコノミストから送られて来たニューズレターに日銀がかなり政府と協調的に金融緩和に向かっているとの評価が見られました。私は10月末の時点では今年に入れば日銀はゼロ金利を復活させると予想していたんですが、現在の日銀のメンタリティからすれば、ゼロ金利を復活させたくないがゆえに、せっせと金利以外の宿題をこなし始めた印象があります。それはそれで結構なことだと受け止めています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月17日 (火)

第3次産業活動指数に見る景気底割れの可能性

本日、経済産業省から今年1月の第3次産業活動指数が発表されました。まず、指標のヘッドラインなどに関する記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

経済産業省が17日発表した1月の第3次産業活動指数(速報、2000年=100、季節調整値)は106.4となり、前月に比べ0.4%上昇した。上昇は3カ月ぶり。官公庁や金融業向けのソフトウエア受注が好調で、情報通信業が4.3%上がったのが主因。医療業や介護事業が堅調だったことも寄与した。
一方、サービス業は個人向けサービスが振るわず、前月比1.0%低下したほか、飲食店・宿泊業も客数の減少でマイナスとなった。原指数は100.9で、前年同月比3.9%低下し、マイナスは6カ月連続。経産省は「トレンドとしては低下傾向にある」とみている。

第3次産業活動指数

グラフは上の通りで、第3次産業活動指数の総合とそのうちの小売りについてプロットしてあります。いつもの通り、壁を付けた部分は景気後退期です。先月2月27日付けのエントリーで示した鉱工業生産指数が連続で前月比▲10%減を記録するのと違って、減少の程度はマイルドに見えます。すべてではないですが、第3次産業は一定の産業で在庫を持たない場合がありますから、景気の波は緩やかです。特に、小売りは底堅く動いているように見えなくもありません。引用した記事にもあるように、情報通信業や医療・福祉関係が伸び、季節調整し切れていない可能性もあって郵便を含む複合サービス事業が前月比で2桁増となっています。下落したのは記事にもある通り、飲食店・宿泊業とともに、運輸業、娯楽や広告を含むサービス業となっています。景気の波が製造業ほど明瞭ではない第3次産業にあっても、生活必需の部分と娯楽性や嗜好性の高い選択的消費の部分とで明暗を分けるのが景気後退期の第3次産業の特徴です。
日本と米国と、どちらも景気後退局面にあるんですが、日本は企業がより大きなダメージを受けて生産や設備投資が大きくマイナスになっているのに対して、米国では家計が企業より大きなダメージを受けていて、消費が大きく鈍化ないし減少しています。日本で景気が底割れするというような状態になれば、この第3次産業活動指数のうちの小売りに注目する必要があると私は考えています。先の景気回復期では、景気転換点を超えてから小売りが伸び悩んだのは、言うまでもなくデフレの影響です。世界各国でデフレ圧力は強まりつつありますが、景気後退が続いている中でデフレに陥るようなことがあれば、控えめに言っても、前の景気回復初期のデフレとは違った様相を見せる可能性が高いんではないかと考えられます。

景気の底割れを防ぐためにもデフレを防止する金融政策の役割は重要です。今日からの日銀金融政策決定会合は無風と見られていますが、来月には日銀短観も出ますし、何かデフレ防止のための強力な金融政策が打ち出される可能性に期待したいと私は考えています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月16日 (月)

WBC 第2ラウンドで侍ジャパンはキューバに快勝!

  RHBE
日  本003110001 61252
キューバ000000000 0800
  1. (右) イチロー
  2. (遊) 片岡
  3. (左) 青木
  4. (三) 村田
  5. (DH) 小笠原
  6. (一) 内川
  7. (中) 福留
  8. (捕) 城島
  9. (二) 岩村
  10. (投) 松坂

昨日は忙しかったんですが、大学教授としても東京での研究所の非常勤の研究員としても、昨年までのサラリーマン生活と違って半分くらい自由業的な時間の自由に助けられて、今朝からはテレビで WBC の第2ラウンドのキューバ戦を観戦しました。結果は広く報じられている通り、また、上のスコアボードにお示ししたように侍ジャパンの快勝でした。ついでながら、スコアボードのほかに先発オーダーも収録してあります。もっとも、私は終盤のイニングを少しテレビ観戦しただけで、全部を見たわけではありません。先頭打者にツーベースを打たれながらも、最後、我が阪神の藤川投手が締めたので感激したというだけのお話です。
ということで、すべてをテレビ観戦したわけではありませんが、結果を振り返ると、早めの回に先制点を上げ、中盤に続けざまに中押しして、最終回にもダメ押しと、打つ方は理想的な展開で、投げる方も先発の松坂投手が6回まで無失点に抑えた上に、岩隈投手、馬原投手、最後は藤川投手と惜しげもなくつぎ込んで無四球のゼロ封と、文句なしの展開でした。先発のエースと後続投手が踏ん張ってキューバ強力打線をゼロに抑える中で、打線は2桁12安打の6得点、特に、4番の村田三塁手が2打点のほか、3番と6番の中軸がタイムリーを打っているんですから、何から何までほぼ完璧といえます。唯一、物足りなさが残ったのがイチロー選手です。内野ゴロの間の打点はついたようですが、5打数無安打でファールフライ落球のエラー付きですから、日本のファンはややガッカリで、ご本人にも不満が残っていることと思います。次はメキシコを破った韓国と準決勝進出をかけて、今回の WBC だけでも3回目の対戦ですから、イチロー選手は言うに及ばず、すべての選手が力を出し切って、3月7日の第1ラウンドのような爆勝での準決勝進出を期待したいと思います。

がんばれ侍ジャパン!

がんばれ侍ジャパン!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月15日 (日)

久し振りに将棋の話題とがんばれ侍ジャパン!

今朝はいつも通り、日曜の朝寝坊をして、午後から夜まで大忙しなので、ごく簡単に手を抜いたエントリーをアップしておきます。

まず、ネットでニュースを見ていると、共同通信のサイトで関西勢の沢田三段と大石三段が四段に昇段して4月1日付けでプロ棋士デビューすることを知りました。昨日、第44回奨励会三段リーグの最終日が東京都渋谷区の将棋会館で行われ、沢田三段が14勝4敗、大石三段が13勝5敗の成績だったようです。なお、我が家の下の子が同じ将棋会館道場で教わったことのある天野三段は11勝7敗でチョッピリ届かなかったようです。誠に残念。天野三段の成績は、女流の安食初段と共同で開設しているブログで拝見しました。次はがんばって下さい。
なお、この共同通信のニュースを読んでいて、ふと思ったんですが、沢田三段も大石三段もいずれも森信雄七段の門下とあります。ということは、おふたりともまだ10代ですから、おそらく直接の面識はない可能性が高いんですが、『聖の青春』の村山聖九段の弟弟子ということになります。村山九段は10年ほど前に夭折した独特の風貌で、いかにも勝負師らしい気性の激しい天才棋士でした。四段に昇段したおふたりには亡くなった村山九段の分までがんばってほしいと思います。もちろん、繰返しになりますが、天野三段も次の三段リーグは昇段目指してがんばって下さい。

がんばれ侍ジャパン!

