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2009年3月 3日 (火)

川上未映子『先端で、さすわさされるわそらええわ』を読む

川上未映子『先端で、さすわさされるわそらええわ』(青土社)

川上未映子さんの『先端で、さすわさされるわそらええわ』(青土社)を読みました。2月15日のエントリーで取り上げたように、今年の中原中也賞を授賞された作品です。実は、かなり前に読み終わっていたんですが、いろいろとあって、ひな祭りを記念してということで、今夜の読書感想文の日記でアップします。まず、構成は、『ユリイカ』で発表された作品を中心に書下ろしも含めて、7編の散文というか、詩が収められています。以下の通りです。

  • 先端で、さすわさされるわそらええわ
  • 少女はおしっこの不安を爆破、心はあせるわ
  • ちょっきん、なー
  • 彼女は四時の性交にうっとり、うっとりよ
  • 象の目を焼いても焼いても
  • 告白室の保存
  • 夜の目硝子

まず、掲載誌なんですが、知っている人は知っていると思いますが、『ユリイカ』は英文では Eureka と綴ります。これまた言うまでもありませんが、ギリシャ語では εψρηκα と綴るんだと思います。ただし、ギリシャ語には自信がありません。私のものすごく偏った印象によれば、文学少女版のサブカル路線を代表しているといったところかもしれません。毎月1000円を超える定価の月刊誌で、さらに年3-4回ほども臨時増刊があり、雑誌不況のこのご時世で生き長らえているんですから、大したもんです。もっとも、『ユリイカ』の内容については、私は詳しくありません。繰返しになりますが、ものすごく偏った印象ながら、文学少女のサブカルといった雑誌ですから、私のような中年のオッサンからは少し縁遠い存在です。
掲載誌を離れて、『先端で、さすわさされるわそらええわ』については、どの作品も立派な水準でした。特に、図書館を象に例えた「象の目を焼いても焼いても」と題する作品に注目しました。最後の「夜の目硝子」のように、コンタクトレンズを「目硝子」と表現するのではなく、図書館を象になぞらえるスケールはそれなりの文学的な素質を感じます。7編全体としても、高校生くらいの少女から30歳を迎えた作者の実像くらいまでの女性を描き分けて、いかにも、私が勝手に想像する『ユリイカ』読者の賛同を得そうな作品だという気がします。半分くらいは関西弁の詩で、私が読んだ昨年の第138回芥川賞受賞作の『乳と卵』も関西弁が半分くらい混じっていて、極めて大げさに言えば、世界に出るには障害になりかねないと危惧していたんですが、関西弁でない標準語の作品も立派な水準に達していることを確認できた気がします。十分、海外でも通用するレベルであるような気がします。

先日2月14日付けのエントリーの繰返しになりますが、最近10年くらいの芥川賞受賞作家の中で、川上未映子さんは私の感触からすると群を抜いており、今後の文学的な活動の広がりを大いに注目しています。

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