久し振りの将棋の話題に続いて、現地時間の今日に試合の行われる WBC キューバ戦に向けて、たった一言。

がんばれ侍ジャパン!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月14日 (土)

日本経済の2008-10年度見通しとW字型回復の可能性

昨夜は長いながらも軽めの経済の話題で済ませてしまいましたが、久し振りに土曜日に長崎にいると時間を持て余してしまい、今日は一昨日の2次QE発表後の日本経済見通しという極めて重いテーマを、一昨日のエントリーの最後でふれた W 字型の2段階調整論とともに取り上げたいと思います。まず、いくつかシンクタンクなどのリポートから作成した見通しの表は以下の通りです。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上で公開されているリポートに限って、特に四半期別の計数があるものを中心に取りまとめてあります。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。なお、詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名200820092010ヘッドライン
日本総研▲3.4▲5.7+0.4景気後退は長期化が予想され、底打ちは2010年10-12月期までズレ込む見通し
みずほ総研▲3.1▲4.9+0.9日本経済は2年連続の大幅マイナス成長に陥る中で、再び深刻なデフレリスクに直面
三菱UFJ証券▲3.0▲1.6+2.5海外経済の持ち直し、原油安、経済対策の効果などから09年度上期に回復へ
富士通総研▲2.8▲4.1+1.1在庫調整の進展により、2009年度半ばには下げ止まるものの、本格的な回復は2010年度にずれ込む
三菱総研▲2.9▲3.7▲0.52009年度中は景気の停滞が続き、2010年中ごろの底固めの期間を経て、その後緩やかに回復パスに回帰
新光総研▲3.3▲4.1+1.1日本経済は10年度にかけても潜在成長率を下回る低成長が続く

まず、一見して分かるのは、三菱UFJ証券を除いて、2008年度よりも2009年度の方がマイナス幅が大きいことです。もちろん、例外も大いにありますし、すべてではないですが、かなり多くのエコノミストのコンセンサスだという気がします。どうしてかというと、すでに2次QEが発表された昨年10-12月期、現在進行形の今年1-3月期がともに▲10%程度の2期連続の大幅なマイナス成長を続けることから、2009年度に向けてのマイナスのゲタがとてつもなく大きいことです。逆に、四半期の成長率パスを見る限り、今年4-6月期以降に2桁マイナス、あるいはそれに近いマイナス成長を見込んでいる機関はありません。逆に、日本総研の見通しでは四半期の成長率で見て、2009年4-6月期までマイナス成長を続けた後、残る7四半期は前期比ですべてプラスの成長を記録すると見込んでいます。景気実感は昨年10-12月期から今年1-3月期を底にして、着実に上向く可能性が高いと考えられます。
次に、景気実感はそうだとしても、これまた、三菱UFJ証券を除いて、少なくとも、2010年度いっぱいは潜在成長率水準を下回る可能性が高いと見通されていることです。三菱総研では3年連続のマイナス成長を見込んでいたりします。要するに、景気回復は極めて緩やかであると考えられます。なお、日本経済の潜在成長率については、主として、最近時点で設備投資の大幅な減少に伴う資本蓄積の伸びの低下から下方にシフトした可能性が高いと私は考えています。もちろん、人口減少社会の本格的な到来に伴う労働力人口の減少も潜在成長率の低下に寄与しています。
三菱UFJ証券を除いて、上の2点が表に収録した見通し作成機関の大雑把な感触なんですが、私は今後の景気の回復過程では W 字型の2段階調整があり得ると考えています。そのひとつの要素は政府の景気対策で、もうひとつはデフレです。今年の前半3-4月くらいを景気の大底と私は考えていますが、これを超えた時点で定額給付金などの政府の財政政策が本格化します。上の表のほかにメールに添付したニューズレターでもらっているリポートも含めて、4-6月期がプラス成長であると結論しているものは、三菱UFJ証券を含めて皆無だったんですが、私はわずかながら4-6月期のプラス成長の可能性は残されていると考えています。定額給付金とETC需要などの政府の財政政策が主たる理由です。しかし、たとえ、プラス成長したり、マイナス幅を大きく縮小したりしたとしても、その後、年末から来年前半あたりにデフレの影響や財政政策の効果が薄れることから再びマイナス成長やゼロ成長を1-2四半期くらい記録する可能性が高いと私は見込んでいます。上の表にリンクを張った詳しいリポートを見れば分かるんですが、新光総研などのように淡々と成長率を回復させる見通しもある一方で、日本総研や三菱UFJ証券のように年央から年後半にかけてややプラス成長となった後、年末から来年前半にかけて、再びマイナスあるいはゼロ成長に戻ってしまうパスも十分にあり得ます。要するに、W 字型の景気回復では今年年央から年後半にかけて財政政策の効果により一時的な景気浮揚が見られるものの、それはホントの景気の底=景気転換点ではなく、その後、需要動向が弱いままで推移する可能性が高いのであれば、デフレの影響や財政政策の効果が切れるため、再び成長率を大きく鈍化、あるいはマイナス成長となる可能性を示唆しています。

現時点で、私も一直線型の景気回復か、W 字型の景気回復かを確度高く見通せる根拠を持ち合わせていませんが、最近時点での機械受注統計やその後の設備投資を考え合わせ、さらに、物価動向が確実にデフレに向かっていることを考慮すると、W 字型の回復の可能性がやや高いんではないかと思わないでもありません。物価動向とともに、財政金融政策、さらに、米国の金融危機対策なども十分に考慮する必要があります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月13日 (金)

週末前の軽い経済の話題プラスアルファ

今週は、月曜日の景気動向指数、火曜日の2次QE予想と景気ウォッチャー調査、水曜日の機械受注統計、そして、昨夜の2次QEまで、それ相応に注目すべき経済指標を取り上げて来ましたので、今夜は週末前でもあり軽い経済の話題を取り上げたいと思います。

The World's Billionaires

まず、Forbes の "The World's Billionaires" です。記事によれば、世界の億万長者は昨年から30%も減少したそうです。実に経済の話題です。なお、世界の上位3人は上の画像の通りなんですが、少し広げて20人となると以下の通りです。

  1. William Gates III
  2. Warren Buffett
  3. Carlos Slim Helú
  4. Lawrence Ellison
  5. Ingvar Kamprad
  6. Karl Albrecht
  7. Mukesh Ambani
  8. Lakshmi Mittal
  9. Theo Albrecht
  10. Amancio Ortega
  11. Jim Walton
  12. Alice Walton
  13. Christy Walton
  14. S Robson Walton
  15. Bernard Arnault
  16. Li Ka-shing
  17. Michael Bloomberg
  18. Stefan Persson
  19. Charles Koch
  20. David Koch

2010年卒者 大学生の就職人気企業ランキング調査

次に、毎日コミュニケーションズから2010年卒の大学生の就職人気企業ランキング調査が発表されました。表にある通りなんですが、上の方の表は男女を合わせた文系総合の順位で、下の方の表はこれも男女を合わせた理系総合の順位です。理系では昨年トップのトヨタが7位にまで落ち、ソニーが6年ぶりの首位だそうです。安定と業界上位がキーワードになっているようです。なお、今年の1月16日付けのエントリーでダイヤモンド・ビッグ&リード社のランキングを取り上げましたが、この毎日コミュニケーションズの調査は回答者が2万人を超えており、ダイヤモンド・ビッグ&リード社の5千人弱より大幅に対象が広いことです。通常、世論調査なんかでも2万人を超えると誤差の精度が大きく高まります。詳しい PDF のリポートも公表されています。

ニンテンドーDSシリーズ1億台販売

さらに、任天堂のニンテンドーDSシリーズ1億台販売だそうです。2004年11月21日の発売から、4年3か月と2週間でのニンテンドーDSシリーズの1億台突破は、家庭用ビデオゲーム機史上最速ペースで、これに次ぐのは、ソニーの据置き型ゲーム機であるプレイステーション(PS)2が2005年1月末に5年9か月で1億台を達成しているらしいです。我が家でも2006年11月23日の勤労感謝の日に私と下の子で行列に並んでニンテンドーDSライトを買いに行きました。私の知り合いで証券会社のゲーム機業界担当のアナリストなんかは、昨年の春ころから、世界販売累計で2億台が視野に入ったと言っていたりしました。これからも売れ続けるのかもしれません。私も京都出身ですから、任天堂に就職していれば違った人生だった可能性がなくもない気がします。

さくらの開花予想 (第2回)

最後に、経済の話題ではないんですが、気象庁からさくらの開花予想 (第2回)が発表されました。詳しい PDF のリポートも発表されていて、これによれば、本年のさくら(ソメイヨシノ)の開花は、東日本・西日本では平年より早い地点が多い見込みで、長崎の開花予想は3月19日となっており、平年よりも6日早いそうです。我が家のおにいちゃんが挑戦した中学受験はもとより、高校や大学の入学試験もほぼ終わり、いよいよ「サクラサク」の季節を迎えます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月12日 (木)

2008年10-12月期GDP成長率は在庫の積上りで上方修正

今日は、国立大学でいっせいに後期試験が始まりました。本学も学内は静かなものでした。

さて、本日、内閣府から昨年2008年10-12月期のGDP統計が発表されました。エコノミストの業界で2次QEと呼ばれている重要な経済指標です。いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が12日発表した2008年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比3.2%減、年率換算で12.1%減だった。2月に公表した速報値と比べて前期比が0.1ポイント、年率は0.6ポイントの上方修正。景気後退の影響で企業の在庫が速報段階の推計よりも膨らんだ影響で、GDPの減少率が小さくなった。第1次石油危機だった1974年1-3月期の年率13.1%減に次ぐ戦後2番目のマイナス成長で、日本は深刻な不況にある。
改定値は日経グループのQUICKがまとめた民間調査機関25社による事前予測の平均値(年率で12.9%減)を上回った。3四半期連続のマイナス成長は、IT(情報技術)バブルの崩壊で景気が後退した01年以来となる。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは名目ですし、GDPデフレータだけは伝統に従って前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と外需は前期比伸び率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、完全性は保証しません。正確な計数は最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2007/
10-12
2008/
1-3
2008/
4-6
2008/
7-9
2008/10-12
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)+1.0+0.3▲1.2▲0.4▲3.3▲3.2
   民間消費+0.4+0.7▲0.8+0.3▲0.4▲0.4
   民間住宅▲10.7+4.6▲1.9+4.0+5.7+5.7
   民間設備+2.2▲0.7▲2.3▲3.4▲5.3▲5.4
   民間在庫 *+0.0▲0.2▲0.2+0.0+0.4+0.5
   公的需要+1.3▲1.0▲0.9+0.0+0.9+1.1
   外需 *+0.5+0.3+0.1▲0.1▲3.0▲3.0
      輸出+3.0+3.0▲2.3+0.6▲13.9▲13.8
      輸入+0.3+1.5▲3.1+1.7+2.9+3.0
国内総所得(GDI)+0.2▲0.3▲1.8▲0.8▲1.4▲1.3
名目GDP+0.4+0.0▲1.4▲0.7▲1.7▲1.6
雇用者所得+0.1▲0.0▲0.9▲0.3+1.0+1.1
GDPデフレータ▲1.3▲1.4▲1.5▲1.6+0.9+0.7

次に、2005年1-3月期以降の寄与度別グラフは以下の通りです。今回は国内総生産 GDP だけでなく、国内総所得 GDI の折れ線グラフも加えてみました。

2008年10-12月期GDP統計

取りあえず、GDP成長率が過去最大のマイナス幅を記録しなかったので、メディアが大騒ぎすることはないように思います。しかし、上方改定された主因は売行き不振に起因する後ろ向きの在庫の積上りですから、実体経済はむしろ悪化している可能性が高く、日本経済として望ましい姿であろうハズもありません。さらに、私は統計的にではなく、トピックとして在庫調整や財産調整が進んでいるとの報道などに接していますが、少なくとも昨年いっぱいは在庫が積み上がっていることは確実ですから、今年の前半にこの在庫調整が進むと、成長率を押し下げる要因になることは明らかです。1-3月期か4-6月期には在庫が大きくマイナスに寄与する場面が出て来そうな気がします。
最後に、エコノミストの間で、W 字型の2段階調整論が出始めています。私も、月曜日の景気ウォッチャー調査や一昨日の景気動向指数を見て、3-4月が株価の底と見ているアナリストもいることを考え合わせると、ゴールデンウィークあたりから株価も底這いから反転の兆しを見せたりした上で、マインドも5-6月あたりから本格的な上昇を見せ始め、実体経済も在庫や生産の調整が年央に一巡するのであれば、ソロリと年末から来年前半の景気転換点に向かうような、とっても楽観的かつ一直線な見通しを書きましたが、昨夜のエントリーでは機械受注統計を見て、まだまだ設備投資の急激な減少が続くと見通しを微妙に修正し、日銀短観に見られるビジネスマインドが注目点なんて、かなりいい加減なことを書いてしまいました。しかし、今夜は長くなりましたし、日を改めて、先行きの在庫と設備の調整や景気動向について取り上げたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月11日 (水)

今年の木村伊兵衛賞は『浅田家』の浅田政志さんが受賞

浅田政志『浅田家』(赤々舎)

朝日新聞のサイトを見ていると、今年の木村伊兵衛写真賞は浅田政志さんに授賞との記事を見かけました。第34回の木村伊兵衛写真賞だそうで、4月22日に東京会館で授賞式が行われ、賞状と賞牌ならびに副賞100万円が贈られるそうです。写真の木村賞については、純文学の芥川賞になぞらえて、3年前の2006年1月20日のエントリーで土門賞とともに取り上げた記憶があります。写真家の浅田政志さんは、昨年、上の画像の表紙の写真集を赤々舎から出版して話題になった写真家です。すでにお示しした朝日新聞のサイトを含めて、関連リンクは以下の通りです。

誠におめでとうございます!

話題になった上の写真集は、父、母、兄、そして写真家本人の4人家族が、表紙の消防士やラーメン屋や極道など様々なシーンに扮するシリーズで、記念写真そのものでもあります。私もカメラや腕前は拙いものですが、子供達を専属の被写体にせっせと写真を撮っているので、実に理解できるものがあります。家族の記念写真こそ写真の原点だという気が強くします。浅田さんの今後の活躍を大いに期待したいと思います。

Adam Smith's market never stood alone

誠についでながら、専門分野の経済に関して、今日の Financial Times で、1988年のノーベル経済学賞を受賞したセン教授が"Adam Smith's market never stood alone" と題したコラムを書いています。昨年5月26日付けのエントリーで取り上げた堂目教授の『アダム・スミス』(中公新書)にやや通ずるところがあります。官庁エコノミストの中でも市場原理主義にかなり近いと自負している私からすれば少し違和感がないでもないんですが、堂目教授の『アダム・スミス』は昨年の経済書の中でも高い評価を受けていますし、今さらながらという気もするものの、改めて『国富論』や「経済学の父」が経済学の原点として見直されているのかもしれません。日本でも中谷巌教授が『資本主義はなぜ自壊したのか』で転向宣言を出しましたし、私もアングロサクソン・タイプの市場を重視する見方をそのうちに変えるのかもしれないと思わないでもありません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

機械受注統計から設備投資の先行きと海外需要を考える

本日、内閣府から今年1月の機械受注統計が発表されました。まったくどうでもいいことながら、昨日発表された景気動向指数は日経新聞のサイトでは昨夜の10時半過ぎにネットで流れていましたが、さすがに、機械受注統計は今朝の9時前にアップされていました。その日経新聞のサイトから機械受注統計の記事を引用すると以下の通りです。

内閣府が11日発表した1月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比3.2%減の7183億円となり、4カ月連続で減少した。このうち製造業は27.4%減、非製造業は13.5%増だった。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額は39.5%減少した。
受注実績(民需)の内訳をみると、製造業では15業種中11業種が減少し、特に鉄鋼業(前月比75.0%減)や石油・石炭製品工業(63.6%減)などで落ち込みが目立った。一方、船舶・電力を含めた非製造業全体では4.4%増。8業種中3業種が増加しており、金融・保険業(23.9%増)や運輸業(8.2%増)などが伸びた。
機械受注は機械メーカー280社が各業界から受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。メーカーが機械を受注してから6カ月ほど後に工場などに導入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

そこで、いつもの機械受注のグラフは以下の通りです。一番上のパネルは引用した記事にもある通り、設備投資の先行指標となる船舶と電力を除く民需、いわゆるコア機械受注のグラフです。左軸の単位は兆円で、赤い折れ線は後方6か月移動平均です。真ん中のパネルはコア機械受注に入っていない外需で、左軸の単位は同じく兆円です。一番下のパネルは長崎ローカルで注目されている船舶の受注残高とそれを販売額で除した手持ち月数です。青い折れ線は手持ち月数で左軸の単位は月、赤い折れ線が受注残高で右軸の単位は兆円です。

機械受注統計

いずれのグラフも最近時点で大きく下向きになっているのが見て取れますが、少なくとも、船舶の手持ち月数については、受注残高の低下よりも販売額の上昇によってもたらされたものですから、これだけを見ると、決して悲観的な材料ではないと私は考えています。でも、資源高の「余熱」が冷めるにつれて受注残高が下向きになる可能性が高いと私は見込んでいますので、その意味では楽観できるわけでもありません。例えば、前月からの反動減の要素も大きいんですが、需要先別で見て、船舶と同じように資源高で伸びていた鉄鋼業からの受注は1月に前月比で▲75.0%減、石炭・石油製品工業からの受注も▲63.6%減となっていますので、船舶への受注もこの先は大きく減少に転ずる可能性があります。販売増に起因する手持ち月数の減少はポジティブに捉えるべきなんですが、受注の減少に起因する場合はネガティブな材料です。どちらの要因で手持ち月数が減少しているのかを見極める必要があります。
先月の指標公表時に発表された今年1-3月期のコア機械受注の見通しは前期比で+4.1%増だったんですが、いきなり、達成は難しそうな見通しです。直近のコア機械受注を見る限り、設備投資はかなり急激に減少すると見込まれます。少なくとも年央まで、ひょっとしたら今年いっぱいは GDP ベースの設備投資の大幅な減少が続く可能性も排除できません。ひとつのカギを握るのが輸出なんですが、何と、1月の機械受注の外需は前月比で▲49.0%減とほぼ半減しました。一昨年10月をピークとする現在の景気後退局面の初期の外需機械受注のピークからほぼ 1/4 に減少したことになります。国内設備投資の先行指標ではありませんが、需要面からはかなりの大きさを占めますので、注視する必要があります。

最後に、機械受注統計から離れるんですが、そろそろ日銀短観の調査時期に差しかかっています。一昨日のエントリーで取り上げた景気ウォッチャー調査は一般国民のマインドが上向きになりそうな気配を示していましたが、ここ数日の株価の動向も勘案して、ビジネスマインドがどのようになっているかは大きな注目点です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月10日 (火)

いよいよ景気の大底に差しかかりつつある景気動向指数

本日、内閣府から今年1月の景気動向指数が発表されました。九州は夕刊がないのでメディアの扱いについては何とも言えませんが、少なくとも全国紙各紙のネット上ではニュースが流されていませんでした。株価の方に注目が集まっているとはいえ、めずらしいことです。

景気動向指数

ということで、私が書いたグラフは上の通りです。左軸の単位は2005年=100です。先行指数と一致指数なんですが、前世紀終わりころから先行指数に明確な先行性が見られなくなっていて、いまだに先行指数・一致指数とも低下を続けています。少なくとも反転の兆しは一向に見られず、大底に向かっていると見る方が自然な気がします。なお、グラフに見られる限りの1980年以降の景気後退局面直前のピークとトラフを抜き出したのが下の表です。

下落幅 (率)
1980年2月 82.81983年2月 74.9▲7.9 (▲9.5%)
1985年7月 84.81986年11月 79.4▲5.4 (▲6.4%)
1991年1月 103.51993年12月 79.9▲23.6 (▲22.8%)
1997年5月 95.81998年12月 84.0▲11.8 (▲12.3%)
2000年12月 95.42002年1月 83.9▲11.5 (▲12.1%)
2007年10月 105.72009年1月 89.6▲16.1 (▲15.2%)

昨夜のエントリーで示したように、国民一般のマインドはやや上向きに転ずる兆しなきにしもあらずですが、現在の株安がマインドにも影響するでしょうから、この先、一直線に向上するとはとても思えません。私は株価の専門家ではないので何ともいえませんが、この3-4月が株価の底と見ているアナリストもいるようで、逆の見方をすれば、ゴールデンウィークあたりから株価も底這いから反転の兆しを見せたりすると、マインドも5-6月あたりから本格的な上昇を見せ始め、実体経済も在庫や生産の調整が年央には一巡するでしょうから、ソロリと景気転換点に向かうような気もします。かなり楽観的な私の見方ですが、希望的観測も含めてあり得るシナリオではないでしょうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 9日 (月)

今週発表のGDP統計2次速報の予想やいかに?

今週の木曜日、3月12日に昨年10-12月期のGDP統計2次速報、我が業界でいうところの2次QEが内閣府から公表されます。基礎となる1次統計もすべて発表されてて、シンクタンクなどでは2次QEの予想が出そろったように見受けられます。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上で公開されているリポートに限って取りまとめたいと思います。下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。なお、詳細な情報にご興味ある方は左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲3.3%
(▲12.4%)
1次QEからの修正は小幅
みずほ総研▲3.6%
(▲13.8%)
大幅マイナス成長の主因は輸出の急減であることに変わりはないが、国内需要の減速ペースも加速
三菱UFJ証券▲3.2%
(▲12.3%)
設備投資、公共投資の上方修正で成長率のマイナス幅は、小幅ながら縮小
第一生命経済研▲3.5%
(▲13.3%)
1次速報からさらに下方修正
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲3.2%
(▲12.3%)
1次速報値の-3.3%(年率-12.7%)から小幅に上方修正
ニッセイ基礎研▲3.5%
(▲13.4%)
過去最大のマイナス成長に下方修正の見込み

2008年10-12月期の1次QEが前期比▲3.3%減、年率換算で▲12.7%減でしたので、上方修正と下方修正が入り乱れているものの、日本総研をはじめとして小幅な修正にとどまると見込んでいる機関が多いように見受けられます。1次QEから2次QEなんですから、当然といえば当然で、結果として、成長率の2桁マイナスは変わらず、1974年1-3月期の前期比年率▲13.1%の過去最大のマイナス成長に近いか超えるレベルであろうことも、各機関の間ではほぼコンセンサスとなっています。たまたまなんですが、いつも取り上げている6機関については、3機関ずつ半々で過去最大のマイナス成長を超えると超えないに分かれました。エコノミストの視点からは大きな意味があるとも思えませんが、わずかな臨界点を超えて2008年10-12月期の成長率が過去最大のマイナス幅を記録すれば、メディアは大騒ぎすると思います。ついでにいえば、私が従来から指摘しているように、1-3月期も2桁近いマイナス成長の後、4-6月期は定額給付金の効果もあってプラス成長を回復する可能性が残されていると見込んでいます。もしそうなるとメディアの報道は興味深いと私は考えています。ちょうど、4-6月期の1次QE発表の時期は8月ですから、総選挙が何らかの形でからんで来たりするタイミングだとなおさらです。もっとも、QE発表のタイミングは私にも確度高く予想できるんですが、総選挙のタイミングは皆目見当がつきません。それは別にして、さらに先を考えると、今年の7-9月期は再びマイナス成長となる可能性も残されているものの、今年の年末から来年の年始にかけてゼロ近傍からプラス成長をうかがい、来年の前半にかけて景気は転換点を迎える、というのが、やや楽観的かもしれませんが、私の考える標準的なシナリオです。以前から変わりありません。

景気ウォッチャー調査結果

最後に、本日午後に内閣府から発表された2月の景気ウォッチャー調査の結果は上のグラフの通りです。現状判断 DI が20を割るような、きわめて低い水準ながら、現状判断 DI も先行き判断 DI も、前月1月の結果が久し振りに上向いたので注目していたんですが、2月も引き続き改善を示しています。昨年末から今年年初にかけてが景気後退の中でも大底で、そのあたりからマインドが上向いて来るというのが、これまた、私の標準的なシナリオでしたから、この春先から景気は最悪期を脱して、今年末から来年前半にかけての景気転換点を目指すのかもしれません。参考までに、前回の景気後退局面では景気ウォッチャーの現状判断 DI の谷と実際の景気の谷には5か月のラグ、というか、リードがありました。もしも、今年の1月が景気ウォッチャーの谷であるとすれば、年央には景気転換点という可能性もなしとしませんが、もちろん、もう少し先が長い可能性も十分あります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 8日 (日)

現在の景気後退期の落ち込みは第1次石油危機以来か?

先週金曜日に経済協力開発機構の先行指標 (OECD/CLI) が発表されました。時系列的にも地域的にもカバレッジが広く、主要国の景気を知るための重要な指標ですので、私も折りにふれてチェックしています。今回は、米国メディアの Wall Street Journal の欧州版でも取り上げられていて、現在の景気後退の深さについて議論されています。まず、その記事の最初の4パラを引用すると以下の通りです。

The outlook for the world's developed economies darkened in January, as the Organization for Economic Cooperation and Development's leading indicator edged closer to lows recorded during the oil shock of the early 1970s.
Adding to the gloom, the OECD's leading indicators suggest that the outlook for Brazil has deteriorated sharply as it joins other large developing economies that are being dragged down by the recession in richer nations.
The OECD's leading indicator for its 30 developed-country members fell again in January, to 92.3 from 93.3, bringing it closer to the low of 91.7 recorded between December 1974 and February 1975. The series goes back to 1965.
The indicators for each of each of the Group of Seven leading developed economies also fell, as did the indicators for non-members China, India, Russia and Brazil.

まず、日米欧とグループとしてのG7の OECD/CLI のグラフは以下の通りです。左軸の単位は long term average = 100 となっています。なお、縦軸も横軸も大雑把に各グラフで同じくらいのスケールに調整してあるつもりです。

OECD/CLI

欧州はやや微妙ですが、少なくとも日米両国については、ここ40年くらいの間で、1970年代前半の第1次石油危機の直前における景気拡大の山から谷にかけての落ち込みが歴史的に最も大きくなっているのが読み取れます。日本ですら、1990年代前半のバブル期の景気の山とその後の谷よりもその20年前の第1次石油危機の時の方が落ち込み幅が大きくなっています。CI は大雑把にいろんな指標の前年同月比か前月比などのパーセント表示を足し合わせたもので近似できますから、その測り方で考える限り、バブル崩壊後の景気後退期よりも第1次石油危機後の景気後退期の方が深刻な不況だったといえます。もっとも、日本の景気動向指数は少なくとも web サイトには1980年1月以降のデータしか公表されていませんので、我が国政府の公式統計からは確認できません。

私も少し前から、現在の景気後退の深さが過去の、例えば、1990年代前半のバブル崩壊後の景気後退期と比べると、どれくらいのものであるかを考え始めていますが、そろそろ、私以外のエコノミストも同じようなことを始めているんだという気がします。ということは、そろそろ景気転換点が近づいているのかもしれません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 7日 (土)

WBC 韓国戦はコールドで大勝して2次ラウンド進出を決める

  RHBE
JPN3501221   141450
KOR2000000   2441

夜になって、WBC の韓国戦をテレビ観戦しました。序盤の攻撃を見て、この点の取合いでは何時に終わるか分ったものではないと覚悟していたんですが、7回10点差コールドで10時前に終わって何だか気が抜けたようなカンジでした。1-2回の猛攻で大量点を取ってくれたので、私はFNS チャリティトーク&ライブ'09 に出演していた下の子を駅まで迎えに行ったり、適当に入浴を済ませたりと、ゆったりと観戦しました。
テレビでもコールド勝ちを指して「歴史的な勝利」と言っていましたが、北京オリンピックで中国が台湾に勝った時にそんな表現が出て来ていたような気がします。3年前の WBC でイチロー選手が「向こう30年は…」の発言で物議を醸したように記憶していますが、3年遅れで実現したのかもしれません。7回に出て来た我が阪神の岩田投手が最初にややオタオタした場面があり、経験不足を露呈したような気もしますが、何とかゼロで抑えてコールド勝ちに貢献し、何よりも、馬原投手と藤川投手のクローザー2投手を温存しましたので、私もそれなりに満足です。

米国での2次ラウンド以降も

がんばれ侍ジャパン!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

FNS チャリティトーク&ライブ'09 に下の子が出演

今日は午後から下の子と出かけます。下の子が活動しているボーイスカウトの奉仕活動です。正確に言うと、奉仕活動をするのはスカウトの下の子だけで、私はスカウトでもスカウトの指導者でも何でもありませんから、奉仕活動をする子供の写真を撮りに行っただけです。何の奉仕活動家というと、FNS チャリティトーク&ライブ '09というイベントです。場所は東京フォーラムで、今日の出演者は谷村新司さんと平原綾香さんと、我が家の下の子を含むボーイスカウトの子供達なんだろうと思います。2008年度のチャリティはフジテレビのホームページによれば、ガイアナ共和国に送られるそうです。ウチの子のカブ隊の隊長さんからは違う国の名前を聞いていたような気もしますが、私には詳細不明です。いずれにせよ、私は長らく国家公務員をやって来ていますので、チャリティを含めてパブリックな目的をもった活動や催しについては、利潤極大化原理で行動している組織からお給料をもらっている人に任せていて、私はほとんど興味を持っていません。その上、出演する芸能人の方々については、ごく少数の大きな興味を持っている対象がある一方で、大多数の芸能人や有名人にはほとんど興味を持っていませんので、私はリハーサルだけ拝見して早々に失礼しました。夜に WBC の韓国戦があるのも早くに失礼した一因です。では何をしに行ったのかというと、最初に書いた通り単に、我が家の下の子の写真を撮りに行っただけです。
ということで、その写真ですが、リハーサルに臨むスカウトの子供達とリハーサルを終えて楽屋でくつろぐ子供達です。上の写真で左の方のイスに座ってにこやかに子供達を見ているのは谷村さんだと思います。

FNS チャリティトーク&ライブ'09 リハーサル

FNS チャリティトーク&ライブ'09 リハーサルを終えて楽屋にて子供達

| | コメント (0) | トラックバック (0)

取り急ぎ米国雇用統計のグラフィックス

昨日、米国の労働省から2月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインの統計に関する記事を New York Times のサイトから最初のパラだけ引用すると以下の通りです。

Another 651,000 jobs disappeared from the American economy in February, the government reported Friday, as the unemployment rate soared to 8.1 percent - its highest level since 1983.
週末ですので、取り急ぎ、グラフィックスだけをアップしておきたいと思います。まず、自分で書いたグラフです。いずれも月次の季節調整済み系列で、上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差、下のパネルは失業率です。ハチャメチャな状況になっているのが読み取れるかと思います。

米国雇用統計

次に、米国メディアのサイトからマウスで操作できるインタラクティブなフラッシュに直リンしています。まず、New York Times のサイトから引用しているフラッシュです。

最後に、Los Angeles Times のサイトから引用しているフラッシュです。

来週は景気動向指数や2次QEの発表などが目白押しで、米国雇用統計を改めて取り上げる機会がないかもしれません。取り急ぎ、今日のエントリーでグラフィック素材なりともアップしておきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 6日 (金)

イングランド銀行の量的緩和から日銀応援団エコノミストの活用法を考える

昨日、英国の中央銀行であるイングランド銀行と欧州中央銀行がそろって金融政策を決定会合を開催し、それぞれ政策金利を0.5%ポイント引き下げることを決めました。これにより、英国の政策金利は0.5%に、欧州は1.5%になったわけです。加えて、イングランド銀行は量的緩和政策に踏み込むこととし、国債などの資産購入により750億ポンドの資金供給を行うと発表しました。今夜のエントリーでは、このイングランド銀行の量的緩和に関して、国内の反応から日銀の動向を探りたいと思います。特に、日銀応援団のようなエコノミストの反応から日銀の動向を探ります。まず、イングランド銀行の金融政策変更に関して私が参照したサイトは以下の通りです。

まず、イングランド銀行の政策金利の0.5%はほぼ底に達したと見られます。言うまでもありませんが、イングランド銀行史上最低の政策金利を更新しています。よく知られたように、イングランド銀行は1694年以降の300年を超える期間の政策金利を公表していて、私も今回だけは見返してみましたが、文句なく最低水準であることを確認しました。加えて、キング総裁は会議後の記者会見で "I think it is very unlikely interest rates can go any lower." と発言したと Financial Times のサイトで見かけました。だからこそ、金利をこれ以上引き下げることが出来ないために量的緩和の領域に入ったということが出来ます。もっとも、上のリストの最初に入れたイングランド銀行のステートメントには量的緩和、quantitative easing という文言は出て来ません。さらに、金利が底に達したということともに、もう1点、イングランド銀行のステートメントでは "a very low level of Bank Rate could have counter-productive effects on the operation of some financial markets and on the lending capacity of the banking system." として、金融市場や銀行システムに逆効果とも付け加えています。極めて正論です。

Quantitative easing - how it could work?

そして、かなり明確な量的緩和の実施です。上の図は Financial Times のサイトから引用しています。参照先の画像の一部を切り取っていたりします。最後は Financial Times らしく皮肉に、either/or で商業銀行がイングランド銀行に持っている口座の預金を積むだけか、商業銀行の貸出しが増加するか、と結論しています。前者であれば、経済に何の効果もないとの見方なのかもしれませんが、少なくとも、銀行破綻のリスクはかなり減少すると私は考えていますから、何の効果もないということではあり得ません。それから、英国では日米のような準備預金制度は存在しませんので、商業銀行は準備預金ならざる、単なるイングランド銀行に保有している口座の預金を積むことになります。なお、量的緩和の資金供給は "the Bank would also buy medium- and long-maturity conventional gilts in the secondary market." の手法により行われるようです。

前置きがやたらと長くなりました。実は、私はこのイングランド銀行の決定にそんなに興味は持っていませんが、一応、明示的に量的緩和に踏み出しましたから、国内の反応が楽しみです。我がエコノミストの業界にも日銀の応援部隊というか、日銀広報部分室勤務のような人が何人かいて、そういったエコノミストの論調を観察していると、日銀が何を考えているのかがよく分かります。私はそんなに日銀ウォッチャーではありませんが、別に日銀そのものをウォッチしなくても、これらの日銀寄りの発言を繰り返す応援部隊のエコノミストを見ていると十分だからです。見るべきポイントは次の2つです。

  • "a very low level of Bank Rate could have counter-productive effects"という点を日銀応援部隊が強調するのであれば、日銀はゼロ金利政策を取りたくないと考えている。逆は逆。
  • 今回のイングランド銀行の量的緩和策を日銀応援部隊が評価するのであれば、日銀は近い将来の量的緩和策を模索している。逆は逆。

誰とはいいませんが、明らかに日銀寄りの発言を繰り返しているエコノミスト諸氏が、今週末から来週にかけて、イングランド銀行の金融政策変更をどのように評価するかが、とっても楽しみです。同時に、もうすぐ発表される米国の雇用統計もある意味で楽しみです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 5日 (木)

法人企業統計調査と国際セミナーの開催

法人企業統計調査

まず、本日、財務省から昨年2008年10-12月期の法人企業統計調査の結果が発表されました。金融機関を除くベースでの売上高、営業利益、経常利益の前年同期比は上のグラフの通りです。今夜も、バブル崩壊後の景気後退期との比較が出来るように1980年からグラフを書いてみました。売上高の落ち込みはバブル崩壊後の景気後退期を上回り、ほぼ今世紀に入ってからの IT バブル崩壊後に匹敵します。グラフにはないんですが、営業利益や経常利益の減少は第1次石油危機後に匹敵します。例えば、6四半期連続減益となった経常利益の2008年10-12月期の減益率は前年同期比で▲64.1%となり、統計がさかのぼれる1955年以降では過去最悪だった第1次石油危機直後の1974年10-12月期の▲64.5%と並ぶ悪化幅を記録しました。
何を取ってもかなり悪い数字だったんですが、設備投資もかなり本格的に落ち始めています。さらに、この先行きを考えると、売上高は一定の範囲で鉱工業生産との連動が観察されますから、今年前半には▲30%くらいの売上ダウンがあり得ると私は考えています。最後に、今月発表される昨年10-12月期のGDP統計のいわゆる2次QEは1次QEからわずかながら下方修正される可能性が高いと私は見ています。

それから、今日の午後に大学で国際セミナーを開催しました。ブルガリアのソフィア大学からネノフスキー教授をお招きし、また、京都大学のヤルナゾフ准教授もごいっしょに、現在の金融危機の東欧への影響などについてプレゼンテーションをしていただきました。気のいい知人の中には、私のことを国際派エコノミストと考えてくれる人がいなくもなく、いろんな経緯があって私がチェアを取りました。大学での研究や研究交流活動の一環です。いくつか茶々を入れて、ネノフスキー教授が中央銀行のご出身ということでしたので、ブルガリアが採用しているカレンシー・ボードについての質問もしました。私が考えるに、独立した金融政策運営を放棄してまでカレンシー・ボードを採用して為替レートをペッグする目的は、第1に為替リスクを大幅に軽減することは直接投資の受入れに有利だからということと、第2に為替レートをアンカーとして、あるいは、外貨を貨幣発行の基礎としてマネーサプライの増発を抑えることにより、物価安定を達成するためであると理解しているんですが、ブルガリアの場合はいかがだったのかをお聞きしました。政治経済学的にかなり複雑な内幕があったようで、実際に取られたのはドイツマルクペッグからユーロペッグだったんですが、ドルペッグも考慮されていたと知って、とっても興味深かったです。そういえば、ロシアの侵攻を受けたグルジアなどは極めて政治的な配慮からドルペッグしていることを思い出してしまいました。
下の写真は、チェアを取っている私を中心に写してもらったのと、セミナーを終えた後の記念撮影です。久し振りに英語で経済を議論して、それなりの刺激を受けました。次のペーパーは英語で書いてみようと考えてしまいました。

国際セミナーの風景

国際セミナーを終えて記念写真

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 4日 (水)

村上春樹『羊をめぐる冒険』(講談社)を読む

村上春樹『羊をめぐる冒険』(講談社)

村上春樹さんの『羊をめぐる冒険』(講談社)を読みました。『群像』1982年8月号で発表されており、言うまでもありませんが、村上さんの初の本格的な長編小説であり、同じく『群像』1980年3月号で発表された『1973年のピンボール』とともに初期の代表作です。その後、『ノルウェーの森』、『ダンス・ダンス・ダンス』や1990年代半ばの『ねじまき鳥クロニクル』、今世紀に入ってからの『海辺のカフカ』、『アフターダーク』に続きます。今回、『羊をめぐる冒険』を読み返してみて、やっぱり、『海辺のカフカ』の流れの中に位置づけられる作品だと改めて実感しました。ただし、『ねじまき鳥クロニクル』以降のやや暴力的な部分はまだ見えていません。とってもファンタジックです。

今日は午後からの教授会がやたらと長引きましたので、今夜のエントリーはこれくらいで軽く終わりにします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 3日 (火)

川上未映子『先端で、さすわさされるわそらええわ』を読む

川上未映子『先端で、さすわさされるわそらええわ』(青土社)

川上未映子さんの『先端で、さすわさされるわそらええわ』(青土社)を読みました。2月15日のエントリーで取り上げたように、今年の中原中也賞を授賞された作品です。実は、かなり前に読み終わっていたんですが、いろいろとあって、ひな祭りを記念してということで、今夜の読書感想文の日記でアップします。まず、構成は、『ユリイカ』で発表された作品を中心に書下ろしも含めて、7編の散文というか、詩が収められています。以下の通りです。

  • 先端で、さすわさされるわそらええわ
  • 少女はおしっこの不安を爆破、心はあせるわ
  • ちょっきん、なー
  • 彼女は四時の性交にうっとり、うっとりよ
  • 象の目を焼いても焼いても
  • 告白室の保存
  • 夜の目硝子

まず、掲載誌なんですが、知っている人は知っていると思いますが、『ユリイカ』は英文では Eureka と綴ります。これまた言うまでもありませんが、ギリシャ語では εψρηκα と綴るんだと思います。ただし、ギリシャ語には自信がありません。私のものすごく偏った印象によれば、文学少女版のサブカル路線を代表しているといったところかもしれません。毎月1000円を超える定価の月刊誌で、さらに年3-4回ほども臨時増刊があり、雑誌不況のこのご時世で生き長らえているんですから、大したもんです。もっとも、『ユリイカ』の内容については、私は詳しくありません。繰返しになりますが、ものすごく偏った印象ながら、文学少女のサブカルといった雑誌ですから、私のような中年のオッサンからは少し縁遠い存在です。
掲載誌を離れて、『先端で、さすわさされるわそらええわ』については、どの作品も立派な水準でした。特に、図書館を象に例えた「象の目を焼いても焼いても」と題する作品に注目しました。最後の「夜の目硝子」のように、コンタクトレンズを「目硝子」と表現するのではなく、図書館を象になぞらえるスケールはそれなりの文学的な素質を感じます。7編全体としても、高校生くらいの少女から30歳を迎えた作者の実像くらいまでの女性を描き分けて、いかにも、私が勝手に想像する『ユリイカ』読者の賛同を得そうな作品だという気がします。半分くらいは関西弁の詩で、私が読んだ昨年の第138回芥川賞受賞作の『乳と卵』も関西弁が半分くらい混じっていて、極めて大げさに言えば、世界に出るには障害になりかねないと危惧していたんですが、関西弁でない標準語の作品も立派な水準に達していることを確認できた気がします。十分、海外でも通用するレベルであるような気がします。

先日2月14日付けのエントリーの繰返しになりますが、最近10年くらいの芥川賞受賞作家の中で、川上未映子さんは私の感触からすると群を抜いており、今後の文学的な活動の広がりを大いに注目しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 2日 (月)

東大寺のお水取り

昨年は3月14日付けのエントリーにおいてクライマックスを迎えたタイミングで取り上げましたが、今年は始まったばかりのタイミングながら、やっぱり、東大寺のお水取りを取り上げたいと思います。というのも、朝日新聞のサイトで見事なスライドショーを見かけたからです。時期的に昨年の写真も含まれている気がしないでもありませんが、実に、準備段階からクライマックスの籠松明まで、すばらしい写真のスライドショーになっています。ということで、朝日新聞のサイトから直リンしています。

お水取りと称される東大寺二月堂の修二会の準備段階から、最後の籠松明のクライマックスまで35枚くらいの見事な写真を集めたスライドショーです。最初の方のツバキの造花を作っているのは「花ごしらえ」と呼ばれる作業だそうです。ほとんどすべての写真が錬行衆と呼ばれる僧侶らが主人公です。ローカルには保存していませんので、朝日新聞のサイトにある限りです。お早めにご鑑賞下さい。

先日、長崎ローカルの知り合いと話しをしていて、関西に春を告げるのはこの東大寺のお水取り、「では長崎は?」と聞いたら、もう終わったんですが、旧正月の長崎ランタン・フェスティバルではないか、との答えでした。また、もう少し先の桜の季節くらいからながら、ハタ揚げ=凧揚げも有名だとのことでした。私は不勉強にして、どちらも知りませんでした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 1日 (日)

港地区のカブラリー

港地区カブラリー

今日は下の子が活動しているボーイスカウトの港地区のカブラリーがありました。港区内のカブスカウトが一堂に会して、テーマに沿ってポイント・ハイキングを行うものです。もっとも、一堂に会してとは言っても、上の写真にある通り、日の丸の他に黄色いカブスカウトの旗は5本だけで、港区内にはカブ隊が5つということなんだろうと思います。私も用もないのに昼食時間帯を狙って少し見に行きました。上の写真はその時のものです。今日はお天気が怪しかったので、小学校の体育館を借りて昼食の後、ゲームをしたりしていました。
ウチの下の子はクマですから、カブスカウトの3年目です。昨年はカブ隊だけでなく、春休みに入ってから港地区25周年を記念してキャンポリーがありました。一昨年はスキー合宿が3月ズレ込んだために、特に3月から春休みにかけての大きな行事はなかったように記憶しています。現在はクマのカブスカウトですから、今年の9月にはボーイ隊に上進する予定です。次回の集会からクマスカウトは少し居残りでボーイ隊に上進するための心構えなどを教え込まれるようです。3年前に我が家の下の子がビーバー隊からカブ隊に上進した時もこんなのがあった気がします。ビーバー隊のころはすべての活動に親がついて回っていましたから、よく記憶しています。

フジフイルム・スクエア「写真で旅する世界遺産」第一部:自然遺産編

帰り道で東京ミッドタウンを通ったら、フジフイルム・スクエアで「写真で旅する世界遺産」の第一部:自然遺産編を開催していました。上の画像は見れば分かると思いますが、ガラパゴス諸島のゾウガメと屋久杉です。この季節のスギは有り難くないことおびただしいんですが、こうして世界遺産として写真に収まると立派なものです。3月下旬まで第一部の自然遺産編、3月下旬から4月下旬まで第二部の文化遺産編が開催されます。銀塩プリントならではの美しく、迫力のある写真が無料で見られます。もっとも大きく引き伸ばされていた写真のひとつが上の屋久杉だったんですが、デジカメなら何 MB の画素子が必要なんだろうかと考えてしまいました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »